インディーズゲームの最先端がここに集結! “東京ロケテゲームショウ2013”リポート

国内のゲーム開発者コミュニティ・IGDA日本が主催するイベント“東京ロケテゲームショウ2013”が、秋葉原の広瀬無線5階ホールにて行われた。

●バラエティーに富んだインディーズゲームがお目見え

 国内のゲーム開発者コミュニティ・IGDA日本が主催するイベント“東京ロケテゲームショウ2013”が、秋葉原の広瀬無線5階ホールにて行われた。

 2009年に第1回、2012年に第2回が行われ、今回で3回目となるこのイベント。出展された開発途中バージョンの自主制作ゲームを来場者にプレイしてもらいフィードバックを得る──いわゆるロケーション・テスト(通称ロケテ)によって完成度を高めることを目的としたもので、当日は合計38のサークル・個人・企業が出展した。

 来場者は100円の入場料を払えば、会場内の出展ゲームを自由にプレイ可能。製作経過が気になっていた作品や、まったくの未知の作品に直接触れられる機会とあって、思い思いのペースで場の空気を楽しんでいるようだった。


01_R

▲入場者は、開始2時間の時点で、前回の総入場者数と同程度の200人を超えていたとのこと。一度入場した人は長時間滞在する傾向があり、始終ホール内は混みあっていた。最終的には300人を超える大盛況だった。

●個人的趣味の実現から新規ビジネス開拓まで……出展者のさまざまなカタチ

 第1回は「PC用作品の出展が9割だった」(IGDA日本の同人・インディーゲーム専門部会“SIG-Indie”正世話人・七邊信重氏)という東京ロケテゲームショウも、時代の流れに応じてプラットフォームが多様化。今回は、ソニーが提唱するオープンな開発環境“Playstation Mobile”の浸透などもあり、出展作品のおもな対応プラットフォームの割合は「PC向けが約30%、スマートフォン向けが約30%、コンシューマーゲーム機向けが約15%」(七邊氏)と大幅に変化した。

 出展者の傾向としては、従来同様趣味で同人ゲームを作っているサークルや個人を多数とする一方で、「会社設立から間もない小規模のスタジオの参加が増えた」(IGDA日本執行部・戸崎茂雄氏)という。「人を集めて時間を拘束するとなると相応のお金が掛かるテストプレイをみんなでやれば……というニーズにマッチしたのでは」と、戸崎氏は語る。


02_R

 インディーズゲームで生計を立てたいと考える作り手が増えていることは、Unityやウェブテクノロジ・コムといったインディーズゲーム開発向けミドルウェアを展開する、イベント協賛企業のブース出展にも象徴されている。作りたいゲームを商業ベースで作りづらくなったため新しいチャンスを探しているクリエイターと、完全なBtoB(企業間取り引き)以外の道を開拓するミドルウェア開発企業の思惑が幸福な形で一致する可能性が、インディーズゲームには秘められているのだ。

 以下に、記者が注目した作品・ブースを紹介する。作品の内容や製作スタンスなど、本イベント出展者の多様性の一端がうかがい知れるはずだ。


■team.Drakuji
⇒サイトはこちら

 アーケードのメダル落としゲーム(のメダル押し出しギミック)好きが高じて、2003年から筐体を自作するようになったサークル。本イベントでは小型サイズの自作メダルゲーム『P.Cube2』(画像)をプレイヤブル出展した。筐体は「特注品を使わず、市販のパーツで組み立てられるもの」をモットーに、可能な限り低コストで製作したとのこと。


03_R 04_R

■哲人ドリル
⇒サイトはこちら


05_R

 3Dグラフィックで構築された木造校舎内を移動できる『木造校舎を歩く』。当初はiOS向けアプリとして開発されていたが、後にOculusRift対応ソフトも同時開発されることになった。イベントでは両バージョンの体験版が出展されたが、OculusRift対応バージョンの没入感は凄まじく、“風景のアーカイブ化”という作品コンセプトをいっそう際立たせていた。今後は移動できる範囲を増やしていくが、目標設定などのゲーム的要素を追加する予定はないとのこと。“新コンシューマハード用ゲームの開発”という本業(!)に支障をきたさない範囲で製作されているため、正式リリース日は未定。


■国際情報工科大学校
⇒サイトはこちら


06_R

 福島県郡山市にある専門学校の学生チームが製作したアクションゲーム『MAGNETICA』を出展。SとNの磁界を利用して自機のコイルをゴールに導く内容で、自機が発する磁極の入れ替え操作が攻略の鍵となる。将来的にアプリを販売する予定はなく、「改良を加え続け、ゲームソフトとしての完成形に導くことと、経験自体が目的」と捉えていた。


■やまどん!
⇒サイトはこちら


07_R

 PlayStation Mobileで製作中のAVG『赤いハイビスカス』をプレイステーション Vitaで起動した状態で展示。同時に、PlayStation Mobile用のノベルゲームを日本語スクリプトで製作できる『PSMノベルゲーム作成ツール』を公開していた。出展者によれば、PlayStation Storeで作品を公開・販売できるプレイステーション Vitaは、「同人ゲーム製作者の間では注目度が高いハード」とのこと。



■iwiz.jp
⇒サイトはこちら


08_R

 和風デザインのドット絵が鮮やかな縦スクロールシューティング『想紀伝 序幕』。同じゲーム会社に所属していたふたりのプログラマーが「自分たちが本当に作りたいゲームを作るために」と始めたプロジェクトで、「シューティングをスマートフォンの作法に合わせて操作やゲームデザインを楽しく遊べるものを作ろう!」という方向で開発中。テストプレイ後に渡されるアンケート 用紙には、評価や改善点のほかに、「いくらだったら完全版を購入するか?」といった記入項目も。


■チームモンケン
⇒サイトはこちら


09_R

 ゲーム業界で名を馳せる一流スタッフが少数精鋭で手掛けるインディーズゲーム『モンケン』。手作り感あふれるディスプレイと、来場者にみずからゲーム内容を説明する、企画原案コンプセプト担当の黒川文雄氏の精力的な姿が印象的だった。ちなみに、『モンケン』の音楽を担当する中村隆之氏は、自身の会社名義でサウンド制作ソフト『Graph Arpeggiator3 synth』を出展していた。


■プロジェクト・イクス
⇒サイトはこちら


10_R

 『EFFY one of unreasonable "if"』、『トリプル・キャノピーの魔女』といった3Dフライトシューティングゲームを製作・販売してきた同人サークル。“一般的に売れないジャンルで黒字運営”を信条に、営業・プロモーション面に力を入れているとのこと。「大手ゲームメーカーの作品では掬いきれない部分をウチがカバーします」と、現在、3Dフライトシューティングゲームのファン人口を拡大するプロジェクトを進行中。


■ニコニコ自作ゲームフェス
⇒サイトはこちら


11_R

 ニコニコ動画内で個人製作のゲームを紹介するイベント“ニコニコ自作ゲームフェス2”の受賞作品全12タイトルをプレイヤブル出展。すでに完成している作品のため、厳密には“ロケテスト”とはいえないが、プレイ後の来場者アンケートは製作者本人に送られるとのこと。「誰にもプレイされないゲームほど悲しいものはない。個人製作のゲームがより多くの人にプレイされるきっかけを作れれば」と、商業展開にこだわらない活動方針を語った。


●作り手の意識をより揺さぶる場として……

 出展の半数が初参加。ホールには日本在住スタッフによる海外メディア取材も……といった現象は、従来の東京ロケテゲームショウではなかったという。同人・インディーズゲームに対する注目度や取り巻く環境に、ある種の“追い風ムード”が漂っていることを、執行部スタッフも自覚しているようだった。

 「少し前までは、自主制作ゲームを遊ぶには、まずWindows PCを準備して、同人ショップかコミケでソフトを買ってきて、インストールしてパッチあてて……っていう段階を踏むのが当たり前でした。いまはスマートフォン単体でオンラインストアにアクセスし、すぐに遊べる状態にできます。流通経路や展開チャンネルが変わり、より深いユーザーに届くようになったことは、同人・インディーズにとってはチャンスになっています」(戸崎氏)

 「多くのユーザーからすると、ストアに並んでいるゲームがインディーズなのか商業なのか判別がつかない。むしろそういったこだわりなくソフトを選べる状況になっていると思います。製作サイドのトレンドとしては、いままで作りにくかったゲームが開発環境的に作りやすくなったので、より多くの人がチャレンジしているという面もありますね」(IGDA日本執行部・SIG-Indie副世話人・大澤範之氏)


12_R

 とはいえ、昨今のインディーズゲームの盛り上がりに関しては、「あくまでも外的な要因が重なった上でのこと」(七邊氏)と冷静に受け止めている。今後さらにデベロッパー、一般参加者双方にとっての重要性が高まるであろう東京ロケテゲームショウの舵取りの方向性について尋ねてみた。

 「本音を言えば、イベントの企画運営をしてくれる人を専任で立てたいですね。僕らはボランティアでやっているようなもので、できればゲーム開発に専念したいんです(笑)。ロケテという形式自体は有意義だと思っているので、今後も継続的にやっていける流れは作っていきたいと思っています」(大澤氏)

 「会場に5、6歳のお子さん連れがいらっしゃって開発中のゲームをプレイする……という状況は、これまでの日本の同人シーンが体験したことない状態だと思います。これまでのお客さんはある程度想定通りの反応をしてくれたのですが、お子さんの場合は“これ、つまんなーい”と投げ出す場合もあります。そこで“この子におもしろがってもらうにはどうすればいいか?”と考えてもいいし、“やっぱり自分は大人のプレイヤーをターゲットにしていこう”と決意を新たにしてもいい。このイベントを“自分の作りたいゲームはどういうものなんだろう?”という原点に立ち返ことができる有意義な場として確立していきたいですね」(戸崎氏)

 旧来の同人ゲーム製作者向けに淡々と続けられていたイベント活動が迎えた転機。作り手の意識を揺さぶり、それぞれの方向性でのステップアップを図れる機会として、インディーズゲームに興味を持った来場者がより楽しめる空間としての東京ロケテゲームショウの今後の展開に注目してしたい。


13_R

(取材・文 ライター/戸塚伎一)