一風変わった新興国のアラブ諸国

 2013年8月21日~23日、パシフィコ横浜にて開催された、日本最大のコンピュータエンターテインメント開発者向けカンファレンス“CEDEC 2013”。2日目に開催されたセッション“アラブ諸国の家庭用ゲーム市場”のリポートをお届けする。

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▲中東ゲーム事情における第一人者である、ディアクリエイトの佐藤 翔氏。

 講演を行ったのは、メディアクリエイト 総研I部 アナリストの佐藤 翔氏。佐藤氏はCEDEC 2012やGDC 2013で中東関連の講演を行っている、いわば中東ゲーム事情のスペシャリストだ。ちなみにCEDEC 2012での講演のリポートはファミ通.comでも掲載しているので(【中東へ進出するならいま!? 中東のゲーム市場とヨルダンのゲーム産業【CEDEC2012】】)、そちらもチェックしていただきたい。

 佐藤氏は「新興国のゲーム市場は、PCゲームやスマートフォンが主流というイメージがある。だがアラブ諸国では、その考えかたは当てはまらないと私は考える」と、アラブ諸国では家庭用ゲーム機が主流になる可能性を示唆した。では、くわしく見ていこう。

国家間の貧富の差が激しい中東の情勢

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 まずは中東の情勢、地域概念と言った基本知識についての解説が行われた。基本的に“中東”といった場合、エジプトより東、イラクより西あたりの地域を指すという。

 アラブ諸国の人口は2012年で約3.6億人(ただし、統計によってはかなり差が出る、とのこと)、湾岸諸国など裕福層の人口は約4000万人だという。このアラブ諸国をまとめてひとつの国と考えると、中国、インドに続く第3の巨大な大国になる。佐藤氏は「ほかの新興国よりも人口増加率が高く、25歳以下の若い人が多い」と、特長をアピールした。

 公用語はアラビア語で、世界で4番目に多く使われている言語。識字率も非常に高いそうだ。ただし、歴史的経緯からビジネスの場では英語やフランス語が多用され、「ゲームも含めて海外商品は英語のままで流通していることが多い」と佐藤氏。

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▲“アラブ諸国”をひとつの国として考えると、世界で3番目の大国に。
▲アラビアでは宗教的な理由から識字率が高い。ただし、英語やフランス語も多用されているとのこと。

 政治は、君主制国家と民主制国家が混在している状況で、「政治体制の違いによって治安や政治の安定度が大きく異なる」と、実体験に基づく地域情勢を解説してくれた。テロやクーデターが発生するのは、ほとんどがエジプトやイエメンなどの民主制国家で、治安も非常に悪い。逆に、サウジアラビアやヨルダンといった君主制国家は政治が安定しており、治安のよさは「西ヨーロッパ並みかそれ以上」と佐藤氏。とくに「イスラム法で厳格に禁止されている強盗、窃盗、誘拐、殺人は本当に少ない」と、凶悪犯罪の少なさをアピールした。ただし交通事故は非常に多いそうだ。

 また国家間での貧富差が激しいことも、アラブ諸国の特長であると述べた。裕福国はひとりあたりのGDPが4万ドルを超える国も存在するなど「日本よりもお金持ち」で、とくにカタールは日本の3倍近い10万3900ドルだとか。逆に「イエメンはアラブでもっとも貧しく、2300ドルと最貧国レベルである」と、国家によって所得が大きく異なることに触れた。

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▲アラブ諸国では君主制国家と民主制国家が混在。治安や収入も、国家間で大幅に異なる。

家庭用ゲーム機はサウジとアラブで躍進

 そのような情勢の中、ゲーム市場は年10%ほどの成長を遂げており、2012年時点で1100億円前後とみられる。内訳は半分が家庭用ゲーム機で、モバイルゲーム機が4割程度、PCゲームは1割ほど。ほかの新興国では、家庭用ゲーム機の割合は半分まで行かず、「かなり異なる状況」と佐藤氏。

 もっともゲーム市場が大きい国はサウジアラビアで、2番目にアラブ首長国連邦が続く。家庭用ゲーム機のおもな市場もこの2国で、それ以外の地域はソニー・コンピュータエンタテインメントやマイクロソフトが公式にサポートしておらず、「海賊版や非正規の輸入品しか流通していない」と佐藤氏。とくにアラブ首長国連邦では家庭用ゲーム機を複数所有しているユーザーが多く、「プレイステーション3やXbox 360、Wiiを同時に所有しているケースが多い」と佐藤氏。逆に、ヨルダンなどの開発途上国では、ゲームハードの保有者は38.0%にとどまるという。

 PCゲームも成長しているが、じつはPCの所有率は高くなく、リヤド(サウジアラビアの首都)やドバイなど各地でゲームカフェが盛んだという。紹介されたサウジアラビア最大のゲームカフェ“GameNet”は、なんと5~600台のPCが置かれており、佐藤氏は「世界でもかなり大きい部類ではないか」とコメントした。

 PCゲームの競技イベントe-Sportsも盛んで、各地で開催されている。「『Counter-Strike』、『League of Legends』、『Defense of the Ancients 2』(『DotA2』)などが競技種目です」と佐藤氏が解説。

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▲アラブ諸国における家庭用ゲーム機市場。サウジアラビアがもっとも大きなマーケット。
▲ゲームの歴史も語られた。ファミコン世代は小規模な輸入が行われている状況で、90年代以降はプレイステーションが大きく躍進したという。

モバイルゲームに月45万円使うユーザーも!

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 モバイルゲーム市場は約450億円で、流行しているゲームは他国とは大きく変わらない。ただし、ローカライズされたタイトルに人気が集まっているという。Facebookのゲームではアラビア語にローカライズされた『Happy Farm』が絶大な人気を誇っており、エジプトだけで500万人も遊んでいるそうだ。

 アラブ諸国は携帯電話の普及率が世界でもっとも高く、200%を超える国も珍しくない。とくにスマホは急速に普及中で、2013年5月の調査では、AndroidとiPhoneが拮抗した状態にあるという。また「FacebookやTwitterのようなSNS、Wechat、LINEなどのコミュニケーションツールが絶大な人気を誇る」(佐藤氏)ことも特長だそうだ。

 なぜコミュニケーションツールやSNSが人気かというと、アラブ諸国は基本的に男女の交流/交際が非常に制限されており、出会いの場が限られている。そのため、こうしたコミュニケーションツールは男女間での交流に利用されているそうだ。ただし、あまりに流行しているため、サウジアラビア政府はアプリ“Viber”の規制に乗り出した。「こういったリスクも存在する」と佐藤氏は注意を促す。

 さらに、ARPU(加入者ひとりあたりの月間売上高)が高いことも特長であると佐藤氏は述べる。新興地域ではもっとも高く、GCC諸国では一月あたり平均3~40ドルに達する見込みで、この理由は“重課金者が多いこと”であると佐藤氏は分析する。

 ゲームの課金代行会社(当時)“Social Gold”の2010年のデータによると、6ヵ月累計の課金額がもっとも多かった人はサウジアラビア人で、なんと25540ドル。これは2位のアメリカ、3位のカナダよりも高い数字で、1ヵ月に約45万円ぐらい使い続ける計算だという。ただし、この重課金者の売り上げ自体はさほど重要ではなく、これを見たほかのユーザーが「じゃあ俺もこれだけ課金しよう」という流れになることが大切なんだとか。「このような重課金ユーザーがいるため、ソーシャルゲームにお金を支払う心理障壁が低いと感じた」と、佐藤氏はアラブ諸国の課金事情を語る。

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▲アラブ諸国では通信への投資も熱心で、4G/LTEが普及している国も多い。
▲重課金者が多いこともアラブ諸国のモバイル市場の特長。こうしたユーザーの存在が、ほかのユーザーの課金を促しているそうだ。

ドバイのゲームショップを視察!

 家庭用ゲーム機の流通についても話題は及ぶ。アラブ諸国の流通は、国ごとに存在する販売代理店を中心に行われ、そこから各国の小売り店へ卸される仕組みだそうだ。大手ゲームパブリッシャーも卸売業者と独占的な流通契約を結んでおり、たとえばサウジアラビア、クウェートなどでゲーム卸売りを行っている“Plute Games”は、カプコン、KONAMI、コーエーテクモ、Codemastersなどの公式ディストリビューターを務めている。単純な仕入れ、販売だけではなく、「小売りと連携したプロモーションにも熱心な会社」と佐藤氏。

 またその形態は「日本やアメリカよりも西ヨーロッパ、ドイツにすごく似ている」とのこと。ゲーム専門店、家電量販店、メディア複合店、GMS(スーパー)の4業態がゲーム販売の中核で、家電量販店が強いことも特長として挙げられた。

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▲佐藤氏はアラブ諸国の流通事情にも言及。インターネットでの販売も拡大しているという。

 佐藤氏は2012年に、ドバイ唯一のゲーム専門チェーン店“GeeKay Games”に視察を行い、情報を収集。ドバイの小売店の実態を紹介してくれた。

 「プレイステーション3の品揃えは欧州のゲーム専門店に近い」と佐藤氏。ソフトはすべて英語表記で、またレーティングはPEGI(ヨーロッパのもの)が記載されていたことから、「欧州からの輸入品が販売されていると推測される」とのことだ。また中東では珍しく、Xbox 360の品揃えも充実していたという。

 日本と異なるのは携帯ゲーム機の人気。ニンテンドーDSやニンテンドー3DS、PlayStation Vitaの展示場所はお店の奥で、あまり力が入れられていない印象。「普及率も高くない」と佐藤氏は現状を語る。逆に、周辺機器はお店の中心で、大きなスペースをとって展示/販売されていたそうだ。

 同店にある“TOP 10”コーナーも調査。人気があるのはFPSで、「『コール オブ デューティー』シリーズや『Halo 4』がランクインしていました」と佐藤氏。また『アサシン クリード』のようなアクション、『Need for Speed』をはじめとするレースゲームも人気があるという。さらに『ウイニングイレブン』や『FIFA』といったサッカーゲームは「定番商品として確立されている」とのことだ。

 日本と異なるのは、RPGやアドベンチャーといった、深いゲーム知識を必要とするジャンルはまだ人気が薄いこと。「こういったゲームはアラビア語にローカライズしないと遊んでくれない」と佐藤氏は分析する。そのような状況ではあるが、『ポケットモンスター』シリーズがランクインしていたのは印象的であった。

 また、当時北米でしか発売されていないWii Uを発見したことから、佐藤氏は「流通の仕入れ力の強さを体感した」と感想を述べた。

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▲ドバイの売れ筋ソフトも紹介。FPSやアクション、レース、サッカーといったジャンルが人気なんだとか。
▲北米での発売日から、わずか1週間ほどでWii Uが入荷していたという。佐藤氏は「仕入れの強さを体感した」とコメント。

家庭用ゲーム機が拡大した理由は?

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 話題は家庭用ゲーム市場へ。2012年は前年比20%以上の急成長を遂げ、2013年にはさらなる成長が見込まれており、その要因は3つ考えられるという。

 ひとつ目は、“ゲーム市場の秩序の形成”。「道路などのインフラが整備され、正規ゲームの販売網が拡大されたからであろう」と佐藤氏。またプレイステーション4、Xbox Oneはゲームソフトのコピーがより困難、あるいは不可能になるであろうことから、「正規市場の割合はかなり高くなるのでは」と推測する。実際、アラブ諸国でプレイステーション3が大きく普及しているのは、ゲームのコピーが困難という理由が大きいそうだ。サウジアラビアや湾岸諸国はGDPが高く、正規品が買えないわけではないため、(海賊版が面倒になるならば)正規のゲームを買おう、という流れになるそうだ。

 ふたつめの要因は、中所得者の割合が増加していること。そのためユーザー層が拡大し、ゲームプレイヤーが増えたとみられる。また女性ユーザーの増加もめざましく、「アラブでは女性のゲームユーザーがかなり多い」という意見もあるという。それを裏付ける情報のひとつとして、佐藤氏は2012年に開催された女性専用イベント“GCon”を紹介。このイベントには、なんと1600名もの女性ゲームファンが集まり、この数は「ほかの国でもなかなかお目にかかれない」とコメントした。

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▲家庭用ゲーム機が拡大した原因を分析。2012年10月には、Xbox LIVEも正式サービスを開始。
▲ユーザー層の拡大も一因。とくに女性ユーザーは、想定よりも多いのでは、と推測される。

 ちなみに、この“GCon”で一番流行ったゲームは、パズルゲームでもアクションでもなく、なんと『コール オブ デューティ』。アラブ諸国の女性ユーザーには、FPSが人気なのだ!……と言いたいところだが、この状況を佐藤氏は「猛烈にFPSが好き、というわけではなく、おそらくFPSしか知らないからでは」と分析。パズルゲームやライトユーザー向けのアクションは「プロモーション、認知が追いついていないのが現状」と述べた。また「こうした空白のマーケットは今後注目すべき」と、マーケットの可能性についても触れた。

 3つめの要因が、ゲームコミュニティの成立だ。先の女性専用イベントのほか、“GeekFest Dubai”、“GAMES 12”など、中東のゲーマーが集まるイベントが増大している。昨年は“IGN Middle East”が設立されるなど、ゲームメディアも増加傾向にあるという。

注意点は“宗教”と“倫理観”のタブー

 こうした状況のアラブ諸国でゲームを売るときは、「内容の検閲」に気をつけるべきと佐藤氏は語る。サウジアラビア、アラブ首長国連邦は、中東でもっとも有力な市場であると同時に、もっとも保守性の強い国でもあるのだ。

 なかでも注意したいのが、「宗教、とくに文字に関するタブー」だと佐藤氏。「適当に文字を書いたら聖典の一節になったりして、後々大きな問題となるケースは非常に多い」と具体例を挙げた。また倫理的な規制も難しく、アラブ諸国の倫理を著しく乱すもの、たとえば女性の露出が激しいものなども、問題になるケースが見受けられるという。こうしたトラブルを避けるため、「現地のイスラム法にくわしいウラマー(イスラム知識人)、少なくとも現地の人間(ローカライザー、ゲームテスター)に事前に確認を取る必要がある」と、解決策を提示した。

 逆に、暴力的な表現はさほど難しくなく、中東のテロリストと戦う内容のゲームでもふつうに遊ばれているんだとか。たとえば『コール オブ デューティ ブラックオプス』は一度規制されたという実例があるが、続編の『コール オブ デューティ ブラックオプスII』はそのような問題は発生せず、「一度規制を通り抜けてしまえば、政治的な問題はほとんど発生しない」と佐藤氏。

 またゲーム内容の審査についても述べられた。アラブ首長国連邦では国立メディア評議会が、サウジアラビアでは税関がゲームの内容を事前チェックする権限を保有しており、過去には『グランド・セフト・オート 4』や『コール オブ デューティ ブラックオプス』などが販売を差し止めされたという。

 ただし、チェックの実態はあまり正確なものではなく、「ときどき何でもかんでも禁止してしまおう、という流れになる」こともあるそうだ。また過去にマイクロソフトのあるタイトルが販売停止になりそうな事態となったが、マイクロソフトの人が税関の人と話し合い、無事に発売されたというケースもある。「コミュニケーションが重要」と佐藤氏は語る。

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 このように、アラブ諸国はゲーム成長期に突入しており、とくに家庭用ゲーム機の拡大が見込まれる市場。グローバル企業の参入、ローカライズやプロモーションへの投資はまだ競合が少ないため、佐藤氏は「強力なIPを持つ日本企業の戦略的優位性はとても高い」と、日本企業が販売チャンスを広げられる可能性を述べた。

 佐藤氏は「アラブ諸国のマーケットは非常に知識が必要だが、知識さえあれば競争が少ないマーケットであるため、市場のシェア獲得が見込めるかもしれない。チャレンジしてみたいという人は、ぜひともご一報ください!」と展望を述べ、本公演を締めくくった。

 我々日本人にとってなじみの薄いアラブ諸国のゲーム事情ではあるが、その内容はじつに興味深いものであった。またインディーズゲームにも関心は高まっており、佐藤氏の友人はひとりでPlayStation Vita向けのアクションゲームを開発しているんだとか。遠くない未来、ゲーム文化が盛り上がったアラブ諸国より、名作ゲームが登場することを期待したい。

(取材・文:ライター/喫茶板東)