頭角を表してきたインディースタジオの最新作が登場

 2013年8月14日にXbox Live アーケードで配信された『Charlie Murder』は、なんとも味のある手書きイラスト風のグラフィックが目を惹くが、その中身はじっくり楽しめる硬派アクションである。開発は、インディー系スタジオのSka Studios。Xbox Live インディーゲームで多数のゲームを作成しているほか、Xbox Liveではアクションゲーム『The Dishwasher: Dead Samurai』と『The Dishwasher: Vampire Smile』の2作を配信している。
 『Charlie Murder』も過去作と同様に、ゲームジャンルはアクションゲーム。狭義では奥行きも再現されている横スクロールアクションゲーム、いわゆるカプコンの『ファイナルファイト』に代表されるベルトスクロールアクションにあたる。いまのユーザーには『ドラゴンズクラウン』みたいなゲーム、って言ったほうが伝わりますかね?

邪悪なデスメタルバンドの野望を打ち砕け! XBLA『Charlie Murder』プレイインプレッション_01
邪悪なデスメタルバンドの野望を打ち砕け! XBLA『Charlie Murder』プレイインプレッション_02
▲ジャンルは横スクロールアクション。バンドメンバーの一員となり、カオスな世界で戦っていくのだ。

カオスすぎる世界観を楽しむのだ!

 まずはストーリーから紹介。本作の主人公は、パンクロックバンド“Charlie Murder”のメンバー5人。彼らのなかからひとりを選択し、極悪デスメタルバンド“Gore Quaffer”一味に立ち向かうのだ。
 ……というのはXbox.comに記載されている紹介文で、これだけ見れば勧善懲悪的な物語に思える。だが実際は、チャーリーが親友のポールを裏切って自分のバンドを組んだため、悲しみにうちひしがれたポールは悪魔と契約してモーティマー卿となり、“Gore Quaffer”を結成してしまった、というなかなかのクズっぷりが描かれている。物語の真相はゲームを進めると少しずつ明かされていくので、気になった人はぜひともプレイしてその目で確かめてみよう。

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▲主人公は5人のなかから選択可能。また最大4人での協力プレイにも対応している。
▲仲よきころのチャーリーとポール。こんな感じでステージの合間に回想が語られることも。

 本作最大の魅力が、グラフィックと世界観だ。大きな特長である手書きフラッシュアニメ風の映像は、制止画では若干チープさを感じるかもしれない。だが実際のゲームではアニメパターンが多く、またエフェクトも派手なため、その世界観にすぐに引き込まれてしまうだろう。
 ステージも多彩で、カオスと化した市街地や墓場、下水道、工事現場などさまざまな場所でバトルを繰り広げる。登場する敵キャラクターもバリエーションが多い……のだが、ゾンビや忍者、ハンバーガーの着ぐるみをかぶったボス、ほうきにまたがって飛ぶ魔女など、なんというかロックを題材にしているわりには変な奴らばっかりである。一応、ライバルである“Gore Quaffer”一味はデスメタルっぽい出で立ちをしているが、それ以外の統一感のなさはハンパなく、そのカオスっぷりこそ本作の魅力であるといえよう。
 ちなみに敵を倒したら脳みそがボトンと落ちたり、それを拾って敵に投げつけられるなど、ゴア表現はなかなかのレベル。イラスト風のためグロさはそんなにないが、この手の表現が苦手な人は一応注意しておこう。

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▲ハンバーガーの着ぐるみを着た敵も登場。そして周囲にはゾンビが徘徊!
▲倒しかたによっては、敵の目玉と脳みそがバラバラに吹っ飛ぶことも。なかなかにスプラッタ!

ゲームシステムは意外とスタンダード!?

 続いて、バトルシステムを解説していこう。Xボタンでノーマル アタック、Yボタンでヘビー アタック。Aボタンはジャンプで、Bボタンは敵をつかむことができる。このほかに、Lトリガーでブロック(ガード)、Rトリガーでアナーキー(必殺技)を発動可能だ。
 各攻撃を単体で行う以外に、組み合わせでコンボ攻撃もくり出せる。たとえば、タイミングよくXXYと押すと、弱から強攻撃を行うコンボが発動。XYでは2段目の攻撃がアッパーとなり、敵を空中に打ち上げられる。さらに空中コンボへ移行したり、空中投げで締めることもできる。

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▲ボタンの組み合わせで、さまざまなコンボを発動可能。空中コンボからの投げ、なんて大技も!
▲回転する巨大な刃ほか、ステージにあるオブジェクトを利用して、敵を攻撃することもできる。

  状況に応じてコンボを使い分ける楽しさもあるが、さらに武器を使うことでバトルのバリエーションが拡大する。チェーンソーで一気に敵を切り刻んだり、ナイフを投げて遠くの敵を攻撃したり、ショットガンで至近距離の敵を吹き飛ばしたりと、武器ごとにさまざまな攻撃を楽しめるのも本作の大きな魅力だ。
 バトルでとくに重要なのが、必殺技であるアナーキー。大声で叫び、前方の敵に毒のダメージを与える“ポイズン ボーカル”、仲間の体力を徐々に回復する“ヒール オーラ”、銃が詰まった袋を召喚する“ガン バッグ”など攻撃以外にも多彩なタイプが存在し、このうち4つを装備できる。各アナーキーは発動したあとにクールダウンタイムが発生し、一定時間経過するとまた使用可能になる仕組みだ。いずれも強力な効果を秘めているため、いかに活用できるかがバトル攻略のカギとなる。

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▲いわゆる必殺技にあたるアナーキー。発動中は無敵のため、緊急回避的に使用することも可能だ。
▲アナーキーは数種類存在し、お店でタトゥーを入れてもらうと取得できる。

 実際のバトルは、ボタン連打でなんとかなるといった単純なものではない。こちらの攻撃をガードしたのちに反撃してくる敵が存在し、また、攻撃を当てても問答無用で反撃してくるタイプも存在するため、ヒットアンドアウェイで1体ずつていねいに戦う必要がある。大量の敵をバッサバッサと倒して爽快感を味わうタイプではなく、慎重に慎重を重ねて戦う、緊張感を味わえるバトルスタイルなのだ。

装備やスキルで主人公を強化していくのだ

 本作には成長要素も存在する。敵を倒すとフォロワー(経験値)を獲得でき、一定まで溜まるとレベルアップ。スキルポイントを割り振って、ストレングスやスピードといった能力を強化できる。
 状況によっては新しいスキルも獲得でき、ダウンした敵の頭部を踏みつぶしてトドメを刺す“スカル ストンプ”や、片手武器を同時にふたつ所持できる“二刀流”など、新しいアクションが使用可能になる。

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▲レベルアップすると得られるポイントを割り振り、各種能力を成長させられる。
▲新しく覚えたスキルの解説は、スマホにメールで届く仕組み。ちょっと字が小さい……。

 また帽子や服などのアイテムを装備することも可能。これらを装備するとストレングスやディフェンスといった基本能力を強化できるほか、キャラクターの外見も変化する。さらには特殊能力を備えている装備も存在する。同じ名称の装備でも、能力が若干変化するため、強力な装備を求めて戦うアイテムハントの楽しさも存在するのだ。あれこれ考えながら装備を組み替えていくのも、また楽しみのひとつ。
 ちなみに回復アイテムや合成素材も存在し、ショップでの売買が可能。合成素材は、特殊な機器がある場所で組み合わせることで、主人公が強化される消費アイテムのお酒を作り出せる。

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▲装備の種類はかなり多く、収集する楽しさも。キャラクターの外見が変わるため、コーディネートを考える楽しさも。
▲特定の施設でアイテムを合成し、新たにお酒を造り出すことも可能だ。

ステージに隠されたヒミツを見つけ出せ!

 各ステージでは、バトル以外に探索も楽しめる。方向パッドの下を押すとスマートフォンのカメラで写真を撮影できるのだが、こっそり隠されたQRコードや特定のアイテムを撮影すると、アイテムを入手できたり、フォロワーを獲得できる仕組みだ。
 またステージも一部分岐が存在する。寄り道的な隠しルートを発見、攻略すると、特殊なアイテムが手に入ることもある。各ステージのつながりはワールドマップで確認できるため、なんとなく怪しい場所の目星も付く。すべてを見つけ出すにはなかなかにボリューミーだ。
 さらに、格闘以外がメインとなるステージも登場。ほうきに乗って空を飛び、拳銃で敵を撃ちまくるシューティングステージや、クルマで敵をはね飛ばして進むステージ、急流を板で下るステージなど、どれも変わったものばかり。バトル中心のノーマルステージの、ちょうどいいアクセントとなっている。

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▲背景の黒板にQRコードを発見。スマホのカメラで撮影すると……?
▲バンドを題材にした作品だけに、リズムゲームっぽいミニゲームも。タイミングよくボタンを押すのだ!

 一風変わった手書き風のグラフィックと、それに輪をかけて奇抜な世界観を誇る本作。そんな外観とは裏腹に、ゲームシステム自体の完成度は高く、じっくりと腰を据えて楽しめるアクションゲームだ。ただし、ゲームの難度はそれなりに高いため、単純に爽快感を味わえるタイプのゲームではないことはお忘れなく。
 なおゲームクリアー後は、さらに敵が強化されたモードが解禁されていく。全モードクリアーを目標にするならば、長時間楽しめることだろう。オフライン/オンラインともに最大4人で協力プレイが楽しめるので、友だちとワイワイ遊びたい人にもオススメしたい。

■著者紹介:喫茶板東
ファミ通Xbox 360で海外ゲームマニアックス、実績解除愛好会などを担当していたフリーライター。『Castle Crashers』や『The Binding of Isaac』とか、手書きイラスト風の映像がインディー系の流行なんですかね?