アクションの匠+プレイステーション 4=……!?
プレイステーション 4で、新世代のゲーム開発を進めているトップクリエイターに聞く、連載インタビュー企画。第2弾は、『KNACK(ナック)』の総監督マーク・サーニー氏と、プロデューサーの渡辺祐介氏にお話を聞いた。
『クラッシュ・バンディクー』など、多数の名作を手掛けたマーク・サーニー氏が総監督を務め、高い技術力を誇るソニー・コンピュータエンタテインメント JAPANスタジオが開発を進めている本作。強力な開発陣が生み出す新世代のアクションゲームとは? そして彼らは、プレイステーション 4の実力をどう見ているのか? じっくりと語ってもらった。
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プレイステーション 4専用タイトルとして開発中のアクションゲーム。主人公のナックは、ステージのいたるところにあるパーツ“レリック”を集めることで、体の大きさを0.7メートルから10メートルまで変化できる。サイズが小さければ機敏に動き、巨大化すれば敵を一気になぎ倒すパワフルなアクションが可能になるなど、PS4のマシンパワーを活かした内容となっている。

◆写真右:プロデューサー 渡辺祐介氏(ソニー・コンピュータエンタテインメント JAPANスタジオ)
新しいハード、新しい遊び、新しいユーザーを実現する『KNACK』
――PS4で開発が進められている『KNACK(ナック)』とは、どのようなゲームなのでしょうか?

マーク・サーニー氏(以下、マーク) 『KNACK』は、操作が非常にシンプルで、どなたにもノスタルジックな雰囲気を楽しんでいただけるゲームです。そして、それ以上に、今日のゲーマーを夢中にさせる、新しい要素を十分に備えたアクションゲームになっています。わかりやすく言うと、『クラッシュ・バンディクー』や『ジャック×ダクスター』を初めてプレイしたときのような感覚を、皆さんの中に呼び起こしたかったのです。当然、ゲーマーの郷愁に訴えかけるだけでなく、PS4でしか味わえない体験もしっかりお届けできると思います。
渡辺祐介氏(以下、渡辺) 『KNACK』のプロジェクトは、“PS4という新しいハードで、誰でもカンタンに遊べるアクションゲームを作ろう”というコンセプトからスタートしました。開発が進み、『KNACK』はかなり形になってきていますが、まさに誰でも遊べるようなアクションゲームになっていると思います。
――既存のシリーズの続編ではなく、完全新作の『KNACK』を作ることにした理由を教えてください。
マーク PS4をきっかけに、コアゲーマーだけでなく、小さなお子さんなど、家族全員で楽しんでいただける環境を作りたかったんです。『KNACK』は、その楽しさを伝える役割を担うタイトルだと思っています。シンプルで直感的な操作性、温かくて柔らかみのあるアートなど、ゲーム全体がユーザーにとってなじみやすい作りになっているからこそ、それが可能なのです。
渡辺 新しいハード、新しい遊び、新しいユーザー。これらを実現するうえで、『KNACK』は非常に重要なタイトルだと思っています。
マーク 新しいハードが出るときには、“変わってる感”が出るゲームが必要ですよね。
――大人も子どもも、誰でも遊べる新しいゲームを目指したということですね。
マーク はい。『KNACK』は、大きく分けてふたつのタイプのユーザーをターゲットにしています。ひとつは、かつて『クラッシュ・バンディクー』や『ジャック×ダクスター』などのタイトルを楽しんでいたユーザー。これらのゲームは、見た目はかわいいのですが、じつはかなりやりごたえのあるゲームでした。『KNACK』も、難易度を高く設定すれば、コアゲーマーの方にも満足していただけると思います。
――それでは、もうひとつのタイプとは?
マーク もうひとつのタイプは、子どもたちのようなゲームのビギナー、ライトユーザーです。いまの子どもたちはタブレットやスマートフォンは扱えるけれど、ボタンが16個ついているDUALSHOCK4での操作はしたことがないはずなので、そのようなユーザーにもアピールしたいと思いました。

渡辺 この場には持ってこられませんでしたが、『KNACK』を開発するにあたり、通常の1.5倍のサイズのDUALSHOCK3を3Dプリンタで作ったんです。なぜ作ったかというと、7歳ぐらいのお子さんがDUALSHOCK3が握った感覚を、我々大人が知るためです。その感覚を知ることが、主人公ナックのアクションや、ボタンのレイアウトに大きな影響を与えたと思います。
マーク 『KNACK』は、誰かの“最初のゲーム”になれるように作っているんです。
渡辺 PS4が、子どもたちにとって初めて遊ぶゲーム機になってほしいと思ったんです。『KNACK』が遊びたいからPS4を買った、と言ってもらえたらうれしいですね。
――皆さんがこだわられた“主人公ナックのアクション”のポイントは、どのようなところでしょうか?
マーク ナックの大きさは、身体につけたパーツの数で、シームレスに変化します。ナックのサイズの小さいときに、敵を攻撃を必死にかわしていたかと思うと、いつのまにか大きくなっていて、同じ敵を圧倒していたりと、つねにゲームプレイが変化しているので、遊んでいて飽きがこないのです。
渡辺 パーツの数、種類によっても遊びかたが変化していきます。とはいえ、パーツの切り換えや、装備の変更など、複雑な操作は必要ありません。
マーク 氷なら溶ける、木なら燃える、というように、ナックが身体につけたパーツ自身が遊びに直結しているのです。

PS4がナックを生み出した――PS4ならではの要素
――『KNACK』における、PS4だからこそ実現できた要素についてうかがいたいと思います。たとえば、パーツの数でナックの身体が変化するという仕組みは、PS4の性能があるからこそ実現できたものですよね。

マーク もちろんです。PS4がナックを生み出したといっても、過言ではないと思います。60個から5000個までのパーツを身体につけて、ナックがダイナミックに使って進むさまは、見ているだけで気持ちいいです。5000個のパーツを物理演算して、キャラクターを表現できるのは、まさにPS4ならではのものですね。また、ゲームオーバーになったとき、全身のパーツが飛び散るのですが、これが儚くて、なんとも言えません。
渡辺 個人的に、僕はその飛び散る演出が大好きなので、飛び散るシーンをみんなが動画でシェアして、楽しんでもらえればおもしろいかな、と思っています。
――PS4の5つのコンセプト“Simple(使いやすさ)”、“Immediate(サクサク)”、“Social(ソーシャルとの融合)”、“Integrated(さまざまな機器・サービスとの連携)”、“Personalized(ユーザー体験の最適化)”は、『KNACK』の中で、どのように活かされていますか?
マーク 『KNACK』に限ったお話ではありませんが、PS4では、ダウンロード版のゲームを購入してプレイするとき、すべてのゲームデータをダウンロードし終わるまで待たなくても、ゲームをスタートすることができます。
――“Immediate(サクサク)”に関する要素ですね。“Social(ソーシャルとの融合)”についてはいかがでしょうか?
マーク 『KNACK』はソーシャルの要素にもかなり力を入れています。ゲームをプレイしていると、宝箱が配置された“秘密の部屋”が見つかることがあるのですが、その宝箱の中には、ランダムでオブジェクトが入っています。このとき、同じ秘密の部屋に入った友だちが、何を手に入れたかというリストが出てきます。自分の欲しいオブジェクトが手に入らなかったとき、友だちがゲットしたものをもらうことができるんです。つまり、友だちが『KNACK』をプレイしていれば、より早くオブジェクトを集めて使えるようになるということです。
――SHAREボタンについてもうかがいます。ユーザーに、SHAREボタンをどのように使ってほしいと考えていますか?
マーク PS4は、つねにゲームプレイを録画しています。プレイ中に興奮したシーン、楽しかったシーンをシェアしたい場合は、SHAREボタンを使えば、最新の数分ほどのゲームプレイ動画の中から、好きなところを切り取ってアップロードすることができます。同様に、スクリーンショットもアップできます。
――プレイステーション Vitaやスマートデバイスで利用できるような、『KNACK』のコンパニオンアプリを配信する予定はありますか?
マーク コンパニオンアプリも作っています。詳細はあらためて発表しますので、楽しみにしていただければと思います。
――PS Vitaでのリモートプレイにも対応しているとうかがいましたが。
マーク はい。PS4のリモートプレイのコンセプトは、“PS4がファミリー・フレンドリーなデバイスになる”ことです。たとえば、テレビでPS4のゲームをプレイしているとき、家族の誰かが「テレビを使いたい」と言ったら、すぐにリモートプレイにシフトして、PS Vitaでプレイできるようになります。
――PS4での開発と、これまでのハードでの開発と比べて、違う点はありますか?
マーク PS4では、“試しにプログラムを作ってテストする”ことが容易にできます。たとえば、『KNACK』であれば、5000のパーツを動かすための物理演算が必要です。以前のハードであれば、そのような物理演算のプログラムを作るのにかなりの時間がかかったのですが、PS4では、わりと作りやすい。“まずは作って、試してみる”ということができました。アイデアがあって、それを試してみて、よいものになれば残す。ダメだったらもう一度考える。そのサイクルが早くなるんです。このサイクルのおかげで、PS4のゲームは、よりリッチなものになると思います。
――『KNACK』の開発が終わった後、PS4でどんなゲームを作ってみたいとお考えですか?
マーク これまで、さまざまなタイトルで、さまざまな役割を担当してきましたが、『KNACK』では初めてクリエイティブディレクターを担当し、脚本を書きました。たいへんな仕事でしたが、とても勉強になりましたし、楽しかったので、これからもチャレンジしていきたいですね。

渡辺 今回、マークさんには総監督としてご参加いただいています。マークさんの全身から、新しいものを生み出す力、作業を進める力がみなぎっていて、初めてとは思えないほどでした。ストーリーはもちろん、ムービー、グラフィック、ゲームプレイ、BGMなど、マークさんのこだわりが、いたるところに詰め込まれています。我々JAPANスタジオのスタッフが、そのマークさんの姿に刺激を受けて、能力の120%ぐらいが引き出された結果、『KNACK』が素晴らしいタイトルになったと思っています。
マーク まだあまり語られていませんが、『KNACK』はストーリーも非常に奥が深くて、おもしろい内容になっています。笑いあり、感動あり、涙あり。大人の方でも十分に楽しんでいただける内容になっていると思います。
渡辺 マークさんは、脚本を書かれたうえ、モーションキャプチャーの現場で監督もされたんですよ。スタジオの隅から隅まで走り回って、役者の皆さんにいろいろな指示を出して。かなり見ごたえのあるムービーができあがりましたので、注目していただきたいですね。
――楽しみにしています。では最後に、読者へのメッセージをお願いします。
渡辺 このインタビューをきっかけに、“ナック”という未知なる可能性を秘めたキャラクターの魅力を、発売までのあいだ、皆さんに少しずつ情報提供していければと思っています。楽しみに待っていただければと思います。
マーク この3年半、スタッフ一同がんばって、いままでになかったユニークなキャラクターを作ってきました。ぜひ、皆さんに見ていただきたいと思っています。
