映画『サイレントヒル:リベレーション3D』山岡晃氏に聞く――好きな音楽は『サイレントヒル』の音楽です

7月12日より全国ロードショー公開の映画『サイレントヒル:リベレーション3D』。同作で音楽を担当した山岡晃氏に、作品の魅力と制作秘話を伺った。

●好きな音楽=『サイレントヒル』の音楽

 2013年7月12日(金)よりTOHOシネマズ 六本木ヒルズほかにて、全国ロードショー公開される映画『サイレントヒル:リベレーション3D』。全世界で累計840万本を超えるセールスを記録している、KONAMIの人気ホラー『サイレントヒル』シリーズの映画化作品だ。同作の音楽を担当しているのは、ゲーム『サイレントヒル』シリーズのプロデューサーでもある山岡晃氏。前作の映画『サイレントヒル』(2006年)についで、音楽を担当する山岡氏に、作品の魅力と制作秘話を伺った。

──映画『サイレントヒル:リベレーション3D』では音楽を担当されたとのことですが、映画の制作陣からは、どのような要望があったのですか?

山岡 前作(映画『サイレントヒル』)でもそうだったんですけど、「こういうふうにしたい」という映画としての作品性は話してくれるんですけど、音楽としての具体的なサジェスチョンというのは、とくになかったんです。「ここのシーンを盛り上げて」とか「怪しい感じの音を作って」というくらい感じでした。

──オーダーが来た時点で、シナリオとか映像などはできあがっていたのですか?

山岡 そうですね。シナリオはできていましたし、CGやエフェクト、ライティングなどは入っていませんが、映像もありました。最初に「ここからここのカットで、こういうふうにしたい」というタイムコードをもらって、映像と合わせながら曲を作っています。映像を出しながら、コンピューターに向かって音を合わせていく感じですね。

──曲数はどれくらいですか?

山岡 エンディングの曲なんかは1曲と数えられますけど、スコアリング(フィルムスコアリング。映像に合わせて作曲すること)の場合は、「ここからここまでで1曲」とは数えにくいです。基本全カットに音をつけていますよ。

──曲は映像の冒頭から順につけていくのでしょうか。それとも印象的なカットから?

山岡 難しそうなシーンとか、後半の印象的な場面とか、注力すべきところからさきに作っていました。そこができると指針になって、後が作りやすくなりますし。

──ゲームを含め『サイレントヒル』シリーズとの付き合いが長いので、もしかして『サイレントヒル』の方法論のようなものができあがっているのでしょうか。

山岡 逆に何も考えないで曲を作ると、『サイレントヒル』になっちゃいます(笑)。あれ(『サイレントヒル』シリーズの音楽)が僕の音楽、というか……。「『サイレントヒル』だから、こうしよう」とは考えないで、自分の好き放題に曲を作ると、ああいう音楽になります。だから、すごく苦労のない作品ですね(笑)。自分で言うのも何ですけど、本当に恵まれています。

──“山岡さんの好み = 『サイレントヒル』”ということですね。

山岡 そうですね。モノ作りをする立場として、こんなに幸せなことはないと思います。モノ作りに関しては多くの人が産みの苦しみを経験されていると思いますが、『サイレントヒル』に関しては、苦しみがまったくないです。ほかの作品では、「こういうふうにしないと(曲と作品が)合わないかな」と考えたりしますけど。

──曲のフレーズは、ふとした瞬間に思い浮かぶものでしょうか?

山岡 今回の映画で言えば、映像をもらって「では作りましょう」と、コンピューターに向かわないと思い浮かばないですね。たとえば、電車に乗っていてポンッと曲が思いつくようなことはないです(笑)。段取りを自分で作らないと、なかなか……。「やるぞ」という気持ちを作らないと、ダメですね。曲が自然に思い浮かぶというのは、あんまりないです。

──そのようにして作った曲が、自然と『サイレントヒル』の音楽になってしまうんですね。

山岡 そうですね。何も考えないでやるのがいいのかもしれないです。自分でも、「苦しむ」と言ったらおかしいですけど、「もうちょっとがんばらないと」と思うんですけど、何も考えないで自分が「好きだ!」という音楽をバーンと投げると、それが『サイレントヒル』の音楽になってしまうというか。

──映画の前作と今作で、曲作りに変化はありましたか?

山岡 前作に比べて、いっしょに作曲しているジェフ(・ダナ)とのリレーション(関係性)を強くしたんですよ。(今作では)ゲームでも使われていた音楽を少なくして、ほとんどが新曲になっています。僕が好きな曲を新しく作って、ジェフとコラボレーションしたというか。コラボレーションすると、自分のものだけじゃない世界観や、表現のしかたが生まれるので、自分も勉強できます。「こんなことができるんだ」、「こんなテクニックがあるんだ」と学べるので、あえてリレーションを強くしました。

──どのような発見がありましたか?

山岡 生のオーケストレーションと、インダストリアルの音楽をマッチングさせたやりかただとかですね。オーケストラのスコアリングは、あまりやったことがなかったので、すごく勉強になりましたね。

──山岡さんにとっての『サイレントヒル』の音楽の核になっているものは?

山岡 “音楽”って、“音を楽しむ”と書きますけど、メロディがあって、コードがあって。歌詞があると、“○○の歌”と言われるじゃないですか。たとえば“恋愛の歌”とか、“楽しい歌”とか。要は音楽で、聴いた人がどういう感情になりたいか、どう受けてくれるかということが大事なので、メロディーや歌詞といった手法じゃなくても、結果的に感情として受け入れられることをできればいいと思っています。たとえば『サイレントヒル』で「怖いクリーチャーが来るぞ」っていうときに、「嫌だ」という感覚を音楽という手法で表現するか、工事現場の騒音のような音で表現するか。必ずしも音楽という手段を使わなくてもいい、というのが僕のやりかたです。

──今回の映画の音楽は、制作にどれくらいの日数がかかりましたか?

山岡 正直に言うと5日くらいなんですけど、みんなに「仕事やってねえじゃん!」と言われちゃうんで、「2ヵ月くらい」と言っています(笑)。ゲームを作っているときもそうですけど、悩まないで一気にやっちゃうんで、めちゃくちゃ早いんですよ。時間をかけちゃうと、最初のエネルギーがなくなっていく気がして。いくつか作っても、けっきょく「やっぱり、これかな」と最初に作った曲に戻るんで……。毎回最初に決めちゃうようにしています。

●ゲームを知らない人にも共感してもらえる映画に

──『サイレントヒル:リベレーション3D』で、とくにお気に入りのシーンはどこですか?

山岡 最後のバトルシーンは、ハリウッド大作という感じで勉強になりましたね。逆に言うと、『サイレントヒル』のゲームとは違うオリジナル感がありました。映画としての映像とのマッチングとか、映像としてすごく見応えのあるシーンでした。

──ああ、なるほど。最後のバトルシーンは盛り上がりますものね。では、作品全体の感想を教えてください。

山岡 今回は、すごくアクション的ですね。それと前作もそうだったんですけど、『サイレントヒル』のゲームをやったことがない人でも、わかりにくいところがないというか。そういう作品になっていると思います。映画を観て、「ゲームってどんなの?」という人が増えてくれるといいな、と思ったりしましたね。

──たしかに、『サイレントヒル』シリーズのファンが喜ぶ要素も入っていますよね。

山岡 そうなんです。背景の作りかたとか、カメラもそうですけど。ヒロインのヘザーも、ゲーム(『サイレントヒル 3』)の主人公そのままですし。ゲームファンにとって楽しいところはふんだんにあります。登場人物もけっこうオールスターなんですよ。『サイレントヒル』シリーズをプレイしている方は、おもしろがって観てもらえると思います。

──ずばり聞いてしまいますが、山岡さんにとっての『サイレントヒル』とは?

山岡 う~ん……大きすぎますよね。つねに(『サイレントヒル』のことを)考えているわけじゃないですけど、生活の中で比重は大きいかなとは思いますね。もちろん『サイレントヒル』は大好きですけど、できればもうひとつ、違うものにチャレンジしたいという気持ちはあります。『サイレントヒル』では、僕の日本人としての価値観をホラーというたとえでやっていますけど、日本人の文化とか、日本の持っている力を何かに置き換えて、もっと価値を得られるような作品を作りたいという思いは、すごく強いですね。

──それはゲームに限らずですか?

山岡 音楽でも、映画でも、すごく思っていますね。ゲームはあるんですけど、ほかにはそういう機会がなかなかないんですよね。とくに映画監督をやってみたいですね!

──おお、最後に読者へのメッセージをお願いします。

山岡 「『サイレントヒル』ってやったことないけど、知ってるよ」という人でも、映画を観て「こんなゲームなんだ」と思って、ゲームに帰ってきてもらえるような作品だと思います。もちろん、モンスターの不可思議な形態も含めて、ホラー映画としてもおもしろい作りになっています。ぜひ、独特の世界観を楽しんでほしいです。



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