情緒豊かに描かれるダークファンタジーの世界

シューティングに風穴を開ける意欲作!? 否、これはある意味で原点回帰だ! 『カラドリウス』プレイインプレッション_13
▲ゲームモードはメインの“ストーリーモード”、ボスと連戦する“ボスラッシュ”、クリアー済みのステージをひとつ選んで遊ぶ“スコアアタック”の3種類がある(※初期状態では、ボスラッシュは未開放)。

 『カラドリウス』は、『雷電』シリーズや『KOF SKY STAGE』などのシューティングを広く手掛けてきた、モスがリリースするXbox 360向けの最新作。王国、錬金術、禁呪、女神といった言葉をキーワードに持つ、ダークファンタジー色の強いゴシックホラーシューティングだ。これまでも本作のさまざまな情報をお届けしてきたが、早速インプレッションをお届けしよう!

 まず、本作の概要を俯瞰して見て取れるのは、世界設定の構築に相当な力が注がれているであろうということだ。昨今のシューティングは初心者向けのモードが搭載されたり、キャラクター性やストーリー性が重視されたりと、間口を広げる努力が当たり前のものになってきている。そんなご時勢であることを十分に含み置いたうえでもなお、『カラドリウス』の世界は鮮烈だ。
 キャッチーな要素としては、キャラクターデザインにヤスダスズヒト氏、サウンドにベイシスケイプというビッグネームを起用。さらに、ほぼフルボイスで展開する会話デモや、キャラクターの衣服が段階的に破壊される“羞恥ブレイク”といったところが目を引くポイントだろう。『カラドリウス』の場合は世界設定も含め、こうした個々の要素が必然性のあるものになっており、しっかりゲームに落とし込まれているのが好印象だ。ゲームの進行は、デモを挟みつつ道中とボス戦があるスタンダードなスタイル。目新しい手法ではないものの、グラフィックのクオリティーの高さ、壮大で耳に残るサウンド、疾走感溢れるステージ構成と迫力の巨大ボス、随所に入る3Dシーンやブラー風の効果線のようなエフェクト等、演出面のトータルバランスがすぐれており、シューティングゲームである以前に、ゲームの世界そのものに魅力を感じる作品となっている。
 あらためてストーリーを紹介すると、本作の舞台となるのは若き王グラハムが統治するパラダン王国。この世界は、数百年前に錬金術師パラケルススが発明した、元素を自在に組み替える“元素制御”の技術によって技術革新の波が到来。数百年に渡って繁栄を続けてきた。その際、パラケルススは世界に闇をもたらす“禁呪”をも発見していたが、禁呪は人の魂を代償とする闇の技法であり、辺境の村に住む始祖――パラケルススの末裔によって封印されていた。しかし、禁呪のことを知ったグラハムは軍事利用をもくろみ、村から持ち出すことに成功。手始めに村を滅ぼしたあと、王の権限を利用し、王都に人民を強制連行しては命を奪い続ける狂王と化してしまう。そんな中、王都で起きている異常事態を察知した3人が、パラケルススの残した航空兵器で王都に飛び立っていくことになる。こうしたストーリーを頭に入れておくと、1面の廃墟と化した村などの風景が、また違った感慨を持って見えてくるかもしれない。

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▲デフォルトキャラはパラダン王国の騎士団団長アレックス(左)。始祖の村の最後の生き残りであるケイ(中央)、癒しの力を持つシスターのマリア(右)。それぞれの意志と目的のために、王国の異変に立ち向かう。
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▲「国は全部俺のもの!」という究極のジャイアニズムを体現する国王グラハム。かつては公明正大な名君だったが……過去に起きた悲劇によって性格が激変してしまった。
▲ゲーム性としては2Dの縦スクロールシューティングだが、3Dで見せる演出や立体的に描かれた背景もあり、迫力満点!

王道の安心感! シューティングゲームとしての出来

 独特の世界観と見せかたが光る本作だが、シューティングとしては意外なまでに正統派だ。同じ縦シューティングでもいろいろなタイプがあるが、本作はステージ道中のザコ敵が撃つ弾は全体的に遅めで、自機の判定も小さめ。この点は若干弾幕シューティング風味で、ある程度は細かい弾避けで対応できる。ただし限界はあるので、出現即破壊を心がけつつ、基本的に敵弾は誘導して大きくかわしていくように心掛けよう。また、画面が横に広いため、敵をすべて撃ち切るのが難しく、中型機など耐久力の高い敵のラッシュには押されやすかった。総合的に見て道中は短いものの、メリハリがあって密度が濃い印象だ。一方、ボスの攻撃はトリッキーなものが多く、体当たりなども仕掛けてくるため、攻撃の順番をきっちり覚えて対処していく必要がありそうだ。アドリブが効きにくく、初見ですんなり抜けるのは難しいが、学習効果がしっかり反映されるタイプなので、プレイを積み重ねるほど楽になっていくはずだ。
 操作方法は1レバー+5ボタン。ボタンはショットとボムのほか、“エレメントシュート”と呼ばれる特殊攻撃が3種類ある。エレメントシュートは強力な攻撃手段だが、3種類それぞれに対応する“エレメントゲージ”があり、使うたびに減少。ゼロになると使えなくなるので乱発は禁物だ。減ったゲージは時間の経過でゆっくり回復するほか、特定の隠しポイントを撃ち込むと出現する“ソル”の取得でも回復する。第一印象としては、5ボタンというのはさすがに多すぎだと思ったが、無理に使う必要はなく、慣れてくるとサブウェポンを切り替えるような感覚で使い分けられる。攻撃力の高い攻撃型、離れた場所を攻撃できる支援型、弾消し効果を持つ防御型に分かれているので、状況に応じて使い分けていこう。
 さらに、エレメントゲージが3つとも50%以上あるときは、画面全体を攻撃する“エレメントバースト”を放てる。少しのあいだ弾消し効果があり、一種のボム感覚で使っていけるのがメリットだ。ただし、あっという間にゲージがなくなってしまうので、使いどころは厳選しよう。

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▲特定の敵が落とす“魔導の欠片”を集めていくと魔導書が出現し、取得すると1UP! 落としやすいので要注意。
▲ボムは全残機で共用なので、ミスをする前に使い切らないと損というわけではない。なお、ミスのたびにストックがひとつ増える。ダメージも高く強力なので、ボス戦など使う場所を事前に決めておきたい。
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▲特定のポイントに撃ち込むと、クリスタル状の物体が出現。取得するとエレメントゲージを回復する。ちなみに名前は“エレメントコア”。
▲エレメントシュートかエレメントバーストで敵を破壊すると、敵1機につきRATEが0.02ずつ上昇。破壊点に倍率がかかるので、スコア稼ぎにも必須だ。RATEはミスまたはステージクリアーでリセットされる。
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▲エレメント系の攻撃を敵に当てると、エーテルゲージが溜まって“エーテルチップ”が生成される。ステージクリアー後には、これを使ってエレメントシュートを7段階に強化可能。稼ぎだけでなく自機強化にも影響するのだ。

“羞恥ブレイク”でキャラクターたちの真の姿を拝め!

 『カラドリウス』の代名詞と言っても差し支えないほどに、ユーザーの話題を独占してきたのが“羞恥ブレイク”だ。これは、自機またはボスがダメージを受けると搭乗者も傷を負ってしまうという、禁呪兵器の業の深さを如実に物語るシステムだ。ぶっちゃけ、“羞恥”という単語の見た目と語感は何やらいかがわしく、とても淫靡な響きを持っている。個人的には、この名称のせいでゲーム自体にイロモノ的なイメージが出てしまっているようにも感じるが、多くのユーザーの興味を引くという点では正解かもしれない。
 “羞恥ブレイク”は、システムとしてはシンプルだ。自機のミス時、またはボスの(形態)破壊時に、条件を満たすと搭乗者の衣服が破れるカットインが段階を追って挿入される。ボスについては、さらに条件を満たすとステージクリアー時にスペシャル・シーンが開放される、というものだ。これによってゲームの流れが止まるわけではなく、イラスト自体も透過しているため、カットインは思ったよりも目立たない。むしろ、じっくり見ることができずに歯がゆさが残るほどだ。しかし、一度表示されたカットインやスペシャル・シーンはギャラリーモードに登録されるので、あとでじっくり凝視するといいだろう(笑)。ちなみに、カットインはオプションで完全に消すこともできるので、硬派を自称する人も安心だ。

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▲搭乗者の痛みが伝わるカットイン。1キャラにつき4枚のグラフィックが用意されている。最後に表示されたカットインが、そのまま画面端に表示される。
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▲スペシャルイラストの開放条件は不明だが、ノーミスでクリアーすればほぼ開放されるようだ。

 難易度について忌憚のない意見を述べると、デフォルトの難易度であるNORMALはかなり難しい、というのが正直な感想だ。とはいえ、難易度は幅広く用意されており、いちばん簡単なPRACTICEは敵が弾を撃ってこない。また、“NO DAMAGE”という項目をオンにすれば、通常弾に対して無敵になる。熱心なシューティングファンほど、こういう仕様で遊ぶのは抵抗があるかもしれない。筆者も最初は意固地なまでにNORMALに拘っていたのだが、ふとしたきっかけでPRACTICEを遊んでみたら、スコアが稼ぎやすくパワーアップしまくるし、隠しステージに行けるし、スペシャル・シーンは開放されまくるしで、じつに楽しかった(笑)。しかも、最初は「死ぬ要素がない」なんて傲慢な考えを持っていたが、そんなことは全然なく、敵への接触や体当たりでミスする機会が意外に多いことに驚かされた。敵の出現パターンを覚えつつ、羞恥グラフィックを開放できるので、精神衛生上も大変いい感じだ。そんなわけで、腕に自信のある人も、これらのモードを1回は試してみることをオススメしたい。なお、1コインクリアー系の実績もあるが、難易度EASY以上が条件になっている。慣れてきたらEASYにシフトするといいだろう。

シューティングの火は煌々と

 今年に入って、にわかにXbox 360のシューティング界隈が活気づいている。2月には『ギンガフォース』が発売され、本日は『カラドリウス』、5月には『怒首領蜂最大往生』と『シューティングラブ。10周年~XIIZEAL&ΔZEAL~』が控えている。次世代機も噂されるこのタイミングのXbox 360に、年の前半だけで4本のパッケージタイトルが登場するというのは、何か運命的なものを感じずにはいられない。これらのタイトルの多くがストーリーや演出に注力している(モードがある)というのも興味深い。
 シューティングはとかく求道的に見られがちで、物語やキャラクターなど不要だと断ずる向きもあるかもしれない。しかし、シューティングというジャンル自体に勢いがあった時代には、「キャラがカワイイから」、「曲がいいから」、「演出がカッコいいから」、「エンディングを見たいから」といった理由で評価され、遊ばれた作品もたくさんあった。もちろん、すべてが名作だったわけではないし、すべてが商業的に成功したわけでもないが、現在よりも多様性があったし、新作が出るたびワクワクしながらコインを投入した覚えがある。各メーカーは自社の主力タイトルとしてきっちり予算と手間をかけてシューティングを開発し、どんどんゴージャスでリッチなものになっていった。決して長い期間ではなかったが、そんな時代は確実にあった。本作はその意味では、新しいものとして突然変異的に生まれたわけではなく、“もっとも熱量があった時代への原点回帰”を果たした作品と言えるかもしれない。

■筆者紹介:バロンマサール
活動歴20余年の古参ライター。クラスの友だち、あるいはバイト先や会社の同僚など、身近な人との会話にあがるゲームと言えば? 昔であれば『ドラクエ』や『FF』、少し前は『モンハン』、いまなら『パズドラ』だろうか。これらと同列のイメージで『グラディウス』の話をする……局地的かもしれないが、筆者の学生時代はシューティングもそのくらい一般的なジャンルだった。今回『カラドリウス』をプレイして、そんな時代の追憶が脳裏によみがえった。


カラドリウス
メーカー モス
対応機種 X360Xbox 360
発売日 2013年4月25日発売予定
価格 7140円[税込]
ジャンル ゴシックホラーシューティング
備考 初回限定版:9240円[税込]