IPとIDの争奪戦!
2013年4月19日、エンターブレインの浜村弘一氏が、業界アナリスト及びマスコミ関係者に向けて行う恒例の講演“ゲーム産業の現状と展望”を実施した。激動のゲーム業界を半期に一度のペースで切り取り、ファミ通調べのマーケティングデータと浜村氏ならではの視点で掘り下げる講演だが、今回はいつもにも増して“加速するゲーム業界”を象徴する内容となった。
講演のテーマは“ID&IP争奪の時代”。新ハードの登場、ソーシャルゲーム市場の激変、そしてスマホアプリの伸長と大きく変わりつつあるゲーム産業を読み解く鍵を「IPとID」であるとし、その争奪戦の激化の先にゲーム産業の未来があるとして講演はスタートした。
まずは家庭用ゲーム機市場の現状分析。2011年と2012年の市場規模を比べると、日米欧の合計で2割ほどダウンしたことがわかる。日本と比べて欧米市場の減退ぶりが際立つが、この原因を浜村氏は「ゲーム機の世代交代が最大の原因。据え置き機がシェアの大半を占める欧米だが、新型機の登場が遅れたことで市場が硬化している。日本は携帯ゲーム機が主流なのでその影響はさほど大きくはなかった」と分析。業界が端境期にあることを指摘しつつ、「ソーシャルやスマホアプリの伸長が著しく、家庭用ゲーム機がそれに押されている。しかしプレイステーション4、Xbox 360の次世代機が登場することで、ゲーム市場全体はさらに大きくなる」とし、そこで大きな意味を持ってくるのが今回のテーマである“ID&IP”だと強調した。その背景には、ゲームソフトの普及がパッケージ型からノンパッケージ型(デジタル配信)に移行しつつあることがあり、「各プラットフォームは有力IPをいかにそろえるかだけでなく、いかに多くの顧客IDを獲得できるかを競う時代にもなってきた」と浜村氏は講演の前提を語った。
まずは、2012年度の国内家庭用ゲーム機市場について。それぞれのハード陣営のテーマを、任天堂は“切り札は世界一のIP群”、ソニーグループは“業態変更を目指してハード屋からサービス業へ ID獲得が最大の課題”、マイクロソフトを“NEXTへ向け着々と準備中”とし、改めてIP&IDの重要性を強調。それぞれの分析を行った。
任天堂陣営は、ニンテンドー3DSの好調と、新ハード・Wii Uの発売が話題となった。ニンテンドー3DSも一時期は勢いが鈍ることもあったが、ハードの値下げや相次ぐキラータイトルの投入により一気に日本市場におけるメインストリームとなった。ハードの発売から98週目で国内累計販売台数が1000万台を突破。ニンテンドーDSの89週にはわずかに及ばなかったが、国内累計約2200万台が普及するプレイステーション2よりも早いペースとなっている。それを後押ししたのが、超ビッグヒットとなった『とびだせ どうぶつの森』。今年1月の決算において“ダウンロード販売が70万本に達した”との発表もあり、これを指して浜村氏は「驚異的な数字。今後のニンテンドー3DS用のソフト販売方法に一石を投じる結果」と驚きの表情を見せた。とくに浜村氏が注目したのが、“ニンテンドー3DSは他のハードと比較して子どもやファミリー層がユーザーの中心である”という事実。「デジタル配信の普及が進んでいることが、この事実からもわかる」とした。しかし、これだけのヒットを記録していても、社会現象となったニンテンドーDSの普及スピードには及んでいない。ニンテンドーDSが大ブレイクした背景には、老若男女を虜にした『脳トレ』に代表される“Touch!Generations”があったが、ニンテンドー3DSにおいてはそれほどこのユーザー層に訴求できていない。現在、こういったカジュアルなゲームはスマホにもあふれていることもあり、“ゲームらしいゲーム”が今後のカギを握っていることにも浜村氏は言及。そういう意味では、この夏に発売される『モンスターハンター4』などはとくに重要な位置づけにあるわけだ。
一方、新発売のWii Uだが、現状では伸び悩みの印象を受ける。実際、発売直後こそ歴代の任天堂ハードと比べてそん色ない出足だったが、現状の普及スピードは『スマブラDX』のあったゲームキューブよりも遅くなっている。その原因を浜村氏は「ソフトラインアップ」であると指摘。驚異的なヒットとなったWiiのときのような革新的なタイトル(『Wiiスポーツ』など)がまだ少なく、「2画面の特徴、Wii Uならではのよさをアピールしきれていないのではないか」と浜村氏は分析する。しかし新たな動きも見られ、3月のGDCで発表された『Nintendo Web Framework』は、iOSやAndroid向けにHTML5で開発されたアプリがWii Uでそのまま動作するという試み。これは開発の敷居を下げるものとみられ、「将来的なソフト増加が期待される」(浜村)。もうひとつ、新しい試みの作品として『ポケモンスクランブルU』が4月24日に発売に。これは全国のポケモンセンターに設置されるカプセルトイの自販機と連動したソフトで、ここで購入したフィギュアがそのまま、ゲーム内に登場して遊べるというものだ。たとえばActivision Blizzardでは、『Skylanders』で成功しており、北米市場だけでシリーズ累計6億ドルを販売した実績がある。また今後の展望として、世界的な潮流となっているサードメーカーのマルチプラットフォーム供給が、HDマシンではないWiiには適さなかったと指摘。これがWii Uに世代交代したことにより対応可能となり、任天堂は自社タイトル+サードメーカーのソフトという、ニンテンドー3DSのヒットにつながった戦略と同じ構図を構築できることとなる。そしてなにより、浜村氏が強調したのが、「Wii Uにはまだまだ、世界一を誇る任天堂の強力なIPが控えている」という事実。『ポケモン』、『ゼルダ』、『Wii Fit』のようなタイトルが出揃ってくれば、「強力IP群のパワーで、ゲームジャンルにおけるディズニーとして大成功を収める可能性は十分にある」と結論付けた。
続いてソニーグループ。苦戦を強いられていたPS Vitaが、2月28日に大幅な価格改定を発表。しかも、値下げ近辺に発売された『閃乱カグラ』、『ファンタシースターオンライン2』、『ソウルサクリファイス』といったタイトルが相次いでヒットを飛ばし、ハードのロンチ時に迫る勢いを取り戻した。浜村氏もこれを評価し、「コアゲームファンの集まる携帯ゲーム機として、ニンテンドー3DSとは違うポジションでさらに上を目指してほしい」とエールを送る。しかし、同じように序盤に苦しんだPSPにも現状では遠く及ばないペースなのも確か。 とはいえPSPの起死回生となった『モンスターハンターポータブル』も、発売前からキラータイトルであると騒がれていたわけではない。PS Vitaにも同様のきっかけがほしいところだが、浜村氏はふたつの点に注目していると語る。ひとつは、マルチプラットフォームタイトルのPS Vitaへの移植。唯一のHD対応携帯ゲーム機であることから、プレイステーション3やPCからの有力タイトルの移植が容易で、これがタイトル数の増加につながると分析している。もうひとつが、『サムライ&ドラゴンズ』や『ファンタシースターオンライン2』のような、いわゆる“フリートゥプレイ”のタイトルだ。基本無料で、都度課金によって収益を得るスマホアプリやPCで主流のスキームだが、『ファンタシースターオンライン2』ではPC版、PS Vita版あわせて250万IDを記録しているという。「いまやセガの稼ぎ頭のひとつで、ビジネス的にも成功を収めている。今後PS Vitaにはスマホで大ヒットした『拡散性ミリオンアーサー』のようなタイトルもスタートしており、大いに期待できる」と浜村氏は強調する。
一方、緩やかな右肩上がりを続けてきたプレイステーション3だが、国内累計1000万台を目前にして少しペースが落ちてきた。そして見えてきたのが次世代機、プレイステーション4だ。その性能を浜村氏は、開発者の発言として「グラフィックが進化し、プレイステーション3に比べて約8倍の性能がある。しかしPCのレベルを数年にわたって凌駕できるものではなくなった」と指摘。あえてそれを選んだ理由を、独自CPUの開発にはコストがかかりすぎること、そして、むしろPCライクなハードにすることでソフト開発を容易にする狙いがあると切り込んだ。そんなスペック以上に注目されるのがさまざまなデバイスで、コントローラにはタッチパッドやライトバー、ヘッドホンやマイクの機能が搭載。また、プレイヤーの動きを認識するPS4eyeも高性能で、使用者の顔の位置なども検知するという。「ゲーム内のキャラがプレイヤーの顔を見ながらしゃべる……なんてことも可能になるのでは」と浜村氏は期待の言葉を寄せた。またソーシャルな機能の強化が図られているのもプレイステーション4の特徴で、ゲーム中に録画した動画をすぐにネット上にアップできたり、スマホとの連動も計画されているとのこと。そんなプレイステーション4に参入を表明しているメーカーは多く、国内外の大手はほぼ網羅されていると見て間違いない。
また浜村氏は別の角度からもソニー陣営の戦略に注目。それは、ソニー傘下となったGaikaiの技術を使ったクラウドゲーミングで、「あらゆる過去のゲームを、ゲーム機を問わず遊べるようになるかもしれない」と言及。とくにPS Vitaに関しては、プレイステーション4のすべてのゲームをリモートプレイで遊べてしまうという発表もあり、「両機のあいだでボーダーがなくなることを示している。もう、マルチプラットフォームとかHD化という問題ではなく、ソニーのゲーム機の垣根がなくなるのかもしれない」とした。ここから導きだされる結論は「ソニーにとっては、ハードの技術的進化は大きな問題ではない」ということ。それを利用したネットワーク上でどんなサービスを構築するのかがいちばんの課題になると強調し、「そういう意味で、ソニーにとってもっとも大切なのはサービスを利用してくれる顧客のID。ゲーム機もスマホも、電子書籍も家電もすべて、ソニー製品は同じIDでつながることができる」(浜村氏)。
任天堂、ソニーグループの戦略をまとめて、浜村氏はこう語った。
「IPを武器にゲームバトルで勝負する任天堂。IDの獲得に未来を賭けるソニー」
ここに、近々発表されると噂の次世代Xboxを擁するマイクロソフトが加わる。浜村氏はXbox陣営の戦略を分析し、「マイクロソフトのいちばんのライバルはAppleとグーグル。ネットワークサービスでどんな提案ができるのかにかかっており、それは次世代のクラウド時代を生き残る鍵になるはず」とまとめた。
海外ゲーム市場規模は、冒頭に記したとおり著しく数字を落とすこととなった。その象徴として取り上げられたのが老舗メーカー、THQの破綻。この、有力タイトルを多数持っていたパブリッシャーの破綻に始まり、ディズニーはルーカスアーツのゲーム部門の閉鎖を発表。欧州では小売店の閉鎖が相次ぎ、英国ではじつに小売店の45パーセントが店を閉めた。そんな、ハードの世代交代の狭間にある欧米のゲーム市場だが、2013年の有力ソフトラインアップは目を見張るものがある。なかでも、前作が2200万本以上という驚異的な大ヒットを飛ばした『Grand Theft Auto』の最新作『V』には全世界が注目。浜村氏も「今年中の発売が確実な中、欧米ゲーム市場の追い風になるのは間違いない」と力強く語った。一方で、欧米市場の減少の要因にハードの世代交代があるのは間違いないが、もうひとつの要因に「デジタル配信の台頭がある」と浜村氏は言う。たとえばエレクトロニック・アーツのデジタル配信の割合は、2013年3月期第2四半期を見ると3億2400万ドルに達し、これは全体の45.6パーセントにあたる数字(モバイル、PC含む)。これを指して浜村氏は、「まだメジャーではないが、家庭用ゲーム機のデジタルシフトは加速度的に進んでいる」とし、続けて「プレイステーション4や次世代Xboxでもデジタル配信は重要な役割を果たす。もはや次世代では、家庭用ゲーム機とネットワークプラットフォームのボーダーもなくなる」と結論付けた。
ネットワークプラットフォームについて
ある意味ここからが、本講演の主題かもしれない。テーマは“ネットワークプラットフォーム”で、ソーシャルとスマホアプリの分析が行われた。
隆盛を極めたソーシャルゲームプラットフォーム各社の売上高推移は、Mobageは好調をキープしたがGREEが第2~第3四半期に前期比でマイナスが出た。そんな中、MobageのDeNAはGREEほどの落ち込みをみせていない。この状況を浜村氏は「イメージアップ戦略に注力した結果」であるとし、プロ野球チームの買収や陸上チームの創設などが好影響して歯止めがかかったと語る。「本来、DeNAはネットサービスの会社。ソーシャルゲームが大きくなればそこに注力し、ほかにチャンスがあれば開発リソースと運営ノウハウを活かしてそっちに進出する。そこに余裕があった」(浜村)。ソーシャルゲームプラットフォームでは世界を席巻したZyngaも思わぬ苦戦。一時期、Facebookのソーシャルアプリシェアでダントツの1位を記録していた同社も、経費削減のため11タイトルのサービス終了を発表した。日本法人の突然の閉鎖もあり、苦しい台所事情が伺える。
そんな中にあって、突如現れたふたつのモンスターが『LINE』と『パズル&ドラゴンズ』である。LINEは無料通話を武器に市場を開拓し、当初はスタンプなどのコミュニケーションツールで課金を行っていたが、2012年7月に『LINE GAME』のサービスを開始。あっという間にユーザー数は1億4000万にも達した。浜村氏はLINEの躍進を見て「世界中に1億4000万IDを持ったも同然の数字。GREEやMobageができなかったことを成し遂げてしまった」と驚愕。加えて、最近では『LINE POP』などのカジュアルなゲームだけではなく、『EASY DIVER』などの本格的なコンテンツも増えてきている。賞金1000万円を争う“LINE GAME CONTEST”というゲームコンテストも実施し、「スマホ上のナンバーワンゲームプラットフォームも夢ではない」と浜村氏は言う。
そしてもうひとつ、驚異的な勢いで普及しているアプリが『パズル&ドラゴンズ』だ。わずか14ヵ月で1200万IDを獲得した『パズドラ』は、アプリ単体で大きな収益をもたらしたのはもちろん、それ以上の役割を果たしたことに浜村氏は注目した。それが、ガンホーの自社アプリと『パズドラ』がコラボすることで生まれる相乗効果だ。現在、ガンホーのアプリでは『ケリ姫スイーツ』も200万ダウンロード突破とヒットを記録しているが、その大きな要因が『パズドラ』の1200万IDに向かって『ケリ姫スイーツ』を送客できたこと。ゲーム内バナーはもちろん、ゲーム内コラボで『ケリ姫スイーツ』の存在を訴求できたことにより、一気にユーザーを増やすことに成功したというわけだ。これは、フィーチャーフォン時代にDeNAやGREEが作ったスキームと同じで、ここから導き出されるのは「強力なIPがひとつあればプラットフォームにすらなれる」(浜村)ということ。『パズドラ』と同様に強力IPを軸にプラットフォーム展開をする動きが増えてきており(コロプラ+やmobcastなど)、「強力IPがある→送客→プラットフォーム化、という動きと同様に、たくさんのID→送客→プラットフォーム化、という動きも。ここから、IPとIDの役割が同義になりつつある」と浜村氏は語った。ちなみに、海外においては『パズドラ』以上の勢いで急成長しているアプリもある。『Temple Run2』がそれで、わずか13日間で5000万ダウンロードを記録したというから驚かされる。
本講演の最後に語られたのが“クラウドゲーミング”について。すでに2000年からサービスを行っているGクラスタを筆頭に、スクウェア・エニックスの“Core Online”やNVIDIAの“Project SHIELD/NVIDIA GRID”など、それぞれの運営会社が独自のサービスを展開しており、各プラットフォームに家庭用ゲーム機の人気作品も顔を出し始めている。その中で浜村氏が特筆したのが、GPUの世界ナンバーワンメーカー、NVIDIA。得意の画像処理技術とサーバー処理を組み合わせたシステムにより、クラウドゲーミングでは最大の壁であった遅延を最小限に抑えることに成功。浜村氏はこれを、「アクションゲームなどでもっとも大きな問題になる遅延を解消できている。そのレベルは家庭用ゲーム機と遜色がないほど」と評価する。また、PCゲーム市場で存在感を強めている“Steam”にも言及。登録者数は世界累計5000万以上、同時接続者数660万人を誇るサービスで、このたびクラウドサービスも発表。テレビにつないで低スペックPCでゲームが遊べるという規格は、「スマートTVの時代を前に、いきなりすべてのリビングにSteamの端末が整うのも同然。すでに5000万ものIDを持っているということは、そういうこと」と浜村氏は言う。
この動きに合わせるように、Android対応のゲームデバイスや新ハードが一気に名乗りを上げてきた。NVIDIAのクラウド技術を詰め込んだ携帯ゲーム機“Project SHIELD”、Steamに最適化されたPCベースのハードウェア“Steam Box”、低価格で端末を販売し、性能の向上した新機種が毎年投入される“OUYA”などが相次いで登場。ちなみに日本では、2月にKDDIからテレビとスマホを組み合わせたシステムである“Smart TV Stick”が発売となっている。こういった一連の動きを見た浜村氏は、「もはやゲームハード乱立の時代。ハードを出していればゲームプラットフォーマーという時代ではなくなっている」とした。
そしてこの日のまとめとして、浜村氏はつぎのように語った。
「家庭用ゲーム機は新型機の登場により、市場規模を大きくしていきます。ネットワークプラットフォームはプラットフォームの数を増やしながら、右肩上がりの成長を遂げる。両者を合計したゲーム市場はそれぞれ熾烈なIP、IDの争奪戦を繰り返し、それが激化するのにともなってユーザー数、コンテンツ数、提供者の数もどんどん増えてゆくことになります」
さらに、浜村氏は続ける。
「この話だけだと、プラットフォームだけが熾烈な争奪戦を繰り広げるかに見えますが、そうではありません。別の角度から見ると、こうなります」
「デジタル配信ということで考えれば、プラットフォーマーとしてのプレイヤーの数はもっと増える。まさに、IPとIDの異種格闘技戦の様相を呈する。これはゲームプラットフォームと、映像、音楽配信プラットフォームのボーダーがなくなることを指し、人を楽しませるIPという意味では完全に同じラインに立ったということを示している。しかしこれまで、ゲームIPと映像系IPを同じ尺度で測ることはありませんでした。そこで、ゲームとテレビドラマを一線上に並べ、1週間にどれだけそれぞれのコンテンツに接触したのかを14000人にアンケートで調べてみました」
そこで公開されたのが、“エンタメコンテンツTOP30「TVドラマ&ゲーム」:週間延べ接触時間”というランキング。2013年3月第1週と第2週において、アンケート対象者がテレビドラマとゲームにどれくらい接触していたかをアンケート形式で調査したものだ。まずは“全ユーザー(15歳~69歳)”の結果が発表されたのだが、大河ドラマを筆頭に13位までをテレビドラマが占め、ゲームは14位に初めて『LINE POP』がランクイン。以下、16位に『パズドラ』、18位に『LINE バブル』とこのあたりからようやく、スマホや家庭用ゲーム機の人気IPが入ってくるようになる。
浜村氏は続いて「もう少し年齢を絞ってみます」と言い、ゲームと馴染みが深いと思われる15歳~49歳に絞りこんだランキングを公表した。すると、上位に食い込んでいたドラマのラインアップがガラリと変わり、さらにゲームも6位に『LINE POP』、8位に『パズドラ』とTOP10に食い込むようになり、さらに22位に『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』、27位に『ファンタシースターオンライン2』という、家庭用ゲーム機やPCのオンラインゲームが飛び込んできた。この結果を見て浜村氏は、「予想通り、ゲームが上位に食い込んできました。『LINE POP』や『パズドラ』、『ファンタシースターオンライン2』などの健闘も目立ちます」とし、さらに「この年齢層で、とくにゲームに積極的な男性に絞るとこのような結果になります」と続け、この日最後のスライドを公開した。
その結果はなんと、並み居るテレビドラマを押しのけて『パズドラ』が1位という結果に! 以下、『LINE POP』が4位、『ドラゴンクエストX』が13位、『ファンタシースターオンライン2』が17位に。以下、ソーシャルゲームや家庭用ゲーム機のソフトがこれでもかとランクインしており、存在感を示す結果となった。これを、浜村氏はつぎのように分析する。
「なんと、もっとも接触率の高かったIPはテレビドラマではなく、『パズドラ』となってしまいました。この結果を見ると一見、無料系のアプリが強いように思えますが、『ドラゴンクエストX』はパッケージを販売していることに加え、月額課金もしているタイトル。ハードルはかなり高かったはずです。さらに、女子のランキングをみれば『とびだせ どうぶつの森』なども上位に食い込んでいます。おそらく、家庭用ゲーム機のキラータイトルである『モンスターハンター4』などが発売されれば間違いなく上位に入ってくるでしょうし、それは『メタルギア』や『FF』も同じでしょう」
そして浜村氏は、つぎの言葉でこの日の講演を締めくくった。
「ゲームプラットフォームはIPとIDを争奪しながら、右肩上がりの成長を遂げていきます。しかしゲームIPは、家庭用ゲーム機、スマホなどの枠も超えて、ドラマやアニメ、スポーツなどのコンテンツと戦わないといけない時代になった。ユーザーの時間をいかにして奪うことができるのか。ゲームはほかのエンターテインメントコンテンツとないまぜになりながら、ユーザーの余暇の争奪戦を始めつつ、さらに拡大を目指すことになる。ますます拡大するゲーム市場。ぜひ期待しつつ今後の行く末を見ていってください」(浜村)