「ユーザーの立場からゲーム業界を盛り上げたい」日本ゲームユーザー協会会長・平井善之氏インタビュー

2012年12月3日に発足した、お笑いコンビ・アメリカザリガニのボケ担当としても知られる平井善之氏を会長とする“日本ゲームユーザー協会”。同協会設立のきっかけや今後の展望について、平井氏にインタビューを行った。

●「このゲーム、おもしろいからやってみて!」と伝えるために

 2012年12月3日、お笑いコンビ・アメリカザリガニのボケ担当としても知られる平井善之氏を会長とする、“日本ゲームユーザー協会”が発足(※発足時のニュースは→こちら)。“テレビゲームユーザーのコミュニケーションの場を作ること”を第一の目的に活動を開始した。ファミ通ドットコムでは、同協会設立のきっかけや今後の展望について、平井氏にインタビューを行った(2013年12月13日実施)。


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平井善之氏
Hirai Yoshiyuki

日本ゲームユーザー協会会長。お笑いコンビ・アメリカザリガニとしてタレント活動も行っている。かなりのゲーム好き。

●発足のきっかけは「現状を変えたい」という思い

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――2012年12月3日に、日本ゲームユーザー協会の発足が電撃的に発表されたことに驚きました。協会のホームページにもいきさつは掲載されておりますが、改めて協会発足のきっかけ、経緯を教えていただけますか?
平井 そもそもの発端は、「パッケージゲームが売れない」という会話が、僕の周りで頻繁に行われるようになったことです。いまの時代、スマートフォンを始め、いろいろな形のゲームが出ていますから、それだけ売り上げも分散しますよね。消費する側の給料が一気に上がるわけではないですし。そういった状況の中、パッケージのゲームを、7000円いくらのお金を出して購入し、おもしろくなかったらショックですし、悲しいですよね。この状況について、「何かできないかなあ」と、ぼんやり考え始めたんです。子ども時代から振り返ると、僕はゲームに育ててもらったと思っているんですね。コンシューマー(家庭用)ゲームに。いま大人になって、一生懸命やれば、もっとユーザー側からもゲームを盛り上げられるんじゃないかと考えて。ゲームメーカーやメディアの皆さんと組むのではなく、ユーザーの側から何かしたいな、と。

――正直、そう思われても、弁護士を立てて協会を設立するというのは、ハードルが高いと思うのですが……。
平井 何か組織を作りたいとはぼんやり考えていて、それと同時に、Facebookで“ゲームについて熱く語る会”を立ち上げたんです。この会に、けっこうな人が集まってくれたので、「Facebookを活動の場にしよう」と考えました。それから、いろいろな人に相談する中で、「協会にしたらいいんじゃない?」とアドバイスされまして。協会を作るなら、名前を決めなくちゃ。僕らは日本のゲームユーザーだから、“日本ゲームユーザー協会”でいいんじゃないか……そうやって協会ができあがりました。いま思えば、“大宇宙ゲームユーザー協会”にしておけばよかった、と思っています(笑)。それは冗談として、“何を持って協会とするのか”という部分にこだわってしまったことで、当初の志と逆になってしまったんですね。ゲームクラブにしておけば、部活動でよかったんですけれども。

――平井さんはタレント活動をされていますから、協会を立ち上げずとも、多くの人に声を届ける活動ができたのではないかと思いますが。
平井 ひとりだと、第一に、心細いですよね。長続きできるのかも不安ですし。自分の仕事が忙しくなって、活動を止めてしまうのがいやだったので、周囲の人たちを巻き込んでいったんです。自分は持っていないスキルを持っている人……ウェブのデザインや、アンケート調査ができる人にも参加していただきたかったですし。

――協会を立ち上げることで、活動に責任を持ちたい、というお気持ちもあったのでしょうか。
平井 責任を持つ。めちゃくちゃいい言葉ですね。確かに、そうかもしれません。

――これは辛らつな質問かもしれませんが、協会を立ち上げてから、いろいろと批判を浴びる形となってしまいましたよね。
平井 もともと、「このゲーム、おもしろいぞ」と伝える場を作るために協会を作ったのですが、先ほど述べたように、協会というからには、「きちんとしなきゃ!」と、みんな固くなってしまって。憲章を作ったり、プレスリリースを出したのも、この“きちんとしよう”という思いからだったんです。ところが、この行動が多くの皆さんに誤解を与えてしまったようで……。当初、ホームページに”非営利の団体です”という説明を設けていなかったということもあり、「営利目的の組織なのでは?」と思われた方もいるかと思いますが、そうではありません。また、”中抜きをするんじゃないか”と具体的に危惧を述べられていた方もいらっしゃいましたが、僕らが抜けるのはコンセントぐらいで、そういった活動はいっさい行いませんので、ご安心ください。

――平井さんが誰かにだまされているのでは? という声もありましたが……。
平井 ストレートなご意見ですね。どちらかというと、僕が運営メンバーをだましている、という感じです(笑)。「お前、ゲーム好きって言ってたよな」と声をかけて集まってもらいましたから(笑)。「平井がそうしたいと思ってるならやるよ」と賛同いただいた話でもありましたので。

――誰かの思惑があったわけではなく、あくまでも平井さんご自身が自主的に立ち上げた協会というわけですね。
平井 そうですね。ゲームメーカーさんやメディアさんと組んでいるわけではありません。いっしょに何かをやるという方向性じゃないんですよね。協会が独立して何かを考え、実行していこう、という発想ですから。''

――改めての確認となりますが、日本ゲームユーザー協会は非営利の団体ということですね。
平井 はい、そうです。協会業務内容の“ゲームに関するコンサルティング業務”という項目を読んで、「ゲームメーカーに営業をかけるつもりなのでは?」と誤解された方もいるようなのですが、これは、友だちに「このゲーム、いいよ!」と伝えることを指しているんです。「きちんとしなければ」と考えた結果、“コンサルティング”という言葉を選んでしまい、また“業務”という呼称を用いてしまって。ほかの憲章内容もそういったことから掲げさせているものであって、決してユーザーの代表であるとか、営利目的というわけではありません。

――協会の活動を誤解している方々からは、さまざまな声が寄せられたのではないかと思いますが……。
平井 いろいろな意見をいただきました。真面目に行ったがゆえに、その部分が違った形で捉えられてしまい、「真面目にやらなければよかったね」という反省があります。また、協会のメンバーとは「わかりにくい文章を書いた自分たちが悪いよね」と話しています。ゆくゆくは、ホームページに記載されている内容を、もっとわかりやすく、当初の志に基づいたものにしていく予定です。

――ゲームファンがいて、その方が知らない、おもしろいゲームを伝えられるつながり、場所を提供しよう、というのが志としてあるわけですね。
平井 そもそもそれなんですよ。「お前は知らないだろうけど、このゲームおもしろいぞ」というつながりですよね。「お前が言うなら買って遊んでみようかな」と言い合える関係といいますか。協会を作ろうという最初の動機は、そこから生まれたんです。おもしろいものを見つけたら、みんな、誰かに伝えたくなりますよね。そうやってファンの声が伝わっていって、“おもしろいものだから、ゲームが売れる”という流れを作りたいな、と。

――協会の運営メンバーは、公式サイトに名前が掲載されている、16名の方々なのでしょうか?
平井 はい。もともと3、4人で協会設立の話をしていたのですが、どんどん輪が広がっていきました。なかには高校生のメンバーもいます。「高校生のみんなに、ゲームへの意識を聞いてきます!」と、頼もしい発言をしてくれていますよ。僕らにはなかなかできないことなので、どんどんやってほしいですね。

――平井さんは、メンバーの皆さんと直接の面識があるのですか?
平井 面識がない人はいませんね。もともとの友人もいますが、Facebookで知り合ったメンバーとも顔を合わせて話をしています。いっしょに行動するなら、まず会いたいですから。実際に、いまも週1回のペースで会議……と言いますか、集会のようなものを開いています。みんな、おもしろいやつらですし、ゲームに対して深い愛情を持っています。彼らの素性はしっかりとわかっていますし、なかには過去に世の中を騒がせた人もいますが、「協会でそんなことやったら、おしりペンペンですよ!」と伝えてありますから(笑)。

――なるほど。運営メンバー以外の、会員に関してお話をうかがいたいのですが……。
平井 じつは、会員の定義が決まっていないんです。ゲームをプレイしたことがある人は、ゲームユーザーですから、ゲームユーザー全員が会員でいいんじゃないか……と思っているので。そうすると、会員って、あってないようなものですよね。でも、協会は会員がいなければ成り立ちませんから、とりあえず、この運営メンバーが会員ということになりますね。

――定義ということで、もうひとつおうかがいしたいのですが、協会ではゲームの定義をどう捉えられているのでしょうか? たとえばすごく乱暴に言えば、ゲームは文化、娯楽、嗜好という定義づけもできると思うのですが……。
平井 そうですね……難しいですね。でも、いろいろな捉えかたはしているんですよ。文化として捉えつつ、娯楽でつながっていくコミュニケーションという言いかたが近いかな……。多岐にわたって考えていますが、“テレビゲームでくくる”ということは重要視しています。「ボードゲームもゲームじゃないか」という声もあるとは思いますが、その声には「ごめんなさい、いまはテレビゲームを中心に活動してます」とお答えさせていただきます。また、もうすでにボードゲーム協会は存在してまして、テレビゲームの協会はなかったんです。まあ、そういった部分も説明不足なんですよね。今後、こういったところもしっかりとお伝えするようにしていきます。


●協会の今後と目指すものについて

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――世間には、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を始め、さまざまなコミュニケーションの手段がありますが、その中で、協会の輪をどう広げていこうとお考えですか?
平井 自分たちなりの、新しいSNSができたなら、それがいちばんベストなのですが、現状はFacebookを中心に活動していきます。Facebookは、ほかのSNSと比べて、素性がわかるものですので。

――“Miiverse”や“プレコミュ”など、ゲームメーカーもそれぞれコミュニケーションの場を提供していますが、どのような住み分けを考えられているのですか?
平井 僕たちは、ゲームを購入していない人たちに、「ゲームを購入すると、こんな楽しみがあるねんで!」と教えてあげたいんです。MiiVerseやプレコミュを利用する前の段階への誘導と言いますか。そのうえで「“Miiverse”や“プレコミュ”がこっちにあるよ!」と伝えていきたいんですね。誰でも1回はゲームを遊んだことはあると思いますので、昔はゲームを遊んでいたけれど、いまは遊んでいない人たちに向けて「帰ってこいよ! 楽しいゲームがいっぱいあるよ!」と伝えたい。ですので、まずはネットを中心に活動しつつ、顔を合わせる場も作っていきます。昔、友だちの家にファミコンを遊びに行った感覚で、ゲーム好きな人たちが交流できる場を作りたいんです。

――いっしょに遊ぶ誰かがいる空間の心地よさも、ゲームの楽しさのひとつですからね。
平井 顔を合わせて、人となりがわかれば、たとえばその人が書いたレビューを読んだとき、「この人がこういう感覚で楽しめるなら、自分でも楽しめそうだな」と判断できると思うんですよね。ただのレビューではなく、オススメしている人がどんなゲームが好きなのかなど、その人のパーソナルに焦点を当てたうえで、「このゲームやってみて」と伝えたいと考えています。数値では伝わらないものと言いますか、感覚的なものと言いますか……。雑誌とかテレビでは言えないことも、僕らだったらサラっと言える部分もあると思いますし。また、動画だとうまく伝えられるかも、と思う部分もあるのですが、著作権の問題やネタバレになる可能性もありますし、いろいろ難しいところがありますよね。

――イベントなどの開催も考えていらっしゃるのですか?
平井 ゲーム大会はやりたいですね。ただ、非営利とはいえ、メーカーさんに無許可でやってはいけないと思いますし、イベントの模様を配信してもいいのか確認しなければいけませんし……課題はいろいろあります。イベントを行うなら、資金がどうしても必要になりますよね。企業の皆さんに、運営していくためにご協力いただくこと自体は、協会の理念と反することではないので、この点については、それこそユーザーのみんなに相談させてもらって、いい方法を考えていきたいですね。もちろん、これは利益を求めるということではありません。

――あくまでも利益を追求するつもりはないということですね。
平井 そうなったら、おもしろくないですよね。利益を求めたら、ユーザーの協会ではなくなりますし、それは仕事でやるべきことです。ただ、将来、協会の規模が想像以上に大きくなった場合は、協会の運営方法については再考しなければいけないかもしれません。

――今後、平井さんがタレントとしてゲームのお仕事に関わることはあるのですか?
平井 あると思います。ただ、“タレント平井善之”と“日本ゲームユーザー協会会長平井善之”は違いますので、平井個人では仕事、日本ゲームユーザー協会会長としてはボランティアとなっちゃうんですよね……。もしかしたらゲームの仕事はしないべきかもしれません。自分でも、その点に関するスタンスは決めかねているので、「違う!」と思ったら、皆さんからのご意見を教えてほしいですね。

――ちなみに、現状の協会活動資金は、どのように用意されているのですか?
平井 いまは、ポケットマネーでやりくりして活動しています(笑)。みんなで集まったときの飲食代とか、高校生に払わせるわけにはいかないので、社会人がお小遣いを切り崩して支払っていますよ。

――ところで、公式サイトでは、アンケートサイト“Qzoo”を運営している株式会社ゲインと合同で、ゲームに関するユーザーの意識調査を公開していますが、この意識調査も続けていく予定ですか?
平井 そうですね。いまは、2013年1月の期待のゲームについてですとか、わりとスタンダートな質問をしているんですけど、本当にやりたいアンケートは違うんですよ。

――と言いますと?
平井 本当は、“どの武器が強そう? ランキング”のようなものがやりたいんです。“どのゲームの世界で生きていきたい?”とか。それで、「30代男性は、ゲームの世界に逃避したい人が70%」なんてデータが出たら、読み物としてもおもしろいな、って。それから、現状はQzooに登録している人でなければ回答できませんが、ゆくゆくは誰でも回答できる形にしたいと思っています。いまは、僕らができる形でアンケートを取るためにはQzooを使うしかない、という状況ですので。とはいっても、JGUAページからQzooに登録した方は峻別してますので、JGUA経由の入会者はゲームアンケートだけが届くようになっていますので安心して参加してもらいたいです。


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――協会の最初の活動は、早朝から家電量販店に並んでWii Uを購入すること(リポートは→こちら)でしたが、つぎの予定はもう決まっているのですか?
平井 Wii U購入については、「協会の活動がそれ?」というご意見もいただきました。でも、僕らはユーザーとして、このような活動もしていきたいと思っています。並ぶの、楽しかったですよ。子どもに予約を頼まれていたのに、予約していなかったお父さんが来て、「この列で合ってますか?」という会話を交わしたり。つぎは、みんなでWii Uで遊ぶパーティーを開きたいですね。

――いろいろお話をうかがいましたが、「これだけははっきりと言っておきたい」ということはありますか?
平井 営利ではない、ということですね。“営利”という言葉もよくないんでしょうが……けっきょくはボランティアですから。じつは、協会のバッジを手作りで制作したのですが、“このバッジを持っている人はみんな会員だぜ!”というのでもいいと思っているんです。あとは、“新日本ゲームユーザー協会”とかが発足されたらおもしろいですよね(笑)。ぜひ対立してみたいです(笑)。昔のゲームのノリというか、とにかく楽しくやっていきたいと思っています。

――では、最後にゲームファンへのメッセージをお願いします。
平井 自分がおもしろいと思ったゲームを、隣りにいる人に伝えてください。「これ、プレイして!」って。「俺の最高のゲームはこれだ!」と、胸を張って伝えてください。そうしたら、僕らは「マジで!? やる!」と買いにいきますから。協会での活動を通じて、皆さんが昔、友だちとゲームを遊んでいたときの感覚を取り戻すお手伝いができればと思っています。