ソーシャルゲームなどの急伸によりゲーム市場全体は好調
2012年10月25日から、都内お台場の日本科学未来館にて開催中のデジタルコンテンツ EXPO(10月27日まで)。同イベントでデジタルコンテンツ協会から、“2011年の日本のコンテンツ産業の市場規模と動向”と題された講演が行われたので、その内容を使用しよう。ちなみに、コンテンツ産業とはアナログ、デジタル両コンテンツを含み、以下で示されるデータは、デジタルコンテンツ協会の集計データによるもの。
まず、2011年はどんな年だったか振り返ってみる。リーマンショックから立ち直りかけ、成長が期待された年だったが、東日本での大地震発生、欧州での金融不安など、経済的には厳しい一年となった。コンテンツ関係では、地上波アナログ放送から地上デジタル放送へ移行し、スマートフォンの普及が急速に進んだという特徴があった。
そんな2011年のコンテンツ産業の市場規模は、12兆460億円。これは前年比からは1.2%のマイナスとなる。だが、東日本大震災を考慮すると、微減にとどまった、というのがデジタルコンテンツ協会の見立てだ。
12兆460億円の内訳は、静止画・テキストが4兆9879億円、動画(パッケージソフトや映画、テレビ放送など)は4兆4900億円、音楽・音声は1兆3326億円、ゲームが1兆2354億円。これを前年比でみてみると、ゲームのみが大きく増加しているという。
動画は普及期に入ったブルーレイ、配信系の伸び率高し
動画(パッケージソフトや映画、テレビ放送など)は、DVDセルや映画興行収入、ステージ入場料収入は減少、動画配信とテレビが増加。前年伸び率は0.2%減。パッケージソフトは前年比4%減ながら、ブルーレイセルが大きく増加。ブルーレイは普及期に入ったことで、この傾向は2012年も続いていくものと思われる。動画配信(ネットワーク配信・フィーチャーフォン配信)は、9月にHuluがサービスを開始、12月にはYoutubeの有料動画配信もスタート。新規事業者の参入と既存事業者のサービスの拡大などもあり、コンテンツの流通量と消費者の認知拡大が進んだことで、こちらも前年比から大きく収入を増やし、2012年も同様の傾向になるだろう。
映画は前年比17.9%減と大きく落ち込んだ。これは東日本大震災の影響、前年(2010年)が単価の高い3D映画のヒットもあって好調過ぎた、ヒット作があったが大ヒットするまでには至らなかった、といったことがおもな要因だと推測される。一般的には邦画は興行収入50億以上、洋画100億以上で大ヒットと言われているとのことだが、2011年は邦画トップの『コクリコ坂から』でも44.6億円、洋画トップの『ハリーポッターと死の秘宝 PART2』も100億円には届かず。ちなみに、2012年の映画は非常に好調とのこと。とくに『BRAVE HEARTS 海猿』が80億、『テルマエ・ロマエ』は50億、『おおかみこどもの雨と雪』は40億円を突破するなど、邦画が絶好調の一年と言えそうだ。
テレビ放送は前年比1.7%増。東日本大震災でCM収入が減って落ち込んだものの、夏以降は回復し、盛り返した。
音楽・音声はスマートフォンの急速な普及でインターネット配信が好調
インターネット配信、コンサート入場料収入以外は減少し、前年比3.4%減。パッケージソフト(ほとんどCD)は2.7%減となっているが、例年より減少率は少なかった、というのが特徴。CDのシングルと音楽モノのDVDが増加したことが要因。ちなみに、2011年のCDシングルランキングを見ると、AKB48系、嵐を筆頭としたジャニーズ系、そしてK-POP系がランキングのほとんどを占め、2011年はその3者で支えられた1年と言えそうだ。2012年もこの傾向が強いという。インターネット配信売上は増加しているが、フィーチャーフォン向けは減少。これはスマートフォンの急速な普及によるもの。
2011年はパッケージゲーム売上をオンライン配信ゲーム売上が逆転
パッケージゲームは前年比7.5%減、アーケードゲームが1.0%減となったものの、オンラインゲームとフィーチャーフォン向けが前年比増。ゲーム全体としては、前年比5.8%増となっている。パッケージ減の要因は震災の影響により、販売延期などが響いたかたち。この年、ニンテンドー3DSが発売されたが、「新しいハードが出た直後は、様子をするユーザーも多い」(星合)ということも、伸び悩んだ要因のひとつだろうとのこと。アーケードゲームの売上減小は、震災後、レジャーは自粛傾向にあったが、身近なレジャーとして夏までは好調。だが、節電対策により、夏以降の売上は減少したことがは大きな要因。
一方、オンラインゲーム、フィーチャーフォン向けはゲーム売上は絶好調。そして2011年は、ついにパッケージソフトの売上をオンラインゲームの売上が上回った。
電子書籍が急伸
静止画・テキスト(雑誌・書籍、新聞、電子書籍など)は、前年比3%減。全体的に紙メディアは前年比減少、配信系は増加傾向にある中、フィーチャーフォン向けの配信売上は前年比5.1%減少した。雑誌販売は6.6%減少でついに売上は1兆円を下回った。一方で書籍販売はミリオンセラーが多数あり、前年比0.2%減にとどまる。ただ、ミリオンセラーに恵まれないと落ち込む可能性はある。
電子書籍はPC向け、フィーチャーフォン向けに大きく伸びており、この電子書籍に関してはフィーチャーフォン向けが圧倒的なシェアを誇っている。ただ、急速に普及が進むスマートフォン(PC向け)の影響を受けて、前年比では初めてマイナスに転じている、というのが2011年の特徴だ。
2011年、大きく伸びたのは電子書籍、ブルーレイ、そしてオンラインゲーム
以上がコンテンツ別の内訳。前年比からの伸び率がとくに高かったのは電子書籍、ブルーレイ、オンラインゲームとのことだ。市場規模でみると、テレビや新聞、雑誌など従来メディアの市場規模はまだまだ大きいものの、コンテンツのデジタル化も進む。デジタルコンテンツ市場は7兆6444億円となっており、コンテンツ市場全体の63.5%を占めるまでになった。パッケージからネットワークへのメディアの置き換えも加速。それにともない、オンライン流通は今後も増えていくことは確実と言えるだろう。
【2011年のコンテンツ産業まとめ】
・市場規模は12兆460億円。震災からの回復は予想より早く、前年比1.2%減にとどまった。
・デジタルコンテンツ市場は7兆6444億円と伸び、コンテンツ市場の63.5%を占めるまでになった。
・地デジ化とスマートフォンの急速な普及があらゆるコンテンツに影響をおよぼした
【過去10年間の動向変化でみると……】
・パッケージからネットワークへ、メディアの置き換えが進む(ゲーム市場のネット流通化率は34.5%)
・コンテンツのデジタル化が進む