異色のコラボレーションを語る

 レッド・エンタテインメントから発売中のプレイステーション2用ソフト『スカーレッドライダーゼクス』。同作に登場するキャラクターたちによる、キャラクターソングCDが発売中だ。そんなキャラクターソングCDシリーズのひとつとして、有名アーティストとのコラボレーション楽曲でメインスタンスとサブスタンスがデュエットを披露するという『スカーレッドライダーゼクス ドリームコラボレーションCD』が2011年12月28日よりスタート。現在、シリーズ第5弾までが発売中となっている。参加アーティストは、磯江俊道氏、岡部啓一氏、志倉千代丸氏、目黒将司氏、LOVE+HATE氏、山岡晃氏の6人。今回、ファミ通.comでは、同シリーズの楽曲を手掛けた6人のアーティストたちのインタビューを行った。6人がどのようにして、各楽曲を作り上げたのか。注目してほしい。

志倉氏や山岡氏など『スカーレッドライダーゼクス』のキャラクターソングCDを手掛けた作曲家陣にインタビュー_01
磯江俊道氏
代表作:『デモンベイン』シリーズ、『Lamento』

志倉千代丸氏
代表作:『シュタインズ・ゲート』シリーズ

山岡 晃氏
代表作:『サイレントヒル』、『BEMANI』シリーズ

目黒将司氏
代表作:『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』ほか、『ペルソナ』シリーズ、テレビアニメ『ペルソナ4』など

岡部啓一氏
代表作:『NeiR replicant』、『鉄拳』シリーズ

※左から順に


LOVE+HATE氏(写真未掲載)
代表作:『仮面ライダー電王』の『Climax Jump』や『Double-Action』など

——今回のコラボレーションの話を聞いたときの印象というのはどのようなものでしたか?
志倉千代丸(以下、志倉) こうしてお会いすること自体初めての方もいらっしゃるような状況なんですけれど、お名前は存じていたメンバーだったので、なんというか「やってやらないと!」という感じはありましたね。競争をしているわけではないんですけれど、たぶん皆さん、心のどこかでは「負けてはいられないな」という何かがあったと思うんです。いつもとは違う闘争心に駆られる感じを、レッドさんが仕組んだんだろうなと思うんですけれど、まんまと釣られましたね。

——皆さんも闘争心を煽られるような感じだったんでしょうか?
山岡晃(以下、山岡) 僕自身、“乙女ゲー”というジャンルが初めてだったので、ある意味チャレンジという意識でしたね。自分自身、チャレンジしてみたいという意識は強くありました。競争ではないですけれど、きっとみんなこういうことをやってくるんだろうなということは感じていたので、皆さんがやってきそうな曲調はあえて外そうとしました。

——ちなみにいまさらなんですが、皆さん面識はあるんですか?
岡部啓一(以下、岡部) 僕は全員初めてですね。どうも、皆さん、初めまして(笑)。お名前はもちろん存じ上げておりましたけれども、実際にお会いするのは初めてです。

——作曲する際に、まわりの皆さんのことを意識されましたか?
岡部 志倉さんが仰られたように、ライバル心ではないですけれど、被らないようにというか、負けないようにというか、気負いしないようにがんばろうと思いましたね。

——ほかの皆さんはコラボの話を聞いたときはいかがでしたか?
目黒将司(以下、目黒) 僕は基本的に来るもの拒まずで何でもおいしくいただこうと。……思っていたのですが、デモを作り始めたときに「これマズイよな……」と気づきました(笑)。皆さん、たぶん内に秘めたる競争になるんじゃないかと思ったんですよね。

志倉 つまりこれはコラボじゃないんですよ。“レース”なんです(笑)。

——なるほど(笑)。特撮系で活躍されているLOVE+HATEさんがコラボメンバーのひとりというのも特徴的だと思いました。
LOVE+HATE 僕の場合、あえて競争ということは考えず、自分が思ったものをそのまま吐き出そうという純粋な想いでデモを上げさせていただきましたね。

——作品が乙女ゲーであるということは意識はされませんでしたか?
LOVE+HATE とくになかったんですよね。設定資料を見せていただいたら、男のキャラクターふたりがなんやかんやという感じだったので、『仮面ライダー電王』っぽくしようかなと。『電王』のときのイメージと『スカーレッドライダーゼクス』の台本などから湧き出たイメージとを合わせて作り上げました。

——磯江さんはコラボレーションに関して、どう感じられましたか?
磯江俊道(以下、磯江) わくわくするような。ウチのスタッフに皆さんのファンがすごく多くて、社内では話題になったりしました。ですから、あえて作風や皆さんの楽曲を聴かずに独自のやりかたでいこうと思っています。

——自分の色を出していくと。
磯江 そうですね。盛り込んでいこうと思っています。

——曲を作るときにプロデューサーの方やディレクターの方からリクエストはあったのでしょうか?
志倉 皆さんに違うオーダーがいってると思うんですが、疾走感のあるバンドサウンドみたいなオーダーでしたね。以前に『SRX』で楽曲を書かせていただいたときも、その路線だったので、スムーズに入り込めると思っています(※インタビュー時点ではまだ作曲をされていないタイミングでした)。

山岡 僕はきっと変な音楽を望まれたのではないかな、という空気を読みましたね。ホントはカッコいいのがやりたかったんですけれど、望まれているのはこっちだと思って、変な路線をやりました(笑)。ユーザーさんの期待を裏切る感じで。

目黒 僕はたぶん『ペルソナ』で呼ばれたのかなと思っていたので、『ペルソナ』に似たような感じに寄せましたね。『ペルソナ』と『SRX』は、世界観が近いというか、ユーザーが重なりそうかなと思ったので。

——岡部さんの楽曲は事前に聴かせていただいたんですけれども、かなり異色な感じでしたね。
岡部 (笑)。いろいろと打ち合わせをさせていただいた結果、ムード歌謡っぽいものもいいかも、という話になりまして。ただ、あまりネタっぽくなりすぎるのもどうかなというのはありますから、ネタっぽい要素と音楽としてちゃんと聴ける部分のギリギリのところをやったつもりです。あとは、歌い手さんが今回最年長グループだとお伺いしていたので、ちょっと落ち着いた感じにしたいな、というのもありました。

志倉 なんか、でも、自分が召喚された理由というのを考えますよね。どういう理由で召喚されたんだろうと。それを突き詰めると自ずとどんな曲が求められているかもわかってきます。

——男性キャラクターふたりのデュオみたいなことで工夫した部分はありますか?
磯江 ハーモニーだったりとか、どちらが主線でもおかしくないようなものを作りたいと思っています。

——ボーカルがふたりだと言われたときはどんな印象でした?
磯江 あまり構えずに、というか。何も考えずにやってしまいました。

——ゲーム音楽を作るのとキャラクターソングを作るのとで違う部分はありましたか?
山岡 とくに違いはないですよね。ゲーム音楽を作っているときは、聴く人がこの音楽をゲーム中で聴いてどういう印象を受けるのかを考えています。今回の企画でも同じで、自分が曲を作って下野さんと高橋さんが歌ったものを、ファンの人がどういう風に受け取るか、ということを想像しながら作りましたね。

——基本的には受け手がどう感じるかということを考えていらっしゃるということですか?
山岡 いつもそうですね。受け手がどんなふうに思うのかを考えています。自分が好きなものや自分がカッコいいと思って作ったりすると、得てして違ったりするんです。だから、なるべく聴く側のことをイメージして作曲しています。その姿勢はゲーム音楽を作るときと変えていません。

磯江 ゲーム音楽といってもいまは何でもアリな感じですしね。むしろふつうの音楽業界のサウンドを作るよりも自由にやれるんです。今回のキャラクターソングCDでも、その自由な感じは楽しめると思います。

——なるほど。それでは最後にひと言ずつメッセージをいただければ。
LOVE+HATE ヒーローをメインに置いたゲームってありそうで、じつはあまりなかったと思うんです。イセンスものではいろいろあったと思いますが。この『スカーレッドライダーゼクス』のように、僕らが幼少の頃に見た“ヒーロー像”というものを主軸に据えたゲームが、ミリオンで売れる時代がやってきてほしい、と個人的に思っています。そういう意味で、この作品にはすごく期待していますし、なんらかの形で僕が参画できる機会がありましたら、微々たる力ですけれどもご協力させていただければなと思っています。

磯江 『スカーレッドライダーゼクス』は魅力的なコンテンツですし、関わっている方もすごくおもしろいし、もっと広がりを持たせることのできるコンテンツじゃないかと期待しています。イベントやステージなどをみんなでやれたらおもしろいと思いますし……。どうですか、やりませんか?(笑)

山岡 僕自身、今回の経験から、また下野さんと高橋さんとやってみたいと思いました。声優さんは、歌ももちろん上手いんですけれど、キャラクターを作り込んで歌ってくださるので楽しかったです。もうひとつふたつやってみたいなと思いました。キャラクターソングというのは、すごく楽しい仕事だなと思ったので、続けてやれればと感じています。

目黒 自分の番が回ってくるまでに、「ライブとかできたらいいですね」って言おうと思っていたので、磯江さんの発言を僕の発言にしてもらえませんかね?(笑)

磯江 失礼しました(笑)。

目黒 いえいえ、とんでもないです(笑)。本作では、サブスタンスの名前が楽器の名前だったりするので、皆さん自分が担当したキャラクターに合わせて演奏するというのもおもしろいんじゃないかと思いますね。僕はリッケンバッカーだったので、リッケンバッカーのギターを買って演奏するとか、ほかのがどう当てはまるかわからないですけれど(笑)。

岡部 ライブももちろんですが、これだけのすごい面子が集まったのだから、もっと皆さんで関わって作れる何かがあるとおもしろいな、と思いました。今回はそれぞれに“被らないように”と意識して曲を作るだけだったので(笑)。ユーザーさんに対しての希望をひと言言わせていただいてもいいですか? ユーザーさんからの意志表示というのは、やはり売れるかどうかということだと思うんです。生々しい話で申し訳ないですけれど(笑)。ユーザーさんが買ってくれたら、「つぎも出してみようか」と、制作サイドもどんどん話が転がっていくと思うので、意思表示として「いいな」とか、「もっと聴きたいな」と思っていただけるのであれば、ぜひCDを買っていただきたいというのが正直なところですね。

——では最後に志倉さんから。
志倉 この流れは、ここでまとめなきゃいけない感じですかね?

——そうですね。うまいこと。

志倉 うまいこと……(笑)。キャラクターが6人いて、サブスタンスが6人いて、こうやって作家が6名集められてというのは、ひとつのモチベーションになりました。さっきも“召喚”という言葉を使いましたけれど、召喚というと作家としてカッコいいというか、モチベーションが上がるんですよね。製作費云々とか、ギャラ云々じゃなくて、違うところでモチベーションが上がるスイッチがあると思うんですよ。その意味で、“召喚された感”によってモチベーションが上がったのは事実で、このメンバー6人が、それぞれどんな楽曲を作り上げて、どんな6曲が揃うのかが個人的にすごく楽しみです。作品がヒーローモノなので、ちょっとしたヒーローみたいな気分なんですよね。作家としてたくさんいる中でピックアップされた6人ですから。僕個人としては、自分の曲が最後のリリースとなるので、最後に恥じないものをちゃんと作ろうって思っています(笑)。あとは『SRX』が今後アニメとかメディアミックスとして発展するなら、そのときは俺らを外すなよ、と。いまのうちに既成事実を作っておこうかな(笑)。

■Scared Rider Xechs DREAM COLLABORATION CD Vol.1 Roaring to the moon
発売日:2011年12月28日発売
価格:1680円[税込]
出演:カズキ(CV.高橋広樹)×リッケンバッカー(CV.岡本信彦)
作曲:目黒将司

■Scared Rider Xechs DREAM COLLABORATION CD Vol.2 tuning NOISE -星屑カケラたち-
発売日:2012年1月25日発売
価格:1680円[税込]
出演:ヨウスケ(CV.鈴木達央)×フェルナンデス(CV.竹本英史)
作曲:LOVE+HATE

■Scared Rider Xechs DREAM COLLABORATION CD Vol.3 Pride
発売日:2012年2月29日発売
価格:1680円[税込]
出演:ユゥジ(CV. 近藤隆)× ディバイザー(CV. 小山力也)
作曲:岡部啓一

■Scared Rider Xechs DREAM COLLABORATION CD Vol.4 純愛★ファンタスチック
発売日:2012年3月28日発売
価格:1680円[税込]
出演:ヒロ(CV.下野紘)× デュセンバーグ(CV.高橋直純)
作曲:山岡晃

■Scared Rider Xechs DREAM COLLABORATION CD Vol.5 Don't shed any tears
発売日:2012年4月25日発売
価格:1680円[税込]
出演:ヒジリ(CV.KENN)× エピフォン(CV.藤原祐規)
作曲:磯江俊道

■Scared Rider Xechs DREAM COLLABORATION CD Vol.6 Dear Chroma
発売日:2012年6月27日発売予定
価格:1680円[税込]
出演:タクト(CV.宮野真守)× レスポール(CV.浪川大輔)
作曲:志倉千代丸