収入、生活、引退後のキャリア……。

 日本でも格闘ゲームの方面で徐々に増えてきたことで、昨今話題になることが多い“プロゲーマー”という存在。FPS(一人称視点シューティング)やRTS(リアルタイムストラテジー)では、以前からさまざまなプロゲーマーたちが世界最強の座を競ってきた。
 スポンサードされて大会に出場して賞金を争い、ゲーミングデバイスのメーカーなどから製品の提供を受けたり、開発に協力したりするプロゲーマーとは、どんな人々なのか? 
 2012年4月29日、30日に上海で行われたGeForce LAN会場で、『WarCraft3』を主戦場に、昨年もWCG(World Cyber Games)で優勝するなど、華々しい活躍をするJune“Lyn”Park選手に話を聞いた。

プロゲーマー歴6年の強豪選手Lynに聞く、世界で戦うプロゲーマー・ライフ 【NGF2012】_02

――GeForce LANでは『StarCraft2』で決勝に残れず残念でしたね。
Lyn 最近は実力も上がってきたので、3位以内には入れると思っていたのですが、運がありませんでした。それも大事な要素ですし、仕方がないですね。

――SK Gaming、Wemade FOXと有名チームを渡り歩いているLyn選手ですが、プロゲーマー歴は何年で、いま何歳ですか?
Lyn 87年生まれです。『WarCraft3』がメインで、WCGなどメジャーな大会で勝利を収めてくることができました。プロゲーマーとしての経歴は6年です。最初に中国のWorld Eliteというチームに所属したあと、SK Gaming(スウェーデン)、WeMade FOX(韓国)と所属して、その後中国のPandaに入ったんですけども、3ヶ月間給料が払われなくて……お金のことはそこまで気にしていないのですが、チームの人の無責任な感じが自分と合わないのもあって、数カ月前に脱退しました。いまはほかの中国のチームいくつかと契約について話をしているところです。現時点では無所属ということになりますね。

――プロゲーマーとして6年間世界で戦うというのは大変なことだと思うのですが、自分が長けている部分はなんだと思いますか?
Lyn 頭と才能(笑)。えぇと、自分はものすごく練習する方ではないですが、ありがたいことに『WarCraft3』でも『StarCraft2』でもいい成績を両立できています。韓国のプロゲーマーは本当に一日中ゲームの練習をやるのが一般的ですが、自分はゲームを楽しみながら、好きな事もやるといった感じですね。
 ふたつのゲームをプロゲーマーとして戦うのは、とてもストレスが溜まります。時々、『WarCraft3』を止めて『StarCraft2』に一本化して、すべてをそこに打ち込めばもっといい成績が収められるんじゃないかと思うこともあるのですが、将来のことを考えると中々そうもいきません。
 韓国のプロゲーマーはすごい若い内からプロになって、本当にそれしかやらないので、多くの選手が辞めた後に何もできなくなってしまうんです。自分はそうなるのは嫌なので、語学を勉強したり、いろいろやっています。

――ほかのジャンルのプロゲーマーに話を聞くと、反応の衰えなどもあって、自分があと何年トップクラスで戦えるかを考えていたりします。Lyn選手はどう思いますか?
Lyn 最近はゲームのユーザーインターフェースがとても良くなったので、年齢と関係なくなってきている気がします。実際、韓国の『StarCraft2』プレイヤーのNes Teaという選手は今年30歳になりますが、とても強いです。彼のような選手も今後いっぱい出てくるのではないかと思います。自分があとどれだけ行けるかという点ですが、『WarCraft3』はオーダーがほとんど決まってしまっている状態で、試合運びとコントロールさえうまくやれば勝てるゲームになってきているので、まだまだやっていける自信があります。『StarCraft2』の場合は韓国に専門のプレイヤーがたくさんいて、彼らは一日十時間以上やっているので、ふたつのゲームをやっているとそう簡単には勝てません。ですので、ちょっとわからないですね。

プロゲーマー歴6年の強豪選手Lynに聞く、世界で戦うプロゲーマー・ライフ 【NGF2012】_01

――練習の話が出ましたが、練習していない時は何をしていますか? これまで聞いた人だと、筋トレしたり、別のゲームを気晴らしにやるって人もいたんですが。
Lyn 歌が好きなので、カラオケですね。いまは中国に住んでいるので、中国人の友達とカラオケに行きます。ラルク・アン・シエルとか日本語で歌いますよ(笑)。韓国のカラオケだとメニューにお酒がないのですが、中国では飲めるんです! あとは彼女も中国人なのですが、ドライブに行ったりもします。

――彼女の話が出たところでせっかくなので聞いてみたいのですが、その、プロゲーマーってモテるんでしょうか。以前、韓国でeスポーツスタジアムを取材した時に、選手の出待ちがものすごかったので……。
Lyn 自分ではそんなに有名な選手だとは思ってないし、そういう気持ちもあまりないので……。韓国でも、あんまり街を歩いていて声をかけられたりするわけじゃないんですよ。すれ違った時に「あ、あの人……」と言われたりすることはありますが。一番声をかけられることが多いのは“おじさん”ですね。韓国で『WarCraft3』をやっている人って、成人男性なんですよ。まぁ韓国のファンに差し入れをもらったり、メッセンジャーのアドレスを教えてきた人もいましたが、そのぐらいです。
 中国では……大会ごとに熱心に追いかけてきてくれる女の子などもいて、花束をもらうこともありました。で、インタビューで「結婚はいつごろしたいですか?」と聞かれて「いまはまだいいです」と答えたら、ファンの女の子に「幸せです」と言われて……その後、中国人の彼女と付き合っているという記事が出たら、その子は見かけなくなりましたね。

――プロとアマチュアの違いとは何だと思いますか?
Lyn お金をもらっているかもらっていないか、本当にそこです。大会で自信を持って戦えるか、緊張せず実力を発揮できるかとか、ほかにもいろんな面もあると思いますが、まずはそこに尽きると思います。
――ちなみに、一番ベストな時って年収はいくらぐらいになるんですか?
Lyn 自分の場合は『WarCraft3』で一番稼いでいて、最高の時は賞金だけで1億ウォン(約700万円)ぐらいで、チームからの給料を足すと1億5000万ウォン(約1050万円)ぐらいでしたよ。
――おお、すごい。今後のご活躍を期待してます!