【VIPインタビュー】レベルファイブの現在と未来、そしてAI時代の作り手のありかたについて日野晃博社長が語る

【VIPインタビュー】レベルファイブの現在と未来、そしてAI時代の作り手のありかたについて日野晃博社長が語る
 『レイトン教授』や『イナズマイレブン』、『ファンタジーライフ』、『妖怪ウォッチ』など、数多くの人気シリーズを世に放つレベルファイブ。同社の代表取締役社長/CEOである日野晃博氏に、レベルファイブの現在と未来、そしてAI時代の作り手の在りかたについて訊いた。
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日野晃博氏ひの あきひろ

レベルファイブ代表取締役社長/CEO

昨年はレベルファイブにとって大きなターニングポイントになった

──近年のレベルファイブの動きとしては、昨年に発売された『ファンタジーライフi グルグルの竜と時をぬすむ少女』(以下、『ファンタジーライフi』)と『イナズマイレブン 英雄たちのヴィクトリーロード』(以下、『イナズマV』)が非常に大きなヒットとなりました。昨年を振り返ると、どのような感じでしょうか?

日野
 たいへんでした(笑)。でも、じつは『ファンタジーライフi』と『イナズマV』だけでなく、今年発売を控えている『レイトン教授と蒸気の新世界』(以下、『レイトン』)も昨年に発売する予定だったんです。

──発売ラッシュどころの騒ぎではないですね(笑)。

日野
 かなり常軌を逸した状況ではあったのですが、それくらい各タイトルの発売が渋滞していたのも事実です。ですが、『ファンタジーライフi』のヒットを目の当たりにして、やっぱり丁寧にひとつずつ出していくべきなんだと改めて思ったんです。昨年の時点で『レイトン』も完成には近づいていたのですが、無理に出すのは違うなと。いまは会社の力を分散させるのではなく、『イナズマV』のクオリティーを上げることに全力を注ぐべきだと思いました。そういう方針転換があって、ここ4、5年くらいではいちばん大きなターニングポイントとなる年でしたね。

──『ファンタジーライフi』は全世界同時発売が実現したのもヒットにつながっていると思いますが、ローカライズの体制も拡充されたのでしょうか?

日野
 レベルファイブのローカライズチームは、人の出入りなどもあって、なかなか組織として体制を整えることができていませんでした。そんな中で、レベルファイブのファンにはなじみのある人物だと思いますが、“もーちゃん”がローカライズの中心的存在としてがんばってくれていて、彼女の存在が世界展開に対してのキーファクターになっていますね。

──よく公式番組のMCとして登場される方ですね。

日野
 もともとはプランナーとして入社していて、プランニングの内容にも深く理解があるうえで、3ヵ国語を話します。もちろんひとりですべて翻訳できるわけではないのですが、彼女がニュアンスを監修しつつ、外部の翻訳会社やスタッフを使ってローカライズ全体を回しています。

──番組を拝見していても、レベルファイブの作品への愛を感じます。

日野
 そうなんですよ。それが本当に大きくて。ですから、ローカライズに対しての熱意もすごくて、そのこだわりの深さに面食らってしまうスタッフもときどきいます(苦笑)。そんな彼女に引っ張られて、ローカライズはだんだんよくなってきている感じです。まだまだこれからではあるのですが。

──開発の体制についてもうかがいます。パンデミックの影響でリモートワークへの対応というのもあったと思うのですが、現在はどのような体制なのでしょうか?

日野
 原則的には出社です。一部の人は、事情によってリモートワークを継続という感じですね。

──ゲームメーカーや開発スタジオの多くは出社の体制に戻しているように見受けられますが、やはり直接のコミュニケーションがないとモノ作りの骨子を作りにくいのでしょうか?

日野
 そうですね。ただ、いちばん大きいのは情報漏洩に対するリスク管理です。ゲーム開発にはPCだけでなく特殊な機材も使いますから、それらを社外で使うこと自体、セキュリティー上のリスクになります。もっと言えば、スタッフがリモート会議で話していた内容が家族に聞こえてしまって、それを子どもが学校で話してしまう、といったこともありえるわけです。そうした事態はリモートの環境ではなかなか防げないので、やはり出社してもらうのがいちばん安全ではありますね。

──現在、オフィスは福岡をメインに、東京オフィス、大阪オフィスの3拠点という感じでしょうか。

日野
 はい。今回、大阪オフィスを大幅に拡大することになりまして、より明確に3拠点という感じになりますね。

──いま従業員は全体でどれくらいいらっしゃるのですか?

日野
 320人くらいでしょうか。

──会社の規模はこれからも大きくされていくのでしょうか?

日野
 僕らは無理に拡大しようとはしていないんですよ。求人自体はもちろん積極的に続けますが、より慎重に人材を見ていくつもりです。ある程度の才能ややる気というのも大事なのですが、多くの作業がAIに置き換わっていく中で、最終的には思想を問うというか、けっきょくはゲームが好きなのか、レベルファイブの作品がどれだけ好きなのか、というのが重要だったりするわけです。そういう意味では採用基準はきびしくなっていくのですが、ありがたいことに新卒の応募は倍増していると聞いています。これもやはり、作品の評判がよかったということなのかなと。

──日野さんは現在も入社面接はされるのですか?

日野
 基本的には最終面接だけなのですが、今年は一次選考にも参加しました。というのも、いま“人を選ぶ”ということはどういうことなのか、改めて基準を決めたいと思ったんです。表面的な技術なんかより、思想のようなものを本当に大事にしていかないと、会社に入ってもらうべき人を最初の面接で落としてしまうんです。その“人を選ぶ”というのは、いま所属しているスタッフに対しても問うていて、会社のコンテンツに対してどれくらい理解があるか試験をやっているんですよ。

──試験……ですか?

日野
 そうです。コンテンツ知識試験のようなものを実施して、高得点を獲得した社員はキャリアに関係なく給与がXXXXX円くらい上がります。

取材者一同 (驚愕の表情)

日野
 たとえ新人であっても、そこは公平にやります。それで、この額を将来的にXXXXX円まで引き上げようと思っているんです。

取材者一同 (さらに驚愕の表情)

──記事では具体的な金額は伏せると思いますが、スタッフのモチベーションに大きく影響しそうな額ですね。

日野
 ゲームを作っていて、つくづく思うんです。ある仕事を誰かに任せるとなったときに、そのタイトルの知識を持っているかどうかは本当に重要です。もし知識が足りていなければ、業務をサポートしたりチェックするメンバーが必要になります。一方、知識があれば、その人が中心人物となって業務を効率化できます。つまり、会社の作品への知識や愛は、もはや“能力”であるとみなしているわけですね。そして、我々の企業としての価値とも言えます。先ほど金額に驚かれていましたが、会社のコストとして考えれば、それ以上の効率化ができていることになります。

AI時代だからこそ人の思いを問う

──日野さんはかねてよりAIについて積極的に発言されていて、日本のエンタメ業界は生成AIに対する拒否反応がいまだに強くあるとおっしゃっていましたね。

日野
 僕はプログラマー上がりでエンジニア気質もあるので、純粋に技術の進歩がすごいなと思うんですよ。でも、AIは仕事に直接活かすというより、趣味でいろいろ遊んでいる感じです。映像とかグラフィックが作れる系統のAIばかり使っています。

──AIの活用は、今後のゲーム開発のカギになっていくと思いますか?

日野
 それは間違いないです。いま、ゲームを1本作るのに5年とかかかりますよね。いわゆるAAA(トリプルエー)作品だと10年も珍しくはないです。10年って……と思いますよね。そのプロジェクトに関わった人は、10年間実績なしですから。AIを活用すれば5年かかったものが2年にできる、3年かかったものが1年でできるとなるなら、それはみんなのためになるでしょうと。生成AIに対する拒否反応というのは、やはり人間が作ったものに対してワクワクしたり感動したいということですよね。だから、人間がちゃんとやればいいんです。

──AIを使うことが、人間の作業ではないという意味にはならないと。

日野
 紙とペンで描いていた作業が液晶タブレットに置き換わったり、エクセルでの自動計算を否定する人はいませんよね。AIも同じように人間が使うツールとして使いこなせばいいんです。AIが生成したものをそのままポンと出すのはもはやクリエイティブではないので論外ですが、AIが作ったものを人間が評価して、人間が作ったものと同等のものが最終的に作れればよいと。先ほどの話にも通じますが、AIが生成したものの出来栄えを判断できるのはその知識を持った人であり、AIを使うからこそ、そうした人材がいちばん大事になってくるわけです。

──生成AIは権利や法整備の問題であったり、その評価についても定まっていないこともあって、肯定派も否定派もいます。漠然とした拒否反応も含めて、過渡期な気がしますね。

日野
 もとより、うちも人の感性を挟まずして世の中に出すという使いかたは想定していません。AIを相手に壁打ちして、新しいものの発想の種にするというような使いかたがメインかなと思いますね。“効率化のためにツールを使う”というのが我々のクリエイティブの基本です。でも、AIに対する感情はゆっくりと変わっていくのではなく、AIによって生み出された何かが世の中にいい印象を与えるようなイベントが起きた瞬間にガラリと変わるような気もしますね。

──社員に対しても、AIをうまく活用しながら自分の感性を入れていく、といった教育はされているのでしょうか?

日野
 それをもう、口が酸っぱくなるほど言っています(笑)。AIのセミナーも定期的に実施しようと計画中です。

──日野さんの過去の記事を調べたのですが、2019年の堀井雄二さんとの対談のときに、AIに興味があると話されていました。

日野
 そんなころから言っていました?(笑)

──その対談では、AIとの会話の可能性やおもしろさについて語られていましたね。

日野
 『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』のAIの話ではなかったようですね(笑)。

──4月10日に実施されたオンラインイベント“LEVEL5 VISION”のタイトルが“匠”となっていましたが、これはAIにも関連するのでしょうか?

日野
 僕が“匠”にしようと先導したわけではなく、スタッフが出してくれたアイデアのひとつが“匠”でした。では、なぜ“匠”という言葉に引っかかったのかというと、やはりAIの時代が来るにあたって、“人の匠”とは何だろうと考えさせられたのです。人のクリエイティブとAIの違いとは何だろう、人間らしさとは何だろうかと。そんなことを考えることが最近は多くて、いまにピッタリな名前なのではないかと思ったのです。

──それがイベントのテーマになったわけですね。

日野
 発表の内容自体は“匠”という単語と直接的な関連があるわけではないのですが、いまこそ“匠”について考えなくてはいけなくて、そうした状況の中での発表ということでタイトルを“匠”にしたという背景があります。くり返しになりますが、作品に対する愛や知識がつぎの作品を作る原動力になります。この事実は、人間がAIに対してリードしているところだと思うのです。

──確かに、作品を愛したり、つぎの作品を作りたいと思えるのは人間だけですね。

日野
 それがつぎの世代の“匠”になっていくのだと思います。ですから、AI時代の“匠”とは、技術がどうとか指先の器用さを競うことではなくて、クリエイティブやエンターテインメントへの思いや考えかたのようなものを科学していく時代になるのかなと。

──だいたいのことを機械がやってくれる時代になるからこそ、思想的なところが重要になると。

日野
 これからのレベルファイブのタイトルは、“AIには作れないもの”を意識して、ひとつずつ作っていくのかなと思います。

──AIに作れないものとは、どういうものでしょうか?

日野
 人が感じ取れる、心を動かすようなシチュエーションは人間だからこそ生み出せるものです。イケメンや美女が登場したら惹かれる、というような単純なものではなく、“切ない”であったり、“誇らしい”であったり、人にはこうした複雑な感情がありますよね。そうした気持ちを喚起させる作品を作らないといけない。これからは、単に絵が綺麗とか、表現がリアル、といったところで価値を語られる時代ではなくなると思っています。

──AIによって、自身でイラストを描くことやCGを制作することができなかった人でも、発想やプロンプト次第でクオリティーの高い出力ができる。これを“クリエイティブの民主化”と表現されることもありますね。

日野
 それこそ、これまでは莫大な金額をかけて作られていた映像レベルのものを、一般の方たちが本当にサクッと作ってYouTubeやSNSにアップロードしていますよね。もはや、そういう時代です。僕たちは、さらに新しい価値というものを考えていかないといけない、そう思っています。
【VIPインタビュー】レベルファイブの現在と未来、そしてAI時代の作り手のありかたについて日野晃博社長が語る

気になる『うしろ』の話

──せっかくの機会ですので、2008年から週刊ファミ通の発売スケジュールに掲載され、“期待の新作”にもランクインし続けている『うしろ』の話もしましょう。

日野
 します?(笑) でも、いま発売したら話題になりそうですけど。

──数年前からホラーブームが続いていますよね。

日野
 あれだけ期待の新作ランキングに入り続けたのですから、もし発売することになったらファミ通で大特集をしてくださいよ(笑)。

──発売されたらもちろん特集しますが、もう発表から18年です……(笑)。

日野
 最初はプレイステーション・ポータブル用のソフトとして発表したんですよね。いつだったか、編集部の方から「もう作る予定がないのならスケジュールから下げたい」と言われて、「じゃあ、Nintendo Switch用に変えます」と(笑)。

──もし作るとしたら、どんなホラーになるのでしょうか?

日野
 僕は楳図かずお先生のファンで、惨劇が起こるようなホラーではなく、不思議なお話が好きなんです。ほかには映画の『トワイライトゾーン』だったり、テレビドラマの『世にも奇妙な物語』のようなテイストですね。

──新人社員の中に『うしろ』を作りたいという方はいらっしゃらないのですか?

日野
 新人は『ダンボール戦機』を作りたいという人が多いですかね(苦笑)。

──今回、スケジュール表への掲載継続をどうするか日野さんのご意向をうかがいたいのですが、いかがしましょう?

日野
 だったらNintendo Switch 2用に変えようかな……。オープンワールド大冒険ホラー、ということで(笑)。

──では、発売予定タイトルとしては残り続けるということですね。また5年後あたりに確認させていただきます(笑)。

会社は間もなく30周年。1年半に1本作りたい

──ファミ通の40周年についても少しお話しさせてください。

日野
 40周年って本当にすごいですよね。でも、僕はその40年の1年目から知っていますよ。

──1986年ですね。日野さんはそのころからゲームをプレイされていたのですか?

日野
 もちろんです。もともとパソコンからゲームに入って、当時からゲーム作りをしていましたから、雑誌『ログイン』にも取材を受けて載ったことがあります。ファミ通はゲーム誌では後発だったと思いますが、競合誌もいろいろと買っていました。

──ファミ通の取材や記事で思い出に残っていることはありますか?

日野
 思い出はいっぱいありますよ。なかでもとくに印象に残っているのは、まだレベルファイブが駆け出しのころに浜村さん(浜村弘一。3代目編集長)にとてもよくしてもらったんです。ほとんど誰もうちなんかには気をかけないのに、浜村さんだけが「レベルファイブという会社に注目している」と言ってくださって。そのときは本当にありがたいなと思いました。ちょうどそのころ『トゥルーファンタジー ライブオンライン』を作っていて、その後に『ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君』の開発を担当することになるわけですが、浜村さんは『トゥルーファンタジー ライブオンライン』のほうにすごく注目してくださったんです。

──新しいチャレンジに惹かれたのでしょうね。

日野
 そうしたタイトル単体の話だけでなく、レベルファイブという会社をおもしろがっていただいて、「福岡まで話を聞きに行っていいですか?」なんて言っていただいたこともありました。

──いまのような大きなオフィスでもなく、社員も少なかった時代ですよね。

日野
 そうですね。まだ30人ぐらいの会社でした。

──そう考えると、社員規模は10倍に成長したわけですね。そんなレベルファイブも、2年後に節目の30周年を迎えます。そこに向けた目標はありますか?

日野
 レベルファイブのIP(知的財産)すべてをきちんと確立させたいというのもありますし、あとはもちろん30周年記念作品も作りたいと思っています。

──いま発表されているラインアップの中に30周年記念作品があるのでしょうか?

日野
 いえ。まだ未発表のタイトルがありまして、それを30周年記念作品にするつもりです。

──それはとても楽しみです!

日野
 各IPについて言えば、理想は1年半に1作品出せるような状態にしたいんです。つぎは5年後かな、というようなペースではダメだと。チーム単位でしっかり開発を回して、1年半に1回は完成を祝う乾杯ができるくらいにしないといけません。5年も開発にかけていたら、小学生は卒業してしまいますから。

VIPインタビュー2026

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