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『FF14』“アルカディアンドリーム”は社内でもなかなか理解されなかった。お蔵入りになったザ・タイラントの別案も公開! “至天の座アルカディア:ヘビー級”開発者インタビュー【後編】

『FF14』“アルカディアンドリーム”は社内でもなかなか理解されなかった。お蔵入りになったザ・タイラントの別案も公開! “至天の座アルカディア:ヘビー級”開発者インタビュー【後編】
 スクウェア・エニックスのオンラインRPG『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)のパッチ7.xシリーズで展開された8人レイドコンテンツ“至天の座アルカディア”。本記事は、パッチ7.4で追加された第3弾“ヘビー級”の開発者へのインタビュー後編。各層のコンセプトやギミックの制作秘話などに、深く切り込んでいく。
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 前編では担当者の人選やヘビー級の全体像についてうかがっているほか、取材対象者が手掛けたコンテンツの一覧も掲載している。合わせてチェックしてほしい。
『FF14』“アルカディアンドリーム”は社内でもなかなか理解されなかった。お蔵入りになったザ・タイラントの別案も公開! “至天の座アルカディア:ヘビー級”開発者インタビュー【後編】※本記事内の内容については、とくに前置きがない限りは“零式”難度について言及したものになります。

横澤剛志 氏よこざわ つよし

『FFXIV』アシスタントディレクター。“至天の座アルカディア”シリーズでは監督者としてコンテンツ全体を監修。文中は横澤。

鯨岡武生 氏くじらおか たけお

代表作は『ディシディアFF』(バトルプランナー、ディレクター)、『FFXIII』(バトルプランナー)、『FFXVI』(コンバットデザイナー)など。現在は『FFXIV』バトルコンテンツデザイナー。至天の座アルカディア:ヘビー級1(以下、1層)を担当。文中は鯨岡。

吉橋和登 氏よしはし かずと

『FFXIV』バトルコンテンツデザイナー。至天の座アルカディア:ヘビー級2(以下、2層)を担当。クルーザー級では1層を担当。文中は吉橋。

岩附知宏 氏いわつき ともひろ

『FFXIV』バトルコンテンツデザイナー。至天の座アルカディア:ヘビー級3(以下、3層)を担当。ライトヘビー級では2層、クルーザー級では3層を担当。文中は岩附。

森田畝生 氏もりた せな

『FFXIV』バトルコンテンツデザイナー。至天の座アルカディア:ヘビー級4(以下、4層)を担当。ライトヘビー級では4層、クルーザー級では2層を担当。文中は森田。

【ヘビー級1】難しくしすぎて「これ1層だぞ」と何度も言われた

――それでは各層の深掘りをしていきます。1層のボスが取り込んだのはコウモリの魂ということで、それをギミックに落とし込む際にどのようなことを考えられたのでしょうか?

鯨岡
 コウモリのわかりやすい特徴として、吸血や超音波の要素を入れたいなというところからネタを詰めていきました。ただ、血をそのまま使うと生々しい表現になってしまうので、そこは『FFXIV』ならではのエーテルという要素に置き換えています。

 それに加えて、シナリオ班の要望の中には“サディスティック”という要素もあったので、エーテルをプレイヤーのみならず観客からも吸い取る演出を入れようと。ヴァンプ・ファタールの熱狂的なファンなら、エーテルを吸われることすら快感だろうし、会場中からエーテルを吸い取って攻撃が強化される、という展開にしています

――吸い取った力によって強攻撃“ハードコア”や半面攻撃“ハーフムーン”の攻撃範囲が広がりますが、その一方で地面に出る円範囲攻撃はだいぶ控えめに感じました。たとえば、この円範囲もバフに応じて大きくしようという選択肢はなかったのでしょうか?

鯨岡
 円範囲のサイズを大きくするのではなく、出現数を増やすというのは企画段階から決めていました。ただ、もともとの構想としては、円範囲攻撃の頻度がかなり高めだったんです。公開されたバージョンでは、攻撃の回数がかなり減った状態になっています。
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――なんと、そうだったのですね。

鯨岡
 開発初期はボスがエーテルを解き放った状態になると、本当に避けきれないシーン以外を除いて、断続的に円範囲攻撃が出ているような状態でした。例を挙げると、ノーマル難度にヴァンプストンプ(ボスからリング状のエフェクトが出現し、接触したコウモリから円範囲が発生する)と円範囲攻撃が組み合わさるシーンがありましたが、あのように別のギミックと組み合わせるシーンが多々あったんです。

 それで、テストプレイのときに「やりすぎだ」と指摘されてしまって……(苦笑)。立ち位置を見極めるおもしろさよりもストレスが勝ってしまうという声もありまして、結果的にいまの形に落ち着いています。
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――しょっちゅう出てくる、とにかくジャマなギミックという感じだったんですね。失礼な物言いをお許しいただきたいのですが、現在の円範囲は当たる人は少なそうだなと思ってしまいまして……(笑)。

横澤
 1層はプレイヤーが最初に挑むコンテンツになるので、難度調整がけっこう難しいのです。鯨岡には「これ1層だぞ」と何回言ったことか……(笑)。

鯨岡
 前半でお話ししたように、頭の中に「『FFXIV』の零式はこうあるべき」というイメージがあるので、どうしても盛り過ぎてしまうんですよね(苦笑)。これでは簡単だ、もっと難しくしなきゃ……という気持ちをグッと抑えながら、いまの形に着地させました。実際に公開されて自分でプレイしてみましたが、1層としてちょうどいい難度に落ち着いたと思っています。

――1層の特徴的なシーンと言えば、フィールドが狭くなって刃の付いた車輪が迫ってきたり、トゲ鉄球が落ちてくるところです。これはサディスティックというキーワードから生まれたギミックなのでしょうか?

鯨岡
 そうですね。1層では全体を通して、サディスティックな闘士が何を仕掛けてくるのかという観点から考えています。その過程で、何度も“ヒールレスラー”というキーワードが浮かぶのですが、その表現はライトヘビー級3層に登場したブルートボンバーですでに取り入れられていたので、同じ方向性にしても伝わりづらい、個性が出づらいという懸念がありました。

 そこで、ヒールレスラーが持つほかのイメージとして、パイプ椅子や釘バットなどの“凶器”をモチーフにしてみようと思ったんです。それを極端に解釈して、回転ノコギリなど、現実ではありえないレベルの凶器にまで発展させて、ヒールっぽさを出してみようと思い立ったのがきっかけです。

――“サディスティック・スクリーチ”は1回目と2回目でかなり内容が異なりますが、4つの車輪が正面から迫ってくる1回目については、ノーマルのほうがダメージこそ低いものの、攻撃の内容は零式よりも激しいと感じました。

鯨岡
 こうしたインタビューではあるあるネタなのですが、じつは零式はもっと難しい調整だったのです。回転する車輪の攻撃に合わせて、零式ではボスが2連続の半面攻撃を仕掛けてくるのですが、後半の半面攻撃は単純な左右交互の攻撃ではなく、その2発目を放つ直前、 ボスが逆側に移動するというランダム性があったんです。

――逆側と言いますと?

鯨岡
 このとき、ボスは西側か東側にいるのですが、2発目を放つ直前に、逆サイドへ移動するようになっていました。つまり、2発目の攻撃範囲が南北で入れ替わるということですね。移動するかはランダムなので、ボスの動きに応じて半面攻撃の安全地帯を見極め、さらに回転する車輪の攻撃も回避する、というのが当初の作りでした。ただ、1層の序盤のギミックとしてはかなり難しくて……。
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――確かに、1層の序盤としては判断する要素が多い印象ですね。

鯨岡
 開発内のフィードバックをもらいながら調整して、1層のギミックとしてはちょうどいい難度に落とし込めたと思います。

横澤
 サディスティック・スクリーチはDPSチェックのフェーズでもあるので、攻撃の手が止まってしまうほどのギミックだと1層にはふさわしくないなと。そこで、ある程度は攻撃に集中できるように調整したという経緯があります。

――現在は1回目の安全地帯がわかれば、おのずと2回目の回避位置もわかる作りですもんね。

鯨岡
 ノーマルのほうが攻撃が激しく見えるのは、ノーマルではダメージが低いぶん、わちゃわちゃする方向に舵を切れるからです。零式では安全地帯を見極めて全員が整然と移動する、ノーマルは狭い安全地帯をみんなで譲り合う、といった方向性で作っていった結果ですね。

――2回目の“サディスティック・スクリーチ”では、巡回するノコギリが絶妙にいやらしく、接触して“裂傷”のデバフ(強烈な継続ダメージ付き)をもらおうものなら、ヒーラーさんの鋭い眼光が飛んできます(苦笑)。

鯨岡
 わかります。油断すると当たってしまうんですよね(笑)。
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――続いて、実装直後は1層の足止めポイントと目された“エーテルレッティング”ですが、プレイヤーのあいだでは8方向に散開して予兆攻撃を外周に捨て、フィールド中央で回避する解法が主流になっています。これは想定されていたのでしょうか?

鯨岡
 最初は十字とX字をフィジカル(※)で避けることを想定していたのですが、開発メンバーから「中央を安全地帯にできそうじゃない?」という話が出て、それが最終的に開発内での答えになりました。

 円範囲攻撃の捨てかたも、 “タンクとヒーラー、DPSで対角に4人ずつ分かれて、マーカーがついた順に予兆攻撃を捨てながらいっしょに外周をまわる”という方法でした。いま主流になっている解法のほうがシンプルで簡単ですね。
※ここでのフィジカルは、反射神経やキャラクターコントロールの器用さなど、身体能力が問われる意味として使われている。『FF14』“アルカディアンドリーム”は社内でもなかなか理解されなかった。お蔵入りになったザ・タイラントの別案も公開! “至天の座アルカディア:ヘビー級”開発者インタビュー【後編】
――フィールド中央での回避は、テストプレイの段階ですぐに気づかれたのですか?

横澤
 ギミックを1、2回見て、わりとすぐに「こう捨てたら真ん中が空くんじゃない?」という話になりましたね。

――では、いまの解法を封じるという選択肢もあったと。

鯨岡
 そうですね。でも、中央を安全地帯にするという解法も、きちんと予兆攻撃を外周に配置しなければ成立しないという前提があるので、本当に避けられるのかというドキドキ感は味わえたと思います。それに加えて、綺麗に真ん中を避けるように連続攻撃がくり出されるのは爽快で見た目もよく、このままでも問題ないと判断しました。

――そして、終盤のギミック“バット・デスマッチ”は、コウモリと鎖につながれ、移動を制限されながら扇範囲を避けるという難所です。
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鯨岡
 このギミックは、コウモリが動き出すタイミングをはじめ、いやらしい“間”を意図的に作っています。扇範囲を1回だけ2個飛ばしで避けないといけないのも狙っています。

 ちなみにですが、円範囲攻撃の頻度を落としたという話を最初のほうにしましたが、当初はもちろんバッド・デスマッチ中も円範囲が出ていました。

――さすがにやりすぎですね(笑)。

鯨岡
 単純な横移動では円範囲がジャマになり、遠回りしないといけないパターンもあったのです。ボスから離れて迂回しやすくしたり、逆にボスに近づきながら扇範囲を回避したりと、さまざまなケースに対応する想定で作っていました。ただ、公開された後にプレイヤーの皆さんの動向を見守っていたのですが、いまの形がちょうどいい難度だったなと思っています。

――細かい話になるのですが、最終盤に扇範囲だけのめちゃくちゃシンプルなギミック“サングインスクラッチ”がくり出されますが、これはどういう意図なのでしょうか?

鯨岡
 あの最終盤の時間帯は、アイテムレベル(IL)が上がるとその前に討伐が完了してしまい、多くの人が到達しなくなります。また、ILが低いうちは勝利に向かってウイニングランをするような時間があったほうが、プレイ体験がよくなるだろうと思っていたので、シンプルだとは自分でもわかっていたのですが、いまのままで公開させていただきました。と言っても、当初はあそこでも円範囲攻撃が出ていたのですが……(笑)。

 難度的に物足りなさがあれば、ペア受けや8人受けの頭割り攻撃を追加するイメージはありましたが、ここは意図的に難度を落とした部分でもあります。ただ、少しシンプルにしすぎたかも、という気持ちもゼロではないですね。

――じつはとんでもないギミックがあって、調整されたのではないかと想像していました。

横澤
 基本方針として、ILが上がったときにスキップされるような後半の時間帯には、新しいギミックを入れないようにする、というのがありました。だからこそ、そこまでにないギミックは入れないほうがいいのではないか、という議論はしましたね。

――では最後に、横澤さんに1層の総括をお願いします。

横澤
 合流直後と言っても過言ではない時期の鯨岡に初めて取り組んでもらった高難度コンテンツなので、制作の過程で悩み、そして学びがあったのではないかなと思います。そうして完成したものは、キャラクター立てがしっかり意識されていたり、コンテンツを通して大きな場面転換があったりと、開発経験が豊富な鯨岡だからこそ作れた1層になったと思っています。

 ここは開発セクションのリーダーとしての目線になりますが、今後、高難度コンテンツに限らず、『FFXIV』のコンテンツの幅を大きく広げていってくれるかもしれないという期待感を持たせてくれるような内容、進行だったと思います。

――これを受けて鯨岡さんいかがでしょう?

鯨岡
 面と向かって言われたことがなかったので、どういう反応をすればいいのか困りますね……(苦笑)。1層は横澤と相談しながら作っていきました。いまだに迷いながらやっているところはあるのですが、少しずつ血肉になってきている部分もあると思います。

 自分の中では、まだ『FFXIV』の幅を広められる実感は得られていませんが、年の功を使って『FFXIV』のプレイヤーに楽しいと思ってもらえるものを今後も作っていければそれに越したことはないかなと思います。ですので、若い方々に混じって、今後も必死にやらせていただきたいなと。
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【ヘビー級2】あえて制約を減らした新しい2体同時バトル

――続いて2層の“エクストリームズ”の話をうかがっていきます。まず、波乗り競技の選手という設定は吉橋さんからの提案だったということですが、どういう流れでこの設定やギミックを考えていかれたのでしょうか?

吉橋
 “兄弟の闘士”であるというのは決まっていて、タッグマッチをするというのもシナリオ班のオーダーとしてありました。そこから、ふたりが同時に戦う絵面を活かすには何がいいのか、いろいろと案を出していった感じですね。

 前回のクルーザー級でクラブ通いのダンサーやストリートの絵描きもいたので、ソリューション・ナインにスポーツ選手がいてもおかしくないのではないか……と想像しました。そこから団体やデュオで出場する球技や陸上競技を中心に、いろいろなスポーツの案を出していったんです。その中で、ヒール役を演じているという設定もあったので、いわゆる“やんちゃ”なイメージがあるスポーツと言えば何だろうと考えていって、エクストリームスポーツに行き着いたという感じですね。

 エクストリームスポーツにも自転車系(BMX)やスノーボードなどいろいろとありますが、ふたりが揃って波乗りをしている見た目がカッコよさそうということで、波乗り競技をしている選手という設定で詰めていきました。

――サーフィンは、いわゆる“ウォータースポーツ”です。海上で戦うわけにもいかないですし、そのあたりはどう折り合いをつけようと思ったのですか?

吉橋
 『FFXIV』の世界には、エレクトロープというたいへん便利なテクノロジーがありまして、それを活かす形で企画を進めていきました。ゲーム内の波乗り競技は、波を発生させる屋内装置があって、そこでトリックを決めて採点を行い、ランキングを競う、という設定です。かつ、お客さんに見せて楽しんでもらう興行でもあるだろうなと、脳内で想像を膨らませていきました。この興行という面も、今回のアルカディアにリンクするなと思いましたね。
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――バトルでは、外周も含めてフィールドが広く使われていますよね。技術的に難しかったことはありましたか?

吉橋
 最初にデザイナーの方に背景の相談をしたときに、大きな波を発生させて、その波に乗りたいというアイデアは伝えていました。波がどれくらいの高さで、これくらいの勢いを担保にするには広さはこれくらい必要で……と逆算して、デザインをしてもらいました。

――タッグマッチもコンセプトのひとつとしてあったとのことですが、これまでの高難度コンテンツにおける2体との戦闘では、そもそも攻撃できる相手が決まっていたり、片方のHPを減らしすぎるとおしおきがあったり、2体を近づけると防御力が高まるなど、制約が多かったと思います。ところが、今回はすごく自由な作りになっていますよね。

吉橋
 じつは、最初はいつものような制約があったんです。片方だけにしか攻撃が通らなくなるデバフだったり、4:4に分かれて自分が担当するボスを攻撃するという内容を想定していました。ただ、開発を進めていくと、一時的にボスが合流するタイミングはありますが、ギミックに応じて自然と2チームに分かれていて、わざわざデバフをつける必要もないのではという話になりました。

 むしろ、制約をなくすことで攻撃する相手を状況によって変えたり、2体をうまくまとめて範囲攻撃するなど、プレイヤーの工夫の一環として楽しんでもらったほうが新しさも感じていただけるだろうし、おもしろそうだと思いました。
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――兄弟の攻撃について話題を変えますが、弟のレッドホットの攻撃でダメージ床が残るのが特徴的でした。

吉橋
 まずは兄弟のうち、弟が無口ですぐに手が出てしまうパワータイプという解釈をしました。逆に兄は、スピードや変則的、トリッキーな動きでプレイヤーを翻弄してくるような変化球タイプと考えて、技を構成していきました。

 弟のパワータイプの攻撃の特性として、攻撃をした後の床に炎の跡が残るというのが最初の着想でした。そこから弟の能力のコンセプトとして、フィールド一面を炎の海にするということを決めて作っていった形ですね。

――まずは兄弟それぞれのコンセプトを立てて、技として落とし込んでいったと。

吉橋
 はい。それぞれタイプの異なるキャラクターと性格付けをうまく混ぜ合わせて共闘させれば、きっとおもしろくなるだろうと思いました。弟はダメージ床をたくさん撒き散らし、兄はそのダメージ床に水をかけて爆発させ、プレイヤーを翻弄する、そんなイメージですね。

――基本的に制約の少ない2体バトルですが、強制的に兄担当、弟担当で分かれるシーンが何度かあります。なかでもハイドロ/フレイムスネーキング後のギミックでは、弟側のほうが若干難度が高いように思いますが、これは意図的なものでしょうか?

吉橋
 片方だけを意図して難しくしたわけではありません。フィールドマーカーや床の模様を参考にして、プレイヤー側でいい立ち位置を見つけていくだろうと予想していましたが、弟側のほうが少し誘導がシビアかもしれませんね。

横澤
 吉橋の言う通り、意図的に難度に差をつけたわけではありませんが、兄と弟のどちらの担当になるかはランダムなので、それぞれのキャラクターの個性を活かすことを優先しました。
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――続いて、2層の中でも印象的な“水牢”フェーズについておうかがいします。水牢にはどのロールが入ることを想定されていたのでしょうか?

吉橋
 開発内ではヒーラーが担当していました。というのも、当初はもう少しダメージ量が多くて、ヒールがきつめだったのです。ヒーラーが突進攻撃を誘導している暇がないくらい、しっかりヒールするようなイメージでした。

 ただ、ダメージを調整していく過程でヒーラーの負担が減り、どのロールが水牢に入っても突破できるようになっていました。もちろん、それには気づいていたのですが、誰が入るのかも含めて攻略ということでいいだろうと、そのままにしています。
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――そこも自由度であると。

森田
 調整中は自分が黒魔道士をプレイしていたのですが、「水牢、入っていいですか?」と聞くと、たいがい「ダメ」と言われて入らせてもらえなかったです(笑)。

――楽をしようとせず、ちゃんと誘導しなさいよと(笑)。パーティごとにそうしたコミュニケーションが生まれるのもおもしろいですよね。では横澤さん、2層を総括していただけますか。

横澤
 2層は完成まで紆余曲折あったコンテンツだったので、そのぶん形になったときは感動もひとしおでした。

 たとえば、“レッドホットの炎の床でフィールドが火の海になる”というコンセプトを掲げていたものの、なかなか“火の海”という印象にはならなかったんです。そこで、前方範囲攻撃を330度まで広げるなどして、開発終盤まで大掛かりな修繕を行っていました。見た目のインパクトも含めて印象に残るボスになったと思うので、最終的にすごくよい形で着地できたかなと思います。

――練習中はフィールドが完全に火に覆われてしまったこともあって、すごく印象に残っています。

横澤
 プレイヤーの方には伝わりづらいのですが、攻撃したところにダメージ床が残るのは、過去に円範囲攻撃などであるにはあったのですが、330度の攻撃範囲にキレイにダメージ床が生成されるというのは、いままでにない表現でした。その新しい処理を作りつつ、コンテンツも練り上げるというアプローチは吉橋らしさであって、そこがうまくハマって唯一無二のものができたかなと思います。
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【ヘビー級3】チャンピオンズメテオは自分でプレイしても難しい

――続いて3層です。まずは、3層のコンセプトをお聞かせください。

岩附
 ライトヘビー級、クルーザー級を経て、ヘビー級3層ではアルカディアの統一王者と戦うことになります。ですので、しっかりと「こいつは統一王者だ」と伝わるボスにするというのがコンセプトでした。魔物の魂の選出には紆余曲折ありながらも、このコンセプト通りに統一王者をストレートに表現できそうな ベヒーモスを選出した形ですね。

 また、統一王者を描く以上、ベヒーモスの魂を抜きにしても、素の状態でこいつは強いと思わせないといけない。そのためにも、さまざまな武器を使いこなすウェポンマスターのような要素を入れて、“生身でも強い”と印象付けようというのが最初の発想でした。

――零式の3層というのは、プレイヤーの前に立ちはだかる“ストッパー”というイメージがありますが、今回は零式が実装されるまで3週間あったことも含めて、必要なDPS(火力)、受けるダメージの数値など、過去の零式3層と比べてとくに意識された部分はありますか?

岩附
 過去の零式3層と比べて、とくにきつくしようといったことは考えませんでしたが、 やり応えは過去の3層と遜色ないものにしようという意図はありました。今回の3層を難しいと思われた方も多いかもしれませんが、テンポの早いギミックが押し寄せる中で、近接DPSがどれくらいボスを殴り続けるか、遠隔魔法DPSがどこまで詠唱を粘るかなど、立ち回りを突き詰めないときびしい火力チェックに調整していたのは事実です。

 ギミック自体はわかりやすいシンプルなものを採用しましたが、攻略する過程で練度をしっかり上げないと火力的に突破できない想定でしたので、動きの最適化の面で難しいと感じる方が多かったのではないかと思っています。
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――単純にボスのHPを増やすのではなく、攻撃を継続しづらい状況を作ることで難度をつけたと。確かに、ボスが武器を召喚するフェーズでは、剣や斧のときはタンクや近接DPSがギリギリまで攻撃している印象が強く、練度が重要だというのも頷けます。

岩附
 慣れないうちはギミックに対する意識配分が多く、攻撃する回数が減ってしまうことも多々あると思いますが、練度が上がって攻撃できる回数が増えると、火力が足りるようになってくる。そういった作りになっていますね。

――“トロフィーウェポンズ”では剣と斧、鎌の3つの武器を召喚しますが、この3つにした理由をお聞かせください。

岩附
 武器の形状と、そこからどんな攻撃がくり出されるというのが、ある程度直感的にわかったほうがプレイ体験として気持ちいいだろうなという狙いがありました。たとえば斧であれば叩きつけそうだし、鎌だったら薙ぎ払ってきそうなど……そういった着想から武器種を決めていきました。

 また、パッと見たときの視認性も重要なため、その点も考慮して剣と斧、鎌の3つをチョイスしました。
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――攻略中にずっと気になっていたのですが、HPを強制的に1にする“ミールストーム”がベヒーモスに由来する攻撃なのはわかります。ただ、これがバトル中に1回しか放たれず、しかもHP回復のための猶予時間も長いことに違和感を覚えました。当初はとんでもないタイミングでミールストームがくり出されたのでは……と想像していたのですが、いかがでしょうか?

岩附
 結論から言うと、ないですね(笑)。開発当初は、ミールストームは単純な全体攻撃にしていたんです。ただ、『FFXIV』においてはミールストームを受けたらHPが1になるという印象が強かったので、調整中に仕様を変更した経緯があります。

――HPが1になった後は、回復することでリミットブレイクのゲージが連続的に溜まるのが気持ちいいんですよね。

岩附
 そうですよね。あそこは前半の山場となるシーンに切り替わるタイミングなので、ここでリミットブレイクのゲージを溜めてもらい、その後に壊滅したとしても、パーティの立て直しに活かしてもらえたらいいな、という気持ちでHPを1にしています。

――(え、やさしい……)

岩附
 3層は後半が激しいので、前半は手心を、というくらいのイメージです。

横澤
 ミールストームはこれまでのコンテンツにも登場している技で、やっぱりこの技を受けたらHPが1になってほしいよね、という意見がきっかけでした。そこに岩附が言ったような意見も考慮して、最終的にHPを1にしても問題ないという判断になりました。当初はもっと難しかったのでは、というのは勘ぐりすぎですね……(笑)。
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――ギミックの話が続きますが、外周に出現したゲートから順に直線範囲攻撃が仕掛けられる“オービタルライン”は、猶予がかなり短く感じました。

岩附
 当初はもうちょっとだけ猶予が長くて、外周にゲートが出現するタイミングも間隔が空いていたんです。ただ、そのままだと零式のギミックとしては浮いてしまうくらい簡単なものになってしまっていて……。ここはちょっとした息抜きのフェーズではあるのですが、もう少し緊張感を持って挑むギミックにしたほうがいいなと判断して、猶予を削っていまの形にしています。

――調整のシビアさを物語るエピソードですね。その後に続く“メテオレイン”は、これまでのメテオの攻略法でもある“降ってきた隕石を壁にして攻撃を防ぐ”をさらに発展させた形になっています。ここはどのように作られていったのでしょうか?

岩附
 ベヒーモスの魂を取り込んだのであれば、エクリプスメテオを使わないわけにはいかないなと思っていて。そこで、落ちてきたコメットを壁にしてエクリプスメテオの衝撃を防ぐギミックは、何かしらの形で入れたいと考えていました。

 ただ、1個のコメットの裏に隠れるだけだったら、いままでとやっていることは変わらなくて、目新しさもなくプレイ体験としても弱いなと。そこからエクリプスメテオがすごく強力だったら1個のコメットだけでは防ぎきれない。ならば、コメットを並べたらどうか……と想像を膨らませていって、最終的にいまの形になりました。
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――3層ではフィールドが分断されるのも印象的ですが、これは最初からコンセプトとしてあったのでしょうか?

岩附
 最初にお話ししたように、統一王者としてのパワーを表現したいというのが草案の時点であったので、そこは考えていました。とくに後半はベヒーモスの魂を解放するという設定で、力で押し通すという表現をしたかったので、わかりやすく背景を変化させるくらいのことをしたいなと。ですので、アイデア自体は開発序盤からあった感じですね。

――フィールドが分断された後の“チャンピオンズメテオ”は3層の最大の難所でした。主流の解法では、フィールドマーカーを目印に、東西どちらにいる場合でも共通のルールのもとファイアブレスとチャンピオンズ・メテオラインを誘導する方法が採られています。この解法は開発想定の処理法ではないのかなと感じていましたが、いかがでしょうか?

岩附
 いえ、いま主流となっているフィールドマーカーを参考にした攻略法は、開発内でも想定していた解法……というより、まさにその処理法を採用して最終的なバランス調整を行っています。

 じつはご推察の通り、企画当初は別の解法を考えていたのですが、テストプレイのときに「東西どちらでも動きをある程度固定化できるのではないか」という処理法の提案が出たんです。そこで実際にフィールドマーカーを目印にする処理を試してみたところ、スマートかつギミックの成功率も高かったため、公開ワールドでもこの解法が流行るだろうと確信して、開発の処理法として採用しました。
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――テスト段階での推察をもとにバランスを調整されていったのですね。ちなみに、“企画当初に想定していた解法”とは、東西に2個ずつ出現するゲートが外側・外側、内側・内側の組み合わせなので、それぞれのパターンで空いているスペースにファイアブレスを誘導する……といった処理法ではないでしょうか?

岩附
 そうですね。ゲートの配置が東西で異なるので、それぞれのパターンで立ち位置を決めることで、安全地帯を広く取る想定でした。ただ、そうすると全部で4パターンほど覚えなくてはいけないので、多少立ち位置がシビアになったとしても東西で動きを統一させるほうが安定しました。結果として、現在主流となっている攻略法が、いちばんスマートで効率的な解きかたかなと思います。

――“チャンピオンズメテオ”はワイプ率が非常に高いフェーズだと思いますが、公開後のプレイヤーの反応を見てどのような印象を持たれましたか?

岩附
 自分も公開ワールドでプレイしたのですが、改めて難しいなと(笑)。あのフェーズはトータルで約2分ほどあるのですが、そのあいだに戦闘不能になると立て直しが難しくなります。さらに、戦闘の中盤以降にやってくるフェーズでもあって、練習がしづらいというのも難度を上げている要因だと思います。3層とはいえ、少し立ち位置がシビアですし、難しかったかもしれません。

――“チャンピオンズメテオ”が難所なのは言わずもがなですが、最終盤の“メテオスタンピード”もまた多くのプレイヤーが床をなめることになったフェーズでした。ここは最後のダメ押し的なギミックとして用意したのでしょうか?

岩附
 いえ、ギミック難度を調整するテストプレイの段階ではもっと簡単で、ほどよい難度のパーティギミックを気持ちよく解いてもらって、あとはウイニングランのつもりでした。当初は、円範囲攻撃を誘導した後に出現する4つの塔の配置パターンが2種類しかなく、北側か南側のどちらかといったように、あらかじめ踏みに行く塔を固定化できていました。

――塔の配置の偏りが最大の事故要因ですからね。

岩附
 さらに、最後に“ツーウェイ”、“フォーウェイ”の攻撃のどちらかがくり出されるようになっていますが、もともとは“フォーウェイ”のみだったのです。ですが、3層としてほどよい緊張感をしっかり味わってもらうには要素を追加したほうがいいという話になり、 ボスのキャストを確認してペア、または4人受けの攻撃かを確認する、ゲートと線がつながったプレイヤーは頭割り攻撃を後ろで(ボスから離れて)受けるといった調整をして、ギミック難度を上げていきました。
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――徐々に難度が盛られていったと(笑)。全体を通して完成度の高さを感じた3層ですが、岩附さんの手応えとしてはいかがでしたか?

岩附
 プレイヤーの方々の意見をSNSやブログなどで拝見させていただきましたが、バトルのスピード感が好評だったのはうれしいですね。3層のボスとしては若干HPの設定がきびしめだったかなと思いますが、結果的にはストッパーとしての役割をしっかり果たせたのではないかと感じています。
『FF14』“アルカディアンドリーム”は社内でもなかなか理解されなかった。お蔵入りになったザ・タイラントの別案も公開! “至天の座アルカディア:ヘビー級”開発者インタビュー【後編】
――では、3層も横澤さんに総括いただけますでしょうか。

横澤
 統一王者とベヒーモスという、どちらもストレートに強さを表現しないといけないテーマだったので、企画はすごく難しかったと思います。ですが結果として、これまでのギミックも活かしながら、うまく広がりを出すことができており、そこは力を見せてくれたなと。

 リング自体を武器にする発想もよく練り込まれていて、誰が見てもわかりやすい切り口でした。コンテンツ全体としても、わかりやすさ、力強さ、そして零式3層としてのストッパー的な役割もしっかり果たされていて、まさに零式3層という仕上がりになったと思います。4層へのステップアップとしても、申し分ないデキだったかなと。

――岩附さん自体も、そろそろ4層や絶などのバトンが回ってきそうですね。じつは、もう回ってきているのかもしれませんが……(笑)。

横澤
 そこは何とも言えません(笑)。ちなみに、ザ・タイラントの初期アートはぜんぜん違う見た目だったんですよ。これになっていたら、使う技はもちろん、ステージ、バトルの構成にいたるまでまったく別のコンテンツになっていたと思います。じつはそのアートが手元にありまして……。
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――これはものすごく貴重な資料ですね! 雰囲気がまるで違います。強そうではありますが、肉弾戦と言いますか、直接殴りかかってきそうな勢いです(笑)。

横澤
 単体のアートとしてはすごくいいのですが、“直感的な印象としての統一王者っぽさ”をさらにもう一段引き出したかったのです。よりテーマを突き詰める過程でいまのデザインへと進化していったのですが、期せずしてお披露目できる機会ができてよかったです。
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【ヘビー級4】“アルカディアンドリーム”の社内プレゼンは全員無言だった

――最終層の4層ですが、コンセプトをお聞かせください。

森田
 前半フェーズは“異常な再生能力”、そして“大蛇感”。後半フェーズは、“無限増殖”、“再現する”というコンセプトになっています。

 前半は見た目通りですが、後半の“再現する”というのは、追い詰められたリンドブルムが本能的に覚醒して、再生能力が神の域に達する。再生の拡大解釈として、いろいろなものを再現できるといった設定を付け加えて……といったコンセプトです。
 
――後半の“再現する”といったコンセプトはシナリオ班からのオーダーだったのですか?

森田
 いえ、こちらで追加した設定ですね。

――今回の零式4層はチェックポイントがある前後半に分かれた構成でしたが、なぜこのようにしたのでしょうか?

森田
 ずばり、後半フェーズの“アルカディアンドリーム”があったからです。企画段階から、前後半通しの零式4層でやるようなギミックではないと思っていました。あと、じつは“アルカディアンドリーム”はもともと2個あったんです。
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――なんと!

森田
 それもあって、さすがに前後半を通しでやるのはきびしいということで、最初からチェックポイントを入れようと決めていました。

――“アルカディアンドリーム”ありきで前後半に分けようと決めていたんですね。

森田
 それに加えて、“レプリケーション”や“模倣細胞”もなかなかシビアなギミックだったので、1ミスでパーティが壊滅して、また最初から……というのはさすがに心が折れてしまうだろうと感じていました。

――逆に言えば、後半の難度を決めるうえでも、分かれているほうが調整しやすそうですね。

森田
 そうですね。前後半で分かれていたほうが、それぞれ思いっきりやれますし、調整もしやすいです。

――早速、前半フェーズのギミックからお話をうかがっていきますが、前半フェーズは狭い足場(安全地帯)で立ち回るギミックが多かったと感じました。このあたりは意識されたのでしょうか?

森田
 基本的には、どのパターンでもタンクや近接DPSがしっかり攻撃できるようにして、攻撃できる・できないの差が出ないような形を意識しました。ただ、改めて振り返ると、あそこまで安全地帯を狭くしなくてもよかったなと……。

 理論上は攻撃し続けられるのですが、かなり際どいところまで詰めています。もう少し気持ちよくプレイできるようにしてもよかったなと、いまは思いますね。

――“細胞付着・中期”は、とぐろになったボスの中に全員が捕えられて、タイミングを見計らって脱出するというユニークなギミックでした。自身に付与されたデバフに応じて、線を伸ばして切る、塔を踏む(受け止め攻撃を受ける)、とぐろから脱出する順番を見極めるなど、やや複雑な仕掛けに感じましたが、どのように作られていったのでしょうか?

森田
 まず、とぐろから抜け出すだけではもの足りないと思い、とぐろの中で線を切って外に出てもらうというのを最初に考え、零式ではさらに応用させた形で入れようと考えていました。

 ほかには、ボスが回転していないタイミングでとぐろから抜け出すという要素がありますが、それだけでは零式のギミックにはなり得ません。ですので、そこからどういうタイミングなら抜け出せるのか、自分はどこに向かわないといけないのかといった要素を付け加え、判断要素を増やして難度を上げていった感じですね。

 “細胞付着・中期”は、ひとつひとつのギミック自体はシンプルですが、それをどう積み重ねれば零式としての難度が担保できるのか、ということを考えながら構築していきました。
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――続く“細胞付着・後期”ではフィールドが十字かX字のどちらかの形になり、その後に続く“細胞付着・終期”の難度にも大きく影響します。このあたりは一連のコンビネーションとして考えられたのでしょうか?

森田
 いえ、難度的な狙いはありません。後期では、両腕を伸ばして床を破壊するという表現を見せたいという思いがありました。それが1パターンだけだとすごく簡単なギミックになってしまうので、どこの床が抜けるのかを判断してもらうためにも、もうひとつのパターンを作った感じですね。

――前半フェーズのラストでは、全体攻撃の“スローターシェッド”から続く連続ギミックが用意されています。ここのテンポ感は意識されたのでしょうか?

森田
 かなり意識しました。あのシーンでは、最初に頭上のマーカーを確認し、左右のどちらに行くかを素早く判断する必要があって、それをこなしながらボスのどちらの腕が再生されたかを見るものになっています。これは狙って作りました。

――続くボスからの攻撃がやっかいで、フィールド半面に対しての範囲攻撃か強烈なノックバックの2択のため、攻撃の予兆が確認できていないと大惨事になります。

森田
 すごくわちゃわちゃするシーンではあるので、ボスの腕が見づらくなってしまったのは申し訳ないと思っています。ただ、ここはほかのギミックに対応しつつも、しっかりボスも見ておかないといけない、ということをやりたかったのです。
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――ここからは後半フェーズの話題になりますが、後半になるとフィールドが円形に変化して、サイズもコンパクトになります。こちらの意図を教えてください。

森田
 リンドブルムが巨大ボスではなくなるというのと、後半のギミックの仕掛け上、フィールドをコンパクトにしたほうが都合がいいというのがおもな理由です。また、前半と後半とでしっかりと画変わりさせたかったという狙いもあります。
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――後半フェーズのコンセプトは“無限増殖”と“再現する”とのことでしたが、どのように具体化させていったのでしょうか?

森田
 これまでにも『FFXIV』のボスが分身をして攻撃を仕掛けてくるものがいくつかありましたが、ボスと同じ見た目の分身が出てきて何かしらの行動をしてくるというものが多かったと思います。

 今回のリンドブルムは、異常な細胞を持っていて、それが増殖していく設定がありました。その設定を活かすためにも、単なる分身ギミックには終わらせず、細胞が増殖するという表現にこだわって作っていきたいと思っていました。

――そこに、“再現する”という要素が加わると。

森田
 そうですね。“模倣細胞”というギミックでは、その名の通り細胞を模倣してプレイヤーの分身を作り出すのですが、再生の能力を超越して、プレイヤーが受けた攻撃すらも再現するといった形にしています。このように、ありとあらゆるものを再現できるようにした、という感じですね。

――その“模倣細胞”のギミックでは、初期攻略組と、現在主流になっている解法とでぜんぜん違うアプローチになっています。これについてはどのようにご覧になっていましたか?

森田
 早期攻略チームの配信を見ていたときは、開発チームと同じやりかたで攻略しているなと思っていました。その後に主流になった解法を見たら、すごい方法を見つけたなと感心しました。
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――フィールドマーカーのB(東)を基準とすることで、分身の攻撃の順番もうまく調整されていて、これを思いついた人はすごいなと。

森田
 仕様を考えているときにも、別の解きかたがあると把握はしていたのですが、その想定を超える解きかたがあるとは思っていませんでした。開発チームでテストプレイをしているときは、北から時計、反時計で線を受け取って……という感じだったので、調整するのもたいへんだったのです。すごいなと感心しつつ、自分も公開ワールドでプレイするときはこの解法を真似させていただきました(笑)。

――さて、今回の4層を象徴する “アルカディアンドリーム”の話題にまいりましょう。これは少し先の未来で起こることをプレイヤーに見せ、それにどう対応していくかというものですよね。ひとつのギミックとしても長尺で、表現をするのもすごく難しかったと思うのですが、制作するうえで苦労したポイントなどありましたらお聞かせください。

森田
 まず、“少し先の未来を見せる”というのはちょっと違っていまして。あのギミックは、リンドブルムがふたつの世界線を作り出して、それを行き来するという設定になっています。たとえば、世界Aから世界Bに移動したときは、世界Aのタイムラインは止まっていて、世界Bから世界Aに戻ったときに止まっていたタイムラインが動き出すイメージです。
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――なるほど。未来ではなく、複数の次元で異なる事象が起こっていて、その次元をボスによって移動させられながら戦う、という感じでしょうか。

森田
 そうですね。後半フェーズに出てくるボスキャラクターには登場カットシーンこそ用意されていますが、そうした設定を伝えるのがなかなか難しくて……。ですので、そこは実況のメテムにしゃべってもらってなんとか伝わればいいなと思っていましたが、プレイヤーの皆さんはそれどころではないでしょうし(笑)。

――ギミックにいっぱいっぱいで、「メテムが何かしゃべってるな……」くらいの認識でした。そう考えると、すぐに状況を理解したメテムとは何者……?

森田
 「お前、全部知ってるだろ!」と思わずつっこみたくなりますよね(笑)。

――仕切り直しまして。“アルカディアンドリーム”はふたつの次元を行き来するということで、タイムラインもかなり特殊になっています。ギミックを作り上げていくのはすごくたいへんだったと思うのですが、いかがでしょう?

森田
 本当に苦労して作りました。おそらく、自分が担当したコンテンツの中で、単体のギミックとしてはデータ量もすさまじくて、いちばん複雑なものになっていると思います。仕様書を書いてから実機でプレイできるようになるまで2ヵ月くらい期間が空いたのですが、いざ調整しようとなったときに「あれ、どういう仕様だったっけ……?」と、仕様書を改めて読み込むことになりまして……。
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――それほど複雑な仕様だったのですね。

森田
 プログラマーからは、「六法全書を読んでいるかと思いました」と言われて……(苦笑)。そのレベルで、本当に複雑な仕様でしたね。企画の段階でほかの開発メンバーにプレゼンをしたときも、口頭だけでは誰にも理解してもらえず、終始みんな無言でした。

――このアルカディアンドリームについては、テキストチャットを登録したマクロやクイックパネルを活用した、いわゆるカンペ攻略が主流になりましたが、このあたりはどのように感じられましたか?

森田
 正直、そうなるだろうなと覚悟していましたし、実際に調整に参加したメンバーからも指摘されていました。自分がプレイするときはカンペは使わず、念仏のように「マナバから、マナバから……Aの外でシェア、Aの外でシェア……」とつぶやきながらやっています。
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――これは完全に余談になるのですが、“変異細胞”+”マナスフィア”のギミックで映画『インターステラー』的なブラックホール表現(降着円盤)が見られたり、アルカディアンドリームのような複雑な時間ギミックは『インセプション』や『テネット』を思わせたりもしました。もしや、クリストファー・ノーラン監督の作品からの影響だったりするのでしょうか?

森田
 まず、自分がクリストファー・ノーラン信者なのは間違いありませんが(笑)、今回の4層を開発するうえで『インターステラー』『テネット』は意識していなかったですね。ただ、エフェクトを作ってくれたスタッフは、宇宙から散らばって吸収していくというのをブラックホールだと捉えたようで、『インターステラー』をモチーフに作ったと言っていました。

――やはり!

森田
 いまギミック全体を思い返せば、確かに『テネット』っぽさはあるなと感じますが、開発中はとくに意識していなかったですね。
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――話を戻しましょう。では横澤さん、4層の総括をお願いします。

横澤
 前半のインタビューでお話ししたように、4層は中川大輔と森田のふたりに任せていたのですが、最良の結果になったと思っています。そもそも、前半フェーズの“再生”というテーマは、バトルコンテンツとの相性が最悪なんですよ。

――確かに、再生し続ける敵は倒せないですよね。

横澤
 そこをふたりがうまくギミックとしてまとめてくれました。ノーマルの演出としては、倒したと思ったら復活して、という部分までしっかりと落とし込んで、説得力のあるものに作り込んでくれたので、さすがだなと。前半は本当に素晴らしいデキだったなと思います。

――後半についてはいかがでしょう?

横澤
 後半フェーズに関しては、最初に中川大輔から草案を聞いたときと、その後に森田から企画の段階で聞いたとき、実機で動くようになったときの計3回説明を受けたのですが、それでも完全に理解するのは難しかったのです。ただ、調整を進めていくと、徐々に理解でき始め、ちょうどよくおもしろいギミックになっていて、ずっとふたりの掌で転がされていたなという印象でした。

 4層については監修していないので、感想しか出てこないのですが、森田と中川大輔には惜しみない拍手を送りたいと思っています。この場にいない中川大輔は、褒めると調子に乗るので本人には言いませんけど(笑)。

森田
 ほとんど大輔さんのおかげですよ! ただ、最初に大輔さんから草案をいただいたときは頭を抱えたんです。

――と言いますと?

森田
 エクセルで作られた図形が貼られていて、そこに淡々と説明が書かれていたんです。それが複雑な内容で 推理小説を読み進めているような感覚で解読していって、時間をかけて少しずつ理解を深めていきました。ですから、世界で最初に“アルカディアンドリーム”を解明した男、みたいな感じで優越感に浸った記憶があります(笑)。

“至天の座アルカディア”の総括と、今後のバトルコンテンツについて

――横澤さんに“至天の座アルカディア”シリーズ全体の総括をお願いできますでしょうか。

横澤
 “至天の座アルカディア”シリーズは、全体的に非常にいい反響をいただいていて、各担当者は大きなプレッシャーの中で制作に取り組んだかと思います。監督者としても、公開サーバーで遊んだプレイヤーのひとりとしても、見事なコンテンツを作り上げてくれたなと強く感じました。ヘビー級に関しては、難度の観点でも、毎週挑むにもちょうどいい感じに落ち着いたので、シリーズの締めくくりとしてふさわしいものになったかなと思います。

 登場する闘士たちの人気もすごくて、好評をいただいたことも含めて、本当にいいシーズンになったなと。つぎの8.0(『
白銀のワンダラー』)では、これを超えるものを作らないといけないというのが、開発チーム内の意識としてあります。

――どんどんハードルが上がっていきますね……(笑)。

横澤
 そこは皆さんの期待に沿えるものにしないといけないなと。あと個人的な感想としては、ストーリーの締めかたはすごくよかったなと思っています。さまざまなご意見があるとは思いますが、いろいろなキャラクターが救われる結末になっていて、シナリオ班の方々にはこの場を借りてお礼を言いたいです。
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――では最後に、今後のコンテンツ作りの抱負をお聞かせください。

横澤
 先日の北米のファンフェスティバルで、吉田より『FFXIV』の今後に対する大きな発表がさまざまあり、開発チームとしても大きく変革を行う時期と考えていることは、少なからず伝わったのではないかなと思っています。 バトルに関しても、エヴォルヴモードにアーマリーシステムの進化と、まずはシステム面から大きく手が入ります。 ですが、何もかもすべてが刷新されるというわけではもちろんなく、コンテンツ班としては、“変わらないおもしろさ”と、“新しい体験によるおもしろさ”の両面があるということを、しっかり意識して今後も取り組んでいきたいと思っています。

 今後展開していく中にも、皆さんが遊んでいてワクワクするような、楽しいコンテンツをたくさん用意しています。新しく変化していくこれからの『FFXIV』の冒険を、ぜひ楽しみにお待ちください!
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