『ICO』『ワンダ』『トリコ』の上田文人氏新作『gen ATLAS(ジェンアトラス)』インタビュー。SFオープンワールドだけど「オープンワールドを作ろうとしたわけではない」

『ICO』『ワンダ』『トリコ』の上田文人氏新作『gen ATLAS(ジェンアトラス)』インタビュー。SFオープンワールドだけど「オープンワールドを作ろうとしたわけではない」
 『ICO』、『ワンダと巨像』、そして『人喰いの大鷲トリコ』――。唯一無二の世界観と、プレイヤーの心に深く刻まれる体験を生み出してきたゲームクリエイター・上田文人氏。前作から月日を経て、多くのファンがその動向を待ち望むなか、ついに『gen ATLAS』が正式発表された。
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 前回のプロジェクト発表から2年。沈黙を破り公開された最新映像には、巨大ロボットやSFといった新たなモチーフが散りばめられている。ジャンルはSFで、オープンワールドになるという。これまでの系譜とは異なるように思える本作の根底には、どのようなゲームデザインの神髄が流れているのか。米・ロサンゼルスにて上田氏が最新作に込めた想いを訊いた。
『ICO』『ワンダ』『トリコ』の上田文人氏新作『gen ATLAS(ジェンアトラス)』インタビュー。SFオープンワールドだけど「オープンワールドを作ろうとしたわけではない」※記事内の画像は動画をキャプチャしたものです。

人型ロボットと巨大ロボットを切り替えて戦う

――会場の反応を見てみて、いかがでしたか?

上田
 直接客席を見てはいないのですが、とりあえず映像が公開されたということでホッとしています。ギリギリまで映像の調整をやっていたので、無事に上映されてよかったなと思っています。

――ついに正式タイトルが発表となって、こうして映像が出てきたということは、ゲームがだいぶ完成に近づいてきたということでしょうか?

上田
 ゲームの進捗自体はちょっとお伝えできないんですけど。タイトルが決まって、発表できる状態にあるということですね。

――オープンワールドのアドベンチャーということをお伺いしました。今回、どういったものを作ろうと考えて、オープンワールドにしたのでしょうか?

上田
  オープンワールドのゲームを作りたいというところでスタートしたわけではなかったんですよね。プレイヤー自身が参加して、発見したり、そういったものを純粋に体験できるゲームを作る上で、必然的にオープンワールドという形になっていきました。なので、あんまり「オープンワールドのゲームですよ」という風に言いたくないわけじゃないんですけど、それを売りにしたくはないと思っています。

――プレイヤーの自由度を上げたいという思いがあったのですね。

上田
 はい。そうですね。

――人型に見える彼を操作して動いていくのでしょうか?

上田
 はい。人間のサイズのキャラクターと巨大なロボットは、どちらも主人公といえば主人公です。それを操作を切り替えて、協力したり、ロボットに乗ったりしながら、ゲームが進行していきます。
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――ロボットの頭部で飛んで、くっついたときには巨大なロボットとして動いていましたが、あの大型も自分で操作できる、ということですね。

上田
 はい。このロボットの頭部に直接ドッキングすることで、それがコックピットとなって、接続して操作可能になります。
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――かなり自由度が高そうですね。ロボットでなければ操作できないギミックがあったりするんでしょうね。

上田
 はい。そのようになります。
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――銃で攻撃していた要素も動画の中にありましたが、これはTPS的な要素も入っているのでしょうか?

上田
 そうですね。ただ、シューティングがメインのゲームではなくて、あくまで人間のサイズの主人公が持っている武器で、それを持つことによって攻撃のひとつの手段になり、(パズルを)クリアーするための道具としての銃です。つねに敵が出てきて、相対して戦うようなゲームではないです。

 あくまで今回はSFなので。これまでの僕のタイトルで言えば、『ICO』だと主人公は棒を持って戦っていたり、『ワンダと巨像』だと弓だったり剣を持っていたと思うんですけど、その延長線上ですね。SFで棒持つのも変ですし(笑)。その流れで銃を持つという形になっています。
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――SFというワードが出ましたが、なぜこのジャンルになったのですか?

上田
 もともと今回のテーマとして“巨大ロボット”をモチーフとしたいという思いがありました。そこから世界観を考えていったときに、必然的にSFになっていきました。

――タイトルの『gen ATLAS』にもある“アトラス”も、巨人みたいな意味があるみたいですが……。

上田
 そうですね。いくつか意味があるんですけど、アトラスに関しては、もちろんその巨人って意味もありますし、世界とか地図とかいった意味もあります。なので今回“広い世界を旅する”という意味でもつけています。

――複数の意味があるのですね。

上田
  あと、首を接続するとか、頭を接続するというのはこのゲームフローの中のひとつでもあるのですが、その“首の骨”の意味もアトラスに含めています。

――謎がいたるところに散りばめられているようなデザインになっているんですね。このタイトルに社名の“gen(ジェン)”が入っているのも意味があるんでしょうか。

上田
 もちろん社名の要素も少しはありますけど、どちらかというと、タイトル側の“ジェネシス(Genesis)”の意味ですかね。“ジェン(gen)”、“ジーン(Gene)”、“ジェネレーション”、“ジェネレーター”とか……。いろいろ意味が含まれているということで、それとアトラスと合わせて、創世記的というか、世界を作っていくような意味で『gen ATLAS』という名前にしています。
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――社名の“gen(ジェンデザイン)”のほうに込められた意味も、同じようにジェネシスに由来するのでしょうか。

上田
 社名は同じように“源(げん)”……起源(きげん)となるとか、発現(はつげん)するとか、ジェネレーターとかっていう意味で“gen”とつけたので似たような意味ですが、今回のタイトルではもう少し、“世界”みたいなものの意味での“gen”になります。

――その世界に関連して、もう少し世界観をお伺いできればと思います。戦車を追いかけてくる敵のようなものがいましたが……。

上田
 いましたね。
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――あれがいわゆる本作の敵、みたいな感じになってくるんでしょうか?

上田
 敵のひとつです。敵というよりかは、この惑星自体に存在している機構みたいなものです。惑星はひとつのルールで動いていて、たまたま主人公と敵対する場合もあります。今回その戦車みたいなものは、敵対するような関係で存在しています

――この世界の世界観をお伺いすることはできますか?

上田
 惑星自体はもう活動が停止しています。たとえば巨大なロボットがたくさん朽ちていたりとか、巨大な施設が朽ちていたりする場所を、2体のキャラクターが冒険をするというものなんですね。それぞれの施設などで、その朽ちたロボットと接触し、 いろいろなゲームをクリアーしていきます。戦闘であったりとか、パズルであったりとか。ゲームフローとしては、そのような感じで進んでいきます。
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――これまで上田さんの作品のファンだった方にとっては、馴染みあるシステムに仕上がっている印象ですね。

上田
 はい。そう感じてもらえたらと思います。

――独立後初のタイトルですが、1作品目は絶対こういうことは大事にしようといったものはあったのでしょうか?

上田
 『人喰いの大鷲トリコ』もこのgen DESIGNでゲームデザインをやってたんで、正確に1作目かっていうところは微妙ではあるのですが、考えていたのは、『ICO』『ワンダと巨像』『人喰いの大鷲トリコ』って、城とか遺跡とかを舞台にしたゲームだったと思うんですよね、ファンタジー寄りの。

 自分がもしゲームプレイヤーの立場で考えたときに、4作品目が出るとなったときに、同じような路線でもそれはそれで受け入れられるかなとは思うんですけど、ただ、少し意外性がないかなと感じていて。やっぱりゲームはエンターテインメントですから、新鮮味や独創性という観点で考えたときに、もし自分がゲームプレイヤーだったとしたら、これまでの3作と少し毛色が違うものが出てきたほうがワクワクするんじゃないかと思ったのですよね。なので今回はこれまでの世界と違うものを表現しようと考えました。

 また、せっかく新しいスタジオなのであれば、これまでの流れと少し違ったものをチャレンジするということも価値のあることだと思い、このような作品を最初に作ることにしました。

――もともと上田さんはSF作品はお好きだったのですか?

上田
 SFマニアというほどの好きさではないですが(笑)。僕がSFを選択した理由としては、ファンタジーとそんなに大差なくて、見たことがない世界……この現実世界に存在しない世界を表現する上で、うまく嘘をついたりとか、さもあるように感じさせるという表現ができる世界として、ファンタジーもSFも僕にとってはそんなに大差ないと考えています。

 なので、SFがすごく好きだからSFっていうことではなくて、プレイヤーに対してさも存在するような、嘘をつかないといけない(笑)。その手法のひとつとして、SFを選んでいるという感じでおります。
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――10年近く前の話にアートンさん(Arnt Jensen氏/Playdead社)との対談記事を行った際に、上田さんはアイデアを育てて完成度を追求される手法をとっていらっしゃるとおっしゃっていましたが、今回も皆さんとの会話の中で生まれたアイデアはあったのでしょうか?

参考:上田文人×Arnt Jensen対談 『ICO』×『INSIDE』説明のないゲームはこうして生まれた

上田
 確かにいわゆるブレストであったりとか、アイデア出しをやったりとか、それによって、「もっとこうしよう」「ああしよう」というのは、出てくることは多々あります。

――スタジオの皆さんと?

上田
 そうですね。おもにコアメンバーであったり、そういうブレスト専門……というか、ゲームのプロットを考える人はこのチームとかデザインを考えるのはこの人たちみたいに分かれていて、その人たちとやり取りしながら考えて。「あれを入れるといいんじゃないか」とか「これを入れるのはちょっと」みたいな話をして進めていきます。

――勝手ながらご自身でどんどん閃くタイプなのかと思っていたんですが、もちろんそういう部分もありながらも、ブレストも大事にされていらっしゃるのですね。

上田
 自分で「これがいい」っていうのを思いつくこともありますけど、自分だけがそのように思っていても、アイデアとしての確度がわからないので、信頼できる何人かに「これどう思う?」みたいな形で聞いていますね。

 それで、「あ、いいんじゃないですかね」とか「よくないですね」とか「わかりにくいんじゃないですかね」みたいなやり取りをして、そこで問題がなければ採用して実装していきます。現実的に、ゲームに取り込むのにどのくらい工数がかかるのかとか、果たして自分が求めているクオリティに達するのかとか、いろいろな計算をした上で決定していきます。

 アイデアがいくらよくても実際、ゲームに落とすときの物量だったり、到達できるクオリティだったり、自分たちが持っているリソースだったりで、技術的にもできることできないことがあるのでそこを調べながら進めています。

――前作から月日が経ってプラットフォームの性能も変わってきたかと思うんですが、それによってできるようになったこと、逆にたいへんだったことなどありますか?

上田
 できるようになったことで言えば、今回から“Unreal Engine(アンリアルエンジン)”で開発していることです。これまでだと、いろいろなもの……たとえば画面を作る上でのレンダリングや物理エンジン、キャラクターを動かすためのシステムなどは、自前で用意しないといけなかったんですけど、それらがすべてではないにしてもある程度揃っている状態からスタートできるようになりました。自分たちの独自性の部分に注力して作っていけることは、これまでと少し違うところですかね。

 たいへんなところも、そのUnreal Engineを使うということなんですが。あとマルチプラットフォームであるところですね。これまではプレイステーション専用のゲームとして作ってきたんで、ほかのプラットフォーム向けにそれぞれにチューニングするのはたいへんですね。

――マルチプラットフォームにしようっていうのは決めていたことなのでしょうか?

上田
 これまで自分たちのゲームはプレイステーションを持っていないとできなかったわけですが、そうじゃないプレイヤーにも体験してほしいという気持ちがありました。せっかく独立しましたし、まあやらない理由はないですよね。

――デザインに関してもおうかがいしたいのですが、この主人公のロボットに『人喰いの大鷲トリコ』みたいな少年らしさを感じるという話が編集部の中で出たのですが、上田さんの中で主人公の人物像について考えかたはありますか?

上田
 とくに今回は年齢設定はないのですが、あんまりヒーローヒーローしすぎないというか。ヒーローとして描いているわけではないので、あくまでプレイヤーのアバターとして存在するキャラクターなので匿名性があるように作っています。

 とはいえあまり個性がないと、キャラクターとしてはどうかなとは思いますけど、個性が強すぎても……ということで、その辺のバランスはとっています。
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――では、ロボットのデザインはいかがでしょうか。

上田
 主人公と同じですね。あまりキャラクターナイズされたようなものだけでもいけないですし、かといって特徴がなく、プレイヤーが思い入れを感じられないようなものにならないようないいバランスで、自分なりのいいバランスを追求しています。あとはやっぱり、“リアリティ”というのは自分の中で1番重要だったりするので。

――リアリティですか。

上田
 たとえば質量だったり、動きだったり、そういったものが現実的に不自然ではない範囲でデザインしています。色もそうですね、あまりカラフルなものは、この世界にそぐわないのであれば、色は減らしたりとかくすませたりします。かといって背景になじみすぎてしまうと、プレイヤーキャラクターとして見失ってしまったりとかする場合もあるので、そこはリアリティと、記号的なもののバランスをうまく取りつつ作っています。
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――今回の主人公も質量を感じるというか、ロボットらしく動く姿が特徴的に見えました。走ってもいましたね。

上田
 そうですね。運動性能は多分、これまでのキャラクターよりも随分高いとは思います。

――プレイボリュームとしては、これまでの作品と比較していかがですか?

上田
 これまでと同じくパズル要素が入っているので、わからない人はそこですごく時間を使ってしまいますし、わかる人はすんなり進んでいけるので、なかなか自分たちもトータルのプレイ時間がどれぐらいになるのかというのは最後の最後まで読めないところはあるんですが、これまでの過去作とだいたい同じようなプレイボリュームになればいいなと思って作っています。

――過去作との繋がりみたいなもはあったりしますか?

上田
 これまでのタイトルもそうなんですが、毎回新しく作るときは過去作との繋がりはとくに考えずに、そのゲーム主体で、“このゲームが1番より良く体験できるような世界”として作っております。その中で、「これとこれってちょっと繋がったりすると、ファンの人たちがちょっと興味持ってくれるかな」と思う場合はそういうものを入れることはありますが、基本的にはまったく新しい世界として作っています。

 繋がりを感じてしまうのだとしたら、たとえば巨大なものの表現など、自分が好きなものの共通性に「同じ世界じゃないかな?」と感じられるんじゃないのかな、とは思います。

――基本的には初めての方もぜひ、ウェルカムな作品になっているということですね。

上田
 はい、もちろんです。

――ありがとうございます。すごく楽しみにされている方が多いタイトルですので、メッセージをいただけますでしょうか。

上田
 少し時間が空いてしまいましたけど、前回情報をお届けしたタイミングが2年前で、今回2年後にようやく正式タイトルが発表されました。何かしらリアクションだったり応援されたりすることで、僕もそうですがチーム全体の士気やモチベーションも上がって、より良いものになっていくと思いますので、ぜひ引き続き応援よろしくお願いします。
『ICO』『ワンダ』『トリコ』の上田文人氏新作『gen ATLAS(ジェンアトラス)』インタビュー。SFオープンワールドだけど「オープンワールドを作ろうとしたわけではない」
Summer Game Fest 2026の会場内にはロボットの頭をモチーフにしたオブジェが登場! 登れるようになっており、上田氏にも登っていただいた。
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