2026年2月13日に行われた“State of Play”で、集英社ゲームズとアクワイアの新作『YAKOH SHINOBI OPS』(以下、『YAKOH』)が発表された。対応ハードはPS5、PC(Steam)で2027年発売を目指している。
本作は最大4人での協力プレイを前提とした、見下ろし型の忍者ステルスアクションゲーム。『天誅』(※)シリーズの開発で知られるアクワイアの新たな忍者ゲームということで、その魅力や開発の裏側についてパブリッシングを務める集英社ゲームズと、開発を務めるアクワイアのキーマン4名に話を聞いた。
※『天誅』……『立体忍者活劇 天誅』(プレイステーション/1998年発売)を皮切りに2010年ごろまで展開していた時代劇風忍者アクションシリーズ。日本が舞台で、忍具や罠、ステルスキル“忍殺”を使ったアクションが特徴。別パブリッシャーとの開発作品として『忍道』シリーズがある。モーションアクターとして俳優のケイン・コスギさんが参加していたというのは『天誅』プチトリビア。
山本 正美 氏(ヤマモト マサミ)
集英社ゲームズ チーフエグゼクティブプロデューサー。『天誅』シリーズではプロデューサーを務めていた。(文中は山本)
林 真理 氏(ハヤシ マコト)
集英社ゲームズ シニアプロデューサー。本作では集英社ゲームズ側でプロデューサーを務める。(文中は林)
遠藤 琢磨 氏(エンドウ タクマ)
アクワイア代表取締役社長。『天誅』シリーズの生みの親で、当時ディレクターを務めていた。(文中は遠藤)
平位 拓海 氏(ヒライ タクミ)
アクワイア、および『YAKOH SHINOBI OPS』制作ディレクター。(文中は平位)
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『天誅』から始まる信頼。アクワイアだからこそ頼めた“新しさ”
――まず、『YAKOH』のプロジェクトがどのように始まったのかを教えてください。
遠藤
アクワイアが集英社ゲームズさんに企画を持ち込んだのがスタート地点になります。最初は“『天誅』の精神的続編”のようなものを提案したのですが、山本さんと林さんから「新しいものを作りたい」というフィードバックを受け、これまでとは違うステルスアクションを目指すことになりました。
林
企画をいただいたとき、ちょうど社内で「和物をやりたい」、「協力型のゲームを作りたい」という話が出ていたんです。そんなときに遠藤さんから、まさに和風の企画書をいただいたので、渡りに船といった感じでした。アクワイアさんは新しいものに向かって試行錯誤ができる会社さんなので、和物に協力型という要素を加えられるかと相談し始めたのが、スタートでしたね。
――山本さんと遠藤さんのタッグといえば、『天誅』を思い浮かべますが、やはり本作も『天誅』の息吹があるタイトルだったんですね。
山本
そうですね。そう考えるとすべてのスタートラインは『天誅』、私と遠藤さんとの出会いにあるのかもしれません。私たちが出会ったのは、私がソニーミュージックエンタテインメント(SME)在籍時に行われたクリエイターコンテストでした。それがすごくおもしろそうに見え、担当させていただき『天誅』が生まれたんです。
『天誅』は日本でもヒットし、それ以上に海外、欧米ですごく受け入れられました。私にとっては初めてのグローバルヒット作品だったので、遠藤さんと出会えたこと、そしていっしょにゲームを作れたことはめちゃくちゃいい思い出として残っています。
遠藤
懐かしいですね。血の表現がわりと鮮烈なゲームだったので、表現の面で苦労したりもしましたね(笑)。
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山本
切断表現とか、国によって規制が異なっていましたからね。
そうして私と遠藤さんとのつながりが始まり、『勇者のくせになまいきだ。』や『100万トンのバラバラ』、『rain』をいっしょに作ってきました。そういった経緯もあって、何かを作りたい、何かを表現したいと考えたときに、真っ先に思い浮かぶのは遠藤さんのチーム、株式会社アクワイアさんです。アクワイアさんとだったら、もっともいい状態にしてくれると思っています。
なので今回もせっかくなら、これまでのIP(知的財産)をそのままやるのではなく、新しいものに取り組もうと。それこそが、設立してまだ数年の集英社ゲームズのやるべきことなのではないかと。それで林さんと平位さんのコンビで開発を進めてもらっています。
排除できない敵に追い続けられる緊張感
――本作の開発コンセプトや目指している体験について教えてください。
平位
目指しているものは、“最後まで緊張感が持続する、協力型のステルスゲーム”です。敵をこっそり排除するというのはステルスゲームのおもしろい部分でもありますが、そこだけにフォーカスしてしまうと、チーム内にうまいプレイヤーがひとりいるだけで、敵を排除し尽くしてしまい、ステルス不要なゲームになってしまいます。
なので本作ではオンラインでの協力を前提とした、最後まで緊張感を楽しめる、新たなステルスゲームを実現したいと考えています。
――敵の排除がまったくできないわけではないんですね?
平位
“忍殺”を得意とする忍者であったり、入手した忍具を利用することで、忍務中に登場するほとんどの敵兵を排除することは可能です。ただし、敵兵のあげる叫び声や、現場に残される血溜まりなど、敵兵の排除には気付かれてしまうリスクが伴います。また、本作には排除することができない“死なず者”という特殊な敵兵が登場し、さまざまな手段で執拗にプレイヤーを追跡してくるので、最後まで緊張感を持ったプレイが楽しめます。
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プレイヤーを執拗に追いかける死なず者。
――ステルスアクションで絶対に倒せない存在が出るというのは珍しいですね。
平位
この死なず者こそが、プレイヤーたちに最後まで緊張感をもたらす役割を担っています。忍殺することは出来ませんが、煙幕によって視界を遮ったり、罠を仕掛けて足止めをすることで追跡から逃れるチャンスが生まれます。
林
死なず者はステージに最低1体出現しますが、まずひとりでは対応しきれません。最大4人プレイなので、4人で死なず者にどう対処するか、その方法もみんなで協力して考えていくことが重要です。
――ひとりが囮になって死なず者を引きつけ続けるという戦術が思い浮かびましたが、これは現実的ではないのでしょうか?
平位
不可能ではありませんが、死なず者たちはさまざまな妨害能力を持つうえに、ステージ内には多くの敵兵や罠が待ち構えているので、引きつけて逃げている最中に罠を踏んで力尽きてしまうといったシチュエーションも大いに起こり得ます。
また、本作ではプレイヤーの視野が限られています。具体的にはプレイヤーキャラクターの正面、明るくなっている所しか見えていません。そもそも、いま追われているのか、敵を撒いたのかを確認することも難しいのが本作の特徴ですので、背後から迫ってくる死なず者を単独で引きつけ続けるといったプレイは困難を極めると思います。
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山本
最善は死なず者に見つからないことですね。忍びですから。神出鬼没が大事です。
――かなり手に汗握るプレイが楽しめそうですね! しかし隠れているプレイヤーを探し、追跡するAI(NPC)の設計は難しそうですね。
平位
難しいです。めちゃくちゃ苦労しています(笑)。ステルスゲームのいちばんおもしろいところは「NPCをうまく出し抜いた」という快感が得られた瞬間だと思っています。難易度を上げるだけなら、敵NPCにPCの座標情報を渡してしまえばいいのですが、それでは我々が目指しているギリギリの緊張感は得られません。この調整がとにかく難しいですね。リリースまでずっと調整し続けることになると思っています。
林
ちなみに死なず者は、見た目が同じでも性格・性能がプレイごとに変化します。血の匂いに強く反応する死なず者、音に敏感な死なず者、最初に見つけたプレイヤーにとにかく粘着する死なず者などですね。プレイ中にその特性を把握して、対処していくのもひとつの楽しみとなるよう設計しています。
――プレイごとに異なる体験ができるようになっているんですね。そのほか、開発において苦労した点がありましたらお聞かせください。
平位
アクワイアはマルチプレイの開発実績がそこまで豊富ではないので、オンラインシステムの開発に苦労していますね。とくに同期ズレ。たとえば誰が見つかった、倒されたという情報は、協力プレイをするうえでとくに重要な情報となり、これがズレてしまうとプレイ体験が大きく損なわれてしまいます。ここを解決すべく、いまエンジニアたちが必死に最適化してくれています。
もうひとつ、さきほどちょっと紹介したプレイヤーの視野も苦労している点ですね。
――キャラクターの正面しか見えないようになっているというやつですね。
平位
“Fog of War”と呼ばれる、『スタークラフト』や『エイジ オブ エンパイア』などのRTS(リアルタイムストラテジー)で用いられるゲームシステムですね。視界にとらえている敵しか見えないので、臨場感・緊張感を生むいいシステムになっているのですが、これが難しい。
というのも、本作のマップは平面ではなく立体的なんですね。ただ高低差があるだけでなく、建物も複数階構造になっているものがあります。この状況で立体的に視野を計算し、それを見下ろし型の視点でわかりやすく見せるというのが本当に難しいんです。
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屋内に忍び込むことも可能。隠れる場所も多いが、物が多く視界が広く取れない。
――たしかに、上下階にも分かれている建物内で、本来ならば見えるであろう範囲というのを正確に表現するのは難しそうですね。
平位
上下階という概念をなくせばもっとラクになるのですが、それでは城の最上階にある天守閣に忍び込むというステルスミッションの楽しみがなくなってしまうじゃないですか? なので、マップの立体構造と視界表現の両立を目指しています。
林
こだわって作っているのは屋内だけではありません。たとえば天守閣に忍び込む場合、門を開けて1階から2階、3階と進んで天守閣まで行くこともできますが、壁伝いに瓦屋根を走って2階から忍び込むこともできます。
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マップが立体に作られているからこそできるパルクールアクション。移動としてはもちろん、敵から素早く逃げるのにも有効。
山本
ほんとに立体的で、自由に動ける感じです。忍務をこなすにあたって、どういうルートで忍び込むかを考え、4人で相談していくのも楽しいですよ。
登場忍術と忍具は地味だけど、これがリアルな忍者。『天誅』の開発秘話も
――忍者の能力や使える忍具について教えてください。
平位
本作には異なる能力を持った複数の忍者が登場します。また、忍者たちが装備できる忍法帖というアイテムが登場します。忍法帖とは、忍務に持ち込める忍具と、忍者の能力を強化、変化させる“忍者パーク”がセットになった、忍者の強化要素です。
プレイヤーは忍法帖を最大3つまで持ち込むことができ、忍法帖はひとつにつき最大3つの忍者パークと忍具ひとつがセットになっているので、最大9つの忍者パークと、3つの忍具を持ち込めます。忍法帖は忍務をクリアーするたびに達成状況に応じてランダムで付与されます。中身はランダムなので、忍務をくり返しプレイする度に、新しい組み合わせの忍法帖を入手するチャンスがあります。
――『天誅』では五色米というニッチな忍具が登場していたのが印象的でした。本作にもこだわりの忍具は登場するのでしょうか?
平位
まだまだ開発途中ですが、たくさんの忍具を用意しています。そしてお話にあった五色米も、実装予定です。これは遠藤からきいた裏話ですが、じつは『天誅』開発時、五色米は開発者から不評だったそうです。そして今回『YAKOH』に五色米を入れたいと提案した際にも、チーム内から「なぜ?」と言われました(笑)。
――開発チームから不人気というのは、実装が難しいからでしょうか?
遠藤
いえ、これといった効果がないからです(笑)。目印として設置しておける忍具でしたが、だからどうしたといった感じで、ただ忍者気分を味わうためだけの存在だったんですよね。
山本
『天誅2』(※)では、マップに五色米の場所を表示するようにしましたが、1作目では本当に意味のない忍具でしたね(笑)。
※『天誅2』……『立体忍者活劇 天誅弐』(プレイステーション/2000年発売)。
遠藤
だから開発者からは「なんでそんなもの入れるんだよ」と言われ、無意味な作業だと思われて不人気だったんです。
平位
『YAKOH』に登場する五色米は本作ならではの役割を持たせて実装しようと思っていたのですが。企画書に記載されていた五色米の名称だけを見た開発チームから不評を買ってしまったというオチです。
――忍術はどのようなものが登場しますか?
平位
火を吹いたり、大ガマを口寄せするといった、フィクション色の強い派手な忍術は登場しません。誇張はしつつも、現実的な忍術が本作に登場します。たとえば高所への立体的な移動を可能とする“鈎縄”や、壁を叩き壊して本来通れない道を開通させる“破壊槌”といったものも忍術として扱っています。見た目こそ地味ですが、ゲーム内では強力な効果を持っているのがポイントです。
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遠藤
『YAKOH』に登場するのは、『天誅』と同じく現実的な忍者です。スーパーパワーを持ったスーパーヒーローなどではありません。『天誅』が忍者ファンの方から支持を受けたのは、そういったリアルな部分もあってのことだと思うので、本作はそこを踏襲しています。
ステルスアクション好きへの挑戦状。難しく、でもおもしろく
――ゲームの流れについて教えてください。
平位
プレイヤーは忍者として依頼を受け、その依頼を達成するべく任務地に忍び込み、課された忍務をこなしていきます。敵武将の暗殺や敵陣地の拠点破壊、敵国に捕らえられた人質の救出、機密文書の窃盗など、忍者が実際に行っていたであろうミッションをたくさん用意する予定です。
また、プレイするたびに敵武将の場所が変わったり、敵の配置が異なったり、道中で得られる忍具がランダムで変わったり、死なず者の性格が変わったりするため、同じ忍務でも毎回新鮮な気持ちで遊べるように工夫しています。
――忍務を達成したらその瞬間にクリアーとなるのでしょうか? それとも脱出するまでが忍務になるのでしょうか?
平位
脱出までが忍務ミッションです。脱出後の評価は忍務の達成進捗に加え、生還した人数によっても変わるので、可能ならば全員生還できたほうが、より多くの報酬を得られます。
ただ、ひとりでも脱出さえすれば評価が上がるため、状況によってはとにかく誰かひとりを逃がすという選択もアリです。
――もしかして、けっこう難しいゲームですか? 難易度としてはどのような感じでしょうか?
山本
難易度としては、ゲームが得意なプレイヤーであっても4人集まってクリアーするのは初見ではかなり難しいバランスにしています。開発ビルドを何度もプレイしていますが、まだクリアーできていません(笑)。ステルスアクションやマルチプレイが得意な方には、ぜひ挑戦していただきたいですね!
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――それはぜひ挑戦してみたいですね。ベータテストなどを実施する予定はありますか?
平位
いつになるかはわかりませんが、テストは実施する予定です。難易度については、そこでいただいたお声をもとに最終調整をしていく予定です。
――なるほど。しかしメインとなる敵が排除できないゲームの難易度を調整するのは難しそうですね。攻撃力・耐久力というわかりやすい調整パラメータがないので。
平位
おっしゃる通りです。なので『YAKOH』では、敵や罠の配置数やステージ内で入手可能な忍具の数、死なず者の行動を制御する細かい数値に手を入れて難易度を調整していますが、プレイヤーにどこまで体感差が生まれるのか、それがおもしろく感じられるかが課題です。テストの際には、ぜひ難易度に関するご意見をみなさんからいただきたいですね。
――ちなみに、ソロプレイも可能なのでしょうか?
平位
マッチングせずにプレイすることは可能ですが、基本的には4人プレイ用の難易度だと思っていただければと思います。プレイヤーの習熟度が極まってきた際に、「人数を減らしてチャレンジしてみよう」というくらいの難しさを目指しています。
――最後に期待している読者へメッセージをお願いします。
平位
まだまだ開発途中ですが、忍者×マルチプレイというところで、おもしろいゲームになると思います。子どものころ、鬼ごっこやドロケイが好きだった人は、ぜひプレイして童心に返っていただきたいです。
林
ぜひこのゲームで忍者になりきってほしいと思います。マンガやアニメに出てくる忍者のように、魔法のような忍術を使えるゲームではありません。しかし「本当にこんな忍者がいたんじゃないか?」と思えるリアルな体験ができるように、鋭意開発中ですので、お楽しみにお待ち下さい。
山本
昨今では、欧米のクリエイターが日本をテーマにしたコンテンツを作り、日本人が遊んでも違和感なく楽しめる高クオリティなゲームが出てきています。そんな中、『YAKOH SHINOBI OPS』は日本人のクリエイターが日本のカルチャーをしっかり理解した上で作り出す、まったく新しい忍者のコンテンツになると思います。ぜひご期待ください。
遠藤
『YAKOH SHINOBI OPS』はアクワイアが贈る久しぶりの忍者アクションです。そこには挑戦もあるので、そこをしっかり越えて、『天誅』『忍道』に続く3作目の忍者タイトルとして、『天誅』を超えるような成功を収められるとうれしいです。そして『天誅』ファンに向けてひとつ。『天誅』の復活も諦めたわけではなく、夢は持ち続けています。実現難易度は高そうですけどね(笑)。