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夏川椎菜が語る創作の視点、TikTok活動。4thフルアルバム『CRACK and FLAP』全曲紹介を含む、2万字超で綴るアーティスト夏川椎菜の思考

夏川椎菜が語る創作の視点、TikTok活動。4thフルアルバム『CRACK and FLAP』全曲紹介を含む、2万字超で綴るアーティスト夏川椎菜の思考
 精力的にアーティスト活動を続ける、声優・夏川椎菜さんの4thフルアルバム『CRACK and FLAP』が、2026年2月4日にリリースされる。

 かねてからファンであることを公言し、夏川さんの音楽性にも大きな影響を与えているという4人組バンド“ShiggyJr.”、下北沢を拠点にライブハウスシーンで注目を集めるオルタナティヴ・ロックバンド“レイラ”、つぎなるステップへ進む際には必ず楽曲で後押しをしてきた田淵智也さん(UNISON SQUARE GARDEN)など、アーティスト提供楽曲を含む新曲6曲に、ライブ楽曲としてすでに定番になりつつある
『シャドウボクサー』、ストイックでどこか不穏な世界観を表現した『「 later 」』の2枚のシングル楽曲ほかを加えた全10曲を収録。
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『CRACK and FLAP』完全盤
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写真左:『CRACK and FLAP』初回盤、写真右:『CRACK and FLAP』通常盤
 多くの楽曲で夏川さん自身が作詞を務め、立ちはだかる問題や困難にどう立ち向かうのかをさまざまな視点から書いた、立ち向かう人々と並走するようなアルバムになっている。

 そんな4thアルバムについて、夏川さんにインタビュー。アルバムに込められた思いや、ご自身しか歌えない楽曲、創作者として根底に存在している考え、そしてアーティスト以外の活動についてなど、たっぷりと聞いた。
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殻を破るだけではなく、そこから羽ばたいていく4thアルバム

――夏川さんの4thアルバムが、2月4日にリリースされます。3rdアルバム『ケーブルサラダ』からは約2年半ぶり、ミニアルバム『Ep04』からは約10ヵ月ぶりのアルバムとなりますね。 

夏川
『Ep04』から約10ヵ月ぶり! そんなに期間が空いたんですね!

――意外と期間が空いていましたね。そんな4thアルバムですが、まずはコンセプトからお聞きできますか?

夏川
ここ数年、ずっとリベンジライブをやっていて、過去においてきたものを清算する日々を過ごしていたんですが、そのおかげで、ちゃんとけじめがついたというか、自分の中で悔しかったものを全部やり切ることができた感覚があったんです。ひとつのフェーズが終わったような。そこから新しいフェーズに移行したときの初めての活動がこのアルバムになるので、リスタート感を出せたらいいなと思いながら、アルバムのコンセプトを考えました。

 コンセプトとしては、アルバムのタイトルにもなっている“CRACK and FLAP”です。殻を破るだけではなくて、そこから羽ばたいていくところまで見せたい。脱皮するような感覚ですよね。このアルバムには、そんな想いがこもっています。

――夏川さんにとってのネクストステージになるようなアルバムであると。

夏川
そう思っていただけたらいいなと思います。めっちゃ新しいことをするというわけではなく、いままでやってきたことの延長ではあるんです。ただメンタル的なところで、もう少しいままで見てきたものよりも先を見て、明確にゴールを見ながら羽ばたいていく感覚ですね。

 いままでいろんな世界を見ながら触れてきましたけど、ここからはある程度、「私が選ぶ道はここである」というのを定めた上で活動していきたいなと。

 その思いのもと、スタッフさんたちはもちろん、ヒヨコ群(※)も一丸となって、同じゴールを見て進んでいきたいね、という決意を表すようなアルバムになったらいいなと思って作りました。
※夏川さんのファンの皆さんの総称。[IMAGE]
――リベンジライブを含め、さまざまな道を模索してきたことで、自身の道はこれだと定めることができて、その道を歩む覚悟もできたと。

夏川
そうなんです。私はいま「武道館でライブをしたい」と公に言って活動しているんですけれど、その目標に向けた道筋“Road to 武道館”のようなものをちゃんと作れたというように思っています。

――そんな4thアルバムの収録楽曲を聴かせていただいたのですが、バンドサウンドがかなり強くライブで盛り上がることが想像できる印象でした。そうした構成が、夏川さんのネクストステージの方向性にもなっているのでしょうか?

夏川
おっしゃる通りです。3rdアルバムまでにさまざまな曲調に挑戦して、それをライブで、バンド形式で披露することをずっと続けてきました。そこから、さらに焦点を絞ってバンドでライブをするときに映える楽曲を増やしていこうということで、今回はバンドサウンドを意識的に揃えたところはありますね。

――2ndアルバムの『コンポジット』でバンドサウンドが増え、3rdアルバムの『ケーブルサラダ』でバンド感がより強くなった印象でしたが、そこからさらに強くなっているので、個人的には驚きました。一般的なアーティストで言うと3rd、4thアルバムあたりでガラッと印象を変える傾向が多いと思うんですが、むしろバンドサウンドのギアを上げていくのが夏川さんの意志であると。 

夏川
はい。4thに至るまでに育ててきたものが、バンドサウンドとしての強さだったりするのかなと思いますし、今回のアルバムではそこをさらに盛り上げていけたらいいなという想いがあって。

 ですので、新しいチャレンジとして、『労働奉音』や『Silhouette』みたいなダーク寄りのテイストの楽曲や、オルタナティヴ、ほかにはディスコっぽいノリのいいロックを入れてみたりしているんですが、全体的にはいままでやってきたことのレベルを上げたものというイメージですね。

――『Ep04』は、当時のインタビューで「EPは何をしてもいいと考えていて」とお話されていた通りいろいろな曲が入っていましたが、今回は先ほどのコンセプト通りの内容ですね。

夏川
EPは、コンセプトに縛られずに1曲1曲をアピールしていく形態なのかなと感じています。アルバムは、やっぱりコンセプトのもと、まとまっているものがいいなと思っていますので、打ち合わせの段階からサウンド感を揃えようと話していましたね。

全曲紹介:夏川さんの音楽性に影響を与えたアーティストからの楽曲提供も

――では収録楽曲の制作時のエピソード、楽曲のポイントなどをもお聞きしていきます。まずは、8thシングルとしてもリリースされている『シャドウボクサー』。こちらは、作曲を担当された田淵智也さんらしい楽曲で、コーラスとの掛け合いも相まってライブでもすごく盛り上がる仕上がりになっていますよね。
夏川
アルバムの1曲目ということで、最初から顔面をぶん殴りにいくような構成になっています(笑)。いまの私の哲学みたいなものが全部ぶち込まれている楽曲になっていまして、私の音楽性的にもこういった楽曲がすごく多いし、自分の得意としているタイプかなと。

 あと、これは『シャドウボクサー』を作っているときにすごく感じたことなんですが、たぶん、私しか歌えない楽曲だなと。この『シャドウボクサー』を乗りこなせるのは、地球上で私しかいないなということを確信できたんです。

 自分で作詞をして、自分で歌いやすいようにイジっているからということもあるんですけど、自分の強みや、ちゃんと武器になっているもの、唯一無二のものを出せていると確信できる楽曲ですので、自信を持って世にお届けできますね。

――とてもかっこいいパワフルな楽曲ですよね。ただ歌っていると非常に疲れそうだなーと、お聴きするたびに思っています。

夏川
疲れますよ! 毎度、本当に息も絶え絶えでやっています(笑)。

――やっぱりそうなんですね(笑)。そんな全力全開な楽曲が1曲目を飾り、2曲目として『ミエナイテキ』が続きます。こちらも疾走感溢れる楽曲な印象です。

夏川
この楽曲では、けっこう新しい挑戦をしていて、ストレートな明るいロックになっています。タイアップで使われたり、ヒーローもののオープニング曲になっていてもおかしくない直球のメロディーですね。歌詞やアレンジで私らしさみたいなものも加えていただきましたが、いままであえてやってこなかったジャンルではあると思います。

 くり返し聴いてよさがわかるスルメ曲ではなく、1回ですぐによさが伝わる楽曲。天邪鬼なので、そういった楽曲はやってきていなくて。だからこそ、ここにきて逆に新境地になった楽曲ですね。

 作曲は、『グルグルオブラート』や『That's All Right!』をはじめ、いつも担当してくださっている山崎真吾さんです。夏川らしさがふんだんに盛り込まれたうえで、新しいことに挑戦しています。

――ほかの楽曲でも感じたのですが、夏川さんの楽曲の歌詞には夏川さんらしいフレーズがたくさん入っている印象があります。作詞をお願いする際に、夏川さんからキーワードは提案されているのでしょうか? それとも、作詞家さんたちが夏川さんらしさをわかっているのでお任せしているのでしょうか?

夏川
基本的に、書いていただいているときはお任せしていますね。「このフレーズを入れてほしい」といったリクエストはしないです。今回は、『CRACK and FLAP』というタイトルに込めた思いとかはお話したうえでお願いしていますが、とくに山崎さんは本当に自由に書いてくださる方なので、何かお願いをしたことはないです。

 この楽曲はコンペで選びまして、コンペでの仮歌の歌詞をそのまま採用した形なんですが、本当におもしろくて。「膝カックン」とか、「涙(ビーム)が出ちゃう」とか(笑)。細々としたワードのチョイスがチーム的にもクリティカルで、「これはぜひこのままやろう」って爆笑しながら選んだ楽曲ですね。

――ルビが振られていますが、まったく違うように読んでいるものがあったり、とてもユニークですよね。そういった点を含め、皆さんが夏川さんらしさを理解して出していらっしゃる気がします。

夏川
山崎さんとは本当に何度もお会いしていますし、いろんなお話をさせていただいているので、夏川らしさをバッチリ当てながら書いてくださっているのかなと思います。

 目を強調したり、私はすごく寝相が悪いという話をいろんなところでしているんですけど、寝相悪い感じが出ていたり。ワードのチョイスとかも私とけっこう似ていると思います。そもそも、そんなに遠いところにはいない作家さんだなとは思っていますね。

――では続いて、『ライクライフライム』。まさにライムに乗りながら、その中で夏川さんらしい歌詞が登場しています。

夏川
HAMA-kgnさんが作ってくださった曲に私が歌詞をつけるということは、1stアルバム『ログライン』からずっとやってきました。その総決算ではないですが、HAMA-kgnさんの楽曲はだいたいライムに乗りますね。ずっと韻を踏んでいる感じになりますので、今回もそんな楽曲に仕上がっています。ただこの楽曲、タイトルが覚えにくいみたいです。チームのみんな、タイトルを言うとき、「ライフ……ライクライム」みたいに間違っています(笑)。

――(笑)。タイトルから韻を踏んでいて、とても心地いい楽曲ですよね。続けて、『メイビーベイビー』。ロック調ではありますが、少しスローテンポなのかなというイメージです。
夏川
これが、新しい挑戦として挙げていた、ちょっとディスコっぽいロックというか。モチーフになる年代やジャンルが、若干ほかとは異なる感じの楽曲になっています。

 私がすっごく好きな“Shiggy Jr.”というバンドさんがいらっしゃるんですけど、そのバンドの原田茂幸さんに曲を書いていただいた楽曲になりますね。

――では、ご指名に近い形ですか?

夏川
そうです。お願いをしてみたら、もしかしたら書いてくださるんじゃないかということで、バカなふりして言ってみようと(笑)。で、本当にバカなふりして言ってみたら、ご快諾いただけたんです。

 デビューが決まったときに、「いろんな音楽を聴かなきゃな」ということで、勉強としてさまざまな音楽を聴いて、そのときに“Shiggy Jr.”で出会って。

 歌をどうやって歌ったらいいのかわからないときに、“Shiggy Jr.”のボーカルの池田智子さんの歌を聴いて、「これだ! いったんこれを目指そう。私がやりたいのはこれだ」となったんです。ほんとにすごく思い入れの強いバンドさんで。

 ですので、ずっとお願いしたいなと思っていたんですけど、タイミングもなく。皆さんも一度活動を休止されたりもして。いつお願いしようかなと思っていたところ、2024年に活動を再開されて、ちょうどタイミングよく私もライブに行けまして。
 
 そして、ライブに行ったときに、私が
気持ち悪いブログを書いたんですよ。“Shiggy Jr.”さんのライブがすごくよかったという、三行ぐらいで言えてしまうことを、ものすごい長文ですごく気持ち悪く書いたのですが、それが“Shiggy Jr.”の皆さんに届いてしまって(笑)。

 それを機にご縁もできたので、タイミング的にはいまがベストなのではないかということでお願いしました。

――気持ち悪いブログ(笑)。ではShiggy Jr.”さんのライブには、一般のお客さんとして足を運ばれたのですね。

夏川
そうです、そうです。本当は、活動を再開されてからライブに足を運ぶために何度か調整はしていたんですけれど、なかなか叶わず。ついにたまたま参加できる機会があり、「よっしゃ、今日行くしかないね」と思って行ったらいちばん聴きたかった曲が聴けて。

――なるほど。

夏川
もう、ホカホカで。帰りの電車で10000字くらいのブログを書くっていう気持ち悪いオタクみたいなことをして。実際、オタクなんで。

――熱意溢れるものがあったのですね。それが、届いた結果であると。

夏川
 すばらしい愛の結晶です!(笑)

『コバンザメの憂鬱』は、夏川さんが考える最悪な布陣のもと、ご自身の苦悩が込められた問題作

――そして、5曲目が『コバンザメの憂鬱』。

夏川
 はい。問題作。
――初めて聴いたときに「これは……?」って思ったんですが、そういう認識でいいんですよね?(笑)

夏川
問題作です(笑)。ヒヨコ群に向けてクレジットを発表して、担当してくださった作曲家、編曲家さんを公開したら、すごい反響がありました。

 あの田淵智也さん(UNISON SQUARE GARDEN)が曲を書いてくださり、編曲はおなじみ川口圭太さん、作詞は夏川がやっているという。考えうる限り、最悪の布陣です。

 本当に誰も止めなかったんですよ。誰も止めないまま、この3人の悪ふざけを全部受け入れた結果の楽曲です(笑)。

――私も驚きました。楽曲も、なかなか聴いたことがないような仕上がりでした。

夏川
そうですよね、新しいですよね。オーダーとしては、「ラップが入るような、少しダウナーだけどポップな楽曲がほしいんですよね」という話を以前から田淵さんにお願いをしていて、その結果できた楽曲にはなりますが、オルタナもオルタナで。本当に、誰が歌えるんだって思います。私しか歌えないなと思う楽曲ですね。

――若干マイナー調で、不協和音にも聴こえるような楽曲ですよね。

夏川
本当に絶妙なバランスで成り立っています。バンドのみんながヒイヒイ言うやつです、これは(笑)。

――ギターソロも用意されていますし。それと、「以上、2分59秒、コバンザメの憂鬱」という締めもすばらしかったです。

夏川
いいですよね、ちょっと独特で。歌詞カードにも書かれていないし、急になんかしゃべりだしたと(笑)。

――めちゃくちゃカッコよかったです。夏川さんやスタッフの皆さんのあいだでも、この楽曲は問題作扱いなんですね。

夏川
そうです、問題作です。でも、本当に早くみんなに聴いてほしいな。

 この楽曲の歌詞に関しては、最近私はTikTokを始めたのですが、「やっぱり肌に合わねえな」と思ったことを詰め込んでいます。

 「肌に合わねえな」とは思いつつ、やっぱり若い方もヒヨコ群になって欲しいし、ということで「諦めてやるしかねえな」となっています。そういう世界も必要じゃん、それで拓いていく世界、踊ることで拓く世界もあるから、といったことを表している歌詞になっています。

 ですので、TikTokでがんばっている私の姿を見てくれているヒヨコ群は、クスクス笑いながら楽しんで聴ける楽曲になっているんじゃないかなと思いますね。

――ああ、なるほど。夏川さんのTikTokは私も拝見していますが、めちゃくちゃ合点がいきました。

夏川
そうなんですよ。「やっぱりきちぃな」です。これがすべてです。ここがすべて(笑)。

――「きちぃな」(笑)。とても腑に落ちました! 続けて、『労働奉音』。読みかたは、「ろうどうほうおん」でよろしいでしょうか?

夏川
そうです。「奉音」はほぼ造語ですね。

――そうですよね。調べると、音楽を奉納するという意味で稀に使われるようですが、見慣れないワードですよね。こちらの楽曲も歌詞を含めなかなかの問題作だろうなと感じました。

夏川
“音”に“奉る”ために“労働”するのだということで、私はバンドのことを“ヒヨコ労働組合”(ヒ労組)という少しブラックな呼び名で呼んでいるんですけど、“ヒヨコ労働組合”のために書いた楽曲というか、結果的にそうなった楽曲ですね。

 詞を書くときに、ここではベースの伊藤千明さんを、ここではギターの川口さんを、みたいに思い浮かべて書いた楽曲になるので、ライブでやるときも照明とかで遊んでもらえたらいいなと考えていて。

 私は、“モーニング娘。”さんの
『女子かしまし物語』のような、自己紹介ソングが好きで。全然知らないコンテンツの自己紹介ソングも全部聴いちゃうくらい、すごく好きなんですよ。それを自分たちでもやりたいなという気持ちもあったので、バンドのみんなと一応私のパートも入れて作りました。「全装備 曝け出して 紡いだもん 焼き付ける」のところが私のパートですね。

――ストレートなものではない自己紹介ソングですね。曲調としては、低音が印象的です。

夏川
低音ギターとベースのリフで曲が作られていますね。

――バスドラムもずっと響いていますよね。

夏川
何度聴いてもカッコいい楽曲だなと思います。

――歌詞には“road all”とあります。

夏川
道はすべてという意味ではありつつ、完全に「労働」って歌っています。“road all fall 音”も「労働奉音」で、完全に当て字です。そこも、楽しんでいただけたらなと。
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『Silhouette』は、夏川さんの恥ずかしいエピソードも惜しみなく表現

――そして、『Silhouette』。

夏川
 はい、問題作2。

――こちらも(笑)。すごくインパクトのある歌詞です。

夏川
 そうなんですよ。作曲と編曲を担当してくださった長谷川大介さんにはごめんなさいをしました。「こんなかっこいいサウンドなのに、こんな歌詞にしてごめんなさい」って言ったら、すっごく笑ってくれました(笑)。長谷川さんの楽曲じゃないとできないかも、こんなこと。

――インタビューさせていただくにあたって、1曲ずつインプレッションのようなものを書いているんですが、“体重計、苦悩、ダイエットの歌。それにしてはとてもヘビーなサウンド”と書き綴っていました。

夏川
 「それにしてはとてもヘビー」(笑)。確かに! それはそう(笑)。体重計とか言っているのに、めっちゃヘビー。

 今回、詞を書くときに、自分の人生で起こったこと、いま考えていることを反映すべきだなと思って書いているんですが、この歌詞がまさしくそうで。

 私、本当に太ったんですよ! TrySail10周年の日本武道館ライブがMAXで太っていて。なんで、なんでだよって(笑)。私はあんまり体型が変化しないタイプだったので、本当に気にせずバクバク食べていたら、なんか知らないんですけど、太っていて。

 これから露出も増えるし、ライブもあるし、さすがにこのままの生活ではよくないなと感じました。年齢を重ねると体重も落ちにくくなるとも聞いていて、私もその年齢に差し掛かるので、やるならいまだと思い、ピラティスを始めまして。それで、つぎのライブまでにガーンと落として、なんとか通常通りぐらいにコントロールして、健康に過ごせるぐらいの体重に戻したんですが、そのときのことを歌っています。「どうか気のせいであってくれ」と思いながら体重計に乗った、あの一瞬の経験をこんなかっこいい曲に乗せてしまいました(笑)。

――歌詞を読んでいて、「のっかったお腹」とか、夏川さんはまったくそんなことないだろうになーと思っていたんですけど、そんな背景が……(笑)。

夏川
 そうなんですよ……。2025年に“TrySail”のツアーがありまして、そのときに武道館ライブの映像を使ったんです。オープニングで映像内にいる武道館ライブのときの私が「出航!」と言って幕が上がったら、いまの私が出てくる形で。

 そのとき、過去といまの私で、プラスマイナスで7キロくらい体重が変化していて。画面に映っている私を見て「ぷくぷくだな」と(笑)。恥ずかしかったですが、「いまは痩せたし大丈夫だな」と思いながら臨みました。本当にお恥ずかしい限りでした。

――その演出だと、痩せる前と後でけっこう比較しやすい状況ですね(笑)。

夏川
本当にそうなんですよ! たぶん、みんな思っていたと思います。「なんか、ナンちゃん、丸いな」って(笑)。当時の私は丸いと思っていなくて、たぶん知らないあいだにすごく小さく積み重ねてきた結果が武道館での私だった、みたいな。「なんでだよ!」って感じですよね。

――集大成と言っているところで。

夏川
そうなんですよね。本当に気をつけなきゃいけないなと改めて身が引き締まりました……。

――夏川さんのレアな一面が垣間見えたところで、続いて『「 later 」』です。9thシングルとして収録された楽曲となります。
夏川
自分で作詞をしておいてなんですが、改めて「冷たい歌詞やな」と思いますね。“later”って、別れの挨拶の中でも“もう会わないかも”というニュアンスが含まれている言葉らしくて。帰国子女のスタッフさんにつけてもらったタイトルになるんですが、そういった、冷たい別れの歌というか。

 人って、もう会わないって決めるとき、意外とこのぐらい冷たいこと考えてるよね、みたいな。ドラマティックなこともなく、すっと別れるもんだよね、みたいな。そういう冷たさみたいなものが表現できたらなっていうことで書いた歌詞になります。

――確かに、興味がない感じが伝わってくる気がします。

夏川
 うん。でもけっこう、こういう人多くないですか?

――その状況になったら、このような態度を取りそうだなとは思いますね。

夏川
なんだろう、いまの、割と希薄でも許されちゃう人間関係へのアンチテーゼ、みたいなところもあって。「半端な付き合いをしてるやつ、多くない?」と。それも別にいいんだけど、客観視すると、「このぐらい冷たいぜ」という。それでいいのか、という思いですね。

――その気持ちを可視化された曲ですね。そして、『As You Know』。かなり歪んだ、ディストーションサウンドが印象的です。
夏川
こちらは、“レイラ”というふたり組のバンドさんにお願いして書いていただきました。私の音楽のディレクターの菅原拓さんがラジオでたまたまおふたりの音楽を聴いて、「めちゃくちゃカッコいいじゃん!」となったらしくて。そこから私もオススメされて、聴くようになって。

 ちょうど同じタイミングで4thアルバム作ることになり、「誰かお願いしたい人はいる?」と聞かれて、自然に「“レイラ”さんにはお声がけしようよ」という話になって。それでお願いしたら、ちょうど本当に忙しくなる手前くらいで滑り込めた感じで、作っていただけました。
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――運命的な出会いですね。

夏川
本当にそう思います。そしたら、3曲も書いてくださって。その中から、今回のアルバムのバランスも含めて選んだ楽曲になります。曲調としては、唯一のミドルテンポというか、テンポがおとなしめになっていますね。

――切なくて、気だるい感じと言いますか。

夏川
この楽曲もカッコいいんですよね。“レイラ”さんはオルタナ一本でやっているようなバンドで、おふたりとも私と同世代なんですけれど、おふたりの音楽からたくさん勉強させていただきました。

リードトラック『SCORE CRACKER』では、アルバムに込めた思いを存分に歌う

――アルバムの最後を飾るのは『SCORE CRACKER』です。リードトラックでもありますね。デジタルロックとハードロックの要素も入りつつ、歌詞的には前向きな印象の楽曲ですよね。

夏川
そうですね。わりと前向きというか、“CRACKER”っていう言葉が入っているくらいなので、ホントにアルバムを代表する楽曲にしたいなというか。「このアルバムに込めた思いって、けっきょくこういうことですよ」っていうのを言いたい曲だなと思って、こういう歌詞にしました。

――応援歌としても通じるところがあるのかなと感じました。

夏川
なんかこう、「殻を破って羽ばたく」とは言っているんですけれど、殻の破りかたも、羽ばたきかたも自由だし、そこに決められたルートみたいなものはなくて。それを外れてでもいいからやってみたらいいんじゃない、ということを私はずっと歌っているんですけど、それをまとめたような歌詞になっていますね。

――いまのお話をお聞きして、とても夏川さんらしいなと思いました。

夏川
サビの頭の「あーダメ!てなわけで もうヤメ!」がとくに気に入っていて。この楽曲をいただいたときに、いちばん肝になるのはこの部分だなと。何回も出てくるし、すごく印象的な言葉を当てはめたい、という感じのサウンドだったので、「どういう言葉にしようかな」「ここ次第でだいぶ方向性が変わるな」と思っていて。

 ですので、けっこういろんな案を出したんですけど、なかなかしっくりくるものがなくて。最終的に、すっごいシンプルだったんですけど、こうなりましたね。もう、ちょっと諦めかけて、「いい言葉ねえわ。もう無理やわ」となったときに、「あーダメ……、もうヤメ……、これでいいじゃん!」となりました(笑)。

――そのときの感情がピッタリ当てはまったと。すごく心情が伝わりますし、言葉としてもわかりやすいです。

夏川
リズムもリフレインして、わりとみんなで歌えるような場所があるんです。「あああ、ああダメ。ももも、もうヤメ」みたいな。そんな形で歌えそうなところがあるので、造語とかも考えたんですけど、みんなでそういう風に叫ぶのって、不思議な多幸感があるというか、儀式っぽいけど、いいかなと。現場っぽいなと思って。

――ヒヨコ群の皆さんといっしょに。

夏川
そうそう。みんなで前向きに諦めるっていうのが、すごく私っぽいというか、私が積み上げてきた、ヒヨコ群と私の関係性っぽいというか。

――言葉としては諦めですが、みんなでやることによって、前向きになれるような。

夏川
そうです。みんなで諦めたら、なんかちょっと進めてる感じがする、みたいな。

――この曲はMVが用意されていますが、そちらについてもおうかがいします。スマホの画面から飛び出してきたりと構成がユニークですね。こちらは、どういったイメージで撮影されたのですか?
夏川
基本は、いつもお願いしている、映像ディレクターのスミスさんに楽曲を聴いてもらい、イメージいただいたもので表現いただく形でした。なので、私たちも構成表をいただいたときには、完成形がどうなるのかわからない状態でした。

 撮影をしていても、これがどのシーンで使われるのかわからない、みたいな状態だったんですけど、この楽曲が、優等生というルートを外れて、いろんな可能性を見てみてもいいんじゃないかっていうメッセージが込められているので、それをイメージして、いろんな世界線の夏川さんが出てくるみたいな感じになっているのかなと思いますね。

――スマホの中を渡り歩くシーンもあったり。

夏川
スミスさんは映像遊びがすごく得意な方で、初めて監督いただいた『クラクトリトルプライド』でもそういった形でやってもらったので、だまし絵のような映像というか、そうした方向性でお願いしました。

――最初に夏川さんが飛び出してきたとき、ビックリしました。

夏川
 おもしろいですよね。

やらかしたことすらも肥やしにしたい、“負け犬の立ち直りプロセス”が4thアルバムに表れている

――というわけで、収録楽曲についてお聞きしてきましたが、反抗心溢れる、シニカルな歌詞がどの楽曲でも印象的でしたが、以前と比べるとより抗うようなイメージのものが増えたかなと個人的に感じました。

夏川
確かにそうかも。いま、昔作った歌詞を見ると、けっこう諦めのほうが強いというか、「どうせ負け犬だし」みたいな感じで、腐ってその場で足踏み、みたいなものがあるんですが、私もいろいろ経験して、感じかた、考えかたが変わっているのが表れているのかもしれないですね。

 あとは、やっぱりでかいのは、ライブをリベンジできたこと、ですかね。コロナ禍で当初想定していた形でライブができずに感じた悔しいことを2年間かけた2本のライブツアーでリベンジできたこと、引いては悔しいって思えたこと。3rdアルバムでは、ダメな自分を認めて一回諦めてみることで見えてくる道はないか、というのを定義していて。

 そこから、今回は殻を破って諦めたその先でちょっと踏ん張れることってあるんじゃないか、もうちょっと違う道があるんじゃないか、自分にぴったりなやりかたがあるんじゃないか。それが優等生とは呼べなくても、それでもそれで別にいいんじゃないかって。負け犬の立ち直りプロセス、みたいな感じはありますよね。

――起承転結ではないですが、これまでのアルバムから脈々とつながってきた展開があるように感じます。

夏川
いまも昔も、何かに挫けたり、大失敗したり、やらかしたりとかっていうのは、本当いっぱいあって。それを、都度、曲の中で書いたりとか、ライブで表現したりしているんです。

 今回も、TikTokが性に合わないだの、体重増えちゃっただの、いろんなやらかしを歌にはしていて。やらかしみたいなものを、やらかしたままではなく、自分の種にするというか、やらかしたことすらも肥やしにしたいっていう思いみたいなものはずっとあるなって。

――その場その場のいまを表している?

夏川
ですね。

田淵智也さんは、エリアボスのような存在

――今回のアルバムと直接的に関係するものではないのですが、夏川さんに一度お聞きしたいと思っていたことが複数ありまして。節目で発表される重要な楽曲にはいつも田淵さんの名前がクレジットされている印象があります。夏川さんにとって、田淵さんはどのようなアーティストなのでしょうか?

夏川
なんだろうな。でも、割と本当に目指すべき姿というか。ご本人に言ったら「そんなことないです」って言われると思うんですけど。人間として、私がなりたい人間像が田淵さんかも、ってすごく思った瞬間があって。

 いつのときだったかな……。確か私、『クラクトリトルプライド』のときにたぶん初めてお会いしているんですけど、パブリックイメージが、ベースをかき鳴らして、悪魔のようなライブパフォーマンスをする人じゃないですか(笑)。

――ちょっとわかります(笑)。

夏川
だから、そのままの破天荒な人なのかなと思ったら、めちゃくちゃ腰が低くて。いっしょにお仕事をする中で、誰よりも返信が早いし、丁寧だし、マジでできた人なのがわかるんです。人やお仕事に対しての姿勢とかもつねに丁寧かつ、自分がわからないことをわからないってちゃんと言えるタイプの方というか。それに、私、すごく衝撃を受けて。

 私は、どっちかっていうと、できないことを悟られたくなくて、ごまかしたりとかしてたタイプだったし、「いや、できますし」っていうビッグマウスだけの人間だったから、それがなんか、すごく自分の中で、「そっか、こういうカッコいい大人もいるんだ」って思えて。

 私の中の、カッコいい大人像みたいなのが変わった瞬間というか。ハッタリじゃなくて、ちゃんと、できないことをできないと認めるということで、かつ、ちゃんと自分の実力を見せるみたいなのができてる人っていうので、「私はこうなりたい。こういう大人になるんだ」ってすごく憧れて。

 だからけっこう参考にしてるというか、その姿勢、人に対しての姿勢とかは参考にしなきゃいけないなって思っている方ですね。

――ああ、それはとてもいい憧れの存在ですね。そんな田淵さんが手掛ける楽曲は、どれもすごく激しくて、歌うのが大変そうな楽曲ばかりだなと感じています。

夏川
それはもう(笑)。毎回、挑戦状だと思っています。無理って言いたくない。どんな楽曲がきても、無理とは言わないようにしようと思っています。今回で言うと、『コバンザメの憂鬱』とかもそうですけど、毎回レベルがどんどん上がっていくので、お願いするたびに震えています。

 でも、それを乗り越えることで確実に強くなっている自分がいるので、ちゃんとこう、ターニングポイントにいてほしいボスというか。ゲームのエリアボスみたいな感覚ですね。田淵さんに楽曲をお願いするときは。

――それを倒すことで、さらに強いものが出てくると。

夏川
そうそう、そうです! 自分もつぎのレベルに行ける感じがあるというか。
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――歌詞のお話もお伺いさせてください。今回のアルバムに限らずですが、夏川さんが作る歌詞の主人公は、夏川さんご本人のイメージがあるんでしょうか?

夏川
うーん、いや、自分の経験を投影していることは多いんですけど、自分自身を歌ってる、みたいなことはあまりなくて。自分自身ではない、楽曲の主人公が自分っていうことはあんまりないかもしれないです。「同じ経験をしている人、いるでしょう?」っていう気持ちで書いていることが多くて。

 自分が感じたちょっとしたモヤモヤをかなり煮詰めて書いてる、みたいなところはあるから。自分が経験しているものよりも、かなり大げさだったりもするし、でも自分の中にない感情は、歌ってないですね。

 なんていうのかな。私にしか理解できないものは書きたくないな、というか。同じようなことを感じている誰かに隙間産業的に寄り添えたらいいなと思っているので。あまり主人公って考えて書いたことはないですね。

――お話をお聞きしていると、何かに対して戦っている“オンの主人公”と、「どうでもいいや」という“オフの主人公”がいらっしゃるのかなと。

夏川
 あー、なるほど。

――ステージでカッコいい夏川さんと、私生活で憂鬱としている夏川さん、それぞれが今回のアルバムで表現されていて、夏川さんの二面性が垣間見える気がしたんです。ですが、そういった意識はあまりない?

夏川
ないですね。自分のことを書こう、みたいなことはないですね。自分の経験からみんなのことを書こう、みたいな感じでいつも書いてますね。同じ経験をしているであろう人のことを書こうというか。エッセイというより、小説って感じかもしれないです。

 書きかたとしては、エッセイは自分のことだけど、小説は自分が経験したことを元にしつつフィクションを書くじゃないですか。それに近い感覚かなって思いますね。まったく経験してないことではないが、イコール自分ではない。

――たとえば、特定のシチュエーション、主人公のような設定まで考えて歌詞を書くことはあるんですか? ある種のペルソナ(架空の人物設定)のような。

夏川
ペルソナ的なものは設定したことはないですね。どっちかっていうと、ゲームとかで、背景が何もない主人公っているじゃないですか。プレイヤーを投影するだけの主人公。とくに何か背景の設定があるわけでもなく。昔の『ドラクエ』の主人公みたいな、設定とかはある、そういった人を立てているんですけど、その人がどういう目に遭っている、みたいなものを書くイメージですね。

“夏川椎菜”を自分の心から離れた客観視カメラで捉えているからこそ、多角的な視点から創作できる

――夏川さんのいろいろな活動を拝見している中で、表現者であり、歌詞や小説などを書く作家、執筆者であり、動画などの発案もされる企画者であり、そしてそれらをプロデュースする視点も持っていて、複数の視点を持ちながらいろいろなことを考えている方だなと感じるんです。

夏川
ああー、なるほど。確かに。

――たとえば、歌詞を作るとき、創作されるときに、自分で描きたい、やりたいことよりも、プロデューサーとして客観視して、売れ線を入れたいからこれはやめようとか。そういった、せめぎ合いみたいなことをされているのかと気になりまして。

夏川
プロデューサーというものになったことがないので、「プロデューサーってこういう目線で物事を見てるよ」みたいなものがあんまりわからないですが、どういう言葉を使おうかなって考えるときに、お客さんのことを考えたうえでより自分らしいチョイスをしたりはしますね。

――逆に、売れるためにわざと封印している言葉などはあったりするのでしょうか? いまですと、同じ言葉をくり返して音のくり返しのおもしろさで歌詞が構成されている楽曲などもありますが、それらをどのように消化しつつ歌詞を考えていらっしゃるのかなと。

夏川
それで言うと、私自身が流行りとかに疎いから、あんまり左右されるようなことはそこまでなく。また、私が扱える範囲は作詞だけど、この歌詞がすばらしいから真似しようみたいなことはあえてしてないかもしれないです。

 作詞のために別の歌詞を調べるようなことはしてなくて。じゃあ何を参考にするのかって言ったら、たとえば写真だったりとか、映画だったりとか、映画の字幕だったりとか。なんか似てるけど、そこじゃないところから引っ張ってくるというか。技法や考えかたみたいな、コアになっている部分を引っ張ってくることはありますね。

 なんだろう、真似をしても意味がないというか。すでにすばらしいとされているものの真似をしたところで、そのコピーにしかならないって思っていますから。それは作詞だけじゃなくてお芝居とかもそうですけど、私は声優だから、たとえばある声優さんのお芝居を自分に取り入れたいってなったときに、その方の作品を見て演じかたを真似しても、それはモノマネじゃないですか。

 モノマネにしかならないから、声優とは違う畑のお芝居を見てみるとか、お芝居じゃなくて誰かのインタビューを見てみるとか、ドキュメンタリーを見てみるとか。そういう形で、全然違うところから自分のお芝居やそのきっかけになるものに落とし込めたらいいなってのは、アーティスト活動に関わらずずっと思っていることではあって。

――お話をうかがっていると、だいぶ主観で戦っているんですね。

夏川
でも、そうかも。そうかもしれないです。それで言うと、流行ってるものの真似っ子みたいなものとかは、やってないし、無理というか、うまくできないです。

 それこそ
『倍倍FIGHT!』みたいな楽曲が流行ってるから、じゃあ同じような楽曲を作ってみよう、だとたぶん難しいですよね。それができる人って、そこからさらに発展させられる人で、最初のきっかけは真似に近いかもだけど独自性を入れて発展させられるから成立しているのであって。

 真似はできるけど劣化版コピーみたいにしかならない自覚があるから、じゃあ別の道を探そうというか。それこそ、
『SCORE CRACKER』で書いてることですけど、優等生の道がそこなんだとしたら、ちょっと別のルートを探してみようとか、別のものを参考にしてみようとか。

 一般的には「歌詞を書くときに映画を参考にすることはあんまりないよ」みたいなことを言われるかもしれないですけど、でも私はそっちのほうがいいなと。「作詞を勉強するんだったらいろんな歌詞を見る」っていうのが一般的かもしれないけど、私はお菓子のキャッチコピーとかを見に行ったりして。なんかそうじゃないやりかたをしたくなっちゃうんですよね。
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――なるほど。夏川さんの歌詞にも通じる考えかたを垣間見た気がします。そういった部分は主観で作りつつも、たとえば“417の日”のイベント内容を考えたりと、アーティストとしての夏川さんと、それをどう見せるかを考えている夏川さんの視点と言いますか、第三者の俯瞰で見る視点も持っていると思うんですよね。

夏川
それで言うと、“夏川椎菜”という人がいるからですね。“夏川椎菜”っていう人と自分自身は、まだちょっと離れたところで見ている感じはあるかもしれない。“夏川椎菜役”ではないですし、限りなく自分に近い存在ではあるんですけど、いったん切り離して考えられるというか。そういった感覚が自分にはあるので。

 だから、あんまり恥ずかしいこととかないんですよね。言ってみたら、
『Silhouette』は自分が太ったことを曲にしてるわけですが、そういう自分の失敗談を歌にされることを嫌がる人もいると思うんです。

 でも、私はべつに嫌じゃない。それは夏川椎菜という売りものだとか、人形というか、ひとつの商品みたいなものとして自分自身を見てるからかもしれないですね。

――それは、めちゃくちゃクレバーな話ですね。

夏川
でも、昔からよく言われます。視点がおもしろいところにあるねって。それこそ、スタッフさんとかにめっちゃ言われるんですけど、文章とか書くときに、カメラの置き場所がおもしろい、みたいなのはあって。だから、私の中にカメラみたいなものは確かにあるかもしれない。自分の心から離れた客観視カメラみたいな。あんまりこういうお話をしたことがないので、おもしろいですね。

――そういったご自身の分析もされているのが、夏川さんのすごいところだなと感じました。

TikTokでの活動は2、3年後に効いてくることがきっとあるんじゃないかと、心を無に踊る

――ここまで、アルバムを含む音楽面のお話をお聞きしてきましたが、夏川さんのほかのご活動についても伺えればと思いまして。……じつはTikTokのことをお聞きしようと思っていたんですよ。「精力的に投稿されていますね!」って。そうしたら、先ほどの『コバンザメの憂鬱』のお話があって(笑)。

夏川
あははは(笑)。どうぞ、何でも聞いてください。何でも答えますよ!

――ありがとうございます! ではせっかくなので。TikTokですが、先ほど「肌に合わない」とお話されていましたが、それでも毎日のように更新されていて、これはすごいなと感じているんです。

夏川
ありがとうございます。あれはあれで難しいことはあるんですけど、いい意味で、すごい気軽というか。クオリティーをそれほど求められないので、ちょっと失敗しててもそれがおもしろいってなる文化だと思うし、完璧だけが道ではないという感じがするので。だから、なんかやれてるなという感じはしますね。なので、私も「何でもいいから続ける」っていうことだけを目標にやっているコンテンツです。

――流行りの楽曲やご自身の楽曲でダンスを披露したり、リクエストがあった楽曲を歌ったりされて。一方で、フェイスパズルのようなことも挑戦されていて、「夏川さんって、こういうこともやるんだ」と、少し意外にも感じました。

夏川
私、本当に、TikTokで何が流行っているのかを知らなくて。TikTokでの活動を始めたときに、自分でも閲覧用のアカウントを作って見るようになったんですけど、それでも見る習慣がないから、流行っているものが何かわからなくて。なので、若いマネージャーさんたちに逐一、「いま、何が流行ってるの?」って聞いてみたり。あと、うちの後輩の“DayRe:”(デイリー)(※)ががんばって更新しているんですけど、その真似っ子をやってみたりとか。
※ミュージックレインに所属する相川奏多さん、橘美來さん、夏目ここなさん、日向もかさん、宮沢小春さんによるユニット。

 ゲームものに関しても、“DayRe:”がやってたんです。「こういうの、あるんや。これ、いいやん!」ってね。若い子の真似っ子です。
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――結果、いまのスタイルになっていると。

夏川
そうなります。『コバンザメの憂鬱』はTikTokで自分がいままでやってきたことで、バズってやろうと思った結果、挫折したことも含めて歌っているんですが、私、YouTubeで“417Pちゃんねる“もやっていたじゃないですか。それは、けっこう好きでやっていたことというか、私がおもしろいと思っているものをやっていて。

 それの延長線上で、YouTubeショートをやろうっていうことになって、ショートで流行っていることのパロディーとかをやってみようっていうので、作った動画があったんです。

 で、そのときに「それを投稿するなら、せっかくだったらTikTokもやっちゃおう」っていうことで、同じ動画をTikTokにも投稿したんですよ。そうしたら、YouTubeのほうはそこそこちゃんと見てくれる人がいたんですけど、TikTokがマジで本当に回らなくて。「こんなに回らないの」って(笑)。

 TikTokって有名な人だと何百万再生とかされるような、めちゃくちゃおっきなプラットフォームなのに「その中で数千とかしかいかんの、私?」ってなって。結構ショックだったんですよね。「これはどうしたもんかな」と。

 だから、もう正直、TikTokは閉じてYouTubeショートだけやってりゃいいじゃんっていうことも考えたんですが、せっかく始めた手前、あまりにも散々な結果だとちょっと恥ずかしいなというか、一矢報いたいなと思って。一縷の望みをかけ、ちょっと踊ってみたんです。

――TikTokらしいコンテンツですね。

夏川
そしたら、回るようになったんです。

――ああ、これだったんだ、と。

夏川
けっきょく見てもらえるかどうかは、TikTok側に推してもらえるかどうかみたいな。

――オススメに乗るか乗らないか、みたいなところはありますよね。

夏川
そうです、そうです。TikTokのアルゴリズムはそういうものらしく。やっぱり流行りの楽曲で踊るとか、みんなと同じことをやるということが支持されているプラットフォームではあるから、それをやっていくことは大事だということにチーム全体で気づいて。そこからは「やるか」って言って、心を無にして無にして無にして、踊ってます(笑)。

――(笑)。では、そういった背景を知ったうえで夏川さんの投稿を見て、「ああ、夏川さん、がんばっているなあ」と腕を組みながら見守る楽しさも味わえそうですね。

夏川
がんばっていますので、そういう目線でも楽しんでいただければと思います(笑)。ただ、それで若い子に見てもらえたりとかして、夏川椎菜っていう人がいるんだっていうところまで行ったら、何かのきっかけで私の曲を聴いてくれたりとか、作品見てくれたりとかするかもしれないし。そういう、ドサ回り的な、泥臭いこととかが2年後、3年後に効いてくることがきっとあるんじゃないかと思って。それを信じて、『コバンザメの憂鬱』のように憂鬱になるときもありつつ、やっています。

80時間以上プレイしているが底が見えない、夏川さんイチオシのゲームタイトル。プライベートではとあるジャンルにも熱中

――あと、ファミ通のインタビューでは恒例ですが、ゲームのお話も伺えればと思います。最近ハマって遊んでいるゲームはありますか?

夏川
 自分がプレイしているゲームは、『風バザ』(『牧場物語 Let's!風のグランドバザール』)ですね。もうずっと、ずっとやってます。いまやってるゲームはそれしかないです。あれもなかなか時間がかかるゲームで、いまたぶん80時間ぐらい遊んでいるんですけど、それでもまだ2年目なんですよ。2年目の春とかで。

 本当になんか、効率よく回るために考える時間っていうのがすごく必要で。倉庫でずっと考えている感じで(笑)。倉庫で、つぎのバザールで何を売るかを、ずっと戦略を考えるみたいな時間があって。このゲーム戦略系、効率系なんで。という感じで、ずっとやってます。

 でも楽しいですね、本当に。リメイク元になっているゲーム『
牧場物語 ようこそ!風のバザールへ』はニンテンドーDSのソフトで、中学生くらいのときにずっとやってたゲームで、『牧場物語』シリーズは全部好きなんですけど、あれが時間としてはいちばん遊んでいて。

 いつかリメイクしてくれないかなって、ずっとずっと願ってたものが、ほかのタイトルを飛び越えて来たので、本当にうれしくて。

 しかも、最高のリメイクなんですよ。本当に。ただ同じものってわけじゃなく、痒いところに手が届くというか。「ここもうちょっと知りたかったな」みたいなストーリーの奥深さも追加されてるし、追加のキャラクターもみんな魅力的だし、バザールのミニゲームとかも進化してたり、マップも拡大してるしっていうので、本当にできることがいっぱい増えてて、楽しいですね。

 楽しいから終わりどきがね、わかんなくて。とりあえず、全住民をオトした後に、アギくんと結婚して、その後に図鑑を埋めるまでやろうかなって思ってます。何時間かかるんだろう。わかんないけど。

――そこまで行くと、いまの倍のプレイ時間でも済まない気がします……。

夏川
でも、だんだん便利にはなっていくんですよ、牧場自体が。便利な道具が出てきたりとか、アイテムがあったりとかっていうので、かかる時間は減っていく感じにはなるんですけど、でも、100時間はたぶん超えるでしょうね。
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――本当に楽しんでますねー。ちなみに、Nintendo Switch 2は購入されましたか?

夏川
 あ、はい! 当たりました。無事にゲットしました。三姉妹全員ゲットしました。3台ゲットして、みんなそれぞれゲームをやってます。

――全員! それはすごい。奪い合いにならずに。

夏川
そうです。もう、うちは全員ゲーマーなんで、3人で1台とかすると、ほんと血みどろの争いになるので。事件が起きちゃうので、ホントに。

――皆さん、豪運ですね。

夏川
でも、けっこう抽選ハズレましたよ。私は発売からけっこう経ってから、某ショッピングサイトの抽選制のものに当たって。結構倍率が高いとされていたやつに、ずっと当たらなかったのに、急に当たって。「イエーイ」つって。めっちゃ詐欺みたいなメール来ましたよ。

――(笑)。

夏川
めっちゃ詐欺みたいなメールだったんですけど、欲望には勝てずに普通に注文して。届いてよかったです。

――そして、定期番組であるWeb生放送『夏川椎菜のずっとゲームしてるだけ』(ずっとゲ)が、始まってもうすぐ3年になります。

夏川
 もうそんなに経つんだ! 『ずっとゲ』が3年ですか。そっか。ファミ通LIVEから何年ですか? 5年ぐらい?

――夏川さんは2021年にお願いしていたので、もうすぐ5年ですね。ゲームブログ”夏川椎菜のGAMEISCOOL!”からですと、もう7年ほどお世話になっております。
夏川
そっかそっか。ゲームブログも書いてました! 懐かしい。

――そんな『ずっとゲ』はいかがですか? 最近ではゲストの方も登場していらっしゃいますよね。『スーパー マリオパーティ ジャンボリー Nintendo Switch 2 Edition + ジャンボリーTV』を遊ぶ回では、麻倉ももさん、雨宮天さん、halcaさんといっしょにプレイされていました。
夏川
 あれはホントにおもしろかった!

――すごく、カオスな(笑)。

夏川
 カオスでしたねえ。トラセ(TrySail)がゲームするとこうなるんやって感じで。私、昔から何するにもですけど、わりとひとりでやることが多くて。ひとりで黙々と遊ぶタイプではあるんですけど、やっぱりひとりだと限界あるというか。遊べないゲームとかも最近はすごくあるし、みんなでやるとよりおもしろいゲームとかもいっぱいあるから、そういうゲームやるときには、積極的にね、ゲストの方とか呼んでやりたいなって思ってますね。

――複数人で遊ぶゲームですと、楽しみかたが違いますよね。

夏川
 うん、全然違いますね。楽しいです。

――では、たまにゲストをお呼びして。

夏川
 はい。なので、募集してます、来てくれる方。ゲームやりたいよって。夏川といっしょにゲームやりたいよって方。初対面でも構いません!

――興味を持っていただける方なら。

夏川
 そうです。ホントに、ホントにそう。ゲームが好きという共通点があればみんな友だちと思ってるので。

――「初めまして」から始まる放送。

夏川
 はい。「好きなゲームは何ですか?」って言って、「『●●●●(伏せ字)』」って言ったら、「私とは違いますね」って。

マネージャー 終わっちゃうよ!(笑)

――(笑)。そして、ひとりずつ別のゲームを遊ぶと。

夏川
何その悲しい配信(笑)。でもホントに、同じゲームを遊ぶと仲良くなるじゃないですか。私、プライベートでもマーダーミステリーがすごく好きで。ふつうに、オンラインでも遊ぶし、お店に行って対面で遊んだりとかもしてるんです。基本、初めましての人が多いんですけど、いっしょに遊ぶとやっぱり仲良くなるし、そこから縁がつながってずっと遊んで、っていう友だちもできたりとかしたので。

 なんか、そういう意味では、ホントにゲームがつなげてくれた友だちみたいなものも多くて、だいぶ社交的になりました。社交的になったいまなら、どんなゲストでもさばけるのではないかと。

――おお、なるほど。楽しみにしております。

夏川
 (スタッフさんに向けて)ちょっと、笑うのやめて? 笑うのやめてね?

――スタッフの皆さんがニヤニヤしてる(笑)。でも、夏川さんのマーダーミステリー、見てみたいです。

夏川
あ、ホントですか!

――とても上手にプレイされるでしょうし。個人によると思うんですけど、マーダーミステリーのなりきりは恥ずかしいんですよね……。

夏川
えー、そうなんですか! まあ確かに、いろんな役がありますからね。女性役とかにね、なったりとかしますけど、それがおもしろいんじゃないですか! 私もおじさん役とかありますよ。全然。「○○じゃのう」とか言って。

――女の子がやるおじさんと、おじさんがやる女の子は、違うんですよ。だいぶ違います!

夏川
いやでも、それもおもしろいですよ。男性だけど「お嬢様役しかやりたくないです」っていう人、いますし。

――強い! いつか番組などで見られるのを楽しみにしています! たくさんお話をお聞きしてきましたが、最後に、ヒヨコ群の皆さんに向けて、メッセージをお願いします。

夏川
いままでやってきたことをさらに羽ばたかせるような楽曲もありつつ、新しい私を探していただけるようなアルバムになってるかなと思います。これから夏川がやっていく活動において、けっこう重要なところで歌うような楽曲が多いんじゃないかなと思うので、ぜひたくさん聞いて楽しんでいただけたら。

 あとはね、自分の失敗だったりとか、やらかしだったりとかと重ね合わせて、「夏川も人間なんだな」って思いながら聞いていただけたらいいなと思います(笑)。
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担当者プロフィール

  • 世界三大三代川

    ファミ通.com編集長。『ゼルダの伝説』、『ファイナルファンタジー』、『ダンガンロンパ』、『スプラトゥーン』などの記事を担当。記事のほか、動画番組などのプロデュース、“スプラトゥーン甲子園”の解説なども。

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