かねてからファンであることを公言し、夏川さんの音楽性にも大きな影響を与えているという4人組バンド“ShiggyJr.”、下北沢を拠点にライブハウスシーンで注目を集めるオルタナティヴ・ロックバンド“レイラ”、つぎなるステップへ進む際には必ず楽曲で後押しをしてきた田淵智也さん(UNISON SQUARE GARDEN)など、アーティスト提供楽曲を含む新曲6曲に、ライブ楽曲としてすでに定番になりつつある『シャドウボクサー』、ストイックでどこか不穏な世界観を表現した『「 later 」』の2枚のシングル楽曲ほかを加えた全10曲を収録。
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そんな4thアルバムについて、夏川さんにインタビュー。アルバムに込められた思いや、ご自身しか歌えない楽曲、創作者として根底に存在している考え、そしてアーティスト以外の活動についてなど、たっぷりと聞いた。
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殻を破るだけではなく、そこから羽ばたいていく4thアルバム
――意外と期間が空いていましたね。そんな4thアルバムですが、まずはコンセプトからお聞きできますか?
コンセプトとしては、アルバムのタイトルにもなっている“CRACK and FLAP”です。殻を破るだけではなくて、そこから羽ばたいていくところまで見せたい。脱皮するような感覚ですよね。このアルバムには、そんな想いがこもっています。
――夏川さんにとってのネクストステージになるようなアルバムであると。
いままでいろんな世界を見ながら触れてきましたけど、ここからはある程度、「私が選ぶ道はここである」というのを定めた上で活動していきたいなと。
その思いのもと、スタッフさんたちはもちろん、ヒヨコ群(※)も一丸となって、同じゴールを見て進んでいきたいね、という決意を表すようなアルバムになったらいいなと思って作りました。
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――そんな4thアルバムの収録楽曲を聴かせていただいたのですが、バンドサウンドがかなり強くライブで盛り上がることが想像できる印象でした。そうした構成が、夏川さんのネクストステージの方向性にもなっているのでしょうか?
――2ndアルバムの『コンポジット』でバンドサウンドが増え、3rdアルバムの『ケーブルサラダ』でバンド感がより強くなった印象でしたが、そこからさらに強くなっているので、個人的には驚きました。一般的なアーティストで言うと3rd、4thアルバムあたりでガラッと印象を変える傾向が多いと思うんですが、むしろバンドサウンドのギアを上げていくのが夏川さんの意志であると。
ですので、新しいチャレンジとして、『労働奉音』や『Silhouette』みたいなダーク寄りのテイストの楽曲や、オルタナティヴ、ほかにはディスコっぽいノリのいいロックを入れてみたりしているんですが、全体的にはいままでやってきたことのレベルを上げたものというイメージですね。
――『Ep04』は、当時のインタビューで「EPは何をしてもいいと考えていて」とお話されていた通りいろいろな曲が入っていましたが、今回は先ほどのコンセプト通りの内容ですね。
全曲紹介:夏川さんの音楽性に影響を与えたアーティストからの楽曲提供も
あと、これは『シャドウボクサー』を作っているときにすごく感じたことなんですが、たぶん、私しか歌えない楽曲だなと。この『シャドウボクサー』を乗りこなせるのは、地球上で私しかいないなということを確信できたんです。
自分で作詞をして、自分で歌いやすいようにイジっているからということもあるんですけど、自分の強みや、ちゃんと武器になっているもの、唯一無二のものを出せていると確信できる楽曲ですので、自信を持って世にお届けできますね。
――とてもかっこいいパワフルな楽曲ですよね。ただ歌っていると非常に疲れそうだなーと、お聴きするたびに思っています。
――やっぱりそうなんですね(笑)。そんな全力全開な楽曲が1曲目を飾り、2曲目として『ミエナイテキ』が続きます。こちらも疾走感溢れる楽曲な印象です。
くり返し聴いてよさがわかるスルメ曲ではなく、1回ですぐによさが伝わる楽曲。天邪鬼なので、そういった楽曲はやってきていなくて。だからこそ、ここにきて逆に新境地になった楽曲ですね。
作曲は、『グルグルオブラート』や『That's All Right!』をはじめ、いつも担当してくださっている山崎真吾さんです。夏川らしさがふんだんに盛り込まれたうえで、新しいことに挑戦しています。
――ほかの楽曲でも感じたのですが、夏川さんの楽曲の歌詞には夏川さんらしいフレーズがたくさん入っている印象があります。作詞をお願いする際に、夏川さんからキーワードは提案されているのでしょうか? それとも、作詞家さんたちが夏川さんらしさをわかっているのでお任せしているのでしょうか?
この楽曲はコンペで選びまして、コンペでの仮歌の歌詞をそのまま採用した形なんですが、本当におもしろくて。「膝カックン」とか、「涙(ビーム)が出ちゃう」とか(笑)。細々としたワードのチョイスがチーム的にもクリティカルで、「これはぜひこのままやろう」って爆笑しながら選んだ楽曲ですね。
――ルビが振られていますが、まったく違うように読んでいるものがあったり、とてもユニークですよね。そういった点を含め、皆さんが夏川さんらしさを理解して出していらっしゃる気がします。
目を強調したり、私はすごく寝相が悪いという話をいろんなところでしているんですけど、寝相悪い感じが出ていたり。ワードのチョイスとかも私とけっこう似ていると思います。そもそも、そんなに遠いところにはいない作家さんだなとは思っていますね。
――では続いて、『ライクライフライム』。まさにライムに乗りながら、その中で夏川さんらしい歌詞が登場しています。
――(笑)。タイトルから韻を踏んでいて、とても心地いい楽曲ですよね。続けて、『メイビーベイビー』。ロック調ではありますが、少しスローテンポなのかなというイメージです。
私がすっごく好きな“Shiggy Jr.”というバンドさんがいらっしゃるんですけど、そのバンドの原田茂幸さんに曲を書いていただいた楽曲になりますね。
――では、ご指名に近い形ですか?
デビューが決まったときに、「いろんな音楽を聴かなきゃな」ということで、勉強としてさまざまな音楽を聴いて、そのときに“Shiggy Jr.”で出会って。
歌をどうやって歌ったらいいのかわからないときに、“Shiggy Jr.”のボーカルの池田智子さんの歌を聴いて、「これだ! いったんこれを目指そう。私がやりたいのはこれだ」となったんです。ほんとにすごく思い入れの強いバンドさんで。
ですので、ずっとお願いしたいなと思っていたんですけど、タイミングもなく。皆さんも一度活動を休止されたりもして。いつお願いしようかなと思っていたところ、2024年に活動を再開されて、ちょうどタイミングよく私もライブに行けまして。
そして、ライブに行ったときに、私が気持ち悪いブログを書いたんですよ。“Shiggy Jr.”さんのライブがすごくよかったという、三行ぐらいで言えてしまうことを、ものすごい長文ですごく気持ち悪く書いたのですが、それが“Shiggy Jr.”の皆さんに届いてしまって(笑)。
それを機にご縁もできたので、タイミング的にはいまがベストなのではないかということでお願いしました。
――気持ち悪いブログ(笑)。ではShiggy Jr.”さんのライブには、一般のお客さんとして足を運ばれたのですね。
――なるほど。
――熱意溢れるものがあったのですね。それが、届いた結果であると。
『コバンザメの憂鬱』は、夏川さんが考える最悪な布陣のもと、ご自身の苦悩が込められた問題作
あの田淵智也さん(UNISON SQUARE GARDEN)が曲を書いてくださり、編曲はおなじみ川口圭太さん、作詞は夏川がやっているという。考えうる限り、最悪の布陣です。
本当に誰も止めなかったんですよ。誰も止めないまま、この3人の悪ふざけを全部受け入れた結果の楽曲です(笑)。
――私も驚きました。楽曲も、なかなか聴いたことがないような仕上がりでした。
――若干マイナー調で、不協和音にも聴こえるような楽曲ですよね。
――ギターソロも用意されていますし。それと、「以上、2分59秒、コバンザメの憂鬱」という締めもすばらしかったです。
――めちゃくちゃカッコよかったです。夏川さんやスタッフの皆さんのあいだでも、この楽曲は問題作扱いなんですね。
この楽曲の歌詞に関しては、最近私はTikTokを始めたのですが、「やっぱり肌に合わねえな」と思ったことを詰め込んでいます。
「肌に合わねえな」とは思いつつ、やっぱり若い方もヒヨコ群になって欲しいし、ということで「諦めてやるしかねえな」となっています。そういう世界も必要じゃん、それで拓いていく世界、踊ることで拓く世界もあるから、といったことを表している歌詞になっています。
ですので、TikTokでがんばっている私の姿を見てくれているヒヨコ群は、クスクス笑いながら楽しんで聴ける楽曲になっているんじゃないかなと思いますね。
――ああ、なるほど。夏川さんのTikTokは私も拝見していますが、めちゃくちゃ合点がいきました。
――「きちぃな」(笑)。とても腑に落ちました! 続けて、『労働奉音』。読みかたは、「ろうどうほうおん」でよろしいでしょうか?
――そうですよね。調べると、音楽を奉納するという意味で稀に使われるようですが、見慣れないワードですよね。こちらの楽曲も歌詞を含めなかなかの問題作だろうなと感じました。
詞を書くときに、ここではベースの伊藤千明さんを、ここではギターの川口さんを、みたいに思い浮かべて書いた楽曲になるので、ライブでやるときも照明とかで遊んでもらえたらいいなと考えていて。
私は、“モーニング娘。”さんの『女子かしまし物語』のような、自己紹介ソングが好きで。全然知らないコンテンツの自己紹介ソングも全部聴いちゃうくらい、すごく好きなんですよ。それを自分たちでもやりたいなという気持ちもあったので、バンドのみんなと一応私のパートも入れて作りました。「全装備 曝け出して 紡いだもん 焼き付ける」のところが私のパートですね。
――ストレートなものではない自己紹介ソングですね。曲調としては、低音が印象的です。
――バスドラムもずっと響いていますよね。
――歌詞には“road all”とあります。
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『Silhouette』は、夏川さんの恥ずかしいエピソードも惜しみなく表現
――こちらも(笑)。すごくインパクトのある歌詞です。
――インタビューさせていただくにあたって、1曲ずつインプレッションのようなものを書いているんですが、“体重計、苦悩、ダイエットの歌。それにしてはとてもヘビーなサウンド”と書き綴っていました。
今回、詞を書くときに、自分の人生で起こったこと、いま考えていることを反映すべきだなと思って書いているんですが、この歌詞がまさしくそうで。
私、本当に太ったんですよ! TrySail10周年の日本武道館ライブがMAXで太っていて。なんで、なんでだよって(笑)。私はあんまり体型が変化しないタイプだったので、本当に気にせずバクバク食べていたら、なんか知らないんですけど、太っていて。
これから露出も増えるし、ライブもあるし、さすがにこのままの生活ではよくないなと感じました。年齢を重ねると体重も落ちにくくなるとも聞いていて、私もその年齢に差し掛かるので、やるならいまだと思い、ピラティスを始めまして。それで、つぎのライブまでにガーンと落として、なんとか通常通りぐらいにコントロールして、健康に過ごせるぐらいの体重に戻したんですが、そのときのことを歌っています。「どうか気のせいであってくれ」と思いながら体重計に乗った、あの一瞬の経験をこんなかっこいい曲に乗せてしまいました(笑)。
――歌詞を読んでいて、「のっかったお腹」とか、夏川さんはまったくそんなことないだろうになーと思っていたんですけど、そんな背景が……(笑)。
そのとき、過去といまの私で、プラスマイナスで7キロくらい体重が変化していて。画面に映っている私を見て「ぷくぷくだな」と(笑)。恥ずかしかったですが、「いまは痩せたし大丈夫だな」と思いながら臨みました。本当にお恥ずかしい限りでした。
――その演出だと、痩せる前と後でけっこう比較しやすい状況ですね(笑)。
――集大成と言っているところで。
――夏川さんのレアな一面が垣間見えたところで、続いて『「 later 」』です。9thシングルとして収録された楽曲となります。
人って、もう会わないって決めるとき、意外とこのぐらい冷たいこと考えてるよね、みたいな。ドラマティックなこともなく、すっと別れるもんだよね、みたいな。そういう冷たさみたいなものが表現できたらなっていうことで書いた歌詞になります。
――確かに、興味がない感じが伝わってくる気がします。
――その状況になったら、このような態度を取りそうだなとは思いますね。
――その気持ちを可視化された曲ですね。そして、『As You Know』。かなり歪んだ、ディストーションサウンドが印象的です。
ちょうど同じタイミングで4thアルバム作ることになり、「誰かお願いしたい人はいる?」と聞かれて、自然に「“レイラ”さんにはお声がけしようよ」という話になって。それでお願いしたら、ちょうど本当に忙しくなる手前くらいで滑り込めた感じで、作っていただけました。
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――切なくて、気だるい感じと言いますか。
リードトラック『SCORE CRACKER』では、アルバムに込めた思いを存分に歌う
――応援歌としても通じるところがあるのかなと感じました。
――いまのお話をお聞きして、とても夏川さんらしいなと思いました。
ですので、けっこういろんな案を出したんですけど、なかなかしっくりくるものがなくて。最終的に、すっごいシンプルだったんですけど、こうなりましたね。もう、ちょっと諦めかけて、「いい言葉ねえわ。もう無理やわ」となったときに、「あーダメ……、もうヤメ……、これでいいじゃん!」となりました(笑)。
――そのときの感情がピッタリ当てはまったと。すごく心情が伝わりますし、言葉としてもわかりやすいです。
――ヒヨコ群の皆さんといっしょに。
――言葉としては諦めですが、みんなでやることによって、前向きになれるような。
――この曲はMVが用意されていますが、そちらについてもおうかがいします。スマホの画面から飛び出してきたりと構成がユニークですね。こちらは、どういったイメージで撮影されたのですか?
撮影をしていても、これがどのシーンで使われるのかわからない、みたいな状態だったんですけど、この楽曲が、優等生というルートを外れて、いろんな可能性を見てみてもいいんじゃないかっていうメッセージが込められているので、それをイメージして、いろんな世界線の夏川さんが出てくるみたいな感じになっているのかなと思いますね。
――スマホの中を渡り歩くシーンもあったり。
――最初に夏川さんが飛び出してきたとき、ビックリしました。
やらかしたことすらも肥やしにしたい、“負け犬の立ち直りプロセス”が4thアルバムに表れている
あとは、やっぱりでかいのは、ライブをリベンジできたこと、ですかね。コロナ禍で当初想定していた形でライブができずに感じた悔しいことを2年間かけた2本のライブツアーでリベンジできたこと、引いては悔しいって思えたこと。3rdアルバムでは、ダメな自分を認めて一回諦めてみることで見えてくる道はないか、というのを定義していて。
そこから、今回は殻を破って諦めたその先でちょっと踏ん張れることってあるんじゃないか、もうちょっと違う道があるんじゃないか、自分にぴったりなやりかたがあるんじゃないか。それが優等生とは呼べなくても、それでもそれで別にいいんじゃないかって。負け犬の立ち直りプロセス、みたいな感じはありますよね。
――起承転結ではないですが、これまでのアルバムから脈々とつながってきた展開があるように感じます。
今回も、TikTokが性に合わないだの、体重増えちゃっただの、いろんなやらかしを歌にはしていて。やらかしみたいなものを、やらかしたままではなく、自分の種にするというか、やらかしたことすらも肥やしにしたいっていう思いみたいなものはずっとあるなって。
――その場その場のいまを表している?
田淵智也さんは、エリアボスのような存在
いつのときだったかな……。確か私、『クラクトリトルプライド』のときにたぶん初めてお会いしているんですけど、パブリックイメージが、ベースをかき鳴らして、悪魔のようなライブパフォーマンスをする人じゃないですか(笑)。
――ちょっとわかります(笑)。
私は、どっちかっていうと、できないことを悟られたくなくて、ごまかしたりとかしてたタイプだったし、「いや、できますし」っていうビッグマウスだけの人間だったから、それがなんか、すごく自分の中で、「そっか、こういうカッコいい大人もいるんだ」って思えて。
私の中の、カッコいい大人像みたいなのが変わった瞬間というか。ハッタリじゃなくて、ちゃんと、できないことをできないと認めるということで、かつ、ちゃんと自分の実力を見せるみたいなのができてる人っていうので、「私はこうなりたい。こういう大人になるんだ」ってすごく憧れて。
だからけっこう参考にしてるというか、その姿勢、人に対しての姿勢とかは参考にしなきゃいけないなって思っている方ですね。
――ああ、それはとてもいい憧れの存在ですね。そんな田淵さんが手掛ける楽曲は、どれもすごく激しくて、歌うのが大変そうな楽曲ばかりだなと感じています。
でも、それを乗り越えることで確実に強くなっている自分がいるので、ちゃんとこう、ターニングポイントにいてほしいボスというか。ゲームのエリアボスみたいな感覚ですね。田淵さんに楽曲をお願いするときは。
――それを倒すことで、さらに強いものが出てくると。
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自分が感じたちょっとしたモヤモヤをかなり煮詰めて書いてる、みたいなところはあるから。自分が経験しているものよりも、かなり大げさだったりもするし、でも自分の中にない感情は、歌ってないですね。
なんていうのかな。私にしか理解できないものは書きたくないな、というか。同じようなことを感じている誰かに隙間産業的に寄り添えたらいいなと思っているので。あまり主人公って考えて書いたことはないですね。
――お話をお聞きしていると、何かに対して戦っている“オンの主人公”と、「どうでもいいや」という“オフの主人公”がいらっしゃるのかなと。
――ステージでカッコいい夏川さんと、私生活で憂鬱としている夏川さん、それぞれが今回のアルバムで表現されていて、夏川さんの二面性が垣間見える気がしたんです。ですが、そういった意識はあまりない?
書きかたとしては、エッセイは自分のことだけど、小説は自分が経験したことを元にしつつフィクションを書くじゃないですか。それに近い感覚かなって思いますね。まったく経験してないことではないが、イコール自分ではない。
――たとえば、特定のシチュエーション、主人公のような設定まで考えて歌詞を書くことはあるんですか? ある種のペルソナ(架空の人物設定)のような。
“夏川椎菜”を自分の心から離れた客観視カメラで捉えているからこそ、多角的な視点から創作できる
――たとえば、歌詞を作るとき、創作されるときに、自分で描きたい、やりたいことよりも、プロデューサーとして客観視して、売れ線を入れたいからこれはやめようとか。そういった、せめぎ合いみたいなことをされているのかと気になりまして。
――逆に、売れるためにわざと封印している言葉などはあったりするのでしょうか? いまですと、同じ言葉をくり返して音のくり返しのおもしろさで歌詞が構成されている楽曲などもありますが、それらをどのように消化しつつ歌詞を考えていらっしゃるのかなと。
作詞のために別の歌詞を調べるようなことはしてなくて。じゃあ何を参考にするのかって言ったら、たとえば写真だったりとか、映画だったりとか、映画の字幕だったりとか。なんか似てるけど、そこじゃないところから引っ張ってくるというか。技法や考えかたみたいな、コアになっている部分を引っ張ってくることはありますね。
なんだろう、真似をしても意味がないというか。すでにすばらしいとされているものの真似をしたところで、そのコピーにしかならないって思っていますから。それは作詞だけじゃなくてお芝居とかもそうですけど、私は声優だから、たとえばある声優さんのお芝居を自分に取り入れたいってなったときに、その方の作品を見て演じかたを真似しても、それはモノマネじゃないですか。
モノマネにしかならないから、声優とは違う畑のお芝居を見てみるとか、お芝居じゃなくて誰かのインタビューを見てみるとか、ドキュメンタリーを見てみるとか。そういう形で、全然違うところから自分のお芝居やそのきっかけになるものに落とし込めたらいいなってのは、アーティスト活動に関わらずずっと思っていることではあって。
――お話をうかがっていると、だいぶ主観で戦っているんですね。
それこそ『倍倍FIGHT!』みたいな楽曲が流行ってるから、じゃあ同じような楽曲を作ってみよう、だとたぶん難しいですよね。それができる人って、そこからさらに発展させられる人で、最初のきっかけは真似に近いかもだけど独自性を入れて発展させられるから成立しているのであって。
真似はできるけど劣化版コピーみたいにしかならない自覚があるから、じゃあ別の道を探そうというか。それこそ、『SCORE CRACKER』で書いてることですけど、優等生の道がそこなんだとしたら、ちょっと別のルートを探してみようとか、別のものを参考にしてみようとか。
一般的には「歌詞を書くときに映画を参考にすることはあんまりないよ」みたいなことを言われるかもしれないですけど、でも私はそっちのほうがいいなと。「作詞を勉強するんだったらいろんな歌詞を見る」っていうのが一般的かもしれないけど、私はお菓子のキャッチコピーとかを見に行ったりして。なんかそうじゃないやりかたをしたくなっちゃうんですよね。
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だから、あんまり恥ずかしいこととかないんですよね。言ってみたら、『Silhouette』は自分が太ったことを曲にしてるわけですが、そういう自分の失敗談を歌にされることを嫌がる人もいると思うんです。
でも、私はべつに嫌じゃない。それは夏川椎菜という売りものだとか、人形というか、ひとつの商品みたいなものとして自分自身を見てるからかもしれないですね。
――それは、めちゃくちゃクレバーな話ですね。
――そういったご自身の分析もされているのが、夏川さんのすごいところだなと感じました。
TikTokでの活動は2、3年後に効いてくることがきっとあるんじゃないかと、心を無に踊る
――ありがとうございます! ではせっかくなので。TikTokですが、先ほど「肌に合わない」とお話されていましたが、それでも毎日のように更新されていて、これはすごいなと感じているんです。
――流行りの楽曲やご自身の楽曲でダンスを披露したり、リクエストがあった楽曲を歌ったりされて。一方で、フェイスパズルのようなことも挑戦されていて、「夏川さんって、こういうこともやるんだ」と、少し意外にも感じました。
ゲームものに関しても、“DayRe:”がやってたんです。「こういうの、あるんや。これ、いいやん!」ってね。若い子の真似っ子です。
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それの延長線上で、YouTubeショートをやろうっていうことになって、ショートで流行っていることのパロディーとかをやってみようっていうので、作った動画があったんです。
で、そのときに「それを投稿するなら、せっかくだったらTikTokもやっちゃおう」っていうことで、同じ動画をTikTokにも投稿したんですよ。そうしたら、YouTubeのほうはそこそこちゃんと見てくれる人がいたんですけど、TikTokがマジで本当に回らなくて。「こんなに回らないの」って(笑)。
TikTokって有名な人だと何百万再生とかされるような、めちゃくちゃおっきなプラットフォームなのに「その中で数千とかしかいかんの、私?」ってなって。結構ショックだったんですよね。「これはどうしたもんかな」と。
だから、もう正直、TikTokは閉じてYouTubeショートだけやってりゃいいじゃんっていうことも考えたんですが、せっかく始めた手前、あまりにも散々な結果だとちょっと恥ずかしいなというか、一矢報いたいなと思って。一縷の望みをかけ、ちょっと踊ってみたんです。
――TikTokらしいコンテンツですね。
――ああ、これだったんだ、と。
――オススメに乗るか乗らないか、みたいなところはありますよね。
――(笑)。では、そういった背景を知ったうえで夏川さんの投稿を見て、「ああ、夏川さん、がんばっているなあ」と腕を組みながら見守る楽しさも味わえそうですね。
80時間以上プレイしているが底が見えない、夏川さんイチオシのゲームタイトル。プライベートではとあるジャンルにも熱中
本当になんか、効率よく回るために考える時間っていうのがすごく必要で。倉庫でずっと考えている感じで(笑)。倉庫で、つぎのバザールで何を売るかを、ずっと戦略を考えるみたいな時間があって。このゲーム戦略系、効率系なんで。という感じで、ずっとやってます。
でも楽しいですね、本当に。リメイク元になっているゲーム『牧場物語 ようこそ!風のバザールへ』はニンテンドーDSのソフトで、中学生くらいのときにずっとやってたゲームで、『牧場物語』シリーズは全部好きなんですけど、あれが時間としてはいちばん遊んでいて。
いつかリメイクしてくれないかなって、ずっとずっと願ってたものが、ほかのタイトルを飛び越えて来たので、本当にうれしくて。
しかも、最高のリメイクなんですよ。本当に。ただ同じものってわけじゃなく、痒いところに手が届くというか。「ここもうちょっと知りたかったな」みたいなストーリーの奥深さも追加されてるし、追加のキャラクターもみんな魅力的だし、バザールのミニゲームとかも進化してたり、マップも拡大してるしっていうので、本当にできることがいっぱい増えてて、楽しいですね。
楽しいから終わりどきがね、わかんなくて。とりあえず、全住民をオトした後に、アギくんと結婚して、その後に図鑑を埋めるまでやろうかなって思ってます。何時間かかるんだろう。わかんないけど。
――そこまで行くと、いまの倍のプレイ時間でも済まない気がします……。
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――全員! それはすごい。奪い合いにならずに。
――皆さん、豪運ですね。
――(笑)。
――そして、定期番組であるWeb生放送『夏川椎菜のずっとゲームしてるだけ』(ずっとゲ)が、始まってもうすぐ3年になります。
――夏川さんは2021年にお願いしていたので、もうすぐ5年ですね。ゲームブログ”夏川椎菜のGAMEISCOOL!”からですと、もう7年ほどお世話になっております。
――そんな『ずっとゲ』はいかがですか? 最近ではゲストの方も登場していらっしゃいますよね。『スーパー マリオパーティ ジャンボリー Nintendo Switch 2 Edition + ジャンボリーTV』を遊ぶ回では、麻倉ももさん、雨宮天さん、halcaさんといっしょにプレイされていました。
――すごく、カオスな(笑)。
――複数人で遊ぶゲームですと、楽しみかたが違いますよね。
――では、たまにゲストをお呼びして。
――興味を持っていただける方なら。
――「初めまして」から始まる放送。
マネージャー 終わっちゃうよ!(笑)
――(笑)。そして、ひとりずつ別のゲームを遊ぶと。
なんか、そういう意味では、ホントにゲームがつなげてくれた友だちみたいなものも多くて、だいぶ社交的になりました。社交的になったいまなら、どんなゲストでもさばけるのではないかと。
――おお、なるほど。楽しみにしております。
――スタッフの皆さんがニヤニヤしてる(笑)。でも、夏川さんのマーダーミステリー、見てみたいです。
――とても上手にプレイされるでしょうし。個人によると思うんですけど、マーダーミステリーのなりきりは恥ずかしいんですよね……。
――女の子がやるおじさんと、おじさんがやる女の子は、違うんですよ。だいぶ違います!
――強い! いつか番組などで見られるのを楽しみにしています! たくさんお話をお聞きしてきましたが、最後に、ヒヨコ群の皆さんに向けて、メッセージをお願いします。
あとはね、自分の失敗だったりとか、やらかしだったりとかと重ね合わせて、「夏川も人間なんだな」って思いながら聞いていただけたらいいなと思います(笑)。
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