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『メトロイドプライム4 ビヨンド』約18年ぶり新作秘話。「任天堂のゲームの中でも最高水準を目指したグラフィックと処理落ちのないゲームプレイを体験いただきたいです」【インタビュー】

『メトロイドプライム4 ビヨンド』約18年ぶり新作秘話。「任天堂のゲームの中でも最高水準を目指したグラフィックと処理落ちのないゲームプレイを体験いただきたいです」【インタビュー】
 発表から8年という長い年月を経て、ついに発売された『メトロイドプライム4 ビヨンド』。ファン待望の最新作はいかにして完成に至ったのか、そして本作が目指したものとは……?

 任天堂の開発チームがメールインタビューに回答してくれたので、そのすべてをお伝えしよう。
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プレイヤーがサムスと同じ視点で、未知の惑星を調査・探索、ときに激しい戦闘を行う。『メトロイドプライム4 ビヨンド』では、そんなシリーズの最新作にふさわしい、美麗に表現されたSF世界に深く没入できる体験が待っている。

『プライム』らしさをキープしつつ新しい体験も届けられるゲームに

――本作の開発経緯を教えてください。

開発チーム
 プロジェクトは米国任天堂から開発の依頼がありスタートしました。『メトロイドプライム』のナンバリング=本編を作ってほしいという依頼です。『プライム』らしさはキープしつつ、新しい体験も届けられるゲームを作ろうと考えました。同時に、ストーリーはいつか作ろうと計画していたサムスとサイラックスの関係性を軸にしたいとも考えました。
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サイラックス:銀河連邦とサムスを激しく憎むバウンティハンター。本作では、メトロイドを使ってスペースパイレーツを操り、連邦の施設をつぎつぎと襲撃。騒動の発端を作った。
――長期間にわたる開発の中で、もっとも苦労したところや、こだわったポイントを教えてください。

開発チーム
 プロジェクトは途中で開発会社が変わり、レトロスタジオで仕切り直すことになりましたが、レトロスタジオも当時は『メトロイドプライム』を制作するための体制が整っておらず、まずこの体制を構築することから始めなければなりませんでした。

 また、背景のモデルやムービーの作成は外注の会社に依頼したのですが、とくに背景のデータ制作のために数多くの外注先が必要で、まずその会社の選定から始まり、その後もずっと管理が必要でした。スケジュールとクオリティー両方の面で、進捗管理のスタッフにはとても助けられました。感謝しています。あわせて、データを作成してくださった多くのスタジオの皆さんにも感謝しています。

 こだわりのポイントは、新しいスタッフに私たちの制作方針を理解してもらうことでしょうか? ゲームを作るのではなく、プレイヤーの体験を構築するのだということや、とくに『メトロイドプライム』らしい“間”のフィールを理解してもらうのに、時間がかかりました。最終的には“間”という日本語の概念自体も含めて、理解してもらえたと思います。
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――じつに18年ぶりのナンバリングタイトルですが、時代の変化を踏まえて意識したことはありましたか?

開発チーム
 プロジェクトのスタート当初は、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の影響もあってか、「オープンワールドの『メトロイド』をやってみたい」という意見がネット上ではそれなりに多く見受けられました。

 しかし、
『メトロイド』の“能力を得て行動範囲を拡大していく”という主軸の要素と“最初からどこまでも自由に動き回れる”オープンワールドは相性がよくありません。そこで自由に動ける範囲を限定的に設け、ハブとしてほかのエリアをつなげることを考えました。そのエリアをバイクで気持ちよく移動できたなら、探索の緊張感を緩和するパートとしてゲーム全体のペーシングに緩急がつけられるとも考えたんです。

 結果的にゲームを完成させるまでに予想以上の時間が掛かり、オープンワールドのゲームに対するプレイヤーの印象も変わってきていることは認識していました。とはいえ、(レトロスタジオで仕切り直した時点で)すでに一度リセットした開発をさらに後戻りさせることは考えられず、もとの構想で作り切ってしまう決意を固めました。

 このあいだに、シューティングゲームやアクションゲームの進化、とくにプレイスピードの上昇も起きていましたが、それを取り入れるのもアドベンチャーゲームとしてのテンポを成り立たせることが難しくなってしまうので、あえて意識しませんでした。つまり時代の変化とは、ほぼ無縁のゲームになっていると思います。

――サブタイトルの“ビヨンド”にはどんな意味が込められているのでしょうか?

開発チーム
 “時空を超えて”という意味です。
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――『メトロイドプライム4』のいちばんの魅力は、ズバリどんなところでしょうか?

開発チーム
 技術面では、莫大なデータ量のテクスチャーを使用したグラフィックの美しさ。Nintendo Switchで60fps、Nintendo Switch 2 Editionなら120fpsの完全キープなど、ハードのポテンシャルを最高に引き出している点でしょう。ゲームとしては、ほかにあまり類を見ないファーストパーソンアドベンチャーというジャンルを体験してもらうとともに、最後まで遊んでいただければ、単にゲームをクリアーしたという達成感以上に記憶に残る体験になると思います。

――Nintendo Switch 2 Editionならではの機能を活用した要素について教えてください。とくに、マウス操作の手触りはどんなことを意識して調整しましたか?

開発チーム
 本作はおもに一人称視点のゲームなので、マウス操作に慣れた方々の期待に応えるため、プレイヤーのマウス操作時の体験が満足いくものになるようにしたいと考えました。視点操作やカーソル移動の調整に多くの時間を費やし、プレイヤーが自分好みに設定できるオプションも多数用意しました。

 しかし、Joy-Con 2の機能について詳しく知るにつれ、マウス操作とスティックの操作をシームレスに切り替えられることこそが、Nintendo Switch 2ならではのすばらしい体験になると感じました。そこから私たちは作業時間の多くを、マウス操作とスティック操作を自動的に判別し、意図しない入力を最小限に抑える技術の開発に費やしました。

 チームはこの操作方法を最高のものにするため非常に努力し、“Nintendo Switch 2 体験会”で好意的な反応を得られたことをとてもうれしく思っています。ゲームの発売後、より多くの皆さんにこの操作を体験していただけるのを楽しみにしています!

――惑星ビューロスを作り上げるにあたり、とくにこだわったところを教えてください。

開発チーム
 最初に探索するエリアであるフューリーグリーンは、“異世界のジャングル”をどう表現するかという点で、アートと環境の構築には担当スタッフがとても力を割いてくれました。もちろん、そのほかのエリアも個性豊かな環境に仕上げてもらったと思っています。とくに建造物に象徴されるラモーン文化の視覚化には、コンセプトアートを担当したスティーブ・バーグさんのセンスがいかんなく発揮されていて、統一感のある優雅な曲線美が特徴です。
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惑星ビューロス:本作のおもな舞台となる謎多き惑星。かつて高度な文明を持った種族・ラモーンが栄えており、各地にその痕跡が存在する。密林、雪山、溶岩地帯などの探索エリアの中心には広大な砂漠地帯“ソルバレイ”があるなど、多様なロケーションが楽しめる。

コントロールビームから逆算して生まれたサイキック能力のアイデア

――本作で新たに登場する“サイキック能力”という要素の採用理由と、こだわったポイントなどを教えてください。

開発チーム
 プロトタイプを触っていて“チャージビームをコントロールする”ことを思いつきました。実際にプログラムを組んでもらって確認し、そのうえで新たな遊びの要素になると判断したのですが、どういう理屈でサムスがこれを可能にしているか? という点からサイキック能力に結び付けることにしました。その後、レトロスタジオに開発が移ったタイミングで、そのほかのサイキック能力のアイデアを追加してもらいました。
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サイキック能力:サムスが授かった新たな能力。ゲームを進めることで扱える能力は増えていき、意思の力で軌道を自在に操作できる“コントロールビーム”を始め、戦闘・謎解きともに本作のゲームプレイに新鮮味をもたらしてくれる。
――新要素として、バイクのような乗り物“ヴァイオラ”があります。この要素の採用理由、こだわりなどを教えてください。また、乗りこなすためのコツはありますか?

開発チーム
 自由に動けるハブエリア(ソルバレイのこと)を作ろうと考えたときに、移動速度の問題が同時に出てきました。広いエリアを歩いて移動するのは、自由に動けてもストレスになってしまいます。もちろんサムスにはブーストボールやスピードブースターという高速移動の能力がありますが、広いエリアを“高速で自由に動き回る”という観点と“格好よく”という観点の両方を満たすためには、“バイクに乗る”のが最適解であろうと判断しました。

 “操縦しているだけで気持ちいい”感覚が表現できるかがいちばんのポイントだったのですが、そこはレトロスタジオのプログラマーとゲームデザイナーが調整してくれて、満足できる手触りに仕上がったと感じています。さらにマップの制作チームが、その手触りを実感できるアップダウンのあるマップを作り上げました。方向転換のためのドリフトを自由にコントロールできるようになると、気持ちよさとゲームに必要な操作性の両立が可能になります。
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ヴァイオラ:ビューロスにかつて存在した機械文明の遺産。高い機動力があり、ブーストからのパワースライドや、追尾性能がある弾“プロジェクタイル”などの攻撃手段も有する。
――本作を攻略していくうえで、意識しておくといいことや、アドバイスなどがありましたら教えてください。

開発チーム
 初めてプライムシリーズを遊ばれる方に向けてですが、とにかくスキャンを意識してください。それによってゲームの世界観も広がりますし、謎解きやボスの攻略にも役に立ちます。セーブステーションでこまめにセーブをすることもおすすめします。

「考えて、答えを見つける」いまの時代には稀有なゲーム

――本作の時系列について、お答えいただける範囲で教えてください。『メトロイドプライム フェデレーションフォース』の後だとは思いますが、そのほかの作品との前後関係は?

開発チーム
 『スーパーメトロイド』の後で、『メトロイド フュージョン』の前という設定です。ただ、今作でサムスは時空を超えて別次元の世界に飛び込んだので、今後時系列を気にしなくてよくなります。そこは、あえて意識して設定をしています。2Dの『メトロイド』シリーズに影響を与えることなく、自由で『メトロイドプライム』独自な設定を可能にしたかったからです。
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――サイラックスという敵キャラクターについて、どのような意図を持って設定やデザインなどを作り上げていったのかを教えてください。

開発チーム
 『メトロイドプライム ハンターズ』を制作した際に、開発会社であるNSTのゲームデザイナーが、各ハンターの設定を考えてくれました。その中で、サイラックスが連邦とサムスを憎んでいるという設定があり、そのときは「理由を決めないでほしい」とお願いしたんです。いつかその理由をテーマにしたゲームを作ろうと考えたときに、設定が足かせにならないようにするためでした。

 『
メトロイドプライム3』や『フェデレーションフォース』のエンディングに伏線を仕込みつつ、本作で初めて過去に何があったのかを具体的に決めました。それが、サムスがサイラックスの意識と共鳴し、ときどきフラッシュバックのように観る映像です。サイラックスは独善的で偏狭な性格ゆえに、サムスと銀河連邦を恨むことになります。

 また、スーツのデザインはオリジナルのカラーやデザインを基調としつつ、レトロスタジオのアーティストの手によってリデザインされました。設定的には、銀河連邦のナノテクノロジーによってスーツを改造したことにしています。より洗練されて格好よいデザインになったのではないかと思っています。
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――今回、『メトロイド』らしい孤独な探索の場面も十分に用意されつつも、銀河連邦軍との協力も取り入れられています。これにはどんな意図があったのでしょうか?

開発チーム
 我々のゲームデザインの進めかたとして、そのタイトルでプレイヤーに体験してほしいテーマを最初に設定することが多いです。ふだんプレイヤーがゲームをクリアーするときには迷いなくAボタンを押しますよね? でも『メトロイドプライム4』では、そこに躊躇や葛藤を感じさせたかったのです。そのために銀河連邦の兵士たちも惑星ビューロスに転送されて来ることにしました(答えはエンディングにあります)。

 そのことが最初にあって、では兵士たちは、ゲームの中でどんなふうに行動するとリアリティーがあるか、という順で考えました。たとえばエスコートミッションを入れたいとか、カジュアルユーザーをどう引き込むとか、そういう具体的な要素をひとつひとつ検討してゲームに組み込むのではなく、「弱虫なキャラなら戦闘は弱いから、護ってあげないといけないよね」といった気持ちになってもらうために、キャラごとのAIやイベントの仕様が決まっていきました。

――マッケンジーを始め、銀河連邦軍の面々はゲームをプレイしていけば親しみを感じられるキャラクターだと思います。性格付けや台詞回しで大事にしたことがあれば教えてください。

開発チーム
 性格付けは、役割に応じて決めました。エンジニアのマッケンジーはゲームの案内役でもあるので、明るく軽い感じを意識してもらいました。アイテムの開発などもさせたかったので優秀な技術職の設定なのですが、それが嫌味にならないように、ちょっと間が抜けていて臆病な感じのキャラ設定にしました。

 
スナイパーのトカビは、無口で孤独で、神秘的な雰囲気があるハンターをイメージしました。ゲームを通じても、ひとりで行動する状況も多いので、そういう性格にしています。

 
デューク軍曹とアームストロング一等兵は、頑固おやじとギャルっぽい娘のイメージです。ふたりのコントラストが、微笑ましく見えるように会話や演技も制作されています。また、サムスといっしょに行動する際には、先に突っ込みがちな危なっかしい一等兵と、火力が強く頼れる落ち着いた軍曹、という特徴が出るようにプログラミングしてもらっています。本当は彼らを中心としたイベントも設計していたのですが、残念ながらスケジュールの都合で実現することができませんでした。

 
アンドロイドのVUE-995は、巨大メックの操縦者として設定しました。ほかのキャラの個性が強めなので、あえてロボット的、無機質な表現をしてもらっています。個人的なこだわりどころとしては、肩から複数のミサイルを一斉発射できるのですが、その軌道を日本のアニメによくあるパターンで表現してもらうようアニメーターにお願いしました。
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マッケンジー/トカビ
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デューク&アームストロング/VUE-995
 彼らのセリフはレトロスタジオのライターに、演技指導はレトロスタジオのムービー担当スタッフに監修してもらいました。何度かのやり直しを含めて、とても丁寧に熱心に対応してもらいましたし、いろいろな提案ももらって実現しています。

 なお、日本語のセリフは、単に翻訳ではなく、それぞれのキャラの性格を表現しつつゲームに合うように簡略化され、さらによりリアリティーのある自然なセリフに書き直してもらっています。担当はライターではなく、ゲームデザイナーの工藤太郎さんです。

――そのほか、開発中の裏話やエピソードなどがあれば教えてください。

開発チーム
 我々はレトロスタジオに出張する際にいつも日本のお菓子をお土産に持って行っていました。抹茶味のチョコやスナックが人気でしたね。ほかには、強いワサビ味のおかきなども好評でした。レトロスタジオのあるテキサスはBBQが名物なのですが、付け合わせのハバネロのピクルスが、激辛で我々の口には合いません。でも、レトロスタジオの人たちは平気でポリポリ食べています。辛い食べ物に対する耐性は、日本人とは全然違うようです。

――最後に、『メトロイドプライム4』をプレイ中の方や、まだプレイしていない方に向けて、アピールしたいことがありましたら教えてください。

開発チーム
 任天堂のゲームの中でも最高水準を目指したグラフィックと処理落ちのないゲームプレイを体験いただきたいです。単にゲームをクリアーするだけでなく、この世界の隅々までじっくりと見てもらえるとうれしいです。そして、それは連邦兵たちにも当てはまります。単なるAIキャラにならないように、会話や動作も非常に丁寧に作られています。ゲームの途中で何度も彼らのベースに立ち戻って、会話をしてみていただけると実感できるでしょう。

 そして、何よりも
『メトロイドプライム』シリーズは「考えて、答えを見つける」ゲームであり、それがボスバトルに象徴される戦闘にまで含まれているタイトルというのは、いまの時代稀有な存在かもしれません。けれど、それこそ本来のゲームのおもしろさでもあると思います。生理的な快感とそれ以外の考えるおもしろさの両方を兼ね備え、記憶にも残るであろう『メトロイドプライム4 ビヨンド』を、ぜひ遊んでみてください!
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『メトロイドプライム』シリーズならではの「考えて、答えを見つける」ボスバトルは本作のプレイ体験の中でも格別の興奮が味わえる。時代を超える楽しさは、ぜひ自身で確かめてほしい!
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