家庭用シリーズとしては14年ぶりとなるシリーズ新作として、2025年9月25日にKONAMIより発売された『サイレントヒルf』。
シリーズとしては初の日本が舞台の作品となり、日本特有のオカルト文化と『サイレントヒル』で味わえる恐怖と狂気がミックスしたシナリオと映像表現が魅力だ。
本作は、ストーリーに『ひぐらしのなく頃に』などで有名な竜騎士07氏を迎えて制作されたことも発表当時から話題となった。
氏の得意とする人間の心理描写や、謎が謎を呼ぶ練り込んだストーリーは本作でも健在。これまでにないサイコロジカルホラーが楽しめる。そのストーリー制作は、どのように始まり、どのような想いで取り組んだのか。
発売後は主人公の深水雛子役・加藤小夏さんの実況や、キャストが続々と“本人実況”を行ったことも注目を集め、今年の話題作となった本作。その秘密を竜騎士07氏へのインタビューにて、紐解いていく。
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竜騎士07
同人サークル“07th Expansion”代表。自主制作で作成された『ひぐらしのなく頃に』はその練り込まれた世界設定や複数の作品から物語の真相が描かれる内容が話題を呼び大ヒットを記録。本作ではストーリー・世界観設定などをメインに手掛ける。
竜騎士07と『サイレントヒル』
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――竜騎士07さんがストーリーや世界観構築を担当すると発表され、発表時から話題を集めました。オファーがあった当初のお話からお聞かせいただけますか?
竜騎士
最初にKONAMIの方から、「『サイレントヒル』の新作を作るので、参加してほしい」というオファーをいただきました。うちのスタッフからは「ストーリーを全部やらせてもらえるわけではないだろ」とたしなめられもしたのですが、いざ依頼の詳細を聞くと、ストーリーをやらせていただけるということで。びっくりしたと同時に、本当にうれしかったです。
――期待通りに『サイレントヒル』のストーリーを自分の手で作れるとは最初は思っていなかったんですね。
竜騎士
そうです。「まさか自分が!? 本当にいいの?」という感じでした。
――舞台が日本という設定は竜騎士07さんのアイデアだったのでしょうか。
竜騎士
いえ。これまでの『サイレントヒル』作品は、ほとんどがアメリカを舞台にしていたので、今回もそうなのかと自分も思っていました。ですが、KONAMIさんと打ち合わせをしたら、「日本を舞台で考えている」と言われて、こちらも驚きました。
と言うのも、『サイレントヒル』作品は“サイレントヒル”が舞台だから『サイレントヒル』シリーズだと思っていたんですよ(※1)。過去のタイトルでもサイレントヒルから少し離れたこともありましたが、これだけテイストを激変させるというのはかなりの冒険だったので、当初はけっこう悩みました。
※1 サイレントヒル(地名)……シリーズ作品では、一部例外はあるものの、ほとんどがアメリカのサイレントヒルという静かな街が舞台だった。――KONAMIとしても、竜騎士07さんとしてもチャレンジだったんですね。
竜騎士
依頼を受けた後のミーティングで岡本(基)シリーズプロデューサーとかなり話し込みました。なぜ日本が舞台なのか、“サイレントヒル”とはいったい何ぞや、とか。最終的には、「サイレントヒルは地名を示すものだけでなく、現象をも示すものである」という結論にいたり、かなり納得のいく形に世界観やストーリーのベースを作ることができたと、振り返って思います。
――熱い議論をされたんですね。
竜騎士
すごく楽しかったですね(笑)。
その勢いのまま「一度、叩き台を作らせてください」と持ち帰りまして、その後はガーッと一気に作業したのですが、生まれてこの方、いちばん楽しい時間を過ごしていたんじゃないかなと振り返って思います。岡本さんからも、ものすごい短い期間で叩き台となるものが送られてきて、びっくりしましたと聞きました。
――そんなに(笑)。ご自身にとって渾身のストーリーができあがったんですね。
竜騎士
私自身もゲームファンですし、独特の世界観を持った『サイレントヒル』も大好きなので、その最新作のストーリーを作れるんですから、こんなに楽しいことはないですよ。
――『サイレントヒル』のどんなところがお好きなのでしょうか。
竜騎士
『サイレントヒル』って、“終わらない悪夢”とでも言うべき独特の重苦しいテイストがあるじゃないですか。たとえば、ふつうのゲームだとセーブポイントになる場所は安全で、安心できる場所として設計されると思うんですけど、『サイレントヒル』はそんなことがなくて、怖くて不気味なシーンが延々と続くんですよ。音楽も。
たとえるならば……息継ぎをしないで、ずっと水の中に頭を突っ込まれているような。
――褒めているんですよね?
竜騎士
とても褒めていますよ!(笑)
『サイレントヒル』のようなゲーム体験ってそれまでになくて、当時プレイした衝撃をいまでもよく覚えています。そんなすごいゲームの制作に関われるんですから、そりゃあ張り切りました。
――もともとそこまで『サイレントヒル』シリーズのことをお好きだったとは。
竜騎士
制作サイドにストーリーを納品するたびに、「ほかに何かやることありますか? まだまだ書きます」と言いまくっていましたね。
――自分まだやれます! と。
竜騎士
本編ストーリーの制作が完了した後は、ゲーム中に入手するメモのテキストをずっと書いていました。
わりとメジャーなシステムではありますが、本編では語られないシークレットファイルみたいなものを集めて世界観を補完していくような収集要素がありますよね。あれってひとつの文学的ジャンルだと思っていて。自分もいつかやってみたいと思っていたんです。
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落ちているメモや手紙がストーリーを補完する。
――こちらの面でも念願が叶って。
竜騎士
そうです。本当に書いて書いて書いて書き切りました。
本作のフィールドは3Dグラフィックの作り込みが本当にすごいので、プレイヤーには隅から隅まで探索してほしいと思いました。
でも、やっぱり何かご褒美的なものがないと探索しない人はそのまま終わると思うんです。そこで各所にメモを配置して、探索をすればするほど本作の世界が広がっていくようにできたらと。何かアイテムが入手できてもいいですが、キャラクターの能力に影響しないメモならいくら置いても大丈夫ですから。止められなかったら無限にテキストを作成していたと思います。
――(笑)。それほどまでにやる気に満ち溢れて前のめりにストーリー制作をされたとは、KONAMIとしても「頼んでよかった」と思っていたのではないでしょうか。
竜騎士
そう思っていただけたらうれしいですね。子どものころからゲーム制作に憧れがあって、その想いから『ひぐらしのなく頃に』(※2)を同人ゲームとして手掛けたのですが、ゲームメーカーが作成するようなフルボリュームのゲーム開発にも携わってみたいと思っていたんです。『サイレントヒルf』は、そんな子どものころからの私の願いをいくつも叶えていただいたようなものなので、本当にありがたい経験でした。
※2 『ひぐらしのなく頃に』……第1作は2002年にPC向け同人ゲームとして発売されたビジュアルノベルにして、竜騎士07氏の代表作。アニメ化やマンガ化、映画化などさまざまなメディアミックスが行われた。内容は、伝奇ホラーでありミステリーでありサスペンスでありSFであり、友情物語。――ゲーム内のテキストに関して、どの程度まで関わられているのでしょうか。
竜騎士
システムメッセージ以外はほぼすべて自分が作っていると思います。最終的に微調整は入っていると思いますが、文字に関して、ベース部分はほぼ自分が担当です。
――アイテムの説明テキストなどもですか?
竜騎士
そうです。アイテムの説明文などはゲームの仕様次第で変わりますので、自分のほうで潤沢にテキストを用意して、最終的には開発者の方の判断で調整していただきました。
――テキストワーク以外にも、ゲームデザインなどに関わられていたのでしょうか。
竜騎士
自分はもともとサウンドノベル屋さんなので、「ホラーアクションってどうやって作っているんだろう?」というレベルの知見でした。いい機会なので、いろいろなミーティングに出席させていただき勉強させていただきました。
たとえばグラフィックの方向性を決めようとなったときに「竜騎士さんどうでしょう」みたいに意見を求められたり、追加で世界設定のアイデアを出したりすることはけっこうありましたね。自分のアイデアがゲームに採用されることもあって「本当にいいの!?」ということの連続で厚かましいと思いつつも楽しかったです。
ゲームも開発途中のバージョンをプレイさせていただくこともあり、まだテクスチャ―などがない仮組みの町を歩かせていただいたんですけど、そういうことをするのも子どものころからの夢だったので本当に感動しました。「開発中のゲームってこうなってるんだ」って。KONAMIさんには夢をひとつ叶えていただいたので、恩返しであるかようにゲームが少しでもよくなればと思って、さらにアクセルを踏んで全力で取り組ませていただきました。
竜騎士エンジンは全開。岡本ブレーキはソフトタッチ
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――岡本プロデューサーと竜騎士さんは、開発時どのようなやり取りをされたのでしょう?
竜騎士
ゲーム開発に限らず、組織ってアクセル役とブレーキ役が必要ですよね。今回は岡本さんがブレーキ役になるから、自分はもうアクセル全開で全力を出し切ろうと。
文字で書くといくらでも書けるのですが、いざ3Dにするとなると「それはコストが膨大になるからもっといいやりかたがあるかもしれない」と岡本さんがあいだに入ってくれるような。僕はずっとアクセル踏みっぱなしで、助手席で“教官ブレーキ”を踏む担当だった岡本さんからすると「いつでもどこでもアクセル踏み過ぎ!」と、うざったく感じることもあったかもしれないです(笑)。
――(笑)。ゲームをプレイすると「『サイレントヒル』が好きな人が作っているな」という要素を多く感じます。本作の世界観を構築するにあたり、どのようなことを考えていたのでしょうか。
竜騎士
自分にとっての『サイレントヒル』の源泉は、やっぱりシリーズ第1作の怖さでした。先ほども言いましたが、怖さ、息苦しさみたいなものがずっと続くようなイメージは、ストーリー面でも意識しました。ゲームデザイン的にも、“行きたい場所になかなか行けない”、“思い通りにならない”というフラストレーションが続くような設計になっているのですが、テキスト面でもその恐怖感とかストレスみたいなものを後押しできるように考えました。
――プレイすると、とてもその感覚があります。過去のインタビューで、「本作はくり返しのプレイで真相が明らかになるような作りになっている」と語られています。ストーリー面ではどういった工夫をされているのでしょうか。
竜騎士
これだけ大勢の方が長い時間をかけて作っているゲームなので、2周、3周とプレイして、このゲームを遊び尽くしていただくことが、私からできる応援というか協力というか恩返しだと思っているんです。すでにマルチエンディングなことは公開していますが、全員がすべてのエンディングを観たくなるようなストーリーになっていると思います。
――1周目のエンディングは、「え~っ、こう終わるの!?」というような内容で、すぐに2周目に入りたくなりますよね。
竜騎士
僕の中で、ホラー映画やとくにゾンビ映画みたいな映画のラストは、ロックと疾走感に溢れてなくてはならないという思い込みがあるんです。そういう疾走感を演出できるようシナリオ段階からそこはかなり意識しました。
――山岡晃(※3)さんの楽曲も相まって、かなり疾走感がありました。
※3 山岡晃氏……第1作より、『サイレントヒル』シリーズの音楽を長らく手掛けるコンポーザー。本作では楽曲制作として参加。本作でも『サイレントヒル』シリーズらしい、じつに不気味かつ恐怖の音楽を提供している。竜騎士
ぜひあの勢いのまま周回プレイに突っ走っていただきたいです(笑)。ほかのエンディングに行きたい場合も、どうすればつぎのエンディングに進めるのかもかなりわかりやすくしていますから。
――1周クリアーすると最初のメニュー画面にほかのエンディング条件が表示されるんですよね。
竜騎士
開発当初から挙がっていた意見でして、「とにかく遊びやすくしたい、自分でたどり着いてほしい」という想いがあって。隠しすぎると最終的にはインターネットで検索することになりますよね。でも、自分で見つけられたほうがうれしいはずですから。
「山岡さんの音楽は音楽とアンビエントの中間……物語世界と完全に密着したもの」
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――山岡さんの音楽についてはどのような印象をお持ちですか?
竜騎士
難しいですね。私も音楽のプロじゃないので頓珍漢なことを言ったら申しわけないのですが……何と言うのかな、音楽とアンビエント(環境音のような自然な音)の中間なんですよね。単に音楽ということにはおさまらない。でもアンビエントというにはちゃんとメロディアスなものである。うまく言えないんですけど……。
ファミコン時代のBGMって、ある特定のBGMがあるシーンからずっと流れっ放しじゃないですか。進めるか進めないかによって、当たり前だけど曲のサビの部分でプレイヤーがどこをプレイしてるかなんて変わりますよね。でも山岡さんのはそうじゃなくて、完全に物語のテンポやリズム、会話というかシーンの進行をちゃんと見て作っているんです。そういう意味では映画音楽に近いかな。
ただ音楽と言うか、さまざまな要素の集合体というか……単純に音楽というカテゴライズに入れていいのかわかりませんが、物語世界と完全に密着したもの。差し替えが効かないものなんです。喫茶店の音楽みたいに“なんか雰囲気に合う音楽を流してる”ということではなくなくて、そのシーンに合わせたものをオーケストラピットで演奏して、演者の様子を見ながら指揮者が指揮棒を動かしているような……イベントシーンなんかでも非常によく感じられると思います。
――本当にすばらしい音楽ですよね。敵が出てきたときの不思議な音とか……。
竜騎士
本作ではラジオを持つことはなかったんですけど。ある種の緊張感を出す上でラジオというのはやっぱり『サイレントヒル』のひとつの顔だったので、とりあえず「音が何から出てるのか」ということは置いておいて(笑)、敵が迫ってくるのを音で表現するというアイデアがありました。それを皆さんが膨らませて、最終的に製品の形になったわけですね。
静岡県を舞台とするには富士山が神々しすぎた!?
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金山がモデルになっている。
――本作の舞台は岐阜県の金山の町並みがモチーフになっています。どういった魅力を感じて、金山を選択したのでしょうか。
竜騎士
あそこは、町の造形がすごく不思議でおもしろいところなんですよ。もともと住んでいる人の家があって、そこに新しく住み始めた人の家ができて、非常に入り組んだ不思議な構造になっていて。間違いなく日本なんだけど、どこか異国情緒というか異世界感がある雰囲気が漂う場所でした。その雰囲気がすごく魅力的に感じたので、ここを舞台にするのはどうだろうと。
――本作のひとつの特徴にもなっている舞台、金山という場所の設定は竜騎士07さんの発案だったんですね。
竜騎士
たまたま金山の近くにある旅館に泊まったときに「おもしろい場所があるよ」と教えてもらったのが金山なんです。実際に行ってみたらすごく魅力的だったので、覚えていたんです。
――『サイレントヒル』を日本でやるなら“静岡”だろう、とはなりませんでしたか?
竜騎士
じつは最初のアイデアとしてはありましたが、静岡県だと、富士山が見えるんですよね。富士山はすごいんですよ。インパクトが強すぎて。日本人からすると神々しさ、力強さという要素が前面に出すぎてしまう。『サイレントヒル』といえば“霧”で、霧のせいでどっちに進んでいるのかわからなくなるみたいな要素が重要ですが、富士山があると方向感覚が狂わなさそうだなとも思いますし。
――「富士山だ!」とどこからでも見えると、得体の知れない不気味さは薄れてしまうかもしれないですね(笑)。日本的な要素で言うと、本作では神社やお稲荷さん、狐といった要素も登場して不気味さをさらに演出してくれています。
竜騎士
日本を舞台とする以上、日本的なホラー、オカルトな要素は入れ込もうと考えていました。『サイレントヒル』は海外のファンの方も多いので、わかりやすい日本感みたいなものを演出するためにこういった要素を入れました。アジア的な要素を入れて少しいびつな世界観にしたほうが不気味さは出そうですが、それだと日本を舞台にする意味がないので、王道な世界観にするように心掛けました。
――過去作でいう“裏世界”的な場所で出会う狐面の男は重要な存在として登場します。少女マンガの“スパダリ”的存在にも見えますが、どういったアイデアからデザインされたのでしょう。
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竜騎士
詳細は伏せますが、彼は珍しい立場のキャラクターで、すべてをプレイすればどういう存在なのかがわかるようになっています。ピンチのときに現れて、助けてくれる。ミステリアスで一見味方に見えるんだけど、素性がわからずどうにも薄気味悪い。もしかしたら敵かも? というふうに思えるような見た目や振る舞いになるよう心掛けてました。
――最初はかっこよく助けてくれるし、たぶん味方なんだけど、なんか……本当か!? という塩梅が絶妙ですよね。
竜騎士
「“敵には見えないけど、なんか怪しい”と思えるようにしてください」とオファーしたら、keraさんに本当にすばらしいキャラクターデザインにしていただいて、震えましたね。ミステリアスで、こちらに危害は加えなさそう、こちらを怖がらせないようにしているけど、やっぱりなんだか怪しいぞ、と。
――「急急に律令の如く行うがいい」は陰陽道の呪文としても知られていますし、平安の大陰陽師・安倍晴明の母親は葛の葉狐だという伝説があるなど、狐面の男にはいろいろと想像を掻き立てられる要素が多いです。ですが、とくに明言されないというところがいいですよね。
竜騎士
そうですね。狐、お稲荷さんはいろいろな地域にある日本人にとっては普遍的なものです。それにも関わらず昔から“狐の祟り”というのをオカルトの文脈で真面目に捉えた場合、相当やばい文脈に入ります。
動物霊の中で考えてもかなり危険な存在で。不可思議かつ、不気味かつ、危険な存在なんですよね。『サイレントヒル』は海外のファンの方が多いですが、本作では“日本のオカルト的なもののなかでもとくにヤバい部分”を存分に楽しんでいただきたいと思っています。
――非常に恐ろしい存在ですよね、お稲荷さんって。
竜騎士
真面目に見たらそうですよね。昔の日本で「立ち小便禁止」って言って、そこにお稲荷さんの絵が描いてあったりしましたよね。つまりそういうことなんです。神社のマークに対しておしっこをかけられない。
――やはり祟りがある、少なくとも人間は祟りを感じるということですよね。
竜騎士
そうなんです。あと本作では、人間側から書くのかオカルト側で書くのかという調整にも時間を掛けました。人間サイドのオカルトで書くことはぜんぜん難しくないんですよ。
問題は、『サイレントヒル』というのはそれをオカルト側から書く側面があるんですよね。オカルトというのは“人間側の目線から書く”のが鉄則で、オカルト側からの目線で書くともうそれはオカルトじゃなくてファンタジーになっちゃうんです。だから今回の作品では、狐側からの意見というかアクションというか、思想というか考えもあるんですけど、それをどこまで作品世界を壊さないでプレイヤーに伝えられるか。そこは相当苦慮しました。
具体例としては、まず出てくる“狐面の男”がどこまで不思議な存在であるべきなのか、どこまでファンタジックであっていいのか、いけないのか……というのは相当考えました。
本編でも何やら呪文を唱えたり、陰陽の力のようなものが出てきますが、不思議な力ではあるけれど、いまやそういう魔法や超能力のようなアニメが溢れている時代ですから、表現には気をつけないといけない。「『サイレントヒル』がサイキックフォースものになっちゃった」みたいな誤解をされるわけにはいきませんから。
そこの安全策はすごく考えました。あくまでファンタジーでなくてオカルト作品であるということ、陰陽力という概念が象徴のような扱いにならないように。
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――狐で言えば、暗い場所にそびえ立つ狐の像もかなり不気味でしたね。
竜騎士
私も今回勉強させていただいたんですけど、お稲荷さん=狐ではないんですよね。神さまの使いというか人智を越えた存在で、けっこう由来も曖昧な部分もあります。神社って神聖なイメージありますけど、場所によっては勝手に拝んではいけないといった場所もありますし、とにかく奥深くて不気味で。
――そういった意味のわからない不気味さみたいなものは、ゲームをプレイしてすごく感じます。
竜騎士
あと、本作は台湾の開発会社ネオバーズエンタテインメントさんがゲームの中身を作られているんですけど、それもよかったなと。
――と、言いますと?
竜騎士
日本人って、もう思い込みとして神社とかお寺とかは通路が狭かったり天井が低いっていうイメージが植え付けられているじゃないですか。台湾にもそういったお寺などはありますが、日本と違って建築がダイナミックなので、社=狭いというイメージを持っていないと思うんです。なので、本作の闇の社殿もすごく大きかったり広かったりして、和風なのに和風じゃないような雰囲気を出すことができたのがすごくよかったと思っています。
――日本人では思いつかないようなアイデアが。
竜騎士
日本人が作ったらもっと違った感じになっていたかもしれないですね。闇の社殿のあの怪しい感じが出せたのは、ひとえにネオバーズさんのおかげです。
“UFOエンド” は本作でも健在
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――『サイレントヒル』では“UFOエンド”など、ちょっと愉快な要素もお約束ですよね。
竜騎士
今回も入っています。お楽しみに(笑)。本作は周回プレイをすることで物語をさらに楽しめるような作りになっていて。一度のプレイでは全貌が見えないようになっています。たぶんほとんどのプレイヤーの方が、「このままじゃ終われない」と感じるようなエンディングになっているし、私としては、1周目のエンディングで、タイトルコールが出るようなイメージを持っています。
――1周目は体験版で、2周目からが本番ですよ! と。
竜騎士
体験版にしては長い(笑)。2周目をプレイしないとぜんぜん楽しめないというわけではないので、1周目をクリアーしたうえで、さらに本作を楽しみたいという方には、2周目もぜひプレイしていただきたいですね。1周目もそれ以降も楽しめるようなストーリーを作ったつもりですので! とくにUFOエンドでは、本編にはない、笑えるジョークのような展開をすべて詰め込んでいますので、ご覧になっていただければと思います。2周、3周とくり返しプレイし、落ちているメモも集めてもらうことで、1周だけではわからない物語の真相が徐々にわかっていくようになっていると思います。
“未知” というものが生む恐怖と言い知れぬ魅力
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――雛子は不思議な魅力のあるキャラクターだと感じました。雛子をデザインするうえで、心掛けたのは何でしょうか。
竜騎士
まず主人公を男にするか女にするのかを最初に岡本さんと相談していました。過去作にはヘザーという女性主人公はいますが、男性主人公のほうが多い。だから女性にしたかったというのがひとつです。
ふたつ目は、私自身はこれまで女性キャラクターが織り成すホラーを多く手掛けてきました。男性作者だからこそ生み出せる魅力的な女性キャラクターって絶対にあると思うんです。宝塚の男装のキャラクターも、演者の女性たちが作り上げる男性像という逆転したところに不思議な魅力がありますよね。自分にないものだから理想が書けるんです。
――『サイレントヒル3』の主人公・ヘザーとはまた違ったキャラクターになりました。
竜騎士
雛子はけっこう複雑な家庭環境で暮らしていて、反抗的な性格だったり、口調が男っぽかったりと、かなり個性的なキャラクターになっています。男性が考えた魅力的な女性キャラクターにしたつもりですが、女性が見ても不快にならないように、ある意味では中性的な存在になるバランスになっていると思います。
――修とは「相棒」と呼び合っていたり、それをおもしろくなく見ている女友だちがいたり、自身も深層心理では表層とは異なる何かを感じていたりと、物語に関わってくる複雑な人間像ですよね。
竜騎士
ゲーム中の時代は現代的価値観と昭和的価値観の境目くらいで揺れる年代で、雛子は昭和的価値観からはちょっとズレた価値観を持って産まれてきてしまい、けっこう生きづらさを感じているんです。そういう気の毒さも、雛子の魅力として描きたかった点でした。
――時代設定も女性が抑圧されていた時代ですよね。
竜騎士
あの時代設定と女性主人公という選択は、順番というよりは並列処理ですね。全部の素材が同時にあって、同時に混ざって中央に集まった感じです。以前の取材でも「あの時代設定にした理由は?」と聞かれて「現代と祟りの世界が実質隣り合わせになった場所」と答えましたが、世界観の中では現代的価値観と昭和的価値観の境目ということです。
ただ、これだけは誤解のないように言っておきたいんですが、「昭和が悪くて現代がすべて正しい」なんて言うつもりはないんです。
あくまでもそういう価値観の変わる過渡期にいるということ。雛子という女性はかわいそうなことにその価値観からちょっとズレてしまった。何の疑問も持たなければふつうに生きていけたのに、疑問を持ってしまったせいですごく生きづらさを感じている。そういうものを機能的に描きたかったです。
女性の苦難をピックアップしたという風に言う方もいらっしゃって、もちろん女性の当時の苦難をテーマにしているんですが、それはたくさんある素材の中のひとつにすぎない。私はこの『サイレントヒルf』という話はもっと大きな、たくさんの栄養素でできた“コース料理”みたいなものだと思っています。
ひとつ食べて「しょっぱい」とか「酸っぱい」とかじゃなくて、コース料理の第1段階をプレイして、第2エンディングをやって……というように、どんどん満足感が変わっていくようなものだと思うんです。
全部プレイした上で感じていただければ、私の作品は「この作品では何々をテーマにしている」なんて、ひと言では言えないとおわかりいただけるとうれしいです。
ひと言で言えるなら、ひと言で言えばいいですもんね。あんなに長編を書く必要もない(笑)。
――確かに。雛子のほかにも本作にはさまざまなキャラクターが登場します。いつもと違うジャンルのゲーム制作で、どのようにキャラクターを際立たせる工夫をされたでしょうか。
竜騎士
自分はノベルゲーム畑の人間なので、最初はたくさん会話させようと思っていたんです。でも、本作はアクション要素が多く含まれているし、ムービーがプレイ時間よりも長いなんてことにするわけにもいかないので、要点だけ残して余計な部分は削除したり、行動で見せたり、短く印象的なセリフに直したりしました。咲子が「裏切り者」と、ひと言放つあたりがまさにそうですよね。
作っては直して作っては直して、半分くらいのテキストは作り直した気がします。驚いたのが、ムービーシーンではキャラクターの表情や目の演技で、セリフを使わずにプレイヤーに物語を伝えるような演出をしてくださったことです。
設定には書いてあるけど脚本にはしていないという部分で、効果的な演技を付けてもらって。それは、かなり手間が掛かる作業だったと思うのですが、ムービーのクオリティーが一気に上がるのを感じました。
――敵キャラクターについても関わっておられたのです?
竜騎士
自分も関わっています。本作の世界観は、“赤い花”や“グロテスクな内臓”といったモチーフがあるので、これらをキーワードに、keraさんともやり取りさせていただき制作しました。いくつか候補を出してもらい、「こっちよりはこっちのイメージですね」というように。ですからkeraさんには相当な数のイラストを起こしてもらっていたと思いますよ。
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――竜騎士07さんが考える、本作の敵キャラクターとはどういった存在なのでしょうか。
竜騎士
登場するバケモノたちは、この雛子の世界を汚す存在なんですよね。だから、そういったイメージをkeraさんにお伝えしたので、けっこう液体を吐き出すような攻撃をしてくるやつが多くなっているんだと思います。
ーーそういえば、作中で“畑の向こうで踊っているような“アヤカカシ“の姿を見ると恐ろしいことになる“というテキストが入手できますが、これはまさに都市伝説の“くねくね“を彷彿とさせる恐怖感ですよね。くねくね自体は日本のネット怪談が発祥で2000年代に入ってから創作された怪異ですが、そういう現代の都市伝説ネタが1960年代の舞台に落とし込まれているのも素敵です。
竜騎士
日本人からすると「これは」と思えるポイントですね。外国の人からするとあの恐怖感はわからないかもしれないですが(笑)。
竜騎士07氏が考える恐怖というもの根源
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――シリーズ共通の特徴でもありますが、本作で雛子を襲う現象は本当に意味不明で、“理解できない恐怖” が演出されていました。
竜騎士
自分が話を考えるとき、ふたつの話をいっしょに考えて、ひとつにくっつけるという手法をよく取り入れます。
そして、本作ではそのやりかたを思い切り活用しているんです。主人公の雛子の目線だけでは意味がわからない。本当に翻弄されているだけなんだけど、もしかしたら何か意味のある事象なのかもしれない。やっぱり、“わからないもの”って恐怖なんですよ。人間は命の危険がある動物の本能的な恐怖に加えて、自分の知らないものに出会ったとき、理解できず中腰で立つ居心地の悪さに恐怖を感じるんです。
だから、男子にとっては女の子という存在がいちばん未知で恐怖の対象かもしれない(笑)。
――なるほど(笑)。
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竜騎士
「怖い、怖いけど何だろう。怖いからこそ、この正体はいったい何なんだろう……?」とビクビクしながら進んでいくときが、ホラー作品の醍醐味でもあると思うんです。恐怖が好奇心を呼び起こして、謎に近付いていくゾクゾク感というんですかね。それは、自分にとって『川口浩探検隊』シリーズなんですけど。「洞窟の奥にふた股の大蛇を見た!」みたいな(※4)。
※4『川口浩探検隊』……おもに1970~80年代に放送されたテレビ朝日の特番。ジャングルや洞窟に探検に出掛け、未知の生命体や謎に挑む。当時の青少年はテレビにかじりつくようにして夢中になったとか。伝説の番組は実在した!――あれはホラー作品の枠に入れていいんですかね!?(笑)
竜騎士
自分にとっては(笑)。
私たちって、ホラーで感じるその居心地の悪さが解決する瞬間に、じつは快感を覚えてるんですよね。出なかったゲップがやっと出たみたいなスッキリ感があると思うんです。解釈できなかったものがスカッとハマッた瞬間の気持ちよさ。本作でも、作中で描かれる“恐怖の正体”はゲーム中に謎の鍵が散らばっていて、わかる人にはわかるかもしれません。全員がわかってしまうと上質なホラーとは言えないですが、隠しすぎるとそもそも恐怖にならないので、わかりやすさも重視しつつ恐怖と謎と鍵を散りばめています。
――オカルトが持つ、理解が及ばないことによる恐怖が味わえると。
竜騎士
ネタバレになるのでここでは詳しく言えないんですけど、世界観を壊さずに、どこまで明確にオカルト側の思惑を表現するか……という塩梅はけっこう苦労して調整した記憶があります。
――謎が解けすぎると、もうオカルトでなくなってしまいますからね。
竜騎士
狐の面をかぶった謎の男をどこまで表現するのが最適なのかも悩みました。彼はゲーム中で神通力のような力を使うのですが、あまり表現しすぎると超能力バトルマンガみたいになってしまうので。彼が使う力は呪い(のろい・まじない)のようなもので、本当に不気味な力なんです。
――それを連発してしまうともう呪いじゃなくなってしまって、超能力とか魔法になってしまいますね。
竜騎士
あくまでオカルトなので、説明しすぎることのないよう、不気味な存在になるよう。“未知に対する恐怖”のスパイスになるように苦心しました。
――そういった未知に対する恐怖というかJホラー的な演出は、『サイレントヒル』の怖さとの相性がよさそうですね。“サイレントヒルらしさ”というのはどこにあると思いますか?
竜騎士
サイレントヒルの怖さは“わからなさ”にこそあると思うんです。未知こそが恐怖なんです。
私なりのホラーの解釈なのですが、まず、ホラーというのはやっぱり命の危険が迫るような、動物として感じられるホラーというのがあります。
――わかりやすい本能的な恐怖ですよね。映画で言えば、恐怖の存在が出てくるパニック系というか。
竜騎士
そしてJホラーや『サイレントヒル』シリーズにはもうひとつあって、それは“違和感”。また違和感が整理できない状態。人間にとっての中腰のままで止まっているような状態。どうにも落ち着かない状態というのがあると思うんですよね。
さらにそこには“誰が見てもわかる違和感”というのと“俺じゃなきゃ見逃しちゃうね、というようなほかの人は気づかないけど、気づく人だけが気づくような違和感”とか、そういういろいろなフレーバーがあるんですよ。誰でもわかっちゃうと、やっぱりあまり上質なホラーではない。かと言ってあまり難しすぎると、もう隠れすぎて誰にも伝わらなくなってしまう。その辺のわかりやすいところから、ちょっと気づきが必要なところまでうまく配分するというのが大事かなと思っています。
――なるほど。ストーリーを進めるごとに増す本作のゾワゾワ感は確かにその感じがありました。
竜騎士
そうですね。アクションシーンはともかく、ストーリー面ではジャンプスケアもほとんどありません。しっかりと「わからなくて怖い」というふうにしています。それでも楽しんでいただけているのは、『サイレントヒル』のファンの方は、硬いものでも何でも噛み砕いて味わえるような非常に強い顎の力を持っているのだなと。
――難解なストーリーでもきっちり噛み砕いて味わってくれるのが、『サイレントヒル』のファンなんですね。
竜騎士
「最高に歯ごたえのあるサイコスリラーを作ってやる」と。噛み砕く顎の力がそういう人たちに、本当に楽しんでもらえるストーリーを作ろうと意気込みました。
本作は従来の『サイレントヒル』とは異なる見た目をしていますが、遊んでみると「『サイレントヒル』だ」と納得していただける内容になっていると自信を持って言えます。
「『サイレントヒル』は、舞台が海外で洋風なテイストじゃないと……」という意見もあったと思います。自分も今回のお仕事の依頼があったとき、勝手にアメリカが舞台だと思い込んでいたくらいなので。ですがあえて言います。本作はしっかり『サイレントヒル』です。
「人間の預かり知らぬ巨大な存在が、人間サイドから見えない巨大な戦いをしている」
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――本作の“コズミックホラー”的な側面についてはどのようにお考えですか?
竜騎士
人間サイドでは、人間どうしのあいだの話にしかなっていないんだけど、それが“人ならざる者サイド”から見ると、彼らはただの駒でしかない。もっと人間の預かり知らぬ巨大な存在が……まさにそこはコズミックホラーです。
私の中ではコズミックホラーというか、クトゥルフの神々は言葉をしゃべっちゃいけないと思っているんです。ニャルラトホテプさんみたいにわりとしゃべっちゃう神もいるんだけど(笑)、基本的にはしゃべれない方がコズミックホラーとしてはいいと思って。
だから本作でも、“陰”の最後のエンディングまで行ってもらうとわかると思いますが、あくまでも彼らは人の聞こえる声ではしゃべらない。誰かチューニングされた人がラジオ役になってしゃべらされる……みたいな形で表現されています。
――海外のオカルトファンにも楽しんでもらいたいという思いも?
竜騎士
そうなんです。全部終わった後に海外の方がどういう感想を持たれているかというのは、私もすごく楽しみにしているポイントなんですよ。海外の『サイレントヒル』ファンにも「これが日本の文化なのか」と思って、そして「これまでの『サイレントヒル』と本質は変わっていなかった」と、わかってもらえたらうれしいなと。
――日本のファンに向けたサービスもありますよね、ホテイ様とか。
竜騎士
あれは日本人の方に向けて作った私のアイデアです。ある日本名のアイテムが出てくるのですが、その日本名を口に出して読むと「ん? 過去に登場したアイテムと同じように聞こえるぞ」というものです。ぼんやり見ていると日本語なので気づかないかもしれません。
「答えのわからなかったものが解決する瞬間の気持ちよさこそがホラーの魅力」
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――最後に、人はなぜホラー作品を楽しむのでしょうか? 竜騎士さんのホラー観を教えてください。
竜騎士
私たちは、ホラーで感じるその心地の悪さが解決する瞬間にじつは快感を覚えているんです。
すっきりした感じ……喉のそこまで溜まっていたものが「ああっ」と出たときに気持ちいいじゃないですか。ホラーも同じで、不気味な何かが出てくると「寒気がする」という人もいる反面、「ああ、やっと正体がわかった」というすっきり感もあると思うんです。出なかったゲップがやっと出たみたいな(笑)。
――(笑)。
竜騎士
だから、ホラーの魅力というのはじつは、合わせられないものがスカッとはまった瞬間の気持ちよさなんですよね。ただホラーというのはそういう“快感”のことをあまり表には出さないで、「不気味」とか「考えさせられる」とか言いかたをしますけど。あえて言うと私にとってのホラーの楽しみはそこです。
もちろん「正体不明のまま終わる」ホラーもありだと思います。ただ個人的には「後日わかったことなんだけど、じつはあの日あの家では何々があって、あのドンドンという音はあれだったんだよ」という答えがわかった上で余計怖くなるタイプの怪談の方が好きですね。
――『サイレントヒルf』も1周クリアーだけでは謎が残りまくりですもんね。メモを集めたり何周かクリアーすると、「あれって、つまりこういうこと……?」と考察していけるような仕組みで。
竜騎士
1周目は「何だろう、何だろう」って思いながらやって、2周目で「ああ、そうだったのか」とわかる。そういうふうに作りました。だからこそ、大勢の方ががんばった作品なので、2度、3度と最後まで楽しんでもらいたいです。ストーリーのコンセプトができた最初期のうちから、「2周、3周を絶対にプレイヤーにしてもらいたい」と言い続けていました。
未知なる存在に対する恐怖も、恐怖の謎を解明したときに味わえる快感も、存分に味わえる内容になっています。怖いだけで終わらない、納得のいくホラー体験が楽しんでいただけると思いますので、ホラーゲームファンの方もシリーズファンの方も初めての『サイレントヒル』だという方も、ぜひ最後までしゃぶり尽くしていただけるとうれしいです。
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