『モンハンストーリーズ3』インタビュー。ナビルーが登場しない理由のひとつは“主人公がしゃべる”こと。“真っ向勝負”の気持ちよさはそのままに「気持ちよさがどんどん連鎖していく」バトルへ
 2025年9月25日~28日(25、26日はビジネスデイ)に千葉・幕張メッセで開催されている東京ゲームショウ2025(TGS2025)。カプコンブースでは、2026年3月13日にNintendo Switch2、プレイステーション5(PS5)、Xbox Series X|S、PC(Steam)で発売予定の『モンスターハンターストーリーズ3 ~運命の双竜~』が試遊出展されている。

 今回は、本作のキーパーソンであるプロデューサーの辻本良三氏、ディレクターの大黒健二氏、メインプランナーの若原大資氏にインタビューを実施。お三方には、少し大人びた雰囲気になったキャラクターの頭身、土台となるシステムを作るうえで意識したポイント、そしてシリーズのおなじみのマスコットキャラクターであるナビルーについてなど、さまざまな話をうかがった。

 シリーズファンはもちろん、公開されているトレーラーを見て興味を持った人は、ぜひ一読を。また、ファミ通ドットコムでは試遊版レビューも掲載中。こちらも合わせてチェックしてほしい。
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辻本 良三(つじもと りょうぞう)

『モンスターハンターストーリーズ3』プロデューサー。文中は辻本。 ※“辻”は、正しくはしんにょうの点ひとつになります。

大黒 健二(おおぐろ けんじ)

『モンスターハンターストーリーズ3』ディレクター。文中は大黒。

若原 大資(わかはら だいすけ)

『モンスターハンターストーリーズ3』メインプランナー

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シリーズ最新作のテーマは「もっとRPGにしよう」

――先日、新しいトレーラーと発売日が発表されましたが、反響はいかがでしょうか?

辻本
 『モンスターハンターストーリーズ3』を発表したときにも、『2』からキャラクターの頭身や雰囲気が変わっている部分に関しては、ポジティブな反響をたくさんいただけたかなと思っています。発売日も発表させていただきましたが、「(予想よりも)けっこう早いな」と言ってくださっている方もいて、反響としてはすごくよかったかなと。

大黒
 『モンハンストーリーズ』の新作を待ち望んでいて、喜んでくれている人の声が本当に励みになりますね。開発チームのメンバーも皆さんの反響を見させていただいていたので、すごくエネルギーをいただきました。

若原
 『1』から開発に携わってきている身としては、『2』を経て「ついに新作の『3』が来た!」という心待ちにしていたという声があったのが、すごく報われた気持ちになりましたし、本当にうれしかったです。その期待に報えるように、よりよいゲームとして開発を続けていきたいなと。
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――先ほど辻本さんもおっしゃっていましたが、最初にトレーラーを見たときに、キャラクターの頭身や雰囲気が変わっているなと感じました。どのような狙いがあっていまの形に着地したのかをお聞かせください。

辻本
 『1』はRPG作品としても評価いただきましたが、頭身が低いこともあって、自分でプレイしにくいという声もいただいていました。そこで『2』で思い切って頭身を変えてみて、すごくポジティブな意見をいただき、『モンスターハンターストーリーズ』がシリーズのRPG作品として自立してきたなという手応えを感じました。

 そしてつぎの『3』では、どうしようというのはすごく悩みました。そこでいちばん最初に答えとして出したのは「もっとRPGにしよう」でした。頭身やグラフィック、世界観など、パッと見て「RPGだな」と思うような作りにしたいなと。そこからグラフィックやシナリオをチーム内で相談しながら作っていって、『1』や『2』よりも、“よりライダーの世界を描く”という中身を決めていった感じですね。

大黒
 これまでの2作品は、「『モンスターハンター』をRPGにしたらこうなる」ということをいろいろと考えて作っていったのですが、『3』は「僕たちが作りたいRPG」を目指しています。「『モンハン』の世界を表現しながら自分たちが作りたいRPGはこうだ」というテーマを掲げて開発を進めています。キャラクターもそうですし、バトルシステムなど、さまざまな要素の方針を辻本の掲げた「もっとRPGにしよう」というテーマに沿って作っていこうというところがスタートでしたね。

 試遊した方々の声を聞いていると、いろいろな方からポジティブな意見をいただいて、この方向性で作ってよかったなと。自信を持って世界中の多くの人に遊んでもらえるRPGを作ることができたのではないかなと思っております。

――3作目にして自分たちの作りたいものを打ち出していったと。もちろん、どうすればユーザーが喜んでくれるだろうといったことも考えられていると思いますが、どのようにゲームの土台を作っていったのでしょうか?

大黒
 まず、シリーズ作品として何を残して何を変えるかを考えていきました。残す部分でいうと、『モンハンストーリーズ』の核でもある「オトモンを収集して育てていく」などですね。フィールドの要素は、どちらかというと自分たちが「こうすればもっとおもしろくなるんじゃないか」というものを大きく反映させています。

 もうひとつ大きな要素としてバトルがありますが、そこは過去2作品のユーザーの皆さんからの声を聞いて、「こういうシステムがいいんじゃないか」と開発内で話し合いながら、それを若原がコントロールしていく形でまとめていきました。

若原
 『1』で“真っ向勝負”という独自のシステムを作りましたが、単純なジャンケンだと飽きてしまうという意見もあって、“揺らぎ”、いわゆる運や確率の要素を取り入れ、敵の行動が分岐するような仕組みにしていました。ただ、その“揺らぎ”があると、バトルの気持ちよさが損なわれるんじゃないかという意見もあり、『2』では“真っ向勝負”からの“揺らぎ”の要素をなくして、必ずモンスターのクセを読めば圧倒できて気持ちいいという作りにして、それが一定の評価を得たと思っています。
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 ただ、ユーザーの方からは「クセを読み切ってしまうと単調な作業になってしまう」という意見もあって、開発チームの中でも受け止めていました。ただ、“真っ向勝負”の気持ちよさは、『モンハンストーリーズ』の軸として残したい。それをどう両立させるかを大黒とも相談して、バトルビジョンとして提示したのが「気持ちよさがどんどん連鎖していく」というバトルです。

 今回、新たに取り入れた“竜気ゲージ”の要素もそのひとつで、竜気ゲージを削ることでシンクロラッシュが発生し、絆ゲージが上昇します。さらに今回は“部位の破壊”の要素もあって、竜気ゲージをいかに削るのか、どの部位を狙って攻撃するのかという、ひとつひとつの選択をシビアに求めていく、ただ真っ向勝負だけでなくそれ以外の部分でも考える要素を取り入れたことで、バトルシステムがようやく完成したと言い切れるようになったかなと思っています。
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――実際に試遊してみて、格闘ゲームでいうコンボをつなげるような気持ちよさも感じられました。バトルに関してはユーザーの意見もだいぶ取り入れたようですが、逆にフィールドはやりたいことを表現した部分であるとお話していましたが、そのあたりを詳しくお聞かせください。

大黒
 RPGのフィールドというと、高低差や自然地形などもありますが、つぎの目的地まで移動する場所というイメージがあるかもしれません。

 本作では、“アスレチックライト”というキーワードを掲げていて、フィールドを立体的に作り、プレイヤーが干渉できる、ついつい何かしたくなるようなリアクションのあるフィールドを作ろうと意識しました。さらに、シリーズのいちばんの特徴でもあるモンスターに乗ってライドするという部分を、操作していて気持ちよくなるように開発を進めています。

 フィールドに関しては、ユーザーの方々からの声もありましたが、そもそも我々がやりたかったことを全面に押し出そうという思いで作っていきました。
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――今回の試遊では、リオレウスのライドアクション“飛行”も体験できました。過去2作品ではゲームを中盤ぐらいまで進めてようやく空が飛べるイメージでしたが、本作では序盤からモンスターライドで飛行が楽しめるのでしょうか?

大黒
 はい。ここは設定として大きく変えた部分なのですが、過去2作品では主人公(プレイヤー)は新米ライダーという立場で、先輩に教えてもらうというチュートリアルを体験してゲームのシステムを学ぶという作りでした。ただ、本作の主人公は国唯一のレウスライダー、いわゆるエース的な存在になっているんです。その設定も踏まえて、最初からレウスに乗って飛べるようになっています。

 あとは、シリーズの3作目ということもあって、「最初から飛べる」という驚きも感じていただきたいという狙いもあって。新鮮な気持ちで『3』のレウスと主人公の物語を、ストーリーだけでなくゲームプレイでも体感してもらいたいなと思って、最初から飛べる設計にしています。
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――なるほど。そういう意図があったんですね。少し話は変わりますが、本作ではオトモアイルーのルディが登場しますが、従来シリーズ作品でいうナビルーのようなポジションのキャラクターなのでしょうか? あと本作にナビルーが登場するかも気になります……!

大黒
 ずばり、本作ではナビルーは登場しません。前作までのナビルーは、マスコットキャラではありつつ、しゃべらない主人公の代弁者という役割も担っていましたが、本作の主人公はしゃべるようになっているので、その役目が薄くなったのが理由のひとつです。

 あと本作は、少年漫画というより、青年誌、あるいは“映画版風味”というようなイメージを作りたいなと思っていて。物語がシリアスな場面ばかりだとどうしても息苦しくなってしまうので、息抜きの場面も入れるのですが、そういったときにナビルーならではのギャグテイストがなかなかマッチしないというのも大きいですね。
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こちらが新たなオトモアイルーとなるルディ。
――そう言われると、ナビルーは今回の世界観には少し合わないかもしれません。

大黒
 本作では、息抜きのシーンは“ギャグ”というより“ユーモア”という風に作っていきたいなと思っています。ただ、ナビルーをそれに寄せると、どうしてもナビルーならではのよさが薄まってしまう。我々としてもそれはやりたくなくて。

 そういった経緯もあって、新たにルディというオトモアイルーを登場させています。ルディはナビルーと同様にマスコットキャラではありますが、レンジャー隊の一員、そして主人公のオトモアイルーとして、主人公を支えながらいっしょに冒険していく仲間という位置づけになっています。

――実際にプレイしていて、試遊の範囲内だけでもキャラクターの魅力が際立っているなと感じました。まだ明かされていないキャラクターも多々いると思うので、深くはお話できないかもしれませんが、皆さんのそれぞれのお気に入りキャラクターを教えてください。

若原
 私はルディですね。まだ深くはお伝えできないのですが、もうあの子は本当にかわいくて一生懸命で……(笑)。とても愛らしいキャラクターになっています。現時点ではこれぐらいしか言えないのですが、ぜひ皆さん、ルディくんの活躍にご期待ください!

大黒
 本作では、前作までのように仲間が各章ごとに代わるのではなく、全員いっしょに冒険することになるので、自由に仲間が入れ替えられるようになっています。人によって「このキャラがかわいいから好き」という人もいれば、「このキャラの能力が優秀だからお気に入り」という人もいるかと思います。

 僕はいま、チェックプレイとして何周もゲームをプレイしているのですが、大体はティオを連れて行っています。今回の試遊で体験できた冒頭シーンにもあるように、隊長としてこの子を立派なライダーに育てたいという思いもありますし、純粋にかわいいという理由もあったりして。何回遊んでも、ついついティオをパーティに組み込んじゃいますね(笑)。

辻本
 僕もルディなんだけど、先に言われちゃったね……(苦笑)。あと、今回は先ほど大黒からの話にもあったように、主人公が自分でも話すようになっています。もちろん、従来シリーズ作品と同様に、キャラクターメイクはできますが、すごくキャラクターが立っている設定になっているので、そこらへんにも注目していただきたいですね。
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――試遊していて、心あるいい先輩だなと思いました。ちなみに、マガイマガドなどこれまでのシリーズ作品にいなかったモンスターも発表されていますが、これまでのシリーズ作品に登場したモンスターも大体登場するのでしょうか?

大黒
 もちろん出ます! ですが、いろいろな仕掛けがあって、ただ登場するだけではなくて……。僕は「ポロリしない」と宣言もしているので、現時点ではこれ以上はお話しできませんが、楽しみにこの仕掛けを待っていてほしいなと思います。

――試遊でも体の一部が石化したモンスター、トレーラーでも装甲に身を纏ったモンスターなど、『モンハンストーリーズ』ならではのバリエーションのモンスターも登場していますよね。

大黒
 もともとの『モンスターハンター』のモンスターをリスペクトするという姿勢は変えずに、世界観を大きく崩さない中で、自分たちが作った世界では生態系にこういった問題があって、モンスターが変異して……と、脚色しすぎない範囲でいろいろと広げさせてもらっています。
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――では最後にひと言ずつ、発売を心待ちにしているプレイヤーの皆さんにメッセージをお願いします。

若原
 『1』『2』をプレイして心待ちにしてくださったという人と、シリーズに触れたことがないけどトレーラー見て「買ってみようかな」と思った人のそれぞれに最高のストーリー届けられるように開発一同、がんばって取り組んでいます。皆さん、ぜひ応援よろしくお願いします!

大黒
 僕はゲームクリエーターになってからそれなりに歴が長いんですけど、こんなに自信を持てるゲームはいままでにないですね。チェックプレイのときも「こんなにおもしろい作品はない」というぐらい自信を持っているので、世界中の人にこのゲームを遊んでもらいたいなと思ってます。本当に期待して待っていてください。

辻本
 『モンハンストーリーズ』は、『モンスターハンター』のシリーズの中でもモンスターにスポットを当てて、アクションが苦手な人でも遊べる『モンスターハンター』のRPGを作ろうというところからスタートした作品です。1作目、2作目と作ってきて積み上げてきたものもすごくいっぱいあります。だからこの新作の『モンスターハンターストーリーズ3』で、自分たちもRPGを作れるという自信を持って作れてきたかなと思っています。ぜひ期待していただけたらと思っています。『3』の発売前に、『1』と『2』もぜひ遊んでくださいね(笑)。
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