『Cronos:The New Dawn』レビュー。ゴリゴリにダークなSFサバイバルホラー! 猫はかわいいがクリーチャーはグロい【BRZRKのうるせー洋ゲーこれをやれ】
洋ゲーライターBRZRKによる連載“BRZRKの「うるせー洋ゲーこれをやれ(仮)」”。今回は『サイレントヒル2』リメイクのスマッシュヒットも記憶に新しいBlooberの新作SFサバイバルホラー『Cronos:The New Dawn』(PS5/Xbox Series X|S/Nintendo Switch 2/PC)をレビュー。デラックス版は本日から先行プレイが開始。通常版は9月5日発売。
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 ドモー、気付けばGamescomも終わってしまい「そろそろTGSかぁ」なんて思っているBRZRKです。個人的にバーチャファイターシリーズの最新作の情報が待ち遠しくてたまらんといったところ。
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■『サイレントヒル2』リメイクを経て挑むBloober流サバイバルホラー

  さて今回紹介するゲームは、『サイレントヒル2』リメイクや『Layers of Fear』など数々のホラー作品を手掛けてきたポーランドの開発スタジオBloober Teamの新規IP『Cronos:The New Dawn』だ。
 このタイトルは言ってしまえば『バイオハザード 4』や『Dead Space』系のフォロワータイトルではあるが、Bloober Teamが得意とする荒廃した世界の中にハードコアなサバイバルアクションのエッセンスを惜しみなくブチ込んだ作品といった感じだ。
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 舞台となるのは、1980年代に謎の疫病によって壊滅したあとの架空の未来世界のポーランド。実は一種のタイムトラベルSFになっていて、主人公“トラベラー”は壊滅当時の謎に迫る記憶にアクセスするために、奇怪なクリーチャーが潜む未来世界の廃墟を探索していくことになる。

 この未来の世界はどこも殺風景で降灰しているかのような薄暗さがあり、ちょっと建物に踏み込めば壁一面が肉片に彩られた景観で、出現する敵クリーチャーも忌避感を得るグロテスクなデザインで統一されている。というかずっと肉がグチュグチュ鳴ってるSEが聞こえるのでこちらの精神がかなり削られるよコレ。
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 ゲームシステムは肩越し視点(TPS)のサバイバルホラー。ターミナル駅を基点として探索の対象エリアをひとつずつ攻略することで物語が進んでいくオーソドックスな構成となっている。

 道中で訪れる攻略エリアにはいくつかのセーフルーム的な安全地帯が設けられていて、そこにはバイオなどでお馴染みの“謎技術によりエリアを跨いでも中身が共有される保管庫”や、アイテム売買が可能なワークステーション、そしてセーブ端末などが配置されている。

 探索エリアはこのセーフルームに容易に戻れるマップ構造となっており、アイテムが足りなかったりセーブしたいときはパッと帰れるだけでなく、死亡しても早い段階でリカバリーできるのは親切設計といったところ。いや、難度高いゲームなのでこれは嬉しい仕様だ。

■弾少ない、インベントリー小さい、足が遅いというヘビーなサバイバル

 プレイヤーが操作するトラベラーは、重厚なスーツを纏っているため動きが鈍重なうえに基本的な能力が低くかなり弱い。

 じゃぁ手にする武器はどうかというと、こちらも最初は強くない。序盤の装備であるハンドガンやショットガンはチャージすることでダメージが増すのだが、チャージ中はメチャクチャ銃身がブレてしまうのでクリーンヒットさせるには注意が必要で、最初のうちは敵を1体相手にするのも結構な難度となる。

 で、そんな感じなのにも関わらず、序盤から敵が複数体出現する場面に遭遇したりするわけでかなりキッツイ。弾薬や素材の回収はもちろん、周囲にある爆発物なども賢く使っていかないと、びっくりするほど普通に“きっちり弾を当てて戦っているのに弾がなくてジリ貧”という事態になるだろう。
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アップグレードもひと苦労

 一応そんな弱点をカバーするために、探索で手に入れる強化素材の“コア”や通貨代わりの“エネルギー”で消費してスーツや武器などの装備品をアップグレードすることが可能だ。

 ただ、スーツの基本性能(最大体力やインベントリーサイズなど)と一部装備を改善する“コア”は結構寄り道して探索をせねば手に入らないうえに数も多くない。またそういった場所は総じてクリーチャーが待ち伏せてたりするので、効率よく迎撃できなければ無駄に弾薬を消費してしまい、先行きがかなり悪くなることも。

 ただ、ヨワヨワな状況が少しでも改善されるメリットは非常に大きいので、素材の回収ができそうなルートを見つけた場合、セーフルームでセーブをして体制を整えてチャレンジすることをオススメする。ルート上の敵を排除してあるのであれば、たとえその先で死亡してもサクッとやり直すことができるし、2度目ならより効率よく立ち回れるはずだしさ。(※編注: 道中で倒した敵がセーブ後に勝手に復活したりはしない)
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 では、他の装備品はどうかというと、主にハンドガンとかショットガンなどの火器をアップグレードするには通貨代わりの“エネルギー”を消費する。こちらはコアと比べて比較的容易に入手できるのだが、アップグレードに必要なコストが結構高くてやっぱりシンドイ。まぁ後述するちょっとした救済措置はあるんだけどね。

 それで、何をアップグレードすべきかというと、コアを消費する方ではスーツのインベントリーサイズ、エネルギーではハンドガンとショットガンの強化(主にダメージとチャージ速度とクリップサイズ)かな。

 インベントリーに関しては最初6枠あるんだけど、武器を入手するごとに1枠を使ってしまうし、予備の弾を入れるマガジンもそれぞれ別扱いなので、たとえばハンドガンとショットガンとそれぞれの弾を持っていたらもう残り2枠しか空きがない。そんな状況じゃまともに探索できないのでインベントリーの強化はマスト。その後も武器は増えていくわけだしね。
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 そしてハンドガンとショットガンの強化については、どちらも比較的序盤に手に入ることもあって使用頻度が高いので、エネルギーを消費してガンガン強化する価値がある。

 前述した通りこの2つの武器はチャージショットが可能なので、このチャージに要する速度やマガジンのクリップサイズ、ダメージを上げておけば効率よく戦うことが可能になる。要所で複数の敵が出現するラッシュ時ほど死にかけるので、手速くクリーチャーを処理できるようにしておくべきだろう。

■死骸を喰って強化する敵にサブ武器で対抗しろ!

 メインの銃器以外に、戦闘や探索の補助になる“トーチ”や、設置型地雷の“パイアー”といったサブ武器も存在する。

 トーチは非常に重要なアイテムで、探索時には特定の壁を燃やすことで隠しエリアへの通路などをこじ開けられるし、戦闘時にはクリーチャーに使用してひるませたり、死骸を焼却したりといった感じに大活躍する。
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 というのも、本作のクリーチャーは“そこらへんの死骸を吸収して自身を強化する”という厄介な性質を持っているのだが、吸収中に焼けばキャンセルされるし、死骸だらけのヤバそうなエリアでうまいこと事前に焼却しておけばリスクを減らせるのだ。

 一部のボス格の敵は燃焼状態になると弱点部位を露出させ、ダメージが通りやすくなるといった効果もある。まぁ早い話が、より効率よく敵を処すためにも燃やして撃ってを繰り返すことが重要という感じ。
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 トーチはプレイヤーのセーフルーム的な場所で無限に供給される仕様なのだが、有用すぎるためか所持数には限りが有る。探索中にやな予感がしたら、近場のセーフルームに帰ってトーチを補充しておくのもいいだろう。

 一方のパイアーは、設置後に敵が接近すると爆発し周囲の敵を炎上させる。効果範囲が広いので、うまく使えば複数の敵を巻き込むことができるスグレモノだ。

 物語の中盤付近で入手できるようになるのだが、トーチと上手く併用できれば高耐久な敵を完封することも可能だ。ただ、トーチもパイアーもインベントリーの枠を消費してしまうため多く携行するのは現実的ではない。まぁゲームに慣れるまでは1個ずつぐらいで、以降は詰まる場所では多く用意しておくという感じかな。
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■乏しい弾と資源のやり繰りがキモ

 何度も戦闘をこなすと生じてくるのが残弾数の問題だ。ハンドガンやショットガンのチャージショットがいくら強力といっても、一撃で排除できるほど優れたものではない。そのため弾薬の消費が著しくなり、気付けば残弾が尽きる寸前なんてことも。

 一応、戦闘で倒した相手やマップ上に配置されている木箱から弾薬を獲得できることもあるが、確率としてはかなり低めとなっている。セーフルームにあるワークステーションでエネルギーを支払えば弾薬を購入できるのだが、それもかなり高めなうえに数も少ない。本当に厳しい時やあえて弾薬を多数持ち運びたいという時以外は購入を控えておいたほうがいいだろう。
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 「じゃぁどうすりゃいいのよ?」と思うかもしれないが解決方法は存在する。道中で探索をしていると、“化合物”や“金属スクラップ”というクラフト用の素材を手に入れることがある。これらのアイテムはワークステーションでも購入可能で、所持数の制限こそあるがインベントリーとは別枠で持ち運ぶことができ、さらにどこでもアイテムをクラフトできる万能素材となっている。

 具体的に説明すると、ワークステーションでハンドガンの弾薬を1発購入すると100エネルギー必要で、5発購入するには500エネルギーかかる。しかし化合物は1つ150エネルギーと一見高そうに見えるが、3つ所持していれば(450エネルギー分)ハンドガンの弾薬を5発クラフトできるので、差し引き50エネルギー分お得だ。

 さらにこれらのクラフト素材は探索中で発見頻度が比較的高いため、わざわざお金を出して弾薬を1発1発購入する必要はあまりないと言っていい。というか筆者はほぼコレでどうにかしてた感じ。
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■エッセンスを集めて戦いを有利に進めよ

 道中では現地人と遭遇することがあり、そういった人々や遺体などから情報を得るために彼の意識をデジタル化した“エッセンス”を抽出できることがある。このエッセンスはいわゆる“パーク”のように近接攻撃の強化やエネルギーの獲得量アップ、燃焼中の敵へのダメージアップなどといった追加効果を得られるのだ。

 しかし、エッセンスは最大で3つまでしかストックすることができない。満タンの状態で新しいエッセンスを手に入れると手持ちのどれかを削除しなければならないのだが、このとき意識が“削除”される側の人間が叫び声や悲鳴を上げたり、嘆いたりと様々な反応を見せる。うん、この悲鳴は結構エグかったんだけど、君のエッセンスより良いのが手に入ったから仕方ないじゃないか……まぁ、どう戦いたいのかに合わせて取捨選択をするようにしておこう。
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■マップの作りはかなり丁寧で迷うこともほぼなし

 サバイバルホラーを題材としたゲームでは、やたらとアッチコッチ移動させられるうえに結構な距離を移動させられ「ウォーキングシミュレーターかよこれ!」と思ってしまうことが多々ある。マップの構造上仕方ないこともあるが、中には露骨なプレイ時間稼ぎをしているケースもある。

 では本作はどうかというと、主人公の移動速度自体はそこまで速くないものの、移動に関してはほぼストレスゼロだ。プレイヤーに対して移動させたい方向や見せたいところに対しての導線がしっかりしており、薄暗い場所でも街灯やランプの灯りで進むべき場所が視認しやすく、迷うことはほぼない作りとなっている。

 また、前述した本筋とは違うアイテムを獲得するためのルートも、敵との遭遇こそあれどサクッと探索できるコンパクトなサイズに収まっている。そのため、移動速度は遅くともサクサクと歩みを進められている感覚を得られてなんとも不思議。
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 そしてこういったジャンルのゲームでよくある閉じ込められて敵のラッシュを凌ぐタイプの演出も当然あるのだが、後戻りできない段差を降りた先にある広い部屋とやたら主張してくるゲートの組み合わせなど、「ここで戦いが起きますよ~準備は良いですか~」と聞かれているような場所が多い。

 また、総じて直前でアイテム類が(珍しく)多数手に入るようになってたりして、開発者が丁寧に示唆しているのがよく分かる。いや、ホラゲの中でも手厚すぎるんじゃないかって思う場面が結構多いかな。なので事前に心構えが出来てグッド。
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■新規IPとしてはよくできてて面白いけど、多少納得できない部分も

 Bloober Teamの新規IPとなる本作。筆者は隅々まで探索してクリアーまでは17時間ほどで、精神はゴリゴリと削られるものの、クリアしてみれば満足度は十分得られた。ダークなSci-Fiホラーゲームとして終始バッドというかビターな世界なので、そこを受け入れられるのであれば本作はかなり楽しめるだろう。

 ただしバランスの調整については若干「?」と思う点もある。たとえばこういったゲームは、弾薬の消費を抑えに抑え、いざという時にぶっ放しまくって解放感を得るというのが多くの人のスタイルだと思う。

 だが、本作はどうにも弾薬を多く持てないよう、プレイヤーの行動や状況を監視してアイテムドロップの確率を変更しているんじゃないかと疑いたくなるようなことが多い。良い悪いというか、なかなか思うように行動できないのが非常に気持ち悪いというかなんというか。

 うーん、まぁそういうバランス調整の方針なのかもしれないけど、「脇道に入ってアイテム獲得!」と思って木箱を壊したらあんまり報酬が得られなかったりするのは寂しいというか、「もう一声なにかあっても良いんじゃね?」とは思う次第。
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 それでもこの手のジャンルにありがちな面倒くさいと感じるポイントを極力省いていたりするためサクサクと遊べ、気づいたら数時間経過していたり。まぁそういうのをひっくるめても楽しく遊ばせてもらったかな。

 クリア後は、ちょっとした報酬とニューゲームプラスで遊ぶことも可能だ。1周目の強化を維持したまま続けられるので、実績の解除や拾えてなかったコレクティブ要素の収集、さらなる強化などを目指してプレイしてみるといいだろう。まだ残暑が続く今日このごろだけど、本作で肝を冷やしてみたりするのはどうだろうか?
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著者近況:バーチャファイター2.1はアーケードの基盤を買うくらいには好き
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