野間崇史(のま たかふみ)
『ユニコーンオーバーロード』のディレクター、キャラクターデザイン、シナリオをはじめ、多くのゲームの開発とデザインに携わってきたクリエイター。2025年3月にヴァニラウェアを離れ、株式会社モノクロにて“イグニスフィア”(原作ブランドおよび開発スタジオの名称)を立ち上げた。
人々が最初に手に入れた力、火が大きな意味を持つ世界『イグニスフィア』
『イグニスフィア』は世界観の名前であり、IPブランドの名前であり、スタジオの名前にもしていきたいと思っています。『イグニスフィア』という看板のもと、複数のゲーム、コンテンツを生み出していくイメージです。
その第一弾として、現在『ドーンゲイザー』というアクションRPGを作っています。この作品を通じて、『イグニスフィア』という世界の空気や魅力を知ってもらえればと思っています。
――野間さんはプログラマーとしてキャリアをスタートされ、現在はディレクターとして世界観やキャラクターデザインまで幅広く担当されています。『イグニスフィア』や『ドーンゲイザー』について、ご自身の役割をどう捉えていますか。
ゲーム開発人生の中で、たくさんのゲームに完成まで関わってきた経験がありますし、今回も順調に進んでいます。ストーリーを書くのが初めてだった前回の作品とは違いますので、少し楽観視しているところです(笑)。
サポートしてくれる心強いメンバーもいます。昔からのつき合いで、アニメーションやエフェクトまわりなど、僕に足りない部分を補ってもらっています。
――公開されたPVからは、ファンタジー感の強い世界という印象を受けました。『イグニスフィア』と名付けた理由や、世界観について教えてください。
『イグニスフィア』はラテン語で“火”を意味する“イグニス”と、“世界”や“領域”を表す“スフィア”を組み合わせた名前です。この世界にある国や種族、それぞれの場所に異なる“火”が灯っていて、そこからさまざまな物語が生まれていく。そんな広がりを持った世界にしたいという思いを込めています。

今回は“火”を世界の中心的な力として置いて、それをめぐるドラマを描きたいなと思ったんです。
――『イグニスフィア』にはどれくらいの国があり、どんな種族が暮らしているのか教えてください。
……デザインしながら、泳ぎにくいだろうなと思ったりもしましたけど(笑)。


ゴブリン寄りとエルフ寄り、ふたつの勢力が存在する国もあります。ベタなファンタジー要素を入れたくて、妖精の国も作りました。ほかにも、ペンギンたちがいる南極のような雰囲気の特殊な国もあります。

――これだけ種族があると、アイデアをまとめていくのもたいへんそうですね。
――世界観を作られる際、どのような部分から構築していったのでしょうか?
『ユニコーンオーバーロード』のときは、近畿地方をバラバラにしてくっつけて地図を作りました。コルニアは大阪、バストリアスは京都です。今回も地図を作らないといけないとは思っていますが、リテイクをくり返すことになるのでもう少し先でもいいかなという気持ちです(笑)。
――国も種族もバラエティーに富んでいるぶん、世界観の統一感、バランスを保つのが難しそうですね。
モーションやシナリオを含めて、すべてをひとりで作っているわけではありません。必要なキーポーズを描いたり、方向性を示したりはしていますが、制作では多くのスタッフに支えてもらっています。最終的な監修や調整は自分が責任を持って見ていますが、チームで作る部分も出てくると思います。
どんなデザインが来ても、僕が見て手を入れるので、国が多数あっても結果として統一感は自然に出てくると思っています。多くの種族が出てくる世界なので、見た目の違いだけでなく、文化や考えかたに説得力が出るようにしていきたいです。

第1作目『ドーンゲイザー』は、王族を守れなかった男の物語
――どのような物語になるのでしょうか?
しかしある国の謀略によって、“パイロス”の王族に悲劇が起こります。主人公は、王族を守れなかった男なんですよ。
――PVに主人公らしき人物や王族と思われるキャラが登場しただけに、どんな展開になるのか気になりますね。
基本的な仲間は“パイロス”の人たちで、エビたち他国のキャラは途中で仲間になってくれたり、情報を教えてくれたりするポジションです。主人公だけは炎の力で何度も戦いをくり返せるので、だんだん情報が集まり、真実に近づいていくという流れですね。
――ジャンルはアクションRPGですが、アドベンチャーやRPG好きな人にも刺さりそうな内容ですね。
分岐していくなかで「ひどい展開になってきたな」、「いい方向に進んできたな」という感覚が楽しめるように、なるべくゲームドリブンといいますか、ゲームに依存したストーリーにしたいと思っています。
――PVにも魅力的なキャラクターがたくさん登場していますが、キャラクターの掘り下げはどれくらい描かれるのでしょうか?
たとえば虫のキャラクターたちは、大量に生まれ、ライフサイクルも早いので、死に関するとらえ方が薄いとか。
逆に長寿のエルフでは、800年生きているのにぜんぜん成長していないキャラクターを描きたいと思っています。僕ももう49歳なんですが、いまだに小学生のころと考えかたが変わっていない気がしていて(笑)。長く生きるだけで賢くなれるわけではないので、「800年も何をやっていたんだ?」と思わせるようなキャラは、ぜひ入れたいですね。
各キャラクターの価値観や正義の形を、ゲームを含め、いろいろな形で丁寧に描いていけたらと思います。
「2Dは嘘がつけるから好き」。2Dをずっと続けてきたからこその独自の魅力
加えて、自分はゲーム業界で働き始めてから10年ほどアクションゲームのプログラマーをしていたので、ひさしぶりにアクションを作りたいという気持ちもありました。
――アクションゲームの魅力はどこでしょうか?
今回はそこにRPGとしての成長や、展開・分岐のある構造を組み合わせていきたいと考えています。
単にアクションが得意な人だけが楽しめるものではなく、キャラクターを育てたり、状況に合わせて戦いかたを選んだりするおもしろさも大事にしたいです。
――PVを見ただけでも、かなりのキャラクターが登場しますね。
あと、今回はアクションゲームですので、巨大なボスを出したくて、モンスターがいる世界観にしました。なるべく、あまり見たことのないモンスターを出したいですね。「うわ、気持ち悪いけどカッコいい」となれば理想的です(笑)。
――PVに登場するキャラクターたちについて、お話しいただける範囲でこだわりや制作秘話を教えてください。
赤髪のキャラクターは、回復系の役割を持つシスターです。最初にすれ違うヘビ獣人のキャラクターは、コブラなんですが、なかなかいないデザインでけっこう気に入っています。


2D絵は服の揺らぎひとつとっても、デザイナーの個性や見せかたで変わってきます。チームのメンバーそれぞれに自由に作ってもらいながら、最終的に僕が監修して入れるというスタイルでやっています。
いまの段階はまだ突貫でやっている部分があって、ハーピーの髪の毛が動きすぎだったり、完成にはまだまだ調整が必要です。ただ、それでも全体のビジュアルイメージとしてはかなり形になってきたと感じています。PVは街の中の様子ですが、ドラマモーションは前回の作品よりも増やす予定です。


クオリティーの高いアニメーションの2Dゲームやアセットを作ることができれば、ほかと差別化ができます。ピクセルアートやドット絵的な表現はインディーも含めてありますが、高いクオリティーを目指すと、3Dモデルでやっているところがほとんどです。弊社は2Dをずっとやってきたスタッフが多いので、そこは大事にしたいと思っています。
――PVを見ていると背景に奥行きがあり、自然に動いているように見えます。そのあたりも、2Dなのでしょうか?
屋根もだいぶ歪んでいるので、3Dだともっと自然に見えると思います。でも歪みも、2Dの魅力のひとつかなと。

夜の表現もポイントライトを追加し、明るいところがより明るくなる処理を加えていく予定で、見た目がかなりきれいになると思います。
あと可能であれば、キャラクターに土の汚れとかダメージの表現をマルチテクスチャで貼りたいと思っています。ただ、レーティングが上がらないかどうかが少し心配で。血の色を黒くすればオーケーかなとか、昆虫のキャラクターだったら許されるかなとか、いろいろ考えています。

――チームは、どれくらいの規模なのでしょうか?
今回はコンパクトな構造で、リソースは厚くという方向性を目指しています。思ったよりもペースが速くて、チームがバタバタしながらも想像の倍以上の速さで進んでいます。スタッフは楽しんでくれていますが、こちらとしては苦労して絵を動かしてもらっているので、いつも申し訳ないと思っています。
――開発チームで、野間さんが大切にしていることはなんですか?
こういうやりとりで増えたモーションやグラフィック調整は……今回のPVだけでも、意外とたくさんあったかな。聞く前に作っちゃって「こんなのできました!」と出してくるパターンもありますけど(笑)。
「こういうことをやりたい!」と、具体的に考える人のモチベーションは高いので、進みも早く、入れちゃったほうがいいなということが多いです。逆に「これ、どうなんだろう」と現場スタッフが迷っている場合は、それをちゃんとくみ取れるようにしたいと思っています。
チームが楽しんで作ってくれるのがいちばんだと思っており、毎回、そういう感じで進めています。
メディアミックスで広がる『イグニスフィア』
ただゲームだけでは描ききれない場所や人物、歴史を、ノベルや商品展開を通じて見せられるのはおもしろいところだと思っています。ゲームではプレイヤーが体験する物語が中心になりますが、別の媒体では、異なる国やキャラクターに焦点を当てることもできます。
具体的には、KADOKAWAさんの富士見ファンタジア文庫でのノベライズを進めていただいています。イグニスフィアの世界にある王国や、そこに生きるノベル版オリジナルのキャラクターたちの物語、プロットをすり合わせている段階となります。『イグニスフィア』に登場するキャラクターは、ノベル版についてもゲーム内とかわらず、すべて僕がデザインを起こしていきます。
KADOKAWAさんにはファンタジア文庫をはじめ、長年にわたってさまざまなファンタジー作品を読者へ届けてきた経験があります。グッドスマイルカンパニーさんも、キャラクターや作品への深い理解を持ち、フィギュアをはじめとした商品やアニメなどを通じて、国内外の多くのユーザーへ作品を届けてきた会社です。
ゲームを遊ぶ方だけでなく、ノベルやキャラクター、フィギュアなどを入り口に、『イグニスフィア』を知ってくださる方も増えていくのではないかと期待しています。それぞれが別々の展開になるのではなく、いろいろな入り口から同じ世界に触れ、より深く楽しんでもらえる形にしていきたいです。
――最後に、いまの開発の手応えを率直に聞かせてください。
まずは『ドーンゲイザー』というゲームをしっかり作り上げることがいちばんですが、『イグニスフィア』という世界観のなかで、今後もいろいろな作品を展開していきたいと思っています。
もちろん、シミュレーションRPGもまた作りたいです。今回アクションRPGを作っているからといって、これまで大事にしてきた遊びをやめるわけではありません。むしろ、この世界を使っていろいろなジャンルに挑戦できるとおもしろいと思っています。ゲームはずっと作り続けていきたいと考えていますので、長く見守っていただけるとうれしいです。今後の展開にぜひご期待ください。
[2026年9月26日3時00分修正]
一部表現を修正いたしました。













