2011年に放送されたテレビアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』(以下、『まどか☆マギカ』)。かわいらしい絵柄の魔法少女ものと思いきや衝撃的な内容で見る者を殴りつけてくる本作は、大きなインパクトを残した。
テレビアニメの放送終了から約2年後、その後の物語を描いた『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語』(以下、『叛逆の物語』)が公開。2021年にはその続編となる『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』(以下、『ワルプルギスの廻天』)の制作が発表され、約5年の時を経て、ついに2026年8月28日に公開を迎えた。
本稿では、美樹さやかを演じる喜多村英梨さん(文中、喜多村)と佐倉杏子役の野中藍さん(文中、野中)に行なったインタビューをお届け。ついに映画の公開を迎えた感想、テレビアニメ当時の思い出、本作の見どころ、自分が魔法少女になったらなど、さまざまなお話を伺った。
※本インタビューは『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』のネタバレは含みませんが、テレビアニメ本編の内容について言及している箇所があります。待ちに待った劇場版がついに公開!
――『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』が制作発表から5年の月日を経て、ついに公開となりました。まずは、いまの率直なお気持ちを聞かせてください。
野中
無事に公開を迎えられて、本当によかったです。SNSでカウントダウンをしながら楽しみにしてくださっている方もたくさんいらっしゃると思いますし、私自身も皆さんといっしょにこの日を迎えられたことがうれしいです。
――待ちに待った公開ですからね。
喜多村
少し待ちすぎましたかね?(笑)
一同 (笑)。
喜多村
それだけ重みのある作品なんだと思います。今年(2026年)2月の公開を目指していたところを、ブラッシュアップのために8月まで延期します、という発表があったので、正直私は「じゃあ来年かな」ぐらいに思っていたのですが、本当に年内に公開されてよかったなと思いました。
――キャストの皆さんも収録を心待ちにしていたのかなと思いますが、いかがでしたか?
喜多村
収録するときは皆さんが見るカラーの画面ではなくて、いわゆる線画、ほぼ白い状態で収録を行うんですよね。部分的にはできあがっているシーンもあるのですが、劇団イヌカレー(泥犬)さんの作る異空間とか、エフェクトとかは入っていない状態なんです。
私たちは「こういう形になるのかな」というのを想像しながらお芝居に臨んでました。なので、完成した映画を見て、このお芝居はこの方向性で合っていたんだな、みたいに答え合わせをするような感覚かもしれません。

――想像しながらの収録というのはたいへんそうですね。今回の収録で、何か印象的だったエピソードはありますか?
喜多村
今回は残念ながら、全編にわたって全キャストが揃っての収録はできていません。豪華キャストなので、全員集まる日なんてもう…奇跡でもない限り、ありえないです(笑)。ある程度掛け合いのあるメンバーを中心に収録日の調整はしていただいたと思うのですが、一度も現場でお会いしていない、生の演技を浴びていない方もいらっしゃいます。
ひとりで収録する場合、先に別の方が収録されていればそのお声を聴きながら、自分が先であればお相手の演技を想像しながらお芝居をしていました。それもひとつの楽しみではありますが……。
ほむらとのシーンは先に収録されていることが多かったため、「(斎藤)千和ちゃんはこうやって演じているのか」、「なるほど、こういう感じの距離感か」みたいなことを確認しながら収録をしていました。やはり、掛け合いでは距離感も意識することが多いので、そういう演じ甲斐のある楽しさが収録にはありました。
――実際の映像を見ていると、個別で収録しているとは思えないくらい自然でした。いまお話を聞いて、正直かなり驚いています。野中さんはいかがでしょうか。
野中
やはり今回は新キャラクターと話すシーンもあったため、そのあたりはとても悩みました。新しく登場した子たちって、視聴者の方からするとまったく知らない、初めての子じゃないですか。でも杏子から見た距離感はちょっと違うので、その関係性や距離感をどう出していくか、みたいな部分には気を付けて演じていました。
――おふたりから見て、今回の映画で注目してほしいシーンを挙げるとしたらどこでしょうか。
喜多村
やはり杏子の食べ物関連じゃないですか? 今回もあってよかった(笑)。
野中
杏子は何かしら食べていますからね(笑)。とくに、今回はかなり食べているシーンが多いんですよ。あと、具体的には言えませんが、私はやはりさやかのセリフにグッときました。
喜多村
さやか、イケメンです。でも本当に、全員にいいシーンがあって、見ている人に何かしら刺さるセリフがあると思います。
これは全体的に言えるんですけど、いい意味で期待を裏切ってくる、ということはお伝えしておきます。キャラクターどうしのいちゃつき具合とか、新キャラの登場がどうみんなに影響するかとか、いい意味で「今回はそういう感じなんだ」という感覚を持っていただけると思っています。

15年前のテレビアニメを振り返って
――『まどか☆マギカ』がテレビで放送されてからもう15年、作品と出会った当時を振り返ってみての思い出などをお聞かせください。
喜多村
役者として、自分が演じたキャラクターも作品も大事にするというのは、どの作品についてもつねにありますが、『まどか☆マギカ』は放送が終わった後の反応も印象的でしたね。お客さんからの反応はもちろん、業界内にもすごく大きな衝撃を与えていて、別の現場で感想をいただくようなこともありました。
そういった大きな作品に関われていたんだなという単純なうれしさと、さやかというキャラクターを走り切った満足感、達成感みたいな気持ちが当時は大きかったです。そして、終わらない、止まらない考察。そこから作品や各キャラクターのアナザーストーリーが広がっていきましたよね。その熱量を見て改めて、すごい作品だなと感じました。
野中
『まどか☆マギカ』は原作のない作品じゃないですか。だからこそ、テレビで放送された後にみんなで続きを考える、っていうのが盛り上がったんですよね。当時、リアルタイムでテレビを見るのがとても楽しかった思い出があります。
でも私の、杏子の登場がアレじゃないですか。マミさんが退場した後の登場で、しかもちょっとヒールっぽい立ち位置で、街を奪いに来たみたいな形だったので、嫌われるんじゃないかっていう不安がありました。みんながかなりの衝撃を受けた後の登場だ、っていうプレッシャーを感じながら最初のアフレコに臨んだのを覚えています。
――緊張感のほうが強かったのですね。
野中
その後も、さやかの切ない、胸が苦しくなるようなシーンや魔女化があって、そこで杏子がひとつの締めを務めることになりますよね。うまい言葉が見つからないのですが、しっかりとやりきりたいなと思っていました。
――今回の収録にあたり、改めて意識されたことは何でしょうか。
喜多村
収録用の台本を渡されたときに、台本になる前の形のシナリオもいただいたんですよ。作品には当然尺があるので、カットされるシーンもあれば、セリフでは多くを語っていない部分もあります。ただシナリオには、台本にはない場面も書かれていたんですよね。
――台本とは別にシナリオが用意されているのはすごいですね。
喜多村
製本された台本に至るまでにこういうものがあったんですよ、っていう道しるべ的なことなんですよね。逆に言うと「台本に乗りきらなかった部分も含めて、セリフに落とし込んでください」ということなのかなと思ったんです。
これは声優業あるあるなんですけど、限られた尺の中でお芝居に整合性をつけないといけないんですよ。セリフをスピーディーに言うのか、たっぷり溜めて言うのか、そういう温度感のつけかたも自分なりに考えるんです。
台本ではカットされちゃったけど本当はこういうことがあって、そのうえでこのシーンを残したんだなとか、ここは入れ替えたんだなとか、収録の前から考察しておいて欲しい、ということだったのかなと(笑)。
――解釈を試されているような感がありますね。
喜多村
そこは本当にこの作品ならではというか、「きたきた、『まどか☆マギカ』はそういうやつだよね」みたいな(笑)。やはりやさしくはしない作品というか。演者としては、自分の中で全部消化した状態で演じないといけないんですよ。今回はあえて読み手に委ねているなと思える演出もあったので、ハイカロリーではありました。
そのような意味でアフレコに臨む前から気が引き締まりましたけど、あいぽん(野中さんの愛称)に会えてちょっとゆるっとなりました(笑)。
――野中さんとはごいっしょに収録できたんですね。
喜多村
残念ながら全編通していっしょに収録はかないませんでしたけど。重たい話や難解な設定がある作品の中で杏子はある意味、肩肘を張らない系のポジションなんですよ。それもあって、あいぽんといっしょに収録できたときはホッとしました。
――確かに、今回はけっこう杏子に癒やされるところがありますよね。
喜多村
もちろん、ちゃんとかっこいいところもありますから、安心してください。
野中
大迫力のバトルも用意してもらえました。お話的にはやはりさやかのほうがさまざまなことに気付くから、キタエリ(喜多村さんの愛称)ちゃんは深く理解していなくちゃいけないことが多かったよね。
喜多村
でもそれも、杏子がわかっていない、その違和感がコントラストになるんですよね。みんなそれぞれに大事なことを担っているんでしょうけど、杏子はたぶん、そういった部分でとても大事なんです。
――各キャラクターに出番があるだけでなくて、それぞれ出てくる意味がありますよね。そのあたりも、脚本作りは非常に難しかったのではないかと思います。
喜多村
スタッフさんからうっすらと聞いた話だと、本当に超絶揉んだそうです。先ほど私自身もハイカロリーな取り組みだったと言いましたが、本当に多くのスタッフさんが全力を注いだ劇場版だったと感じています。
野中
新キャラクターもいるなかで、ちゃんとみんなにスポットライトが当たるんですよね。そのあたりのバランスもたいへんだったと思いますが、ひとりひとりをちゃんと描いてあげたい、っていう気持ちがあったと思っています。台本やシナリオを読んでいても、それが伝わってきました。


包帯姿のさやかを見て
――最新作のビジュアルが先行公開されたなかで、顔に包帯を巻いたさやかはとくに大きな反響を呼んでいました。おふたりが最初にあのさやかを見たとき、どう思われましたか?
喜多村
コスプレイヤーさんがワクワクしそうだなと思ったのと、中二心をくすぐる感じもいいと思いました。シンプルに、衝撃のデザインで来ましたね、っていうのはもちろんあります。
加えて、『まどか☆マギカ』は女性ファンも多いと感じます。そう感じる機会がたくさんあるんですよね。新しいさやかの魅力をこういうビジュアルで表したら、さやか愛を持ってくださっている方たちがまた盛り上がってくれそうだなと、最初に見た瞬間に思いました。
――SNSでも、ビジュアルなどが公開されるたびに考察が盛り上がっていました。
喜多村
やはり『まどか☆マギカ』は、単純な衝撃の先にある考察がつきものですから。ひとつひとつの要素、キャラクターデザインひとつにしてもその意味やバックボーンがあるんじゃないか、そういうワクワクをもらえますよね。
――野中さんはいかがですか? このさやかのビジュアルを見たときの印象は。
野中
とにかく心配になりました。さやかちゃん、たいへんな目に遭うのかな、ケガしたのかな……とか。
喜多村
さやかは治癒能力を持っているはずなのに、あんなに包帯を巻いて、「治しきれない何かがあったのかも?」って心配になっちゃいますよね。

互いが語るさやか、杏子の魅力
――改めて、おふたりが演じられたさやかと杏子の魅力がどんなところにあるかも伺えればと思います。
喜多村
杏子はやはりイケメンじゃないですか。ふだんはあっけらかんとしているんですけど、さやかに対しても、今回登場する新しいキャラクターたちに対しても、いざとなれば熱を持って接することができるんですよね。ちょっと男の子っぽいというか。
野中
そうだね!
喜多村
くよくよしない、カラッとしている感じが、少年感があっていいですよね。大事なところで熱くなれるのは彼女のいいところですし、今回もそういう一面が見られるので、杏子好きの人は安心して見てください。
野中
なんだかんだ言って、みんなのことを放っておけない性格なんでしょうね。もちろん、さやかもすごくよかったですよ。さっきも触れましたが、私はこの映画だとさやかのシーンがいちばん好きです。
ネタバレになってしまうため具体的なことは言えませんが、それが正解か不正解か、みたいなことは置いておいて、「うん、そうだよね」って。さやかにはすごく共感できましたし、胸に来ました。
もしも魔法少女になるなら?
――少し変な質問ですが、おふたりが魔法少女になるとしたら、どんな武器で戦ってみたいですか?
野中
何だろう。武器……武器……?
喜多村
たとえば、学生時代に剣道部だったら「剣で戦いたいです」と大手を振って言えるんですけど、何もそういう経験がないんですよね。
野中
声優だから、マイク? でもやっぱり、かわいいステッキがいいですね。
喜多村
魔法少女と言うと杖で魔法みたいなイメージになりますよね。武器というか能力になりますけど。それで言うと、治癒の魔法は欲しいですね。あんまり戦いたくないです(笑)。やっぱり、ひとりで特攻していくのは怖いじゃないですか。
――でも、おふたりのキャラクターはかなり特攻していますよね。
野中
行きがちですよね。
喜多村
杏子みたいに槍とか?
野中
リーチがあるからよさそう? いや、でもちょっと怖いな。やっぱり魔法の杖で安全に戦いたいです(笑)。
喜多村
ふたりとも魔法で戦うスタイルで(笑)。
新旧すべての『まどマギ』ファンに見てほしい映画
――では最後に、ファンの方々、これから映画を観ようと思っている方々へのメッセージをお願いします。
野中
じつは私はインタビュー現時点ではまだ完成版を見ていないので、ファンの皆さんと同じ目線で映画を楽しめることを、今からすごく楽しみにしています。
声優としては、「あのシーンのお芝居はちゃんと流れに乗れているかな?」というドキドキもありますけど、それ以上にひとりの『まどか☆マギカ』ファンとして作品を観るのが楽しみです。
長く応援してくださっている皆さんはもちろん、最近、狩野英孝さんのコメンタリーなどで『まどか☆マギカ』を知ってくださった方も、これまでの物語を少し振り返ってから観ていただくと、より楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。
そして、映画を観た後に「ここはどういう意味だったんだろう?」と思ったところがあったら、ぜひお友だちやSNSで皆さんと語り合ってみてください(見てない人へのネタバレには気をつけてね!)。私も皆さんがどんなふうに感じられたのか、感想を拝見するのを楽しみにしています。たくさんの方の想いや時間が詰まった作品なので、ぜひ劇場で楽しんでいただけたらうれしいです。
喜多村
あいぽんがいいことを言ってくれたので、ほとんど言うことがないですね(笑)。でもやっぱり、さやかを演じている身、そしてひとりのさやかファンとして、さやかのハイライトシーンは非常に多いです、とお伝えしたいです。
あいぽんが素敵と言ってくれたシーンも含めて、ここは胸アツだろうな、ここも誰かにとっての名シーンになってくれるはずだ、と思いながら取り組ませていただいたシーンがたくさんあります。
もちろん、すべてのセリフが大事なんですけど、やっぱり演出自体が難解になっているところもあるので、一度見ただけだとすべてのセリフの意図を押さえきれないと思うんです。そんな中で、さやかのセリフも含めて皆さんの中で名シーンになって、何度もループしてもらえたら嬉しいです。
本当に、ほむらじゃないですけど、この作品を皆さんに何度もループしていただきたい。そういう作品になっています。安心して、ご期待ください。この作品を通して色んな形でまた皆さんにお会いできるチャンスもあるかと思いますし、コラボやメディアミックスなどもあると思うので、そういう意味でも皆さんといっしょに盛り上げていきたいです。どうぞ、よろしくお願いいたします。
