2027年発売予定の『タイニーメタル2』は、ユニットを駆使して戦うターン制戦略シミュレーションゲーム。2017年に1作目の『タイニーメタル』が発売され、2019年にはその進化版とも言うべき『タイニーメタル 虚構の帝国』がリリース。『タイニーメタル2』は、そのシリーズ8年ぶりの新作としてリリース予定のタイトルだ。 主人公であるネイサンを中心とした個性豊かなキャラクターたちによる重厚なストーリーが特徴の最新作の『タイニーメタル2』では、これまでの陸と空の戦いに加えて、ファンからの要望が高かった海戦要素を導入。陸、空、海でのバトルが展開される。
開発を手掛けるAREA35の看板タイトルとも言うべき『タイニーメタル』シリーズだが、『タイニーメタル2』には、豪華開発陣が参加。Netflixで世界独占配信中の『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』を共同制作したスタジオSAFEHOUSEが制作に参加。さらには、『オーバーウォッチ』の世界観とストーリーを担当した元Blizzard Entertainmentのマイケル・チュウ氏が脚本を担当することが明らかにされている。
2026年7月にフランスで行われた“Japan Expo 2026”では、短編アニメーション映画『タイニーメタル:零戦線』が明らかにされるなど、さらなる盛り上がりを見せている。
『タイニーメタル:零戦線』はSAFEHOUSEが、Unreal Engine 5を駆使してフルCGで制作。監督にはスタジオカラーの小林浩康氏を迎え、新キャラクターのデザインをコザキ・ユースケ氏が手掛ける一作となる。
ファミ通では、AREA35の代表であり、『タイニーメタル2』のプロデューサー/ディレクターである由良浩明氏と、脚本を手掛ける稲葉洋敬氏、そしてプロットを担当するマイケル・チュウ氏にインタビューする機会を得た。
由良氏はそれぞれ別のプロジェクトで稲葉氏やマイケル・チュウ氏と知り合い、クリエイティブの姿勢などで意気投合。『タイニーメタル2』で初めて3人でいっしょに仕事をすることになったという。この話を聞くと、『タイニーメタル2』はまさに人と人とのつながりが生み出したタイトルと言えそうだが、皆さんに本作に対する意気込みや開発に対するこだわりなどを聞いた。

由良浩明氏(ゆらひろあき・写真左)
AREA35代表。『タイニーメタル2』のプロデューサー/ディレクターを務める。
ヴァイオリニストとして世界で数々の賞を受賞し、2009年からゲーム音楽のプロデュースなどを担当。2016年にAREA35を設立し、ゲーム開発を手掛けるようになる。
稲葉洋敬氏(いなばひろたか・写真右)
シナリオライター。『タイニーメタル2』の脚本を担当。
『探偵 神宮寺三郎 夢の終わりに』『いけにえと雪のセツナ』『ロストスフィア』『鬼ノ哭ク邦』などを手掛ける。
マイケル・チュウ氏(写真中央)
ライター兼ゲームデザイナー。『タイニーメタル2』のプロットを担当。
Blizzard Entertainmentに約20年間在籍し、『オーバーウォッチ』のリードライターとして、キャラクターや世界観、ストーリー構築を手掛ける。同社では『Diablo III』『World of Warcraft』などにも携わる。Obsidian Entertainmentでは『Star Wars: Knights of the Old Republic II』などの開発にも参加している。
シリーズで共通する思いは、「白黒ではない」ということ
――皆さん以前から知り合いとのことですが、いつ出会ったのですか?
由良
稲葉さんとは『いけにえと雪のセツナ』(スクウェア・エニックス)でいっしょに仕事をしました。僕はサウンドディレクターで、稲葉さんはストーリーを担当していて、定例会や打ち上げなどで話すうちに気が合うようになりました。
マイケルとは、日本のクリエイターとBlizzardの技術交流会を行ったころに会いました。2018年ころですね。自分が以前Blizzardの音楽の仕事に関わったときには(※)、部署が違ったので、直接の接点はありませんでしたね。
※由良氏は、Blizzardが2012年に発売した『Diablo III』で音楽を担当。稲葉
打ち上げのときに、由良さんのことを“暗黒王子”と呼んだりしていましたね。
――“暗黒王子”ですか?
稲葉
見た目はプリンスな感じなのですが、やっぱり悪魔的なので(笑)。由良さんは、やりたいと思っていることをはっきり言って、簡単には譲らない方です。そこに強さを感じました。それでつい“暗黒王子”と。
――ときにイラッとしたり?
稲葉
それはないですね。実際のところ、由良さんが蒔いてくれるアイデアの“種”がすごくおもしろいんです。突発的に「こういうことをやりたい」と言うことが多いのですが、よく見ると、育てたらおもしろそうな種だと思ってしまう。だから、つい育てたくなるし、見逃せないんです。
――稲葉さんは1作目の『タイニーメタル』から関わっているのですよね?
稲葉
はい。最初は「プロットだけでいい」という比較的軽いところから始まりました。当時は別の仕事もあって忙しく、フルには関われなかったので、プロットを出していったん離れて、シナリオそのものは別の方が書き、自分は監修するという形でした。

『タイニーメタル 虚構の帝国』より。
――稲葉さんの参加によって、『タイニーメタル』にもたらされたものは何だったのですか?
由良
作曲家も作家も、仕事にその人の人格が出ると思うんです。稲葉さんもマイケルも、人のことを考えられる、やさしい人です。
『タイニーメタル』は、大きな戦争が終わった後の若者たちの話です。戦争はたいへんなものなのだということを、ドラマとして伝えたいと思いました。それは、日本で言えば第二次世界大戦後の状況にも通じるものがあると思うのですが……。その苦労を理解できて、人の気持ちになれる人たちと作りたいと思っていました。稲葉さんは、その苦労がわかる人だと思ったんです。
『いけにえと雪のセツナ』のテストプレイをしていたときに、稲葉さんはほかのライターと違うと感じたのは、モブキャラクターがみんな生きていたことです。背景にいるひとりひとりにも人生があり、どこへ向かっているのかが感じられる。そういう人物をきちんと描けることはすばらしいと思いました。
その結果、サブキャラクターもみんな大事になる。まあ、声優さんの起用も含めて制作がたいへんになる面はあるのですが、そこを求めていたんです。
――『タイニーメタル』は戦後の日本を描いているという一面もあるのですね。
稲葉
正直、最初はそこまでの考えかたから始まったわけではありません。由良さんのこだわりをくり返し聞く中で、「そういうところを描きたいんだ」と吸収していきました。
自分としても、『いけにえと雪のセツナ』のそういう部分を見てくれていた人がいたことが意外でした。最初からすべてわかっていて組んだのではなく、お互いの気に入っているところを突き合わせて、「そこを理解しているんだ」と確認しながら進んできた感じです。だから「何か違うな」みたいに思われて、破綻しなくてよかったです(笑)。

『タイニーメタル 虚構の帝国』より。
――『タイニーメタル 虚構の帝国』の脚本は稲葉さんが担当されたとのことですが、作品の方向性を決めるとき、どのようなやり取りをしたのでしょうか。
由良
言わなければならないことは言いますが、自分はライターではないので、稲葉さんのよさを生かすのが仕事だと思っています。自分がイメージできるものより、もっといいものを作ってほしい。僕の想像を超えてほしいんです。
稲葉
ただ、丸ごと任せられるということではなくて、由良さんにはキャラクターを大事にするという強いこだわりがあります。そこを聞き取ったうえで返していく。バトンを受け渡しするような関係ですね。
――『タイニーメタル』シリーズを作るうえで、共通している認識は何でしょうか?
由良
白黒ではない、ということだと思います。世間的には悪いことをしている人にも、そうする理由がある。その理由をちゃんと描きたい。悪いことをする人物についても、何があってそうなったのかを話し合っています。

物語にさらに深みを与えるために
――『タイニーメタル 虚構の帝国』が終わって、『タイニーメタル2』をという流れになったのですね。
由良
はい。マイケルが「このゲームに対してストーリーを書きたい」と言ってくれたんです。
ただ、マイケルは日本の作品をよく理解していますが、日本語のニュアンスやJRPGらしい感覚を脚本に落とすのはさすがにきびしいと思ったんです。それで、日本人のライターと組むのがいいのではないかと考えました。
それで、一度稲葉さんとマイケルの顔合わせをしたんですね。「ここで失敗したら終わりだな」と僕は思っていました。マイケルはこう見えてもけっこう好き嫌いが激しいので(笑)。
そんな思いは杞憂で、ふたりはとても話が合ったんです。ふたりには“かわいいものが好き”というような共通する感性もあって、「これかわいい!」とかきゃあきゃあ話しているんです(笑)。
――感性が近いのですね?
由良
話が合いました。マイケルがプロットを書き、稲葉さんが日本語の脚本へ落とす。その体制を『タイニーメタル2』でも使うことになりました。
――マイケルさんが入ったことで、想像していなかったような要素は生まれましたか。
由良
自分からは出ないような発想ですね。海賊のファクションを入れてくれたんですね。国を失くして海賊になったという人たちがいて……という設定です。
海戦と言えば僕には海軍という発想しかなかったのですが、海賊はたしかにおもしろいなと思いました。それでスペイン人をモチーフにコルサリオという勢力を入れることにしました。
ただ、デザインの段階では少し意見がぶつかりましたね。
コルサリオの勢力のキャラクターデザインは、髙橋ゴウさんが担当してくれているのですが、髙橋さんがデザインしたお年寄りの女性が、とてもかわいい服を着ているんですね。それで、「お年寄りがこんなかわいい服を着るのはおかしいのでは?」とのことになりまして。彼が大好きなスタジオジブリの『天空の城ラピュタ』のドーラみたいな感じだからいいのでは? と説得して、やっと納得してもらいました(笑)。
キャラクターデザインに関しては、マイケルにもこだわりがあったようで、何回かやり取りがありましたが、キャラクターデザイナーもチームの一員です。みんなのDNAを混ぜ合わせて作るのが現場だという話はしました。
実際のところ、僕とマイケルはけっこう言い合うんですよ。稲葉さんはそれをヒヤッとしながら見ているような気がするのですが、稲葉さんは、僕とマイケルが言いたいことを理解して、受け止めてくれて、包み込んでくれているように感じます。
――マイケルさんは、『タイニーメタル』というタイトルをどう分析して、『タイニーメタル2』ではどう発展させようと考えたのですか?
マイケル
『タイニーメタル』をプレイしてじっくりと考えました。物語には無数の可能性がありますが、何を語るべきかを決める手がかりがあります。
ひとつは物語と世界です。すでにある『タイニーメタル』の世界には、それに合った語るべき物語があります。ふたつめはゲームです。ゲームの種類によって、得意とする物語があります。3つめは、作り手が語りたいことです。由良さんたちは何を語りたいのか、自分は何をおもしろいと思うのか。その3つの要素の真ん中あたりに答えがあると思って作業を進めました。
『タイニーメタル』は、戦争や対立を扱う物語です。ただ、独自の見た目やスタイルがあるので、核となる考えかたや感情を取り出して表現できます。各勢力には明確な特徴があります。現実の国と一対一で対応するわけではありませんが、ある種の国のありかたを示しているんです。
前作までの土台はあったので、『タイニーメタル2』では各勢力の個性をより明確にして、その後の物語の基盤にしたいと思いました。キャラクターどうしのドラマもあります。人物についても、もともとの特徴を掘り下げ、さらに要素を加えて立体的にしています。
たとえばネイサンは、善良で、命令に従い、正しい行動をする人物です。では、なぜそういう人なのか。なぜ私たちが正しいと考える判断をするのか。そこを探り、『タイニーメタル2』では彼を試したいと思いました。
ヴォルフラムは個性の強い、印象的な人物です。ホワイトファングも、ひと目で格好いいと思える勢力ですが、なぜそういう人たちになったのかを掘り下げています。
由良
難民となり、ほかの国へ行けない人たちが船に乗り、生活を支えるために傭兵になった、という背景があります。皮肉なことに、自分たちが難民になる原因を作った国々のためにも、PMC(民間軍事会社)として仕事をする。そうした設定をさらに掘り下げています。
――ところで、とくに思い入れのあるキャラクターはいますか。
マイケル
ヴォルフラムが好きです。彼女の態度や物の言いかたがおもしろくて、書くのがいちばん楽しかったです。ほかのキャラクターには大きな理想がありますが、彼女はそれを振り切っているようなところがある。書き手として、そこがおもしろいんです。

共同で作り上げることで大いなる化学反応があった
――稲葉さんは、マイケルさんのプロットを見て、どう料理しようと思ったのですか?
稲葉
視点が違うんです。今回描かれる部分だけでなくて、その外側まで世界設定が広がっている。いい意味で、これまでの『タイニーメタル』にとらわれていないところがあります。
誤解を恐れずに言うなら、自分の役割はリアリティーのあるストーリーを、マンガ的な観点で再構築していくことだと思いました。
――マンガ的な観点で再構築していくことですか?
稲葉
マイケルさんのプロットは、リアリティーのあるドラマで展開するような印象もあるので、それを『タイニーメタル』の世界観に落とし込むとしたら、このキャラクターにどういう癖をつけようかな……みたいなところを、僕のほうでアレンジして作らせてもらっているって感じです。
――たとえばどんなふうにしているのでしょうか。
稲葉
なんでしょうね。これは僕の印象ですが、マイケルさんが作られているものは、実写のアメリカ映画の脚本のプロットみたいなイメージなんです。それは、セリフをたくさんしゃべって、掛け合いをしてうまく説明していくみたいなドラマがすごく当てはまるようなものなのですが、それをゲーム的なテンポ感もそうですし、『タイニーメタル』感もそうなのですが、わかりやすくうまく表現していくための、キャラクターの“落とし込み”みたいなところでしょうか。それで“マンガ的”という表現なんですよね。
――興味深いですね。
稲葉
海賊たちは書いていてとても楽しかったです。軍に関わる人物は真面目に話すことが多いのですが、彼らは遊べるから。ヴォルフラムがほかの国の将軍にもため口で話すところも楽しかったです(笑)。
マイケルさんは、『タイニーメタル2』に世界観と設定に相当な深みを与えてくれました。僕はその中から、今回使うべきところをうまく切り取って、強調すべきところを強調して、落とし込んだ感じです。

『タイニーメタル2』より。
――その作業は難しかったのですか? それとも、楽しかったですか?
稲葉
シンプルにおもしろかったです。自分とは違う環境の人の視点がおもしろいです。同じ日本人の方だったらこういう座組はおもしろくなかっただろうと思います。海外の方の視点と言うか、僕と違う環境の人が捉えている目線というのがものすごくおもしろくて。
プロットを読んだときに、こういう興味をこの人物に持たせるとしたら、自分はどういうキャラクターとして描けばいいのか。マイケルさんの表現を、自分がどうアレンジするかを楽しみました。
――ふたりで仕事をすることで化学反応があったと言えそうですね。
稲葉
はい。それは由良さんがけっこう最初のころから言っていたことでもありますね。ふたりで同じものを相談しながら作るというより、違う位置で関わるからおもしろい結果が生まれる。そこに組む価値があると思いました。
敵と味方のキャラクターが共感する表現もあり、それをどう成立させるか、まわりの要素を動かして考えることが、パズルのようでおもしろかったです。
国と国との戦いなので、ふつうなかなか共感するというのは難しいと思うのですが、『タイニーメタル2』ではキャラクターどうしが共感し合う表現とかがあって、「どう脚本に落とし込めばいいのだろうか?」と思いながらも、それを考えるのがすごく楽しかった。僕、けっこう帳尻合わせが好きなんです(笑)。
――敵と味方が理解し合う要素を入れた理由を教えてください。
マイケル
ひとつには、楽観的な考えがあります。対立があっても、文化や目的が違っても、根本には共通するところがたくさんあって、人間どうしわかりあえるし、お互いを尊重できる。そのことを伝えたいと思っています。
本当は仲よくできたはずなのに、ちょっとした価値観の違いによって、すれ違ってしまうこともある。そのすれ違いを探求するのに興味があったりもします。
私は、悪役を書くときにも、どこかその人物を好きになれるようなところがある物語が好きなのです。
――化学反応を期待していたとのことですが、由良さん的にはいかがですか?
由良
大満足です。そうであってほしいという期待もありました。稲葉さんの仕事も、マイケルがどういう環境で育ってきたかもわかっていたので、混ぜたことのない組み合わせでも、何かすごいものが出るはずだと思っていました。
ふたりは違う文脈や価値観で育ち、お互いに持っていないものを持っています。プロットがマイケル、日本語の脚本が稲葉さん、それをまたマイケルがチェックする。この受け渡しがよかったと思います。
――日本語の脚本を翻訳して、マイケルさんが確認するという流れだったのですね。
由良
そうです。日本語版の脚本にはほとんど直しはありませんでしたね。ただ、英訳は専任のスタッフが担当しているのですが、かなり書き直しています。マイケルのほうで、「稲葉さんはこういうふうには書かないだろう」と、元の意図に合っているかどうかをかなり細かく確認しています。
稲葉
AREA35は英語を使う人も多く、資料も両言語で共有される環境で、社内でも英語が飛び交っています。個人的な印象ですが、海外仕様なんですよね。

『タイニーメタル2』より。
――ところで、おふたりは本作のテーマをどのように考えていますか。
マイケル
とくに今回は、過去の出来事が、私たちがどういう人になるかに影響するという考えを掘り下げたいと思いました。『タイニーメタル2』の物語は大戦の後から始まります。過去に起きたことが、各勢力が何者であるかを決めている点が大切なんです。
ネイサンには、過去への強い敬意や英雄へのあこがれがあります。なぜ彼はそう感じるのか。それをどう掘り下げれば、もっと興味深い人物にできるかを考えました。
共同で作品を作るときには、倫理的な問いや、興味深い問いを探しています。それはニュースがきっかけになることもありますが、それをそのまま持ち込むのではなく、今回は『タイニーメタル』に固有の形にしていっています。
稲葉
自分はひと言で言うと、“呪縛”だと思っています。それぞれの人物が、自分の背景や過去にとらわれている。解消するものもあれば、縛られ続けることで、この先どうなるのだろうと感じる人物もいる。そこを丁寧に描いたつもりです。
由良
過去があるから、そのキャラクターが形作られるという点では、ふたりは同じことを言っていると思います。
稲葉
広い設定から積み上げられたものを、自分はひとつの言葉で捉えて、そこからどう見えるかを考える。その違いもおもしろいところです。
由良
鼻のツッコミどころが違うと言えるかもしれませんね。稲葉さんは“呪縛”というひと言からテーマが生まれてきて、マイケルは理論的に積み上げて、だから、「キャラクターをこう変えないといけない」というのがあるから、作曲法と同じで、メロディから作る日本人とハーモニーから作るアメリカ人みたいな感じですね。
稲葉
マイケルさんの設定の裾野が広いんですよね、本当に。そこから積み上げてきているのを、僕がピックアップしているみたいな感じです。それで、“呪縛”というところでとらえたとしたら、「ああ、こういうふうに見えるな」みたいなのがあって、それがすごくおもしろいところでもあります。

アニメではゲームで語れなかったものを語りたい。すでに『3』も始動中!?
――『タイニーメタル』がアニメ化にいたった経緯を教えてください。
由良
ひと言で言えば、ゲームで語れなかったものを語ることがおもな目的です。
――世界観が深いので、アニメで語りたくなったということですか?
由良
そうですね。じつは、アニメの影響を受けて、『3』をやるならもっと深くやるという感じで、(マイケル氏が)『3』のプロットを書き始めたりしています。
――おお、早くも!
稲葉
困りますね(笑)。
由良
マイケルは火が点いたらとても燃え始めるので、アニメ化の話をしたときはクールに聞き流していた風だったのですが、いざアニメのプロットを持ってきてみたら、いきなり『3』まで書いてきてくれたんです。「まずアニメ終わらせようよ」という感じです(笑)。
稲葉
アニメに関して言うと、『タイニーメタル』はシミュレーションゲームなので、そんなに長くドラマを描けないんですね。長く会話をしていても、必ずしもそこを求めているわけではないところもあるので、そこをうまく短いセンテンスで伝える努力があって、『タイニーメタル』をやっていていちばんたいへんなのはその部分でもあります。
由良
稲葉さんがこれだけ必要だということはわかっているのですが、それでもプレイヤーさんが読んでくれるように短くしなければならないわけです。そこは心を鬼にするところです。
稲葉
そこに広大なリアルな世界を作るので、「これをどう表現していくのか」というのはいつもすごく悩みます。めちゃくちゃ挑戦ではあります。
そういう意味では、もうちょっとしゃべりたくなる気持ちになることはあります。会話がノッてくると書きたくなるんですよね。どうしてもドラマを描きたくなるのですが、あまり感情を乗せ過ぎるとテンポが悪くなるところもあって、そこを気にしながら作っています。
今回の『タイニーメタル:零戦線』の脚本は私が担当したのですが、そういう気兼ねなしに楽しく書けました。ドラマ中心なので、自分のお気に入りのセリフをたくさん乗せています。

――アニメのプロジェクトが立ち上がったのはいつごろだったのですか?
由良
昨年(2025年)の秋くらいですね。
稲葉
割とタイトに進んでいます。
――アニメはゲームとどういう関係性の作品なのでしょうか。
由良
『タイニーメタル2』の後を描いています。
世界観を拡張するためのものですね。『タイニーメタル:零戦線』はいわゆる“ゼロ話”のパイロットにあたりまして、それは稲葉さんが監督と直接とやり取りをしながら書いていまして、その後のシリーズはマイケルがプロットを手掛けています。
ゆくゆくは全12話で……というのは構想としてあります。
――アニメの世界はどのような感じになるのですか?
由良
アニメなので、『タイニーメタル』の世界に接するのは初めての方が多いかと思います。そういう意味では、アニメから入れるようにはしています。ただ、『3』はすべて引っくり返るので、その下準備という意味合いもあります。
――引っくり返る……。
由良
僕がしないことをしてくれたので。僕はそこまで引っくり返す勇気もないし、発想までつながらないので……。ただ、プロットは抜群におもしろいです。マイケルが燃え上がった理由もわかります。
『タイニーメタル』の世界がアニメとその先となるとけっこう広がるので、それに興奮したのだと思います。
――それだけ魅力的な世界観とは言えそうですね。最後に、ゲームやアニメを楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
マイケル
最初は小さなアイデアから始まった『タイニーメタル』がこれだけ広がりを見せられたので、今後さらに稲葉さんといっしょに世界を形にしていくのを見ることができる。それをとても楽しみにしています。
稲葉
ゲームからでも、ストーリーからでも、自分が魂を込めたキャラクターからでも、どこからでも入れる作品になっていると思います。少しでも気になるところがあったら気軽に触れて、そこからこの世界にハマっていただけたらうれしいです。
由良
いちばんうれしいのは、『タイニーメタル』を子どもが育っていったように感じられることです。自分が小さく始めた世界をみんなが育ててくれて、大きくなった。自分の手を離れても、自分の子どもであることは変わりません。自分から生まれたものが、想像もしなかった方向へ進んでくれることがうれしいです。ぜひ、みんなにこの世界観を楽しんでもらいたいです。

なお、AREA35は2026年9月17日~21日(17日、18日はビジネスデイ)千葉県・幕張メッセで開催予定の東京ゲームショウ2026に出展予定。『タイニーメタル2』の試遊も可能だ。