そんな本作のディレクターを務める古島康太氏にインタビューを実施。本稿では、世界観やキャラクター設定についてネタバレ前提で質問をぶつけ、存分に語ってもらった。
開発の裏話や今後の展開については、先行で紹介した記事にて掲載しているため、こちらも要チェック。

古島 康太(フルシマ コウタ)
株式会社ゲームフリーク『Beast of Reincarnation』ディレクター&シナリオライター
キャラクターのコントラストと演出
本作の軸にあるのは、過酷な世界を相棒と旅をし、その中で相棒の頼もしさやぬくもり、切なさを感じていただくというコンセプトです。そこで、キャラクター造形もコンセプトを達成するために必要だと考えていました。
物語の舞台を西暦4026年、植物が“穢れ”として世界を支配しているという構造に決めたところで、その植物がエマとクゥにも侵食しているということにしました。
ボスである“ヌシ”を倒すたびにふたりは穢れを取り込んで成長するのですが、それがビジュアルとして示されないといけない。本作はキャラクターを後ろからの視点で見るゲームなので、エマは三つ編みが成長してどんどん伸びていく、クゥは尻尾に花が増えていくという形で表現しようとなったのが、キャラクターデザインの発端になっています。
またすぐ隣にいるという関係性を重要視していて、ふたりはつねに目線が合うよう、クゥの身体を大きくデザインしています。カラーに関しても、黒と白という対照的な配色でコントラストを意識しています。

カグラは生活のうえで大切な食事を担うキャラクターです。エマのパラメータを成長させるだけではなく、挨拶や感謝といった人間的な、当たり前だけどふだん意識しない大切なことをエマに伝えます。
エマの内面的な成長を促す役割を持っているのですが、これを年長者のブラッドではなく、エマより幼い子どもが伝えることにより、エマの無垢な状態をより際立たせるという風にデザインしました。

大人だからこそ抱える秘密を描くキャラクターとして設定していて、その内面性を表現するため、登場してすぐのころはマスクをつけていました。
――ではブラッドが途中からマスクを外したのは、エマに心を開いたということを意味していたのでしょうか?

そのような役目を担うキャラクターのため、擬似家族の中にいるよりも、エマにしか見えない特別な立ち位置として設定しています。彼女がどのような存在なのか、物語の中で問いかけ続けるスタイルにしました。
ヴァイオレットという名前の意味や、なぜ和服を着ているのかなど、設定についてもかなり考えてデザインしているので、ぜひ考察していただけるとうれしいです。

彼らはどういう関係性なのか、いかなる秘密を持っているのか……敵なのか味方なのかを最後までわからせないようにしていました。
見た目もエマとのコントラストを意識しています。クナイのカラーは赤なのですが、じつはエマのキーカラーとして植物の緑が入っていて、赤と緑で対照になるようにしています。

登場人物のほとんどはエマとクゥに帰結していくようになっていて、それがタイトルの『ビースト・オブ・リンカネーション』、“輪廻の獣”にすべて通じているという形になっています。
――声優のキャスティングもぴったりでしたが、シナリオ執筆時からイメージされていたとお聞きしました。
先に日本語のボイスキャストを決めて、いわば当て書きのようにシナリオを書いていきました。ぴったりと思っていただけるのは、その手法がうまく機能した結果かなと思っています。
――キャストへオファーをする前から決め打ちで考えつつ、執筆を進めていたのでしょうか?
腐蝕体やゴーレムのデザインコンセプト
本作の世界観には、機械の身体を持つ“ゴーレム”と、穢れに浸食された“腐蝕体”という2大勢力があるのですが、前者は死の象徴として人工的に、後者は生の象徴として有機的に描いています。
死んだもの、ゴーレムや人工物は成長が止まるけれど、生きているものは過剰に成長してカオスに増殖する。生きているからこそ禍々しい、そういった表現をする必要があると考えました。

ヌシだったら年月を重ねていて威厳を感じるだろう、というように1体1体デザインを詰めていきました。過剰な成長を表現するため、“進化”というコンセプトも必ず入れています。
――腐蝕体のモチーフとして動物がたくさん出てきますが、その種類はどのように選出していったのでしょうか?
――なるほど。一方でシドウやクナイが連れている腐蝕体は、想像上の生物がモデルになっていますよね。
それらが過剰成長することによって神格化されるといったように、ただの動物から徐々に神様に近づいていく表現となっています。

世界観を構築する宗教観と死生観
たとえば腐蝕体は神道的、ゴーレムは仏教的な要素を持っています。ゴーレムのデザインは心肺などの循環器系を象徴していて、循環する輪廻を表現していたりします。さらに古代の文明までさかのぼると、ヒンドゥー教的な要素が登場するような形にしています。
――なぜ、さまざまな宗教的要素を取り入れようと考えたのでしょうか?
また、現実世界にある宗教をそのまま崇拝するのではなく、少し変質した何かに変わっていくという形で落とし込んでいます。

勢力間のパワーバランスはパラメータにも反映されていて、腐蝕体とゴーレムが戦う場合は、基本的に腐蝕体が有利になるようにしています。
また本作の世界は、長い年月が経過した影響で土の堆積や風化が進んでいて、その上にさらに文明を築いています。そのため、どのようにして文明が積み上げられ、勢力がいかにして生まれたのかを考慮したうえでのデザインを心掛けました。
ストーリーに込められた裏設定の数々
前半はゲームシステムや世界観にも慣れていただきながら、疑似家族との生活をしっかり描いています。キャラクターどうしの関係性が構築されつつ、一方ではある種の不穏なことが話されていて、誰がどういう立場なのかがわからない状態なんですね。
そういった関係性の積み重ねと積み上げられた謎が、後半で急転直下に展開していくという構成になっています。
――後半の怒涛の展開は震えました。また、クリアーした後でも考察の余地があるように作られていると感じました。
ちなみに、ロード画面などで壁画が映るのですが、じつはそこに本作がいかなる世界なのかがおおよそ描いてあったりします。
――物語の根幹にかかわる話なのですが、シャンバラにいる“プレイヤー”とはいかなる存在なのでしょうか?
各腐蝕体にもプレイヤーが存在していて、それぞれ操られているという世界観なのですが、ストーリー後半になるとエマが自我を得ていくため、プレイヤーが選べる会話の選択肢もなくなっていくようにしています。

葛藤は、葛(カズラ)と藤(フジ)という漢字で構成され、植物が絡み合うことが語源になっています。そこから、エマが徐々に感情を獲得し、葛藤しながら精神的に成長していくという物語が構築されていきました。ですので、葛藤というテーマも本作の中心的なテーマである植物から派生したものになります。
エマの三つ編みはヌシを倒すごとに成長しますが、彼女の内なる葛藤も育っていく。各エピソードのタイトルも植物が成長していくようなものを意識しています。このように、気づいていただけるかわからないような要素も散りばめているので、ぜひ考察しながらプレイしてみてくださるとうれしいです!
■東京ゲームショウ2026に『Beast of Reincarnation』が出展
2026年9月17日~21日に千葉県・幕張メッセにて開催予定の東京ゲームショウ2026のハピネットブースに『Beast of Reincarnation』が出展される。プレイステーション5版の試遊に加えて、等身大クゥといっしょに写真が撮れるフォトスポットも設置されるのだとか。気になる方は会場に出かけてみるといいかも。

















