「まずは主人公の村を焼け」とはよく言ったもので。
いわゆる物語における、シンプルな動機付けの手法だ。帰る場所を失くして旅立ちを強制させ、さらには戦うための理由にもなる。昔からあらゆるRPGで使われてきた、伝統的な流れと言える。
ということで、『幻想水滸伝 STAR LEAP』(げんそうすいこでん スターリープ/以下、『幻水SP』)も主人公が住んでいる里が焼かれるところからスタートします。

燃える故郷。うーん、懐かしの和製RPG味。いや、シャレにはならんのですが。
凄惨な絵面だが、とはいえこれは(物語的には)動機付け。ちょっとたいへんな目にはあったが、幸い里のみんなの命は救われているので安心を。『幻水SP』は、この焼かれた主人公の故郷・タイジュの里を再興していくことが最初の目的となる。
本記事は『幻水SP』のネタバレを含みます。どこまでもまっすぐ“RPG”! 買い切りゲームと遜色ない遊び心地
主人公はタイジュの里の若頭。腕っぷしとカリスマで里を引っ張ってきた里長・ホウの息子だ。物語はそんな主人公が、大きな猪と対峙しているところから始まる。
どうやら初めての狩りに出ているらしい。主人公の傍らにはホウと、ゲオルグという男が。

画面の奥から猪、ホウ、ゲオルグ、主人公です。

……ってゲオルグ! ゲオルグ・プライムじゃないか!
なんで興奮しているかと言うと、ゲオルグは『幻想水滸伝』ナンバリングシリーズに登場するキャラクターのひとりだから。本作はナンバリングシリーズと世界観を共有している。時系列としては太陽暦453年(ざっくり『幻想水滸伝I』よりちょっとだけ前、『幻想水滸伝V』よりちょっとだけ後)から始まる物語となっており、歴代キャラもたくさん登場する。
にしてもチュートリアル時点でいきなり懐かしい顔が見えるのはうれしい限り。俺は過去作のキャラが急に出てくるのが大好きなんだ。

ホウとは旧知の仲らしい。そういえばゲオルグは甘党って設定がありましたね。
そして猪を倒した後、里に戻ると使用人のヒスイがお出迎え。何気ないことを話しながら猪鍋を食べ、平和に夜が更けていった……。
“いった……”などを使った時点でお察しかもしれないが、この後タイジュの里が焼かれる。謎の武装集団による襲撃で、木々が生い茂る豊かな里は燃え落ちてしまう。

仲よく猪の鍋を囲む図。右側の椅子に座っている、白髪の女の子がヒスイ。

しかしそんな談笑も、謎の武装集団による襲撃で消え失せる。どうやら紋章(この世界における魔法の源のようなもの)を探しているらしい。

その結果、里は丸焼けに。里の人々が生き残ったことだけが救いか。
しかし幸い、住人たちはちょっとたいへんな目に合うものの無事生き延びることができた。つぎの朝、行商のため里の外に出ていた幼馴染・シーリーンと合流。怪我をせず無事だった主人公、ヒスイとともに3人で、タイジュの里復興のための旅に出る。

彼女がシーリーン。主人公の幼馴染で、“討伐屋”を営む。

ぶっきらぼうで明るい性格。ツッコミ役を担うことが多い。感情豊かなせいもあってか、ドット絵がすごくよく動く。
最初の行き先は、村長の右腕であり主人公の師匠・シャプールが滞在しているグレッグミンスター。
グレッグミンスター……? グレッグミンスター!

グレッグミンスター!

グレッグミンスター! マクドール邸! 息子と使用人が暮らしてるよ!

グレッグミンスタァーッ! お前のBGMで泣くのは『幻想水滸伝II』以来だぜ!
……失礼、少々取り乱してしまった。グレッグミンスターは『幻想水滸伝I』最初の街。筆者としては思い入れも強く、目的地として知らされたときは「うひょお!」と、はしたない大声を上げてしまった。あと移動しながら「タイジュの里ってグレッグミンスターの東側にあるんだなあ」と、新たな地理情報に思いも馳せていた。

オデッサも登場する。街の門で不正に金を巻き上げる帝国軍に辟易していた。

こちらはレナンカンプ。グレッグミンスターもそうだが、知っている街を知らない角度で見ることができるというのもうれしい。
とはいえ、過去作の知識が必要というわけではない。あくまで「あのとき遊んだ街にもう一回行ける! うれしい!」と筆者がはしゃいでいるだけで、本作は『幻想水滸伝』をプレイしたことのない人でも問題なく楽しめる。
そもそもストーリーは完全に独立したもの。過去作とのつながりを感じさせる場面はあるものの、それはあくまでもファンサービスに近い。第1章は『幻想水滸伝I』を知っているとニヤリとする場面は多かったが、知っていないとストーリーがわからないということはないはずだ。

第1章ではオデッサの解放軍設立前のお話が大きく本筋に絡んでくる。花嫁衣裳のオデッサも登場。

オデッサは魅力的なキャラだったが、『幻想水滸伝I』では早期に登場しなくなってしまう。またこうしてかっこいい姿が見られたのはとてもうれしいし、新しく『幻想水滸伝』に触れたユーザーもトリコにしてくれるはず。
筆者自身、過去作について知っているのは『幻想水滸伝 I&II HDリマスター 門の紋章戦争 / デュナン統一戦争』の範囲のみ。続く第2章は『幻想水滸伝V』の話がメインになっているようで、知らないキャラクターや土地がわんさと出てきたが、それでも非常におもしろかった。

ファレナ女王国……とは?

ロードレイクという街にあるロヴェレ学園という場所に通うことになりました。立ち絵も制服にチェンジ。
その理由はシンプルで、“RPGとしておもしろい”から。グラフィックやBGMはハイレベルで、新しい街へ向かうときのワクワク感を後押ししてくれる。キャラクターたちも魅力的。掛け合いの際は細かく動いてくれることもあって、ただの会話ながらもしっかりとしたアクセントがあり飽きない。フィールド移動中も何かしら会話が発生するので移動も楽しくて……と、おもしろいポイントを挙げていくとキリがない。

立ち絵を出さず、吹き出しだけにしてキャラクターのドット絵を目立たせることも。緩急のある演出がいい。

上からの見下ろし視点で、ドット絵のキャラを動かしてダンジョンを歩く。その経験が「RPGって“こう”だよな」という気持ちをくすぐる。

街中やダンジョンにある宝箱を探したり、箱や壺を割って素材を集めたり。これもRPGらしい醍醐味ですよね。
それは戦闘も同じ。『幻水SP』は、6人編成のコマンドバトル。敵の弱点をつくことでアンバランス状態にする(体勢を崩す、みたいな)ことができ、行動順を遅らせた上で大ダメージが与えられるようになる。さらに味方の行動順が4回続くときは“連携攻撃”が可能で、よりダメージを稼ぐことが可能だ。
アンバランス状態を狙って敵の行動順を操作し、連携攻撃で畳みかける。これが『幻水SP』の基本戦術となる。

下に並んでいるアイコンが行動順。ここで味方が4人連続で並んでいると連携攻撃になる。

連携攻撃は、連続して行動したキャラクターの数に応じて追加ダメージが入る。味方が一斉に行動する姿も爽快。

敵を複数回弱点属性で攻撃すると、アンバランス状態に。逆に言えば弱点属性で攻撃できないと、基本的にはずっとアンバランス状態にならない。
そのため、基本的には強いキャラクターでゴリ押すよりもたくさんのキャラクターを使って属性攻撃を入れつつアンバランス状態を狙うほうが楽になるバランスとなっている。『幻想水滸伝』自体非常にプレイアブルキャラクターの数が多いので、さまざまなキャラクターを使う理由付けにもなっているのがとてもいい。

この敵はかなり手ごわいが、弱点属性をうまく突けばやれる……かも? そういうことを考えながら編成をあれこれ変えるのがおもしろい。
キャラクターには、それぞれコマンド以外に自動発動するスキルがある。自分の体力が50%以下になったら自分を強化とか、戦闘中1回だけ体力がゼロになった味方を体力半分で即時蘇生するとか。これらの効果を組み合わせながら編成を考えるのもおもしろい。
たとえばあるキャラは、“自分が3回行動した直後背後(及び正面)にいる味方キャラクターを戦闘不能にする。自分がほかの味方を戦闘不能にすると自分を強化”というスキルを持つ。一見デメリットが重すぎるように見えるが、これに前述の即時蘇生と体力半分以下で自己強化されるスキルを組み合わせてみよう。仮に背後を戦闘不能にするキャラをA、即時蘇生するキャラをB、体力半分以下で自己強化するキャラをCとすると……
Aが背後のCを戦闘不能にし自己強化 → BがCを体力半分で蘇生 → Cは体力半分以下になったので自己強化の条件を満たす。
と、スキルを組み合わせて効率的に強化することができるように。キャラクターはたくさんいるので、ほかにもおもしろい組み合わせを扱える編成があるはず。こういった連携を一晩中考えていたくなってしまう。

そのほかに奥義と呼ばれる、キャラ固有の必殺技もある。戦闘で使える要素が多いと、考えがいがあって楽しい。
『幻想水滸伝』らしさを感じるミニゲームや宿星たち
世界を冒険する楽しさや戦闘のおもしろさだけじゃなく、サブ要素……たとえばミニゲームがやたらと充実しているのも飽きずに遊べる部分。『幻想水滸伝』と言えば“チンチロリン”や“もぐらたたき”など、ミニゲームがたくさんあるイメージなので、その辺りも踏襲されているのはうれしいところだ。


釣りや野菜収穫などのミニゲームがある。シンプルだが、思わず熱中してしまうような楽しさ。
ミニゲームは、拠点であるタイジュの里の復興や発展と同時に増えていく。この、自分の拠点をどんどん拡張していく感覚も『幻想水滸伝』感がある。
里の復興はおもにストーリーの進行や主人公のレベルなどによって進んでいくので、どちらかと言えば復興の結果キャラクターが増えるという形。仲間になったキャラクターは里の中をうろうろしており、近づいた主人公に声をかけたりしてくれるのがうれしい。もちろん従来シリーズのように、街を探索している最中に話しかけることで仲間になるパターンもある。そうやってどんどん人を集めていって、里がにぎわいを取り戻していくのが楽しいのだ。

復興の結果、里の施設のために作ったロボが仲間になる展開なんかも。

仲間が増えると、どんどん里は賑やかになる。
里の復興、ストーリーの展開、街の探索で出会い意気投合などなど、『幻水SP』はガチャ以外の仲間となるキャラクターを増やす方法がとても多い。これは『幻想水滸伝』シリーズが108人の“宿星”である仲間を集めることに起因する。
もちろん『幻水SP』でも、宿星を持つ108の仲間たちはすべて無料で仲間になると発表されている。いま現在プレイした範囲だと、街の探索というよりストーリーの進行で仲間になるキャラクターの割合が多い。この割合が変わるのかは少し気になるところだ。


話の展開で里に身を寄せるようになったり、街を探索している最中に仲間になったりなど、里に来る経路はいろいろ。

仲間になった宿星は、約束の石板に名前が刻まれる。一定の条件を満たせば限界突破素材である“ピース”(いわゆる凸素材)も入手できるので、頼れる味方になってくれそう。

新108星も非常にヘキに刺さる人が多かった。レイ・ファルメルはちょっと内気な性格がかわいい。あとツインテールがとてもいい。

このお姉さんの名前はクロエ。ストーリー上でも出番が多く、みんなを導いてくれる頼れる人。好きです。

ほかにもビッキーなど、おなじみの宿星も仲間になる。
それ以外の、歴代の登場キャラクターなどはガチャで登場。筆者はゲームを進めながらコツコツ貯めた幻想石(ガチャ用のアイテム)で『幻想水滸伝I』の主人公(通称:ぼっちゃん)を引くことができた。
ソウルイーターの演出がとてもかっこよくて、使っているだけで笑顔になってしまう。グレミオが同時実装ではないのが少し残念だが、そこは今後の楽しみにしておこう。

引けたときは本当にうれしかった。グレミオを横に置かせてくれ~。

あの「ポワァ~」のような独特なSEもそのまま。ソウルイーター、かっこいいよね。
『幻想水滸伝』としても、ただのRPGとしても、その体験は至上のもの
配信に先駆け本作をプレイしたが、個人的には大満足と言っていい。最近筆者自身がRPGに飢えていたこともあってか、触っているあいだはずっと“プレイしていて楽しい”と思える時間だった。
「RPGに飢えてるからでは?」と言われればそうかもしれないが、重要なのはこういった基本プレイ無料のタイトルでその飢えが満たせたことにあると思う。ここ数年流行の超美麗グラフィックのオープンワールドアクションRPGでも、大昔からある立ち絵が動くタイプのシナリオ重視なビジュアルノベル寄りのタイトルでもない。きちんと“RPG”という原型をなぞったゲームになっているからこその充足感だ。

防具を購入して装備するという要素も。付け替えが面倒そうに見えるが、一括で最強装備を付け外ししてくれる機能があるので意外と楽ちん。
だいたいのRPGという看板を掲げる基本プレイ無料系のゲームは、戦闘がコマンドバトル形式であるだけのことが多い。その点『幻水SP』は、フィールドやストーリーの進めかたなども含めて買い切りタイトルのRPG然としていた。これが個人的な高評価の要因である。

そういったゲームも悪いとは言わない。でもこういった“RPG”とは違うよなとは思う。
ただ、いくつか不満点はある。個人的にいちばん気にかかったのは、チュートリアルが丁寧すぎること。
いや、丁寧なのはいいことなのだが……なにぶんコンテンツの分量が多すぎる。キャラクターの強化だけでも固有の要素が多く、それらが解放されるたびに長いチュートリアルが流れるのは、プレイしている身としてはたまったものではない。

とくに序盤は復興を進めるとバンバン新コンテンツが解放されるので、そのたびに長めのチュートリアルが挟まるのが少し厄介。
戦闘系コンテンツの場合は、強制的に戦闘もやることになるため拘束時間がとても長く、さらにパーティー編成も“おすすめ”一択。やらされている感が強く、「もう文章だけで読ませてほしい」と何度思ったことか。
丁寧なのは本当にいいことだし、実際助けになる人も多いだろう。あくまでゲーム慣れした人間の意見であることは理解している。ただ、それでもやはり気にかかる部分ではあった。せめてスキップを可能にするか、簡易なものが選べればよかったのだが……。

重ねて書くが、丁寧なのは本当にいいこと。ただちょっとやりすぎかも? と感じた。
とはいえ大きな不満点はそれぐらいで、後はおおむねずっと「楽しい! RPG楽しい!」と思いながら遊んでいた。
かつて「プレイステーションよ。これがRPGだ!」のひとことをキャッチコピーにした『幻想水滸伝I』。そこから『幻想水滸伝』は長い時を経て基本プレイ無料系のゲームへと流転し、また違う場所で「これがRPGだ!」という姿勢を見せつけた。
正式リリースは2026年8月7日。新たな宿星を探す旅路へ出かけよう。

(画像は『幻想水滸伝 II HDリマスター』より)最後に欲望を漏らすと、筆者はカレンがいちばん好き。実装されないかな……。