本稿では本作を試遊した感想をお届けする。まずは結論から。わずか10分の試遊だったけど、とても丁寧に仕上げられているのを実感でき、僕は購入を決定した。発売が楽しみだ。


- こりゃあいい作品だ。幸せなリメイクだ
- 現代にきちんと遊べるグラフィック、BGM
- 40年以上前のゲームがなぜいまもおもしろいのか
- 『パラノマサイト』にも影響を与えた原作。エニックスの系譜
- まとめ:堀井雄二アドベンチャー三部作の原点。残すは……
- ノベルティグッズにも注目
- 製品概要
こりゃあいい作品だ。幸せなリメイクだ

今回プレイしたのはPCで動いてる試遊なので、Nintendo Switch 2、Nintendo Switch版と実際の仕上がりとは少し変わる場所があるかもしれないけど、まず感じたのは動作が軽快だということ。
ウィンドウを開く際や選択肢を選んだ際は素早い挙動で反応してくれるし、コマンドを選んだときにもっさりするとか、そういうのが一切ない。メッセージ表示速度も変更可能。非常にテンポよく進めることができそう。
ファミリーコンピュータ版をエンディングまでプレイしたことのある僕としては、これだけでもう、名作をしっかりと楽しめることがわかった。購入決定です。試遊というよりも“きちんとリメイクされているか”、“原作のおもしろさをちゃんと持って来れているかどうか”を確認しに来たようなものだ。
やっぱり残念なことに、きちんとされていないリメイクも現代ときどきある話なので、実際に触れてみたかったし、触れてみた結果、しっかりと作られていそうだと確認できてよかった。安心した。
現代にきちんと遊べるグラフィック、BGM

もう少し補足しておくと、本作は非常にグラフィックもBGMもデキがいい。めっぽういい。BGMなんて原作ではほとんど無音だったような気がするけど、本作では新たな楽曲がオーケストレーションされて、また音響も立体的に作り込まれている……気がした。
さらに、演出面でも強化されていて、たとえば原作にはなかったオープニング演出が追加されていて(短いものだけど)、事件の概要がサウンドノベル風の画面表示で流れたりする。
原作版はすぐにヤスが出てきて「部下です。ヤスと呼んでください」と自己紹介する場面から始まる。
このシーンに代表されるように、システムやストーリーはそのままに、“現代のアドベンチャーゲーム”としてクオリティーがしっかりと高められている。
浅野恭司・清塚信也――別業界の才能

開発に参加している外部クリエイターがじつは豪華だ。
キャラクターデザインをアニメ制作のWIT STUDIO取締役であり、アニメ『進撃の巨人』などでもキャラクターデザインを行なった凄腕アニメーターの浅野恭司氏が行っている。
そしてBGMには作曲家の清塚信也氏を起用。音楽にうとい僕ですら、名前を知っている当代トップクラスの人気ピアニストだ。
もともとデキのいい名作アドベンチャーに、ゲーム業界外から才能をスカウトして、用いている。
現場にいた方に訊いてみたところ、浅野恭司氏とは知り合いのスタッフがいて依頼を行ったとのこと。浅野氏は自身もかなりのゲーム好きで本当に熱意を持って、開発にも理解があり歩み寄ってくれるのだそう(浅野氏のゲーム好きは、過去に週刊ファミ通で別タイトルのアドベンチャーゲームのお祝いイラストを描いてもらったこともあるほど)。
外部の人を使えば全部いいのかというときっとそういうことではないのだろうけど、少なくとも本作においてはとてもいい結果につながっていると思う。

40年以上前のゲームがなぜいまもおもしろいのか

“何か調べろ”というようにコマンド選択方式で、アクションゲームとかが苦手な人でもじっくり腰を据えて楽しむことができる。『ポートピア連続殺人事件』はそういうアドベンチャーというジャンルの基礎の部分を形作った作品で、それが発売から40年以上経ったいま、新しいグラフィックと軽快なユーザーインターフェイスで遊べるということに、価値はしっかりとあると思う。
すこし原作版の『ポートピア連続殺人事件』がどうして名作で、語り継がれるものなのかという点について説明をくわえておこう。
『ポートピア連続殺人事件』が与えた衝撃

1983年にPC向けに発売され、1985年にチュンソフト(現スパイク・チュンソフト)の開発でファミリーコンピュータ版が発売された(発売はエニックス/現スクウェア・エニックス)。
初代『ドラゴンクエスト』の発売が1986年なので、『ドラゴンクエスト』前夜の堀井雄二氏による作品となる。
相棒の若手刑事とともに主人公が殺人事件の謎を追うと、さらなる連続殺人事件につながっていくというストーリー。神戸を中心とした実在の地域を舞台にしていて、場所移動をしながら謎を解いていくこととなるになるのも特徴的。
少しずつ謎を解いていく快感、物語が進むと殺人事件がさらに発生するというハラハラ感、そして(インターネット上ではなぜか有名な)意外性のある犯人……。
物語展開自体が、劇画村塾出身のマンガ原作者である堀井雄二氏らしく非常に高いクオリティーで、またシステム面でもファミリーコンピュータ版からは“コマンド選択式”が採用されたのも画期的なことだった。
それまでのPCでのアドベンチャーゲームは“ト・レ”や“シ・ラ・ベ・ロ”といった感じで決まった命令文を1文字1文字キーボードで打ち込む必要があり、シンプルに手間がかかる上、ときに理不尽な命令文を要求されるほどに難度が高かった……と聞いている。
だけど、そのコマンド選択方式を採用することで、非常にユーザーフレンドリーになって遊びやすくなった。
当時は「コマンド選択式になんてしたら、もう総当たりでクリアーできちゃうんじゃないか」みたいなことも言われたらしいけど、でもやっぱりそういう風にした方が遊びやすいだろう、わかりやすいだろう、おもしろいだろう……という、『ドラゴンクエスト』にも通じる堀井雄二氏のプレイヤーファーストの考えかたがこのシステムに入っている。
それはその後のアドベンチャーゲームに大きな影響を与え、スタンダードな形式となった。
つまり『ポートピア連続殺人事件』は、アドベンチャーゲームというジャンルに大きな影響を与えた歴史的作品で、それがこうしてリメイクされて現代に遊べるというのは、このジャンルのファンとしては喜ばしいことだし、未プレイの方はこの機会に遊んでみてもいいのではないかなと思う。
『パラノマサイト』にも影響を与えた原作。エニックスの系譜

『パラノマサイト』シリーズのディレクターである石山貴也氏は、「『ポートピア連続殺人事件』が自分のアドベンチャーゲームの原体験である」と語っており、また、ゲームづくりにおいても大きな影響を受けていると、堀井氏との対談において話していた。
僕も含めた以後のアドベンチャーゲーム開発者は「『ポートピア』以上の犯人って、どうすりゃいいんだよ!」ということになっていますよ(笑)
実際、僕も初めてプレイしたときには「言っても犯人わかっているしな」と思いながら遊んでいた。しかし、そう高をくくって遊んでいたにも関わらず、おもしろかったし驚かされた。ネットミームネタのさらに一段上に行っているのだから。
また、『パラノマサイト』をお好きな方は、本作をプレイすると「ああ、なるほどね」とニヤリとできるところがあると思う。奇遇にも(?)その『パラノマサイト』はスクウェア・エニックスから発売されている。エニックスの新旧アドベンチャー、まとめて遊んでみるというのもいいのではないだろうか。
シンプルにテキストがおもしろい

特筆すべき点はやっぱりテキストのおもしろさで、ジャンルがアドベンチャーだけに、『ドラゴンクエスト』以上に“堀井節”が入っているとも言える。
たとえば、コマンドに“たたけ”とあるけど、こんなところで叩いたらヘンだよな……というところでも“たたけ” → “バーのマスター”と、突拍子もない選択をしてみる。ぜんぜんマスターを叩く流れじゃなかったのに、好奇心だけで叩けと命令されたヤスは「ムチャクチャ言いますね、ボスは(´・ω・`)」と困り顔で返してくる。
「ここでヘンな選択をしたら、どうなるんだろう?」というちょっと悪ふざけ込みの気持ちで命令しているだけに、予想外に部下からかわいく言い返されて思わずフフッと笑ってしまう。
そういうリアクションのおもしろさが、細部にも仕込まれているからいろいろなコマンドを試してみたくなる。画面の中のキャラクターがきちんとリアクション取ってくれるとやっぱりおもしろいよね。
まとめ:堀井雄二アドベンチャー三部作の原点。残すは……
ほとんど確認だったけど、ゲームの操作まわり、システムまわりはきちんと遊びやすく作られていて、それだけで個人的には安心して購入決定だ。なぜなら原作がおもしろいと知っているから(考えてみれば、2024年にリメイクして発売された『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ ~追憶の流氷・涙のニポポ人形~』と同じジー・モードなのだから、もう確かな実績があり、本当は確認するまでもなかったのかもしれない)。
しかも、しっかりと作られた原作のリメイク部分に加えて、完全新規の追加シナリオもあるというのだから、そりゃ買いに決まっている。
その原作のおもしろさというのは、堀井雄二氏の遊び心がたっぷり詰まったテキストや、アドベンチャーというジャンルの歴史を紐解いたときに大きなポイントとなった作品であるという意味合い、そして後世のクリエイターにも影響を与えるほどに衝撃的な犯人……というところが挙げられる。
そして新しい才能。浅野恭司氏と清塚信也氏という異業種からの俊才の援用がさらに効果的に使われている。堀井雄二氏の原作が中心にありつつ、キャラクターデザインと音楽をすごい才能の持ち主が支えている(考えてみれば『ドラゴンクエスト』での鳥山明氏とすぎやまこういち氏と同様の構図だ)。
これは、やっぱり“幸せなリメイク”と言っていいだろう。
もちろん最後まで遊んだわけではない短い試遊時間だったけれど、衝撃の犯人を解き明かすラストシーンまできっとしっかりと作られているんじゃないかなと思える冒頭10分だった。
これで“堀井雄二アドベンチャー三部作”のうち、『ポートピア連続殺人事件』、『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』が現代でも遊びやすくなるわけで、個人的にはあとこれだけ遊んだことがない『軽井沢誘拐案内』も、この流れでリメイクされてほしいと願うばかりだ。
ノベルティグッズにも注目


ちなみに、ブースではファミコンカセット風ペーパークラフトがもらえます。組み立てて遊ぼう!
製品概要
- タイトル:『続ポートピア連続殺人事件:忘却の埋葬』
- メーカー:G-MODE
- 対応ハード:Nintendo Switch 2、Nintendo Switch、PC(Steam)
- 発売日:2027年発売予定
- 価格:価格未定
- ジャンル:アドベンチャー
- 備考:原作・制作総監督 堀井雄二、音楽 清塚信也、キャラクターデザイン 浅野恭司、企画・制作 ORION PROJECT、開発 room6 / ゲームスタジオ、パブリッシャー ジー・モード
















