2026年5月22日~24日にかけて、京都・みやこめっせで開催された日本最大級のインディーゲームの祭典“BitSummit PUNCH”(ビットサミット パンチ)。
先日ゲーム事業に取り組むことを発表した東映がBitSummitに初参加。『KILLA』、『HINO』、『DEBUG NEPHEMEE』の3タイトルをプレイアブルで出展した。ここでは、『HINO』(ヒノ)を紹介しよう。
『ヒノ』は、暗闇が支配する世界で目を覚ました少女“ヒノ”が、冒険していくというアクションゲーム。ヒノは、1本の“電球杖”と、ときおり入手できる武器を手に、正体不明の怪物たちと相対しながら、廃墟となった保育園を進んでいくことになる。
相棒として登場するのが奇妙な生物の“もにもにスケルトン”。“もにもにスケルトン”は、カフェオレ缶をほしがるかわいい存在で、出展されていたバージョンをプレイする限りでは(おそらくは一面?)、どのような活躍をしてくれるかはつまびらかではないが、冒険のよきパートナーとなってくれそう。
試遊バージョンで待っているのはボスキャラとのバトル。当初武器を持っていないヒノは、何度かボスキャラの攻撃を交わすことで武器を入手し、ボスキャラの弱点を攻撃。それを何度かくり返すことでステージクリアーとなる。

本作は、絵師“やたら”氏がボールペンで紡いだヒノたちの世界をゲーム化した一作。会場にて、開発を手掛けるUnGloomStudioのプロデューサーであるAury氏とエンジニア担当のMenchi氏、そして絵師であるやたら氏にお話をうかがうことができた。

Aury氏
UnGloomStudio プロデューサー(写真・中央)
Menchi氏
UnGloomStudio エンジニア(写真・右)
やたら氏
絵師。『HINO』ではグラフィック全般を担当(写真・左)
やたら氏の絵にインスパイアを受けて、世界観やストーリーを構築
――UnGloomStudioはどのようなスタジオなのですか?
Aury
もともとは仲のいい知り合いが集まってできた、6人からなるチームです。『ヒノ』は開発を始めて2年くらいになります。
――『ヒノ』開発の経緯を教えてください。
Aury
本作は、やたらさんが描いたボールペンの絵がベースになっています。その絵がとてもすばらしくて、「ゲーム化したい!」となりました。
やたら
もともと絵を描くのが好きで、SNSなどで投稿していたのですが、その絵を見ていただいて、気に入っていただけたようです。
Aury
ボールペンで描いているのですが、とても繊細なタッチなんです。

――ボールペンの絵をゲームにするというのはたいへんそうですね。
Aury
もともとは一枚絵なのですが、それをパーツ分けして描画して、アニメーション化して……という感じですね。全部アナログの手描きで描いていただいています。いろいろと煩雑なことも発生するので、ちょっと苦戦したりしていますね。
やたら
腕のパーツを作るときに、本当の腕らしく動かすために、パーツごとに分割して作っています。デジタルだと透かしていって……という機能も付いているのですが、アナログだとそういうわけにもいかないので、ふつうに蛍光灯などで2枚の紙を重ねながら差分を描く……ということをしています。
――まさにアナログな作業ですね。
Aury
それをゲームに落とし込んで……という感じです。
やたら
僕はずっとアナログでマンガなどを描いてきたのですが、ゲームもアナログで描いたものをアニメーションに組み込んで作ってもらっているのですが、実際に動きのついたものを見ると、「想像以上にいいものが来たな!」という感じでうれしいですね。
――やたらさんのビジュアルを動かしたいという思いから始まったプロジェクトとのことですが、ゲームとしてどのような感じで構築していったのですか?
Aury
雰囲気が似ている『リトルナイトメア』などを参考に、ちっちゃなキャラクターが、ダークな世界観を歩いていって、巨大な生物から逃れていって、そして最後どうなる……みたいなことを考えていました。
それに加えて、ヒノという赤いリボンをつけた少女と相棒の白いキャラクターの“もにもにスケルトン”がいるのですが、そのふたりが“安息の地を求めて”という設定を考えていきました。ヒノと“もにもにスケルトン”はなぜ安息の地を求めるのか、なぜ怪物がいるのか……。そして、なぜこの暗闇世界になってしまったのか……。そんな謎が最終的には解けるといった世界観とストーリーになっています。

――やたらさんのビジュアルにインスパイアを受けて、世界観やストーリーを作り上げていったのですね。
Aury
そうですね。いろいろとディスカッションしながら作り上げていきました。
やたら
言ってみれば、ゲームを遊んでいただくためのストーリーとなっていまして、僕個人で描いているマンガとは、違った世界観になっていますね。
――マンガはまた、別の世界線なのですね。
やたら
それはもう、完全に僕ひとりだけで考えているストーリーが別にあるのですが、ゲームとは完全に別個でして、ゲームはオリジナルの設定で作っている感じです。
――キャラクターは共通なのですか?
やたら
キャラクターは共通です。ですので、そこが少し、ややこしいところではあります。一部設定が違っていたりとかですね。ゲーム版『ヒノ』というところです。
――ゲーム版にやたらさんが描いたマンガのデジタル版が収録されるなんてことは?
Aury
それはやりたいですね。
――東映ゲームズがパブリッシングを担当しますが、どのような経緯で決まったのですか?
Aury
2025年の冬くらいに東映ゲームズさんからお話をいただいたのですが、その時点で、5~6社のパブリッシャーさんからお声はお掛けいただいていました。
――そうなのですね。
Aury
昨年(2025年)大阪で開催されたゲームイベントに、うちのスタジオとして初めて出展したときに、東映さんに遊びに来ていただいて、「初めてゲーム事業を立ち上げる」といった話をうかがって、なんか、「初めてのチャレンジってすごいな!」と、そこに惹かれまして。それで、東映ゲームズさんにお願いしようと決意しました。
やたら
あの岩にざばーんという、あそこか! みたいな感じでした(笑)。驚きが強かったです。
Menchi
話を聞いている限り、やはり熱量が高かったです。僕たちも高い熱量を持って『ヒノ』の開発にあたっていますが、お互いよい熱量でぶつかっていける。
――いいですね。
Menchi
やり取りを見ていて、「これは、いいものができそうだな」というのが見えてきていますね。
――ちなみに発売時期は?
Aury
本来であれば2026年の冬ごろを目標にしているのですが、もしかしたら少し延びる可能性もあるかもしれません。
Menchi
やはり手描きのイラストの時間がどうしてもかかるんです。
Aury
そうなんです。
Menchi
そこはごまかせないので。
――そうですよね。考えてみると、ゲームに出てくる1枚、1枚のビジュアルをやたらさんがすべて手描きでお描きになっているんですよね。
Aury
とんでもないことをしているんです。
――すごい作業量ですよね。
Aury
作業量が半端ないです。
Menchi
ステージが変わると、すべて別のものを作らないといけないので。

――最後に、今後に向けての抱負をお願いします。
Aury
今回東映さんと組むことになりまして、東映さんも本気ですし、我々も本気で取り組んでいるので、『ヒノ』っていうタイトルを知っている人もご存じでない方も楽しめるようなゲーム作りをしていきたいと思っているので、ぜひ一度手に取って遊んでみてください。
やたら
いままでイラストを見てくださっていた方は、また今度ゲームという新しい体験で、実際に遊ぶことができます。そこに東映さんも入っていただいたので、いい意味でいろいろ想像がつかないことが起こっていきながら開発を進めていくことになると思っています。がんばって開発していきたいなと思っています。
Menchi
まだまだ開発途中で、ぜんぜん調整も足りないというところもあるのですが、よい形で出して、この世界観を味わってもらえたらと思うので、もうしばらくお待ちください。
