なお、本記事では物語のネタバレが一部含まれます。
最初にいくつかあらすじを出してくれるのですが、1作目のときは何度も違うとやり直したんです。というのも僕は1作目を作るときにゲームをそのまま映画化してもおもしろくないと思っていたんです。ゲームは遊ぶからおもしろいわけで、それをそのまま映画の物語にしてもおもしろいものにならないというところからスタートしたのですが、結果的に出来上がったものは、意外とゲームと同じ流れになっていたというのが1作目でした。
そうすると、ゲームと同じ流れなので、1作目はこのキャラクターはこういう人です、キノコ王国とはこういうものですというようなマリオの世界の紹介がメインになってくるんですよね。でも、本作ではそういった紹介は前作で終わっているので、もし本作から見る人がいたとしても楽しめればいいと開き直って、もっとキャラクターたちを描こうと大きな方針が決まりました。
その後、マシューさんから、いくつか提案がありました。たとえば、これは1作目の時点でだいぶ決まっていましたが、ピーチ姫が出生の秘密に興味を持つこと、前作のラストで小さくなったクッパのその後をしっかり描くこと、ヨッシーを登場させることです。あとはこれらをまとめていくのが脚本の作業だったんですけど、すごく楽しくて。
自分の出生の秘密に興味を持ったピーチ姫をマリオはどんな風に気遣ったら、ほどよい恋愛観ができるのかとか。クッパについても、クッパという悪役がいて、その悪役をマリオが倒すという物語ではないと僕はずっと言っているんですよね。僕はキャラクターたちのことをスーパーマリオ劇団と呼んでいるのですが、そこでクッパが悪役をやっているのだけど、劇によってはマリオと友だちになる可能性もあると。だから、完全なヴィランというわけではなく、劇団の中でヴィラン役をやる役者であってほしいと思っています。
ヨッシーについては、映画を作るうえでどうしても出したかったんですけど、1作目で出番がなくて。1作目でもジャングル王国へ向かう旅の途中でヨッシーアイランドを通るときに何匹か登場していて、それを使いたかったので前作のラストに卵で出しました。じゃあ、ニューヨークに残ったヨッシーはどうなったのか。制作中には、ニューヨークでいろいろな事件に巻き込まれるヨッシーだけで1本作ろうかみたいな案もありましたが、いまの形に落ち着きました。
そういったことをマシューさんとやり取りをしながら、1作目で振ったことや、それぞれのキャラクターの役割を任天堂らしく作り込んでいくというのがたくさんあって、すごくおもしろかったです。

だから、ピーチ姫の出自についても詳しくは決めていなかったのですが、いざ映画を作ってみるといろいろと膨らませていくのがおもしろくなってきました。なので、これからは、映画で作った設定も今後のゲームではできるだけ沿っていきたいなと思っています。
――本作には『スターフォックス』のフォックス・マクラウドが登場するということで、とても驚きました。『スーパーマリオ』シリーズ以外の作品のキャラクターを登場させるというのはどのような経緯で決まったのでしょうか? また、宮本さん自身が強く押されたキャラクターがいれば教えてください。
先ほど、マリオたちのことをスーパーマリオ劇団と言いましたが、任天堂のキャラクターたちも任天堂劇団の団員だと思っています。いままでゲームを作っていたときは、ゲームの仕組みをいろいろと考えて、その仕組みにいちばん合った劇団員を使うということをしてきました。なので、仕組みを考える時点では、それが『ゼルダの伝説』になるのか、『スーパーマリオ』になるのか、もしくは新しいキャラクターを使った作品になるのか、わからない状態で開発してきました。
ただ、これから映画に発展していくのであれば、その辺りを少し緩めてもいいんじゃないかと。そうしたときに、今回はギャラクシーなので、ギャラクシーで優秀なパイロットだと、イルミネーションのほうから提案されました。それで「ありかも」と思って、どんな形で出てくるのがうれしいのかいろいろと考えた結果、登場させることになりました。
個人的な推しはピクミンです。いつもは端っこに置いていたんですけど、今回は堂々と真ん中に出てくるので(笑)。これからピクミンは世界中のあちこちに登場するように動いていますので、よろしくお願いします。
――前作の合同インタビューのときと同じく、海外で先行して公開され大ヒットを記録している中で、評論家からは厳しい意見も出ているという状況で、いよいよ日本での公開を迎えますが、改めていまの心境を聞かせてください。
心境としては、昨日のプレミアム試写会でも少しお話ししましたが、3週間先行して公開している海外でこれだけの数字が上がっていますからプレッシャーがあります。しかも日本語版は少し特殊なので。ふつうは英語版を作って各国向けにローカライズするのですが、1作目のときは英語版と日本語版の脚本を同時進行で制作していました。本作では、英語版として完成したものをローカライズではなく、日本語に書き直して日本語版として特別に作っています。なので、これで日本でヒットしなかったら、日本語担当の僕としてはクリスさん(イルミネーション創業者で、本作で宮本氏とともに共同プロデューサーを務めるクリス・メレダンドリ氏)に申し訳ないというプレッシャーです。ただ、観てもらったお客さんの反応を見ていると、マリオが好きな人たちには、しっかりと受け入れてもらっているなと感じています。また、前作を観ていない人でも、映画として楽しんでもらえるものができていると思っているので、そこにも期待しています。

そういう意味で、明確には決まっていないものの、2作目のコアとなるのはギャラクシーだなという予感があったんですけど、脚本家からも2作目はタイトルを『スーパーマリオギャラクシー』にしてはどうかと提案がありました。
僕たちの中では、キノコ王国のマリオはつぎにどっちに展開したらいいのか、はっきり決まっていなかったんですけど、それを聞いて、「そうか、ステージなのか」と。マリオはニューヨークからキノコ王国というステージに行ったんだ。そこにドンキーコングのジャングルを取り込んで、スーパーマリオ劇団としてはいい舞台ができたなと。これをさらに広げるには、横に広がる“オデッセイ”ではなく、縦に広がる“ギャラクシー”だと、すごく腑に落ちて、ギャラクシーでまとめていくことになりました。
ピーチ姫のお話をギャラクシーで広げていけますし、ギャラクシーであれば、世界が広がって、他の作品も全部取り込める。任天堂劇団としてはオールキャストで楽しんでもらえばいいなと。


宮本 先ほどもお話したとおり、クッパはただの悪役ではなく、スーパーマリオ劇団の団員の中で悪役担当というだけなので、かわいいところや許せるところがあってほしいなとずっと思っていました。
そういった物語を描くうえで、前作の最後にクッパが小さくなっているので、すごく相性がよかったです。本作では、マリオたちの仲間になっていっしょに冒険をするけれど、クッパJr.との親子の情で、やっぱり最後は悪役として戻ってくるという物語ができました。本作ではそういった面も描けてうれしかったです。
お気に入りのシーンはたくさんあります。いったん友だちになったマリオたちを裏切るのは、どれぐらい精神的な変化があったらいいのかというところを、親子の情と人形劇で表現したシーンです。人形劇では、最終兵器で宇宙を全部ぶっ壊してやるみたいなとんでもないことを言っているんですけど、それはあくまでベットタイムストーリーとしてできたおとぎ話だったという。その話を聞いていた子ども(クッパJr.)が本当に実現しようとするというのが、荒唐無稽ですごくハマったんですよね。だから、あのシーンの「ドッカーン」とか言っている親子の掛け合いの収録が本当に楽しくて、すごく気に入っています。
もうひとつはクッパJr.がフォックスに負けそうになり、バズーカを出したときにクッパが「そこまですることはないんじゃないか」みたいな感じで止めるところです。クッパは止めようとしているのに、マリオは「あいつ(クッパ)、裏切ったな」みたいに言うんですよね(笑)。このズレがアニメとして程よくズレていていいなと。
それと小さくなったクッパが元の姿に戻るために「俺を殴ってみろ」とマリオに言うシーンもお気に入りです。敵を殴ることが助けになるのというのは、なかなかないことですよね(※クッパが小さくなったのは、マメキノコを食べた影響なので、ダメージを受けることで元の大きさに戻る)。「元の大きさに戻るのであれば、スーパーキノコじゃないとおかしい」というツッコミを受けていたりもするんですけど。それで元に戻ったクッパがマリオに逆襲するのかと思ったら、キスをするという……あのシーンは序盤から盛り上がって、作っていて楽しかったですね。
さらにもうひとつお気に入りなのは、凶悪な敵やヴィランを倒しにいくという物語ですが、筆から生まれたとあるキャラクター以外は、誰もやられていないんですよね。それがマリオらしくていいなと思いました。


それと映画は小さいユニットで作っているんですよね。たとえば、3分の映像が30パーツ集まると、90分になりますよね。その90分を差し替えながら作っていきます。そこからは僕の作りかたとすごく似ていて、ほとんど作ったものを捨てないんです。たまに並べ替えがあったりはしますが、あまり無駄なものは作らず、ほんとに密度高く作り込むというのがイルミネーションのテクニックで。
上映時間については、たとえば子どもを映画に連れて行ったときに、子どもよりも親が感動して、逆に子どもが走り回ったりしないような、大人も子どもも誰もが楽しめる作品を作りたいとずっと思ってきたので、息をつかせる暇なく、バーっと行って90分で終わるような作品にしようと決めていました。
――作品を見たときの印象と、ゲームとは違う映画ならではの表現ができたと感じた部分があれば教えてください。
ただ、やっぱりゲームと同じで、完成度が7割くらいの時点でほぼ完成するなと。それはクリスさんも同じだったようで、「これはいける」と思うタイミングがけっこう同じだったことがありました。
映画ならではの表現についてはいっぱいあります。ゲームは期待通りのリアクションじゃないと、とんでもない方向に行ってしまいますよね。でも、映画はそうではなく、まったく裏切ることなく展開することができます。それがすごくて、いちばん楽しいところだと思います。
あとは、セリフである程度、心情が語れるということがあります。たとえば、ピーチ姫がマリオのことを呼んで、マリオが走っていて、ピーチ姫がハグをしようとしているのにマリオが握手しようとするシーンがありますが、あのシーンはゲームでは絶対にできないんですよ、握手をしようとした後の気まずさを表すのに、「ちょっと遠慮したのかな?」というような表現というのはゲームではやらないので。そういう絵を見ながら、ベストのセリフを考えるというのはすごく楽しかったです。
――完成した作品を初めて観たときはいかがでしたか?
作品情報
- 作品名:ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー
- 公開日:2026年4月24日(金)より全国ロードショー
- 配給:東宝東和
[2026年4月28日22時40分追記]
物語のネタバレが含まれていた部分のインタビュー内容を追記しました。

















