映画『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』宮本茂氏インタビュー。「40年間作ってきたものの思い出が蘇った」

映画『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』宮本茂氏インタビュー。「40年間作ってきたものの思い出が蘇った」
 2026年4月24日より全国公開予定の映画『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』。日本に先駆け公開されている北米を含む多数の地域での累計興行成績が747477060ドル(約1188億4885万円)を記録するなど、大きな話題を呼んでいる。
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 そんな同作の日本公開を直前に控えたタイミングで、マリオの生みの親であり、本作ではイルミネーション創業者のクリス・メレダンドリ氏とともに共同プロデューサーを務める、宮本茂氏の合同インタビューが実施された。本記事では、その模様をお届けする。

 
なお、本記事では物語のネタバレは極力避けているものの、一部触れている部分もあるため、その点は注意してほしい。
映画『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』宮本茂氏インタビュー。「40年間作ってきたものの思い出が蘇った」
――映画を拝見させていただきましたが、本作は冒頭からフルスロットルで、前作以上に物語が大きく動き出したという印象を受けました。主人公のマリオはもちろん、ほかのキャラクターたちにもそれぞれのエピソードがありつつ、最後に集結していく、ある意味群像劇なような感覚があったのですが、この物語の展開や脚本の見せかたみたいなものは、どのように決まっていったのでしょうか?

宮本
 スタッフクレジットを見ると、脚本家の欄に僕の知らない人もいたりするくらい多くの人が関わっているのですが、メインの作家のマシューさん(マシュー・フォーゲル氏)という方がいます。マシューさんとは、前作のときに6年近くやり取りをしました。

 最初にいくつかあらすじを出してくれるのですが、1作目のときは何度も違うとやり直したんです。というのも僕は1作目を作るときにゲームをそのまま映画化してもおもしろくないと思っていたんです。ゲームは遊ぶからおもしろいわけで、それをそのまま映画の物語にしてもおもしろいものにならないというところからスタートしたのですが、結果的に出来上がったものは、意外とゲームと同じ流れになっていたというのが1作目でした。

 そうすると、ゲームと同じ流れなので、1作目はこのキャラクターはこういう人です、キノコ王国とはこういうものですというようなマリオの世界の紹介がメインになってくるんですよね。でも、本作ではそういった紹介は前作で終わっているので、もし本作から見る人がいたとしても楽しめればいいと開き直って、もっとキャラクターたちを描こうと大きな方針が決まりました。

 その後、マシューさんから、いくつか提案がありました。たとえば、これは1作目の時点でだいぶ決まっていましたが、ピーチ姫が出生の秘密に興味を持つこと、前作のラストで小さくなったクッパのその後をしっかり描くこと、ヨッシーを登場させることです。あとはこれらをまとめていくのが脚本の作業だったんですけど、すごく楽しくて。

 自分の出生の秘密に興味を持ったピーチ姫をマリオはどんな風に気遣ったら、ほどよい恋愛観ができるのかとか。クッパについても、クッパという悪役がいて、その悪役をマリオが倒すという物語ではないと僕はずっと言っているんですよね。僕はキャラクターたちのことをスーパーマリオ劇団と呼んでいるのですが、そこでクッパが悪役をやっているのだけど、劇によってはマリオと友だちになる可能性もあると。だから、完全なヴィランというわけではなく、劇団の中でヴィラン役をやる役者であってほしいと思っています。

 ヨッシーについては、映画を作るうえでどうしても出したかったんですけど、1作目で出番がなくて。1作目でもジャングル王国へ向かう旅の途中でヨッシーアイランドを通るときに何匹か登場していて、それを使いたかったので前作のラストに卵で出しました。じゃあ、ニューヨークに残ったヨッシーはどうなったのか。制作中には、ニューヨークでいろいろな事件に巻き込まれるヨッシーだけで1本作ろうかみたいな案もありましたが、いまの形に落ち着きました。

 そういったことをマシューさんとやり取りをしながら、1作目で振ったことや、それぞれのキャラクターの役割を任天堂らしく作り込んでいくというのがたくさんあって、すごくおもしろかったです。
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――本作には『スターフォックス』のフォックス・マクラウドが登場するということで、とても驚きました。『スーパーマリオ』シリーズ以外の作品のキャラクターを登場させるというのはどのような経緯で決まったのでしょうか? また、宮本さん自身が強く押されたキャラクターがいれば教えてください。

宮本
 これまでゲームでは、異なる作品のキャラクターは混ぜないということをけっこう厳しく決めていました。ただ、『スマブラ』(大乱闘スマッシュブラザーズ)を作るときに「仕方がない」となったのですが、あれはあくまで任天堂のキャラクターがいっぱい入っているおもちゃ箱があって、よく見るともともとは人形という設定なんですよね。だから、『スマブラ』では混在してもオーケーということにしてきました。あと、もうひとつ『ピクミン』を作っているときに、ピクミンだけは例外としてどのキャラクターと混在してもいいということにしようと決めました。

 先ほど、マリオたちのことをスーパーマリオ劇団と言いましたが、任天堂のキャラクターたちも任天堂劇団の団員だと思っています。いままでゲームを作っていたときは、ゲームの仕組みをいろいろと考えて、その仕組みにいちばん合った劇団員を使うということをしてきました。なので、仕組みを考える時点では、それが『
ゼルダの伝説』になるのか、『スーパーマリオ』になるのか、もしくは新しいキャラクターを使った作品になるのか、わからない状態で開発してきました。

 ただ、これから映画に発展していくのであれば、その辺りを少し緩めてもいいんじゃないかと。そうしたときに、今回はギャラクシーなので、ギャラクシーで優秀なパイロットだと、イルミネーションのほうから提案されました。それで「ありかも」と思って、どんな形で出てくるのがうれしいのかいろいろと考えた結果、登場させることになりました。

 個人的な推しはピクミンです。いつもは端っこに置いていたんですけど、今回は堂々と真ん中に出てくるので(笑)。これからピクミンは世界中のあちこちに登場するように動いていますので、よろしくお願いします。

――前作の合同インタビューのときと同じく、海外で先行して公開され大ヒットを記録している中で、評論家からは厳しい意見も出ているという状況で、いよいよ日本での公開を迎えますが、改めていまの心境を聞かせてください。

宮本
 確かに状況がとても似ていますね。じつは前作の評論家の方たちの意見は一理あるなと思っていたんです。ただ、今回は違うだろうと思っていたら、前回よりも厳しくて。 映画業界をもっともっと盛り上げようと思って、他ジャンルから入ってきてがんばっているのに、映画業界を盛り上げる人たちが消極的だったというのは、とても不思議ではあるんですけれども。

 心境としては、昨日のプレミアム試写会でも少しお話ししましたが、3週間先行して公開している海外でこれだけの数字が上がっていますからプレッシャーがあります。しかも日本語版は少し特殊なので。ふつうは英語版を作って各国向けにローカライズするのですが、1作目のときは英語版と日本語版の脚本を同時進行で制作していました。本作では、英語版として完成したものをローカライズではなく、日本語に書き直して日本語版として特別に作っています。なので、これで日本でヒットしなかったら、日本語担当の僕としてはクリスさん(イルミネーション創業者で、本作で宮本氏とともに共同プロデューサーを務めるクリス・メレダンドリ氏)に申し訳ないというプレッシャーです。ただ、観てもらったお客さんの反応を見ていると、マリオが好きな人たちには、しっかりと受け入れてもらっているなと感じています。また、前作を観ていない人でも、映画として楽しんでもらえるものができていると思っているので、そこにも期待しています。
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――昨日のプレミアム試写会でも少しお話しされていましたが、本作には『スーパーマリオ』シリーズのさまざまな作品の要素が詰め込まれています。そんな中でタイトルや物語のメイン要素として『スーパーマリオギャラクシー』を採用した理由を改めて教えてください。

宮本
 じつは1作目を作っている段階で、なんとなく2作目は「ギャラクシーだよね?」という雰囲気がありました。ただ、その時点では『ギャラクシー』をベースにしようというところまでは決まっていなくて。「ピーチ姫はどこから(キノコ王国に)来たのか?」、「ニューヨークから来たのではない」、「じゃあ土管はどこに繋がっているの?」というような会話をしている中で、「おそらく宇宙のどこかですよね」という話が出ました。なので、お気づきの方がいるかもしれないですが、1作目でピーチ姫が空を見て、ギャラクシーのことをチラッと言っているんですよね。

 そういう意味で、明確には決まっていないものの、2作目のコアとなるのはギャラクシーだなという予感があったんですけど、脚本家からも2作目はタイトルを『
スーパーマリオギャラクシー』にしてはどうかと提案がありました。

 僕たちの中では、キノコ王国のマリオはつぎにどっちに展開したらいいのか、はっきり決まっていなかったんですけど、それを聞いて、「そうか、ステージなのか」と。マリオはニューヨークからキノコ王国というステージに行ったんだ。そこにドンキーコングのジャングルを取り込んで、スーパーマリオ劇団としてはいい舞台ができたなと。これをさらに広げるには、横に広がる“オデッセイ”ではなく、縦に広がる“ギャラクシー”だと、すごく腑に落ちて、ギャラクシーでまとめていくことになりました。

 ピーチ姫のお話をギャラクシーで広げていけますし、ギャラクシーであれば、世界が広がって、他の作品も全部取り込める。任天堂劇団としてはオールキャストで楽しんでもらえばいいなと。
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――冒頭でクッパは悪役を演じている劇団員というお話もありましたが、本作ではクッパのクッパJr.の登場によって、悪役ではない面も描かれています。家族関係を描くうえで、意識したことやお気に入りのシーンがあれば教えてください。

宮本 先ほどもお話したとおり、クッパはただの悪役ではなく、スーパーマリオ劇団の団員の中で悪役担当というだけなので、かわいいところや許せるところがあってほしいなとずっと思っていました(※以降、物語のネタバレになるため中略。詳細は映画公開後に追記予定)。本作ではそういった面も描けてうれしかったです。
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――本作にも前作に引き続き、小ネタやファンサービスのような要素が多数盛り込まれています。限られた上映時間の中で、そういったネタの取捨選択をどのように行ったのかを教えてください。

宮本
 これはイルミネーションの力ですね。イルミネーションには監督も含めて、僕たちよりも『スーパーマリオ』のことをよく知っている人たちがいるので(笑)。

 それと映画は小さいユニットで作っているんですよね。たとえば、3分の映像が30パーツ集まると、90分になりますよね。その90分を差し替えながら作っていきます。そこからは僕の作りかたとすごく似ていて、ほとんど作ったものを捨てないんです。たまに並べ替えがあったりはしますが、あまり無駄なものは作らず、ほんとに密度高く作り込むというのがイルミネーションのテクニックで。

 上映時間については、たとえば子どもを映画に連れて行ったときに、子どもよりも親が感動して、逆に子どもが走り回ったりしないような、大人も子どもも誰もが楽しめる作品を作りたいとずっと思ってきたので、息をつかせる暇なく、バーっと行って90分で終わるような作品にしようと決めていました。

――作品を見たときの印象と、ゲームとは違う映画ならではの表現ができたと感じた部分があれば教えてください。

宮本
 僕がセミナーとかでゲームデザインの話をするときに、ゲームを作るのでいちばん難しいのは、作っていると客観性がなくなることだと言い続けています。3年間そのゲームの世界にどっぶり入り込んだ人と、初めて遊ぶ人が同じ感覚で遊ぶわけはないので、そこは気を付けましょうと。でも、映画に関して僕は素人なので、観れば観るほど入り込んでしまっていたので、どうやって客観性を保つのかということをすごく意識しました。

 ただ、やっぱりゲームと同じで、完成度が7割くらいの時点でほぼ完成するなと。それはクリスさんも同じだったようで、「これはいける」と思うタイミングがけっこう同じだったことがありました。

 映画ならではの表現についてはいっぱいあります。ゲームは期待通りのリアクションじゃないと、とんでもない方向に行ってしまいますよね。でも、映画はそうではなく、まったく裏切ることなく展開することができます。それがすごくて、いちばん楽しいところだと思います。

 あとは、セリフである程度、心情が語れるということがあります。たとえば、ピーチ姫がマリオのことを呼んで、マリオが走っていて、ピーチ姫がハグをしようとしているのにマリオが握手しようとするシーンがありますが、あのシーンはゲームでは絶対にできないんですよ、握手をしようとした後の気まずさを表すのに、「ちょっと遠慮したのかな?」というような表現というのはゲームではやらないので。そういう絵を見ながら、ベストのセリフを考えるというのはすごく楽しかったです。

――完成した作品を初めて観たときはいかがでしたか?

宮本
 制作中はテレビの画面で見ているので、劇場の大きなスクリーンや音響で観ることというのはほとんどないんですよね。なので、最初に完全な状態で観たときは、手前味噌ですが、けっこう感動しました。目頭が熱くなることはないんですけど、キャラクターが出てくるたびに40年間作ってきたものの思い出みたいものが蘇ってきて、ちょっとうれしいなと思うことがありました。なので、任天堂のゲームを遊んできてくれた人は、それぐらいの思い出があるので、絶対に楽しんでもらえると思います。

作品情報

  • 作品名:ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー
  • 公開日:2026年4月24日(金)より全国ロードショー
  • 配給:東宝東和
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