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『トワと神樹の祈り子たち』レビュー&インタビュー。ひとりでふたりを操作する"わちゃわちゃ感"がユニークな和風ローグライト。豪快なニシキ(声:杉田智和さん)のアクションを極めたい

byジャイアント黒田

『トワと神樹の祈り子たち』レビュー&インタビュー。ひとりでふたりを操作する"わちゃわちゃ感"がユニークな和風ローグライト。豪快なニシキ(声:杉田智和さん)のアクションを極めたい
 2025年9月18日、バンダイナムコエンターテインメントとブラウニーズのタッグが手掛ける、完全新作アクションアドベンチャー『トワと神樹の祈り子たち』(以下、『トワ』)がリリースされる。Nintendo Switch、プレイステーション5(PS5)、Xbox Series X|S、PC(Steam)で発売予定。

 本作は、刀と法術を駆使して敵を殲滅しながらダンジョン最奥部を目指す、見下ろし型のハイスピードアクション。ジャンルはアクションアドベンチャーだが、自動生成されるダンジョンに挑むローグライトの要素も取り入れられている。また、全楽曲をベイシスケイプの崎元仁氏が担当しているのもポイントだ。

 本作の発表に先駆けて、メディア向けの先行プレイ体験会と開発者インタビューが実施された。ゲームの特徴や先行プレイの模様をお届けするとともに、さらにプロデューサー・長岡大祐氏とディレクター・山下修平氏へのインタビューを掲載するので、最後までぜひチェックしてほしい。

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シンジュの里で仲間を鍛えてダンジョンに挑む

 物語の舞台は、大樹のもとに根差す“シンジュ神”を祀る“シンジュの里”。この里には、住民と彼らを見守る不老の神の子“トワ”が平和に暮らしていた。

 しかしある時、はるか遠くの地に住まう神“マガツ”によって世界は少しずつ穢れに侵され始め、その穢れはやがてシンジュの里へと迫っていた。

 ある日、“8人の仲間を集め、シンジュ神から与えられた刀と杖を以てマガツを討つ”という神の啓示を受けたトワは、“祈り子”と呼ばれる仲間とマガツ討伐の旅へと赴くことになる。

 マガツを討伐するためのダンジョンの攻略は、八人の祈り子たちの中から“ツルギ”と“カグラ”という特別な役割を持ったふたりを選んで行う。

 “ツルギ”は、ミツギハライの刀を振るい、先陣を切る祈り子の呼び名でいわゆるアタッカー。刀は特別な加護を受けており、マガツの眷属にダメージを与えられる。また、“カグラ”はカンナギの杖を用い、ケガレを浄化する祈り子の呼び名。マガツ領域に侵攻する際、法術でツルギの戦いを補佐したり、瘴気を浄化したりして戦える場を確保する役目を持つサポーターだ。

 プレイヤーは“ツルギ”を操作し、“カグラ”は自動追従するが、ボタンを切り換えることで“ツルギ”と“カグラ”を同時に操作することも可能。ツルギとカグラの攻撃は分かれており、どちらもプレイヤーが任意に発動できる。“ツルギ”は本差と脇差を持ち換えることで異なるアクションがくり出せるのも特徴だ。
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刀には切れ味が設定されており、片方の刀を使い続けると刀の切れ味が落ちてしまう。切れ味が落ちると攻撃力が下がるので、2本の刀を入れ換えて切れ味を回復させながら戦うのが基本となる。
 また、“ツルギ”は基本攻撃のほかに、素早く前方に移動しながら鞘に収められた刀を一瞬で抜き相手を攻撃する居合攻撃や、“マナ”を消費して放つ強力な必殺攻撃も使用可能。マナのゲージは、敵に攻撃を与えることで増加する。
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 一方の“カグラ”は、里の同上でセットした2種類の法術を使って戦う。敵を攻撃する術だけでなく、“ツルギ”の強化や敵への妨害など、法術の種類はバラエティー豊か。法術は火、水、風、金、土の5種類の属性に分類され、祈り子たちはそのうちふたつの属性を有しており、自分の属性と合った法術のみセットして扱うことができる。
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 拠点となるシンジュの里ではトワを操作し、祈り子たちの能力強化やダンジョン攻略に役立つパッシプスキルの獲得などが行える。また、トワと個性豊かな拠点キャラクターたちが織り成すサイドストーリーも楽しめる。
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 さらに、本作は“マナの返還による時の進行”システムを採用しているのも特徴だ。物語の舞台となるシンジュの里は、マガツの影響によって時が停頓し、一定以上時代が進行しなくなっている。各ダンジョンの最奥に待つマガツの強力な眷属を撃破すると、マガツによって歪められていた理が正され、停頓した時は動き出す。動き出した時は里を発展させ、そこに暮らすキャラクターたちもそれに伴い成長し、老い、世代を変えていく。
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物語のカギを握るトワと8人の祈り子たち

シンジュの守護者・トワ(声:小原好美)
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シンジュの里の守護者。里の発展を見守り、時には助言を行う。里の民とは異なり不老の存在であるが故に、住民との関係はつかずはなれずの絶妙な距離を保っている。ご飯を食べること、お昼寝をすることが好き。シンジュ神からの啓示や里での事件がきっかけで、 祈り子たちを集めマガツ討伐へと向かうことに。

不屈の剣豪・レッカ(声:小清水亜美)
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 シンジュの里にある道場レツビの初代師範。剣術の腕前をとれば右に出る者はいない。刀以外は途端に不器用になり、中でも料理はかなり苦手。トワを強く慕っており、“トワ様親衛隊”なるものを結成している。旅に参加したのも、トワを守るためだそう。

宿怨の漂流者・シギン(声:岡本信彦)
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 シンジュの里とは異なるはるか遠い里の生まれ。そのため習慣や話しかたが独特だが、本人はそのことを気にしている。シンジュの里では食事処に住み込みで働いていた。とくに味付けの手伝いをしていたので料理がとても得意。マガオリに対してとくに深い恨みを持っており、今回の旅に参加することになった。

静寂の研究者・アカズ(声:笠間淳)
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 里にあるレイメイの塔の管理者であるレイリの息子。マガオリの生態研究を担当している。ふだんから研究が好きで、里では塔に籠って本を読みふけったり、実験をしたりしていた。外へ出ない生活を送っていたため虫が嫌いで、運動も苦手。それでも祈り子として旅に参加したのは、マガツという未知の生物に興味が湧いたから。

奇骨な旅人・オリガミ(声:花守ゆみり)
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 長寿の民が暮らしている神秘的なムスヒの里の出身。かつてはそこで長の代理をしていた。カラクリを作ること、それを使ってイタズラをすることが好き。好物は辛い料理。とある呪いについて調査するために旅に参加することに。

徳行の求道者・ニシキ(声:杉田智和)
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 シンジュ神とは別の神であるモニヤ神の信徒。物心ついたころから各地を放浪し人助けをしてきた。善行を行えばいつかモニヤ神に出会える、という言い伝えを信じ マガツ討伐の旅も人助けの一環として参加している。釣りと魚料理が好き。一見、泳ぎが得意そうだがカナヅチ。

猛進する仕事人・ムツミ(声:ファイルーズあい)
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 バンプクの姉。シンジュの里で仕事をいくつも掛け持ちしている働き者。休憩を一切取らず働くので、周囲から心配されている。祈り子の中ではオリガミの次に力持ち。御洒落と温泉が好き。家族を守るために旅に参加している。

老境の熟達者・コロウ(声:釘宮理恵)
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 シンジュの里の長。物事を冷静に判断できる聡明さを持っており、記憶力もよく、昔の記憶も鮮明に覚えている。お茶菓子が好きでよく自室の棚に隠している。幼いアカズの面倒を見ていた時期があり、我が子のように思っている。里を救うために旅に参加した。

目一杯の努力・バンプク(声:集貝はな)
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 ムツミの弟。のんびり屋な性格。料理が得意で、シギンと協力して里の皆によく振舞っていた。食べることも好き。ふだんはなんでも屋さんをしているが、おもな仕事は探し物や壊れた茶碗の修理。旅を経て成長し、大人になるために祈り子になった。

ひとりでふたりのキャラクターを操作する“わちゃわちゃ感”が最高

 体験会では、オリガミやニシキといった一部のキャラクターを操作し、ダンジョンに挑めた。プレイしていちばん印象的だったのは、“ツルギ”と“カグラ”を操作して戦うシステム。カグラはツルギを自動追従するのだが、敵の攻撃をうまく避けないと、カグラだけ攻撃に巻き込まれてしまうことも……。

 慣れるまではちょっと苦労したものの、地面に赤色で表示される敵の攻撃範囲を参考に、カグラもダメージを受けない場所へ回避できるようになると、達成感もひとしだった。回避には手間取ったが、カグラの法術はボタンひとつでくり出せて好印象。こちらはすぐに、ひとりでふたりのキャラクターを操作している一体感を味わえた。

 また、本差と脇差を切り換えて戦うシステムも、気軽に異なるアクションが味わるおいしい作り。切れ味に影響する加護のゲージが、刀を切り換えるだけで瞬時に回復してくれるのもうれしい。残念ながらすべてのキャラクターを操作できなかったが、試遊できた中だと豪快なアクションのニシキの虜に。半魚人のような見た目と杉田智和さんの声もお気に入りなので、発売後はニシキのアクションを極めたい。

 探索では、エリアの敵を一掃してケガレを浄化することで、シンジュ神から授かること ができる“恩寵”システムが特徴的だった。というのも、恩寵はランダムに出現する最大4つの候補の中からひとつを選択する仕様。
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 効果は技や能力の強化など多種多彩で、どれを選ぶかによってその後の探索に大きく影響するはず。高難度の高いダンジョンに挑むときは、出現した恩寵に一喜一憂し、どれを選ぶか頭を悩ませることになりそうだ。
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 なお、体験会ではプレイできなかったが、里の施設では刀を打てるのが楽しみ。設計図画面で刀の形を自由に決められるということで、製品版では見た目はユニークだけど、高性能な愛刀を生み出したい。
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ブラウニーズが手掛ける和風のローグライト作品

 記事の最後に、本作を手掛けるバンダイナムコエンターテインメントの長岡大祐氏とブラウニーズの山下修平氏のインタビューを公開。本作の誕生秘話や開発にかける想いなどをうかがった。

長岡大祐氏ながおか だいすけ

バンダイナムコエンターテインメント所属。本作ではプロデューサーを務める。

山下修平氏やました しゅうへい

ブラウニーズ所属のディレクター。本作には山下氏のやりたいことが詰まっているそう。

複数の企画のいいとこ取りで『トワ』のベースが完成

――本作の企画がスタートした経緯は? また、開発はいつごろスタートしたのでしょうか?

長岡
ブラウニーズさんとは付き合いがありまして、独自の作家性や画作りがとても素敵だなと感じていたので、ぜひオリジナルのゲームをいっしょに開発したいと考えて、山下さんに企画をいくつか出していただいたのがきっかけになります。

山下
企画をお見せしたのは、2021年の年明けでしたっけ……?

――本作のもとになった企画は、いくつか提出された企画の中にあったと?

山下
そうですね。

長岡
ただ、最終的にはいくつかの企画を足して『トワ』が誕生しました。

――ローグライトの要素も最初から考えていたのでしょうか?

山下
いえ、最初は時代が進行していくRPGの企画でした。その企画を長岡さんたちが気に入ってくれたものの、RPGを1本作るとなると、ブラウニーズだけでは体力的にきついなという懸念があって……。そこで別のジャンルを考えることになったのですが、僕がもともとローグライトを好きだったのと、ローグライトならリソースをある程度は抑えるだろうという考えもあり、企画を考え直して提案しました。

 企画が通ったのはよかったのですが、いざ開発がスタートすると、ものすごいボリュームになってしまったのは想定外でしたね。結果的にふつうのRPGを開発するのと変わらなかったという(苦笑)。

――開発を進めるうちに、どんどんボリュームが増えていったのですね。

長岡
ゲームの設計的には、ボリュームを増やさざるを得ない作りでした。

山下
そうですね。最初の企画の名残である、マナの返還による時の進行のシステムを実行しようとすると、どうしてもNPCが必要になってしまうので。

長岡
ダンジョンを攻略するときに、“ツルギ”と“カグラ”という特別な役割を持った2名を選ぶシステムを採用したのも、ボリュームが増える要因のひとつになりました。パートナーを選ぶなら、ちゃんと掛け合いを楽しめるようにしたかったのですが、8人のキャラクターからふたりを選ぶ組み合わせは28通りもあります。

 28通りの組み合わせそれぞれに複数話のエピソードを用意した結果、相当なテキスト量になっちゃいましたね。

山下
RPG1本のボリュームは超えていますね。ダンジョンを進んでいくと、組み合わせごとにイベントが発生するので。

――28通りのイベントが楽しめると。

長岡
はい。キャラクターの会話はかなりのバリエーションを用意しています。

山下
同じキャラクターでも、相手が変わると違う話をするので、会話を通して選んだキャラクターはもちろん、選んでいないメンバーの新たな一面が楽しめるようになっています。

――操作キャラクターを8人にすることは、最初から決めてたのですか?

山下
そうですね。

長岡
初期のころから決めていました。

――操作キャラクターの“ツルギ”と“カグラ”に分けた理由は?

山下
ツルギとカグラに分けるアイデアも、別の企画から持ってきました。見下ろし型のローグライトにすることが決まったときに、カメラ操作に使う右スティックが空いていたので、これを何かの操作に使えないかと相談したことがあって。それで、左スティックでアタッカーのツルギを、右スティックでサポーターのカグラを手動で操作するというアイデアが生まれました。

 ただ、実際に作ってみたところ、多くの開発スタッフから一度にふたりのキャラクターを操作するのはあまりにも難しすぎると言われてしまい……。

長岡
それでカグラはプレイヤーが操作するのではなく、自動追従するようにしました。でも山下さんの粘りもあって、マニュアル操作に切り替えることができる仕様は最後まで残りましたね。切り換えれば右スティックでカグラを操作できます。

――開発スタッフの中には、マニュアル操作でプレイする方もいるのですか?

山下
僕はわりと使っていますが、ふたりを同時に動かすと言うよりも、カグラはオトリや砲台として使うイメージです。カグラで敵を引き付けて適切な場所に配置した後、ツルギでその周囲をぐるぐる回りながら敵を倒すといった感じですね。

――なるほど。

山下
マニュアル操作を残したのにはちゃんと理由もあります。キャラクターが一緒についてくるアクションゲームはパートナーのキャラクターがお荷物扱いになりがちで、仲間を守る護衛ミッションをプレイしている気持ちになるじゃないですか。かといって仲間のHPをゼロにして完全にNPCにしてしまうと、ふたりを選んで操作している気持ちが薄れてしまいますよね。

長岡
カグラを無敵にするかどうかは、本当に悩みました。無敵にしてしまうと、それを利用した攻略方法も生まれてしまうので、それはゲーム体験としてどうなのかなっていうジレンマもあって。それに、いっしょに旅をして戦う仲間として存在が薄れてしまうという懸念もありました。

山下
シナリオでもふたりいっしょに描くことでどちらも好きになってもらいたかったので、ふたり同時に操作できるシステムを残しつつ、カグラの攻撃を自動ではなく、手動で行うように調整しています。

――カグラが自動的に追従してくれるのは、操作が楽になる一方で、ツルギが回避した攻撃に追従してきたカグラが当たってしまうもどかしさも感じましたが……。

長岡
カグラは多少無敵時間をつけるようにしていますが、カグラの動きを考えながら立ち回るようにしてもらえたらと。

山下
カグラがダメージを受けるので、HPをどのように表示するかも悩みましたよね。それぞれ独立して表示させると、仲間としての一体感が薄れてしまうので、独立しているんだけど、1本のバーとして表示することにしました。この表示になることはシナリオでもきちんと説明をしていて、ツルギとカグラは運命共同体で赤い糸で結ばれているから、というフォローをしています。

長岡
ひとりが戦闘不能になっているのに、もうひとりはなんで生きているのという疑問に対しても開発終盤に手を入れた台詞の追加などで、うまくフォローできたかなと思います。

――本差と脇差を切り換えて戦うツルギのアクションも特徴的です。このシステムが生まれた経緯は?

山下
右スティックでもキャラクターを操作したいと考えたときに、カグラの攻撃はR1ボタンに割り振ることにしました。R1ボタンだけでアクションのパターンを増やそうとしたときに、武器を切り換える形がいいかなと考えて、本差と脇差でアクションが変化するようにしました。

――本差と脇差のシステムを実装するにあたって、どのような苦労がありましたか?

山下
苦労というか、切り換えを強制するかどうかの悩みはありましたね。ふたつのアクションを用意しても、どちらか一方のアクションを使って攻撃し続けたいというプレイヤーもいると思います。とはいえ、こちらとしてはどちらのアクションも使ってほしい。そこで、片方の刀を使い続けると刀の“加護”が切れて切れ味が落ちてしまう(※切れ味が落ちると与えるダメージが少なくなる)という仕様を考えて、本差と脇差を切り換えながら遊ぶシステムにしています。

長岡
苦労した点でいうと、キャラクターごとに異なるアクションをふたつずつ考えるのはたいへんでした。キャラクターによっては、モーションを作り直したりもあったり。

山下
当初はどちらもチャージ攻撃のキャラクターもいましたよね。ただ、どちらもチャージ攻撃だと使いづらくて変更しました。

――遠距離攻撃が得意なキャラクターもいるのでしょうか?

山下
ツルギの武器は全員刀ですが、刀を投げて戦うキャラクターもいます。

長岡
自分が敵に向かって飛んでいくアクションのあるキャラクターもいますよね。

山下
あとは、カグラの法術の中に遠距離攻撃も用意しています。

――法術は何種類くらいあるのですか?

長岡
火、水、風、金、土の5つの属性があるので……全部で50種類くらいだと思います。敵に攻撃するだけではなく、ツルギを強化したり、敵を妨害したりすることもできます。

――とくに調整が難しかった法術は?

山下
一定時間、味方を無敵にする法術です。この手の効果は強すぎるか、逆に弱すぎるかのどちらかになりがちなので、バランス調整にはとくに気を配りました。

――バランス調整でいうと、カグラが使える強力な必殺攻撃もたいへんだったのでは?

山下
そうですね。必殺攻撃は、演出の尺の調整も難しかったです。かっこいい演出で盛り上げたい気持ちはありますが、あまりに長すぎると戦闘のテンポを損ねてしまう。最終的に、あっさり目な演出に落ち着きました。

長岡
ただ、レッカの必殺攻撃は山下さんがこだわっていましたよね。必殺攻撃を使うと技名を叫ぶんですよ。

山下
しかも毎回違う技名を叫ぶという(笑)。

――こだわりが強い(笑)。

長岡
レッカはちょっとおバカキャラというか元気のある子なので、この子だけは技名を叫ぶっていう子ネタを用意しています。たしか3、4パターンはあったと思います。

――すべて聞くのが楽しみです! アクションの方向性としては、敵をバッサバッサと斬り捨てるような爽快感を重視したのでしょうか?

山下
そうですね。ローグライトのゲームが増えてきたとはいえ、日本ではまだ一般的に認知度の高いジャンルとはいえません。本作で間口が広がればいいなとは思っているので、序盤はサクサク進めて、終盤はローグライトの歯応えが感じられる難度にしています。

――ゲームの難易度は、いわゆるイージー、ノーマル、ハードから選べたりはするのでしょうか?

長岡
ゲームのモードは、通常とストーリーのふたつを用意しました。ストーリーモードは、戦闘不能になるたびに敵が弱くなっていくので、アクションが苦手な方や初めてローグライトのゲームを遊ぶ方でも楽しんでいただけると思います。

――本作はマルチプレイも楽しめますが、これも初心者救済の施策なのでしょうか。

山下
マルチプレイは、気の合うフレンドと楽しんでほしくて実装しています。

長岡
ツルギとカグラは赤い線でつながっていて、一定範囲から離れることができません。別々の方向に逃げようとすると、赤い線の距離制限で回避できない、なんてこともあって友達どうしで「おい~!」みたいなことも起こり得るんですよね。そんな感じで、強敵と戦ってわちゃわちゃする楽しさを、マルチプレイでは堪能してもらいたいと考えて、オンラインはフレンド限定で遊べるようにしています。

――マルチプレイだと、報酬がよくなるといったメリットは?

山下
マルチプレイでも報酬は変わりません。

長岡
ホスト側に集まってプレイするので、報酬はホストのプレイヤーが受け取ります。

――間口を広げるために、ほかに意識したことは?

山下
シナリオとキャラクターは丁寧に作りました。そこから興味を持ってプレイしてくれる人が増えるとうれしいですね。

和風の世界観やキャラクターの誕生秘話

――和風の世界観を選んだ理由を教えてください。

長岡
企画が立ち上がった当時、ゲームに限らずですが、和物といいますか、とくに海外製のオリエンタルものが受け入れられていました。そこで、ちゃんと日本から和製の和物を作ろうよ、みたいなところがスタートだった気がします。山下さんも、当時は和物をやりたい時期だったみたいで、それもタイミングがよかったですね。

山下
和風のローグライトはあまりないよねっていうのもありました。

――キャラクターデザインも個性的ですが、どのようにイメージを膨らませていったのですか?

山下
シルエットがぜんぜん違うキャラクターをデザインしたいというのがあって。最近のゲームは、モーションを使い回したりする都合上、似たようなシルエットになりがちなので、本作ではでこぼこなキャラクターを作ることは最初から決めていました。それで人間だけではなく、亜人のキャラクターも絶対に登場させたかったんですよ。枠を決めた後、実際にデザイナーさんに描いてもらい、コンペを行って決めていきました。

長岡
枠というのは、キャラクターの属性ですね。お姉さん、ギャル、硬派といった属性がまんべんなく揃っているといいよねってところで、最初に枠を決めました。

山下
いろいろ操作してお気に入りのキャラクターを見つけてもらえたらと思いますが、キャラクターの育成は全員で共有しているポイントを割り振る形で行えます。満遍なく育てられるようにしていますので、ご安心ください。

――ダンジョンのマップのデザインも風光明媚で印象的でした。和風の世界観はどのようにして生み出していったのですか?

山下
グラフィックはブラウニーズが得意としているところなので、デザイナーさんにお任せしています。ブラウニーズに和風のイメージはあまりないと思いますが、本作でも絵本のような温かみのある世界を生み出してくれました。

長岡
コンセプトアートがよかったですよね。

山下
そうですね。デザイナーが描いてくれたコンセプトアートをもとにダンジョンのマップを作ることができたので、マップの方向性を決めることには苦労はありませんでした。

長岡
ちなみに、コンセプトアートはデジタルデラックスエディションのデジタルアートブックに収録されています。

――ダンジョンは、出現する敵の種類が豊富なのも印象に残っています。

長岡
敵は原種が30から40種類、色違いを含めると100種類以上いると思います。

山下
敵の種類は多いですが、初心者でも楽しめるようにザコ敵は戦いやすく調整しています。そのぶん、ボスのAI(人工知能)に力を入れていて、ボス戦では歯応えのあるバトルが堪能できるようにしました。

長岡
ザコ敵との戦闘では、いかにダメージを食らわずに進めるかが重要になりますね。

山下
マップは、一般的なローグライトよりも広めに作っていますので、敵の出現パターンなどはいろいろ工夫していますが、調整していった結果、回避が重要なゲームになりました。

――拠点となるシンジュの里には、いろいろな施設が用意されています。実装するのがとくにたいへんだった施設は?

長岡
刀鍛冶キエンがいちばんたいへんでしたよね。

山下
そうですね。

――刀鍛冶キエンというと、刀の作成や解体が行える施設ですよね?
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長岡
はい。せっかく和の世界観で刀を装備して戦うので、セールスポイントを増やしたくて刀の作成が行える施設も実装したいと考え、とにかく本格的にしよう、と。

山下
それで設計図画面で刀の形を決定し、自分好みの見た目の刀作りを行えるようにしたのですが、めちゃくちゃたいへんでした(苦笑)。

長岡
刀鍛冶を学ぶために、実際に京都まで取材に行ったんですよ。刀鍛冶の工程も学ぶことができたのですが、いざこれをゲームに反映しようとすると、どのような形で落とし込むのがいいのか、考えるのがたいへんで……。

山下
ゲームとしてのおもしろさを考えたときに、そのまま取り入れるのは難しいと考えて、本作では各工程をミニゲームで進行するようにしました。ミニゲームをうまくプレイすると、刀の性能が上昇するシステムも採用しています。

――ちなみに、変な形の刀も作れるんですか?

長岡
もちろん作れますよ。当初は、ある程度は刀の体裁を保つ見た目になるようにしようと考えましたが、せっかく自分で刀を作成するならおもしろいほうがいいよねってことで、かなり変な刀も打てるようにしています。

――刀の見た目は、装備したときに反映されるかどうかも気になります。

長岡
見下ろし型なのでややわかりづらくはありますが、、 装備したときに刀の見た目も反映されるようにしています。ただ、反映されるのはあくまで見た目だけなので、たとえ短い刀を打っても、攻撃判定が短くなるといったことは起きないので安心してください。

山下
見た目を性能まで反映させちゃうと、自由に刀を打てなくなりますからね。

――里の施設を実装するうえで、ほかに苦労した点は?

山下
マナの返還による時の進行ですね。時が経つことで里が発展し、住人たちが成長して世代を変えていくので、NPCの数が増えますし、シナリオや施設の管理などもたいへんでした。

――世代が変わると、施設の内容も変わるのでしょうか? たとえば、成長すると腕が上がるので効果が高くなるけど、老人になると減衰するといった感じで。

長岡
施設の効果は変わりませんが、時代の進行に応じて新しくできる施設などは存在します。施設にいるキャラクターが変わることで、新しい会話が生まれるといったサイドストーリー面での変化もありますね。

山下
代換わりが起こる施設では、プレイヤーの選択によってどっちを弟子に取るかなど、ストーリーが変化する施設もありますよ。

――自分だけの施設に発展させる楽しみも体験できそうですね。本作の発売を楽しみにしている読者に向けて、メッセージをお願いします。

長岡
バンダイナムコエンターテインメントにとって、ローグライトでオリジナルのタイトルというのは、いい意味でチャレンジングな作品になっています。手前味噌ですが、いろんな属性の方に楽しんでもらえるゲームに仕上がったんじゃないかなと感じているので、こういうアクションをやらない方も、ふだんからローグライトを遊ぶ方も、ぜひ手にとっていただければ。シナリオもゲーム最終版の収録時に僕も思わずうるっときたくらい、しっかりしたものになっているので、最後まで楽しんでいただけるとうれしいです。

山下
ブラウニーズとしても久しぶりのアクションゲームということで、いろいろチャレンジしています。アクションはもちろん、和風のキャラクターやグラフィック、崎元仁さんにお願いした音楽など、僕の好きなものを詰め込みました。自信作ですので、ぜひ遊んでいただければと思います。

シンジュの里で仲間を鍛えてダンジョンに挑む

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