2024年12月29日、スクウェア・エニックスは東京都港区にあるザ・プリンスパークタワー東京にて“ニーア:ディナーショーみたいな何か 12024 ~素敵なお食事と音楽と岡部啓一と愉快な仲間たち~”を開催した。
本イベントは、『ニーア』シリーズのコンポーザーである岡部啓一氏とプロデューサーの齊藤陽介氏やクリエイティブ・ディレクターのヨコオタロウ氏、シニアゲームデザイナーの田浦貴久氏といった“愉快な仲間たち”の軽快なトークやステキな演奏が高級ホテルの食事とともに堪能できるダイニングショー。
エミ・エヴァンスさん(Vocal)
ジュニーク・ニコールさん(Vocal)
本稿では、いつもとは少し大人の雰囲気ではありつつも、『ニーア』らしい、笑いや感動などがギュッと詰まった本イベントのリポートをお届けする。なお、イベントは昼13時からの1stと、夜18時からの2ndの2回行われ、本稿では2ndの模様をお届け。
来場者から「次回作はいつ出ますか?」とド直球の質問も
ディナーショーは18時の受付開始から食事が始まり、食事を楽しみながら19時からは齊藤氏、ヨコオ氏、田浦氏、岡部氏によるトーク(60分予定)、20時からはライブ(90分予定)といったスケジュールとなっていたが、トークの前にヨコオ氏と齊藤氏、田浦氏が登場。
ヨコオ氏が前説を務め、齊藤氏と田浦氏がテーブルを回ってアメを配り、ディナーショーという高級感があり少し緊張感も漂う会場の空気をほぐしていった。
質問コーナーではヨルハ十号H型(通称10H。『NieR Re[in]carnation』や小説『NieR:Automata 短イ話』の短編小説『静カスギル海』に登場)が好きだという来場者からの質問があり、関係者席に座っていた廣江聡太郎氏(『NieR Re[in]carnation』第3部“ヒトと世界の物語”のリードシナリオライター)が、突然、回答者として指名され戸惑いつつも「10Hはいつか(何らかの形で)出します!」と明言し、会場を湧かせた。
そのほかの質問では「次回作はいつ出ますか?」とド直球の質問が(来場者からも大きな拍手)。ヨコオ氏は「何かしらは作っていますが、皆さんもおわかりのように、僕は皆さんが期待するものをやらないので、(ファンの期待とは)ぜんぜん違うものをやってると思います」と回答。発表までは「まだちょっとお時間はいただきそう」とのことなので、のんびり待とう。
“世界のOKABE”が円卓を回りながら『マイウェイ』を熱唱
会場の暖機運転のわりには大いに盛り上がった前説の後は、サプライズとして安元洋貴さん(ポッド042役)をMCに招いてのトークパート。
「いちばん高い席の金を払うから、いちばん安い席で見させてくれと頼んだら、(来るんだったら)ステージに上がれって言われました」(安元さん)
さっそく今回の主役とも言える岡部氏が満を持して呼び込まれると、会場が暗転。聴き覚えのあるのイントロが流れ、スポットライトを浴びた岡部氏が往年の名曲『マイ・ウェイ』を歌いながら登場するというサプライズに会場は大盛り上がり。岡部氏は大物歌手さながらに観客が座っている円卓をひとつひとつ回り、観客に握手をしたり手を振ったりしながら『マイ・ウェイ』を熱唱。ノリノリでフルコーラス歌い切り、万雷の拍手を浴びている姿はまさに“世界のOKABE”。歓声がひと段落し、岡部氏が「素敵なお食事と私の美しい音楽で楽しんでまいりましょう」と挨拶すると、さらにひと際大きな歓声が。皆さん、お酒も入ってテンション高め。
齊藤氏、ヨコオ氏、田浦氏がステージに合流したトークパートでは、来場者だけに配られた小冊子“ニーアノキョウカショ”(しかも1stと2ndでは一部内容が異なるという凝りよう)をもとにトークが行われた。
この“ニーアノキョウカショ”は貴重な資料やプライベート写真で構成されており、中身の撮影はNG、一部ページはトーク内容の公開もNGという、来場者だけ知ることができた開発秘話満載のものとなっていたので、リポートは割愛。参加した人だけの秘密とさせていただく。
トークコーナーでは貴重なサイン入りグッズがもらえるプレゼント抽選会も。
『ニーア』楽曲のエモーショナルな部分がジャズアレンジでさらに増幅
ディナーやお酒も進み、お待ちかねのライブはディナーショーという大人向けのイベントということもあり、大人っぽいジャズアレンジ。「ふだんのコンサートでは原曲に沿った方向性のアレンジが多いんですけど、今回はディナーショーっぽく、ブラスを派手に出すアレンジにしていただいた」(岡部氏)という。
そんなジャズアレンジは伊賀拓郎氏(Piano)が全体の方向性を決め、木村将司氏(Bass)が全体の構成、半田信英氏(Trombone)がブラスセクションのアレンジなどを考えるなど、3人でそれぞれ役割分担して手掛けたとのこと。
伊賀拓郎氏(Piano)
木村将司氏(Bass)
画面左から半田信英氏(Trombone)、真砂陽地氏(Trumpet)、陸悠氏(Sax)。ちなみに真砂氏は、1stと2ndの合閒に『NieR:Automata』に興味が湧いてプレイしてみたというこぼれ話も。なぜかハードモードでプレイして「難しかった」とのこと。ノーマルでぜひ。。。
メロディアスで儚げな曲が多い『ニーア』の楽曲だが、ジャズアレンジとの相性はどうなのかと思っていたのだが、これがなかなか……いやかなりイイ! ふだんジャズはあまり聴かない筆者だが、お洒落で大人な雰囲気により気持ちが高揚するのはもちろん、聴き慣れた『ニーア』の静かめの曲もジャズ独特のリズムやハーモニーでアレンジされることにより、オリジナルとはまた違った魅力が感じられた。
全12曲の中には原曲のイメージに近いアレンジの曲、原曲から大きく変えたアレンジの曲もあり、『Inori - 祈リ』などボーカルをじっくり聴きたい曲は原曲寄り、一方で『光ノ風吹ク丘』などは聴き慣れたメロディーはありつつも大胆にアレンジ。『美シキ歌』は何ともムーディーな曲に仕上がっていたりと、ジャズアレンジの変化がどの曲も楽しい。
また、これまで『ニーア』のコンサートといえばシーンと聴き入る、といった緊張感すら感じる雰囲気になりがちだったが、今回はジャズのリズムに観客も乗せられかなりフランクな空気感。観客との距離も近くボーカルのエミ・エヴァンスさん、ジュニーク・ニコールさんもリラックスして歌えてそうだったのも印象的だった。
ボーカル担当のEmi Evansさん(画面左)とJ'Nique Nicole(画面右)。奥はドラム担当の髭白健さん。
2025年は『ニーア』シリーズ誕生15周年
今回のイベントは、オーケストラのような大規模編成ではない、2019年5月に開催された“Billboard Live meets NieR Music”のような小編成なものをできれば、ということで企画がスタートし、ディナーショーという形に着地したとのことだが、具体的に進めていくとチケット料金は最安でもA席の30800円という「引くくらいのチケット料金に」(岡部氏)になり、トークパートなどライブ以外のところにも力を入れたという。
トークライブ以外にも、開場時に齊藤氏と田浦氏が来場者の案内役をしていたり、世界のOKABEになれるフォトスポットも用意されたり、会場内で来場者と触れ合ったりと“来た人を楽しませよう”という『ニーア』らしいおもてなし感がそこかしこに感じられた本イベント。
2025年は『ニーア』シリーズ誕生から15周年。今回のイベントのような『ニーア』らしい、笑いや感動が味わえる催しの開催に期待!
<セットリスト>
- M01 ヨナ~Ashes of Dreams
- M02 還ラナイ声
- M03 光ノ風吹ク丘
- M04 遺サレタ場所
- M05 Inori - 祈リ
- M06 美シキ歌
- M07 イニシエノウタ
- M08 「塔」
- M09 エミール
- M10 カイネ
【アンコール】
- M11 泡沫ノ言葉/家族
- M12 Weight of the World