
本講演を行ったのはスクウェア・エニックスの青野百花氏。『ファイナルファンタジーXVI』(以下、『FF16』)のユーザーインターフェイス&ロアセクションでアクティブタイムロア、ヴィヴィアンレポート、ハルポクラテスの備忘録などを約5年にわたり担当した。
アクティブタイムロアとは
まずは『FF16』内に実装された独自のシステムである“アクティブタイムロア”の説明からスタート。
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アクティブタイムロアは、『FF16』をプレイ中、ほぼすべてのタイミングで参照可能な用語辞典のような機能。タッチパッドを押すだけで手軽に参照できる。
表示される内容はプレイヤーがゲームを進めていくに従って変化し、人名や地名、固有のモンスター名や作中の事件名などが登場した際に開くと、自動で重要なロア(※)が表示される、“かゆいところに手が届く”という便利な機能だ。
アクティブタイムロアはオプション機能であり、確認せずにプレイを続けることもできる。その場合は、カットシーンやゲームの進行中に更新された情報を、別のUI(ユーザーインターフェイス)で後から確認することも可能だ。
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実際のところ、アクティブタイムロアは、ゲームの本筋とはそう関わらない(見ずともクリアーできる)サポート機能で、「私を含むごく少数のメンバーによってひっそりと開発されました」と語る。
しかし、体験版がリリースされ、メディアがレビューを始めると、突如注目を集めた。予想よりもはるかに多くのプレイヤーやレビュアーからポジティブな反応やレビューが集まったのだそう。「開発に関われて私はとてもラッキーでした(笑)」と青野氏は語った。
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アクティブタイムロアの開発過程
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まず示されたのは、アクティブタイムロアが完成するまでの開発スケジュール。
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アクティブタイムロアの開発は2020年7月に開始され、コンセプトの決定からモックアップ(模型)の作成、実装、調整やビジュアルの向上、QA(クオリティアシュアランス/品質保証)、ローカライズなど長時間をかけたことが示されている。
開発チームはいくつかのUIを同時進行で開発していたため、長い時間が掛かったとのこと。
『FF16』開発初期には、リリースされた製品版に較べてごく限られた機能しかなく、当然用語解説にフォーカスしたシステムもなかった。
製品版では、過去に関わった人たちから届く“手紙”システムだが、開発初期には手紙でロア解説を行おうという意図があり重きを置かれていたという。クエストでもいくつかのものは、ロアの理解を深めることを目的にデザインされていた。しかし、ほとんどのクエストやシステムは、バトルやストーリーなどほかの要素にフォーカスしていたという。
開発が進み、チームはある問題に気づき始めた。それは“ロアをすべて理解することはプレイヤーにとって難しく、そのことがプレイヤーのゲーム体験を妨げてしまう可能性がある”という問題だ。
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例示されたのはプロローグで登場するニサ峡谷のバトルシーン。
スタッフにもシーンのディテールの理解に苦労をしている人たちがおり、青野氏はしばしば質問を受けていたという。
このシーンでは、4カ国の人々が入り乱れ、真の目的を隠したまま振る舞う登場人物も存在。ゲーム全体の中でも「バックグラウンドを理解するのがもっとも難しいシーンです」と青野氏。
利害関係者が多く、政治的関係も複雑で、新しい名前もいくつも出てきて、非常に複雑なシーンだった。たくさんの人が「無理! わからない!」となってしまった。しかし、独自の用語はその世界を表現するためのものでもあり、これらの用語を理解するのはプレイヤーがゲームをより楽しむために必要なことだと考えられたそう。
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そして2020年、プロデューサーの指令を受けロアシステムのデザインが開始される。
『FF16』チームに参加する前、青野氏は別のプロジェクトで上司とともにロアに特化したUIのデザインを行なっていた。そこではすでにキャラクターチャートやシチュエーションマップ、ロアディクショナリ(辞典)のコンセプトが考え出されており、“アクティブタイムロア”というアイデアはその時点ではまだ生まれていなかったが、新しいロアシステムの雛形はできていた。
また、当初はサポートスタッフとして『FF16』開発に参加していた青野氏にとっても、「これはチャンスだ!」と感じたのだという。
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どのようなコンセプトに?
しかし、アクティブタイムロアシステムのアイデアはすぐには生まれなかった。
先ほど挙げたニサ峡谷のようなケースは、どんなUIのロアシステムが必要か考える際にいい例となったとのこと。
ニサ峡谷から考え出される必要な機能として、まずは、複数の国々の地理と戦争状態がわかるマップがあるといいとアイデアが出された。さらに、誰がどの派閥に属しているかがわかるキャラクター解説。それから、ロアの歴史とキャラクターがよく使う独特な用語を理解するためのディクショナリ(辞典)……こういったものが必要だと実感できた。
『FF16』に必要なロアシステムは、かつて参加していたプロジェクトと基本的に共通するもの、UIのコンセプトのいくつかは『FF16』でも使える……と、青野氏は考えたのだという。それらのコンセプトから、シチュエーションマップやキャラクターチャート、ロアディクショナリはヴィヴィアンレポート、ハルポクラテスの備忘録という形に変化を遂げ実装されることとなった。
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続いて、個別のシステムについて紹介された。
シチュエーションマップ
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とくに必要だと考えられたのが地図方式のUI。
中でも、このもっとも難しいニサ渓谷のパートにおいては、ヴァリスゼアの“シチュエーションマップ”が必要だと考えたという。シチュエーションマップには、土地の情報とともに、どの軍が関わっているのか、クライヴは何をしたのか、ということが表示されている。
このマップは「歴史の教科書で見た地図をイメージしてデザインした」とのことで、さらにウェブマップのように、プレイヤーがアクセスできるインタラクティブなマップにしたらおもしろいだろうと考えて作ったのだという。
プレイヤーはヴァリスゼアと、それぞれの国々やエリアの地理を知ることができ、クライヴの旅路とストーリーの進行とともにマップはアップデートされていく。旅のルートとともに各国の軍の動きを表示することで、プレイヤーに、ストーリーと政治情勢両方の理解を深めてもらうのが狙いだったという。
青野氏たちはさらに、動画を作ってヴァリスゼアの過去の状況を説明。動画は、詳細な歴史を見わたせる内容となっており、これは「歴史ものやファンタジーのドラマや映画の冒頭に流れるイントロ部分のようなもの」だと解説された。また、これらの情報はゲーム内ではヴィヴィアンによって語られる形となっている。
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キャラクターチャート
これもシチュエーションマップと同様、コンセプトは別タイトルの開発時から考えられていたものだという。
ヴァリスゼアにはいくつかの国があり、キャラクターの中には、国から国へと協力関係を築きわたり歩いたり、後から所属先を明かすスパイのような人物も存在。キャラクターチャートはそういった複雑な関係性を簡単に説明するために考えられた。
線のつながりを見ることで、プレイヤーは詳細な解説を読まなくても、視覚的にキャラクターどうしの相関関係を把握できる。
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シチュエーションマップとキャラクターチャートでは、アイコンを選択することで、キャラクターや場所の詳細情報を見ることができる。
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ディクショナリ(辞書)
辞書は『FF16』に出てくるキャラクーの名前や地名、また、ドミナントやベアラーなどの固有ワードの意味を確認できるもので、ストーリーの進行にともなって収録用語の数が増えていき、最終的には650ページにわたり、450の項目が網羅されているという。
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この辞書にもひと工夫がなされており、辞書のなかにもプレイ可能なコンテンツを含めるため、プレイヤーが秘密の知識を獲得できる特別な項目が設定された。プレイヤーは、コンテンツをすこしずつアンロックしていく。
「新しい形のゲームの標準ディクショナリを作りたい」と願っていた青野氏は、辞書に検索機能やタグとリンク機能を実装した。ライバル視していたのはGoogleやWikipedia、SNSやファンサイトだったと語られた。
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これにより、ウェブサイトのようにキーワードに関連した項目が表示され、プレイヤーは、選択するだけでそれらの関連項目に飛び続けることができる。ストーリーが進行するまで内容は更新されないので、ネタバレを恐れてページをめくるのをためらう必要はないというわけだ。
アクティブタイムロアのコンセプト
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続いて、そ個から生まれた5つのアイデアについて語られた。
アイデア1:いつでもロアをチェックする
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これまでに語られたシステムはロア(用語)を調べたり、読んだりするのがもともと好きなプレイヤーのためにデザインされたもの。
しかし青野氏は、そういったことに興味のないプレイヤーのためにも新しい何かが必要で、「ロア機能の操作性をスマホよりも快適なものにしたい」と考えた。
そこで、ロアメニューにワンタッチでアクセスできるボタン、タッチパッド割り当てられた。
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アイデア2:カットシーンの一時停止
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カットシーン中にも新たな用語は登場する。
その用語をすぐ調べられるなら便利である一方、ドラマチックな演出は中断されてしまう。カットシーンの一時停止を薦めるような仕組みにするのか? ジレンマがあったと語ったが、結果的に、プレイヤーがアクティブタイムロアを開いているあいだもカットシーンが見られる半透明のUIを採用。簡単にカットシーンに戻ることも可能となっている。
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アイデア3:ゲームプレイとカットシーンで知識を収集
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ゲームを進め、クエストをコンプリートし敵を倒すとともに、ロア用語の項目を収集できたらおもしろいと考えた青野氏。
加えて、カットシーンを観ながら知識を獲得するというアイデアが生まれた。
カットシーンの進行とともに新しい知識が追加された場合、通知が表示されタッチパッドを長押しすることで、ロアに関するさらなる情報が得られるようにしたと語る。
開発当初、項目を選択するのではなく、画面の中にポイントと用語を配置し、それらを選択することで詳細を確認できるような形で、よりアクティブなレスポンスをするようにデザインされていたという。
しかし最終的に、このシステムは不採用となった。
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その理由について青野氏は「なぜなら私はテキストアドベンチャーやサウンドノベルなども大好きだからです」と語り、テキストに表示されたマークからTIPSを拾えるようなシステムを希求したという。しかし、結果的にはそのシステムも採用せず。
なぜかと言うと、テキストアドベンチャーと異なり、『FF16』はプレイヤーが字幕OFFに設定ができ、また10以上ある言語へのローカライズの影響も考慮されたためだ。
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最終的には、カットシーンの中で言及されるワードそのものではなく、シーンの中の重要なポイントであるコアキーワードが表示されることになった。タッチパッドを長押しするとメニューが開き、項目のリストが表示される。
「『FF16』には数多くの独特の用語が出てきます。厳選した情報を、アクセスしやすいUIを通して提供することはとても重要でした」と語られた。
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アイデア4:登場人物の情報をリアルタイムで確認
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「いま画面に出ているキャラクターは誰なんだ?」ということをプレイヤーは知りたくなるもの。そう考え、ロア機能は画面上のキャラクターに合わせてリアルタイムに変化するものであることが求められた。
そこで“ワードクラウド”に似たUIが考えられ、じょじょに完成形に近づいていった。
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アイデア5:忙しい人のためのミニ用語ガイド
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「子どものころのように用語集もじっくり楽しみたいのだけど、忙しくてそうもいかない」。そういう社会人プレイヤーの方も多いことだろう。そこで、タッチボタンを長押しして開くことができるミニキーワードメニューが作られた。
とはいえ、青野氏は「ゲームをプレイする時間がないときでも、SNSに何時間も費やしていたりします」とも語る(わかる)。
そこで、アクティブタイムロアに誰もが慣れ親しんだウェブやSNSの中毒性を活用することが考えられた。ワードクラウドやタグ、リンクエリアに加え、SNSでよく使われるレコメンド機能やトレンドなどからもアイデアを得て設計されたという。
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表示される項目の数を限定し、また、それぞれの項目の内容は1ページに収まるように。
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アクティブタイムロアに登場した情報は、後からでも確認できる。
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これらのアイデアがアクティブタイムロアの核を成している。
UIはどうすべきか?
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コンセプトが固まったところで、UIの設計へ。
試作時はさまざまなタイプのUI形式が検討された。
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これらの試作UIは一見、どれも悪くないようにも見えるが、それぞれ弱点があった。
- リストタイプ:ストーリーの進行に合わせて変化はしているように見えず、ある項目がリストから消えたとき、プレイヤーはその理由を理解できず、消えた項目を探す必要がある。
- ホイールタイプ:項目を確認するには便利だが、項目の数が少ないときは見た目のバランスが崩れてしまう。
- ワードクラウドタイプ:最終形に近いが、このUIではプレイヤーはビジュアルから項目を選ぶため、カーソルが何を指しているのかがわかりにくい。
- タイルタイプ:頻繁にパネルが変わるためレイアウトがつぎつぎひっくり返ってしまう。
……と、さまざま考えたものの決め手に欠け、手詰まりになりかけたときに上司から提案されたのが、最終的に決め手となった“金魚すくい”タイプ。
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項目がフロートしながらわずかに移動を続け、プレイヤーはそこにカーソルを合わせて用語を調べていく。
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プレイヤーはすべての金魚をチェックする必要はなく、気になるものだけ“すくって”いけばよい。「金魚すくいUIは、これらの用語が必要に応じて変化していくことを表しています」と、UIの特徴についてまとめた。
UIの方向性が固まったことで、サンプルとして示されたのが以下のプロトタイプだ。
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実装フェーズ
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UIデザインも固まり、いよいよ実装へ。
まずは、アクティブタイムロアにいつアクセスできて、いつできないかを定めるところからスタート。戦闘中やほかのUIを開いているとき以外はあらゆるシチュエーションで開けるように決定した。
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つぎに、“ストーリー進行に応じてリアルタイムで更新されていく便利な用語集”というシステムであるアクティブタイムロアだが、どのタイミングでそれを更新するべきか決めなければならない。
タイミングは、カットシーンの映像ではなく、セリフが表示切替のトリガーとなるように設定したという。それは、アクティブタイムロアのデータ調整がカットシーンに悪影響を与えるリスクを軽減し、その逆もまた防ぐという目的があったとのこと。
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ロアエントリの表示パターンは、どの大きさでどの位置に表示されるか手動でデザインされた。その後、何度もテストプレイをくり返し、いつ何が表示されるべきか設定し、「アクティブタイムロアの個別のユニークな表示パターンは、最終的に2000を超えました」という。
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磨き上げる
当初、セミオートでの情報更新を目論んでいたというアクティブタイムロアだが、実際にプロトタイプを作ってみたもののうまくいかず、最終的には品質向上のために手動入力を行うことにしたという。
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内部開発のため外部のテストプレイヤーからフィードバックを得ることができなかった本システム。しかし、本機能は初めて遊ぶプレイヤーにこそ重要なもの。そこで、アクティブタイムロアの開発に関わっていない同僚やQAチームにお願いして、解説が不足している部分や知りたいと思った用語の解説が出ないとエラーを報告してもらったという。
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ずっと用語を見慣れているだけあって、どのワードやルールが理解しづらいか、ということに気付けなくなるほどにゲームの世界に慣れ親しみすぎてしまう状況に陥りがち。それを避けるため、新しいスタッフの意見を聞く努力をし、「それらの意見は、どんなにシンプルなものでもとても重要でした」と青野氏は語った。
アクティブタイムロアの未来
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講演の結論に向けて、話題はアクティブタイムロアの展望へと移る。
『FF16』のケースにおいて、アクティブタイムロアの自動化は最良の選択ではなかったものの、「データアレンジメントのプロセスを自動化することは制作の苦労を軽減させてくれるでしょう、ぜひそうなってほしい」と、青野氏。
また、今後の改善点として、本開発では、ストーリー部分は日本語から英語に翻訳され、さらにまた日本語に直して調整する工程があったが、ロア用語に関しては日本語への翻訳は省略されたとのことで、それに端を発する不具合も少なからずあったと挙げた。
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講演のまとめ
背景のロアを理解することはストーリーをさらにおもしろくし、忙しい日常の合間でゲームをプレイする場合でも、アクティブタイムロアのような機能はそれを可能にする。ロアはゲームの重要な要素のひとつであり、いい形でロアを紹介することは、プレイヤーの体験を向上させるはずだと、青野氏は語り、本講演のまとめとした。
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Q&A
講演の最後に、聴講者からの質問コーナーがあった。抜粋してお届けしよう。
――『FF16』は非常に複雑なストーリーを持つ作品ですが、あなたはストーリー内容を変更する立場にはあったのでしょうか? それとも、ロアシステムのみに特化していたのでしょうか?
――講演の中で「アクティブタイムロアの制作が自動化されたらいい」という話がありましたが、そのプロセスをどのように行うか、どう達成するか、コンセプトやアイデアはあるでしょうか。
開発初期、プログラムでアクティブタイムロアのパターンを自動的に生成させることを試みました。ですが、ゲームプレイを通してそれをチェックする機能を自動化することは困難でした。なので、設計のラインアップを生成した後に、私たちはみずから手動でチェックしなければいけませんでした。
プログラムを作成したり生成したりすることではなく、システムをチェックするプロセス(のオートメーション化)は、探っていく意義があると思います。もしかしてそのことについて考えるのが、私の今後のタスクかもしれません。
――テストプレイやローンチの段階でどの分野がより多く閲覧されていたかというようなデータを分析したりはしましたか? プレイヤーがロアのどの部分を閲覧していたか、トラッキングしましたか?
――ゲームのUIデザイナーに転身したいと思っているプロダクトデザイナーもしくはUIデザイナーに、何かアドバイスや推奨することはありますか? これからゲーム業界に入ってUIデザイナーとして働きたいと思っている人間に対してです。