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『FFレゾナンス』発売記念インタビュー。「新たなコンソール版『FF』を作る」という意気込みで『FFBE』の物語を徹底的に再構築。メインキャラに込めた想いも訊く【ネタバレあり】

『FFレゾナンス』発売記念インタビュー。「新たなコンソール版『FF』を作る」という意気込みで『FFBE』の物語を徹底的に再構築。メインキャラに込めた想いも訊く【ネタバレあり】
 2026年10月22日(Steam版は10月23日)に発売された、『ファイナルファンタジー』(FF)シリーズ新作となる『ファイナルファンタジーレゾナンス』(FFレゾナンス)。
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 本作は、2015年から2025年まで運営されていたスマートフォン向けタイトル『ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス』(FFBE)のシーズン1のシナリオをベースに、「もし『ファイナルファンタジー』シリーズがドットのまま進化し続けていたら」というテーマで制作された作品だ。

 本記事では、本作のプロデューサー・中島啓輔氏とディレクター・古屋海斗氏のインタビューをお届け。ストーリー、映像、バトル、キャラクターなど、さまざまな観点から、本作へのこだわりをうかがった。なお、
本インタビューは、物語の核心には触れていないものの、ゲーム中盤以降のキャラクターや要素などのネタバレが含まれている。その点を留意したうえで読み進めてほしい。
『FFレゾナンス』発売記念インタビュー。「新たなコンソール版『FF』を作る」という意気込みで『FFBE』の物語を徹底的に再構築。メインキャラに込めた想いも訊く【ネタバレあり】

中島 啓輔氏(なかしま けいすけ)

『FFレゾナンス』プロデューサー。『FFBE』グローバル版アシスタントプロデューサー、『アクトレイザー・ルネサンス』プロデューサーを経て本作を担当。文中は中島。

古屋 海斗氏(ふるや ひろと)

『FFレゾナンス』ディレクター。2022年に発売された『ハーヴェステラ』でディレクションとシナリオを担当した後、本作の開発に携わる。文中は古屋。

「新たなコンソール版『FF』を作る」という気持ちで開発

――まずは、中島さんと古屋さんのこれまでのご経歴と、プレイヤーとしての『FF』シリーズとの関わりをお聞かせください。

中島
 スクウェア・エニックスに入社して10年目になります。最初は『聖剣伝説コレクション』でアシスタントプロデューサー、その後に『FFBE』のグローバル版のアシスタントプロデューサーを2年ほど務めました。以降もいくつかのタイトルでプロデュースを担当して、現在本作のプロデューサーを担当させていただいている、という流れです。

 『FF』との関わりで言うと、最初に触れたゲームが、両親が持っていたスーパーファミコン版の『FF5』でした。当時は自分も幼く、難しくてクリアーできなかったのですが、初めて遊んだゲームのひとつだったこともあり、すごく印象に残っています。ほかには『FF14』や『FF7 リメイク』シリーズ、『FF16』なども遊んでいて、記憶としてはそちらのほうが新しいですね。

古屋
 私は前職でスマートフォン向けRPGのディレクターを務めていました。スクウェア・エニックスに入社してからは『ハーヴェステラ』でディレクションとシナリオを担当し、その後、ディレクターとして本作の制作に参加しています。

 『FF』はどの作品も好きなのですが、とくに
『FF6』が好きですね。演出やセリフ回しがすごく好きで、前職のころは“年末年始になると『FF6』を最初から最後まで通して遊ぶ”というのが、毎年恒例の儀式みたいになっていました(笑)。

――それほど思い入れのあるタイトルだったのですね。

古屋
 いわば、毎年遊んで『FF6』の演出を自分の頭にインストールしていく、といった感じでしょうか。ほかのナンバリングタイトルですと、『FF14』もかなり遊んでいました。フリーカンパニーのマスターをやったり、オフ会に参加したりもしていましたね。

――おふたりとも年齢的には比較的お若いと思いますが、『FF』シリーズ作品には新旧問わず触れてきたのですね。そんなおふたりが担当された『FFレゾナンス』ですが、まずは発売に先駆け、9月に第1章を丸ごと遊べる体験版が配信されました。反響や手応えはいかがでしたか?

中島
 体験版の反響はかなりポジティブに捉えています。具体的な数字はお話しできませんが、ワールドワイドで見ると、ダウンロードしてくださったお客様の数も当初の想定を大きく上回っています。じつは社内では、そもそも体験版を出すべきか、出さざるべきかという議論もありました。それでも配信した理由は、大きくふたつあります。

 ひとつは、お客様に対して誠実でありたいということです。本作はアプリ版の『FFBE』がベースになっていて、少なくともシナリオに関しては完全新作ではありません。ですがタイトルは『FFBE』ではなく
『FFレゾナンス』にしています。よって何も知らないお客様が購入して、「なんだ、『FFBE』じゃないか」となってしまうのは、僕としても申し訳ないと思っていました。そこで、アプリ版とどれだけ違うのかということまで含めて、実際に触っていただくのがいちばんだろうと。

 もうひとつは、「どうせアプリがベースだろう」と思われて手に取っていただけないのが、僕らとしてはいちばん悔しかったのです。そのハードルを越えるには、実際に遊んでいただくのが確実だろうなと。

 お客様の反応を見ていると、そのふたつはどちらも達成できたかなと思っていますので、体験版を出して本当によかったですね。
『FFレゾナンス』発売記念インタビュー。「新たなコンソール版『FF』を作る」という意気込みで『FFBE』の物語を徹底的に再構築。メインキャラに込めた想いも訊く【ネタバレあり】
――古屋さんはいかがですか?

古屋
 本作は“もし『ファイナルファンタジー』がドットのまま進化を遂げていたら”というコンセプトからもわかるように、けっこう尖ったタイトルだと思います。ですので、どう受け入れられるか私はけっこう不安でした。中島は体験版が出る前から「絶対に大丈夫だ」と言っていましたが(笑)。

 いまの『FF』は3Dでどんどん進化しています。その中で、あえていま、この方向へ挑戦する……。僕ら自身はこのゲームのようなプレイ体験が大好きですし、おもしろいと思って作っていましたが、実際にどのくらいの方に受け入れていただけるのかは、出してみるまでわからなかった、というのが正直なところでした。だから、体験版を大勢の方に遊んでいただいて、受け入れていただけたのを見たときは、かなりホッとしましたね。

――実際に遊んでみると、『FFBE』のリメイクというより、完全新作の『FF』を遊んでいるような印象がありました。

中島
 そこはまさに目指していたところです。

――本作の構想は6~7年前、『FFBE』がまだサービス中のころからあったそうですが、どのような経緯で開発が始まったのですか?

中島
 『FFBE』の運営開始から2~3年の段階で、すでにコンソール化できないかという話は出ていたように思います。ただ、なかなか実現に至らず、その後私のほうに「具体的に検討してほしい」という話が来たのがきっかけでした。

 ちなみに当初想定されていたものは現在とはかなり異なり、ピクセルリマスター版『FF』シリーズのような、背景もキャラクターも昔ながらのドット絵で描かれたものを、既存の仕組みや素材を活用しながら比較的コンパクトに作る、という形でした。

――そこから現在の形……グラフィックやシステムを大きく変える形になったと。

中島
 昔ながらのドット絵で『FFBE』の総集編的作品を作るだけですと、どうしても遊んでくださるお客様が限られてしまいます。それに加えて、『FFBE』のお客様が本当に遊びたいのは“総集編”ではないだろうと。僕自身、『FFBE』にはもっと可能性があるだろうと思っていましたし、何年もの開発期間を使ってゲームを制作するのであれば、もっと大きなチャレンジをしたいという気持ちがありました。そういった思いが合わさって、だんだん現在の形になっていったのです。

 もちろん『FFBE』をベースに作るからには、作るべきものがある程度見えていて、場合によっては既存素材も活用できるというメリットがあります。でも、いろいろな要素を作っていくうちに、「ここまで新しくするなら新作を作ったほうがよくない?」という話が出てくるほどになってきて……(笑)。

古屋
 本当に、完全新作を1本作るぐらいたいへんな作業でしたね(笑)。

――『FF』シリーズのスマートフォン作品は複数ありますが、その中で『FFBE』がコンソール化の題材になった理由は何でしょうか?

中島
 『FFBE』は、天野喜孝先生のイラストやクリスタルを巡る新しい物語など、とくに初期『FF』の濃い部分をしっかりと受け継いでいる作品です。さらに過去作の表層をそのままなぞっているだけではなく、『FF』らしいさまざまなエッセンスを盛り込みつつも、『FFBE』独自の物語として昇華しています。そこが、コンソールゲームとして改めて作り直すうえで、大きなポイントでした。
『FFレゾナンス』発売記念インタビュー。「新たなコンソール版『FF』を作る」という意気込みで『FFBE』の物語を徹底的に再構築。メインキャラに込めた想いも訊く【ネタバレあり】
――戦闘をアクション要素のないコマンドバトルにした経緯もお聞かせください。

中島
 昨今の『FF』は3Dアクションの方向に進化しており、ある程度反射神経が求められるゲームが多くなっています。もちろんそれは多くのプレイヤーの方に受け入れられていますが、その一方で、初代『FF』~『FF6』のような、画面全体を把握しやすく、じっくり考えながら遊べる“あのころの『FF』”を求めている方もいるのではないかと。その方々に向けた新作を提案できれば、遊んでいただけるのではないかと思ったのです。

――そんなバトルや物語だけでなく、本作をプレイして驚いたのは、隠し要素や遊びの部分まで含め、昔の『FF』シリーズのエッセンスが多数詰め込まれていることでした。若いスタッフも多いなか、どうやって往年の『FF』らしさを盛り込むことができたのでしょう?

中島
 先ほどのお話と矛盾するようですが、開発チーム全体でまず意識していたのは、「『FFBE』がベースではあるけれど、アプリ版『FFBE』はいったん忘れよう」ということでした。もちろん『FFBE』の魅力的な部分は活かします。でも基本的には「新しいコンソール版『FF』を作るんだ!」という気持ちで作っていました。

 結果的に、皆さんから「『FF』らしい」と言っていただけている部分は、開発チームの各スタッフ自身が『FF』ファンだったことも大きいかなと考えています。開発会社のスタッフにも『FF』が好きな方が多いですし、社内にも過去の『FF』シリーズの制作に携わっていたスタッフがいましたね。

――まさに新旧さまざまな『FF』ファンと、『FF』開発経験者による混合チームだったのですね。

中島
 歴代『FF』キャラクターが多数登場するゲームは、それだけでも開発のハードルが高くなります。それに対し、開発チームは『FF』への愛をもとに、一丸になって「自分たちがおもしろいと思える『FF』を作ろう!」とがんばってくれました。体験版を遊んだお客さまの反応を見ていると、それがちゃんと作品にも出てくれたのかなと思います。
『FFレゾナンス』発売記念インタビュー。「新たなコンソール版『FF』を作る」という意気込みで『FFBE』の物語を徹底的に再構築。メインキャラに込めた想いも訊く【ネタバレあり】
中島氏のノートPCにはサボテンダーのステッカーが。ここにも『FF』愛!
――中島さんは『FFBE』のグローバル版にも携わっていたというお話がありましたが、そのときの海外ユーザーからの反応も今回の開発につながっていますか?

中島
 そうですね。グローバル版がリリースされたころは、自分も海外のイベントなどを回っていました。現地で感じたのは、海外のお客様は本当に熱狂的だということです。もちろん国内の方にも強い熱量がありますが、それを表に出すかどうかという文化の違いもあると思います。海外の方々と直接お話しして、“オールドクラシックな『FF』”は、海外のプレイヤーにも本当に刺さっているんだなと実感しました。

――逆に、海外ならではの違いもありますか?

中島
 あると思います。たとえば『FF』~『FF6』が発売された当時は、地域によって発売されていないナンバリング作品もありました。だから、日本のお客様が「『FF5』っぽい」、「『FF6』っぽい」と感じる部分と、海外のお客様の“クラシックな『FF』”に求めているものは、必ずしもまったく同じではないのです。ですから日本も意識しつつ、海外も意識する……。『FFBE』のグローバル版で各地を回った経験は、そこに活きていると思います。

――ちなみに、海外での体験版の反響はいかがでしたか?

中島
 海外も日本と同等か、それ以上に反響が大きかった印象です。体感にはなりますが、日本と比べると、とくに“ターンベース”であることと、“HD-2Dで描かれた『FF』”であることが強く刺さっているように感じます。また、日本のお客様ほどアプリ版がベースになっていることを気にしておらず、かなりポジティブに受け止めていただいている印象でした。

『FFBE』のエピソードをすべてバラバラにして、コンソールRPGの物語として再構築

――本作のシナリオは『FFBE』のシーズン1がベースになっていますが、かなり大胆に作り直されていますよね。

古屋
 シナリオに関しては本当に苦労しました。『FFBE』はスマートフォンゲームなので、コンソールゲームとはシナリオの作りかたがまったく違うのです。

 最初に開発へ関わることになった際に『FFBE』を改めて遊び直してみたときは、すごくおもしろい物語だなと感じ、「そのままこの物語を導入すればいいのでは」と思っていました。でも実際にコンソールのRPGに入れ込んでみると、どこかチグハグな感じが出てしまうんです。

――そのチグハグ感とは、具体的にどのような部分でしょうか?

古屋
 アプリ版の『FFBE』は、ひとつひとつのシーンを断片的に切り取って見せる作りになっており、その瞬間のレインのモチベーションがどうつながっているかというより、その場その場のドラマがどうおもしろいか、という点が重要になっています。

 これはスマートフォン用ゲームとしては最適なのですが、自分で主人公を動かして、町から町へ移動していくタイプのRPGにすると、「なぜいまここへ行くのか」、「なぜこの事件に関わるのか」という動機が必要になります。ですので、『FFBE』の物語をそのまま入れ込むと、そこがつながっていないように見えてしまうのです。

 さらに、原作シナリオを担当した北島行徳さんは、複数の登場人物をザッピングしながら描く群像劇が非常に得意な方です。『FFBE』もいろいろなキャラクターの視点に切り替わるからこそおもしろい。では、それをレインというひとりの主人公を操作して進むRPGとして、どう落とし込むのか……そこが本作の物語を構築するうえでの、最大のハードルでした。
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――具体的にはどう再構築したのでしょう?

古屋
 北島さんと会議室にこもって、原作にあるすべてのエピソードをいったん書き出して、全部バラバラにしました。

――全部ですか!?

古屋
 全部です(笑)。そこから「このエピソードではこのキャラクターはこういう気持ちだ」、「このエピソードとこのエピソードはつなげられる」、といった議論を重ね、バラバラにしたものをもう一度縫い合わせるような作業をしていきました。ですから物語の順番自体もかなり変えています。

 たとえば体験版で遊べる第1章は、最後に船で出航して終わりますが、原作では、出航するタイミングがまったく違いますし、セイレーンの塔に行くタイミングなども違います。本作では、海が荒れているからセイレーンの塔に行く……といった“RPGとしての手続き”を作り、前もって伏線を置いておく。そして、第1章は最初の大陸からのレインたちが旅立つシーンで締めくくる。それを先に決めて、そこへ向けてすべてを組み直していきました。

――それを第1章だけでなく、第2章以降にも行っていったと。

古屋
 最初から最後まで全部組み直しました。途中で、「これはゼロから書いたほうが楽じゃない?」と思うくらいたいへんでしたね(笑)。

 もちろん、原作の物語に思い入れのある皆さんもいますから、そういった方々を裏切ることはできません。ですから原作を守りつつ完全に新しいものとして作るという作業は本当に悩みましたし、何度も中島に「どこまで変えていいか」と相談しました。でも、結果的に体験版の時点で皆さんに受け入れていただいている大きな理由のひとつは、そこまで作り直したからだと思います。

――『FFBE』を知らなくても遊べることも、相当意識されたのでしょうか。

中島
 そこは必須条件でした。社内でも意識的に『FFBE』を知らない人たちにたくさん遊んでもらい、意見を聞きました。それを踏まえた結果、要所でかなり作り変えていますし、さまざまな追加もしています。
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――原作の『FFBE』運営チームとは、開発中どのように連携していたのでしょうか?

中島
 もちろん社内の近いところにはいましたが、開発中はあえて深く話さないようにしていました。

――それはなぜでしょう?

中島
 『FFBE』ファンの皆さんにも本作を遊んでいただきたいという思いは当然あります。ですが先ほどもお話しした通り、『FFレゾナンス』はコンソールの『FF』シリーズ最新作として作っていきたかったのです。さらに『FFBE』側の運営状況も刻々と変わりますから、それに対し、開発チームがアプリ版の影響を受けすぎないようにしていました。ですから『FFBE』チームと話す必要がある場合は、僕が窓口になることが多かったですね。

 もちろん、世界観や設定に誤りがあってはいけないので、原作のシナリオなどはしっかりと確認しています。

古屋
 すぐ近くに『FFBE』のスタッフがいましたから、新しいクエストや物語を作るときに「この設定で齟齬はないですか?」と聞きに行くことはありました。

――本作は、最初から『FFBE』のシーズン1を1本のゲームとして再構築すると決めていたのでしょうか?

中島
 そうです。そもそもシーズン1のシナリオだけでもかなりのボリュームがあります。それをどう締めくくるのかは難しい課題でしたね。

――開発中にはシーズン2のキャラクターを先行して出す、といった案などもあったのでしょうか?

中島
 結果として、そういうことはしていません。

古屋
 世界観的に無理が出ないように、きちんとシーズン1の中で完結する作品にしています。

――『FFBE』ファンとしては、シーズン2以降のシナリオの展開も気になるところです。『FFレゾナンス』の反響次第で、その先を描く可能性は……?

古屋
 シーズン2は作るのが難しいですね(苦笑)。物語がかなりザッピング形式になっていますから……。

中島
 もちろん、将来的なことはわかりませんが、現時点で明確な予定はありません。まずはシーズン1をベースにした『FFレゾナンス』を楽しんでいただきたい、というのがいちばんの想いです。
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迫力と遊びやすさを両立したHD-2Dでの映像表現。新録された音楽&ボイスのこだわりも

――本作は『FF』シリーズでは初となる“HD-2D”作品となります。映像表現でとくにこだわったところはどこでしょうか?

中島
 『FF』を冠している作品ですから、“新表現への挑戦”は必要だろうと思っていました。それと“映画的なゲーム体験”ですね。とくに重視したのはイベントシーンです。長く『FF』に携わってきた開発スタッフの方から、「『FF』においてイベントシーンはご褒美なんだ」と言われたことがありまして。バトルなどを苦労して乗り越えた先に、きちんと描きこまれたイベントシーンが待っていることがご褒美であると。

 だから本作も、立ち絵とエフェクトと音楽だけでイベントを見せるのではなく、なるべくドット絵のキャラクターにきちんと演技させて、イベントシーンを丁寧かつ派手に描こうと考えました。もちろん、ほかのHD-2D作品と比べたときに、見劣りしないものにしたいという思いもありました。

――そこで生まれたのが、本作独自の“シネマティックピクセル”なのですね。

中島
 そうです。じつは、初期のプロトタイプのころからシネマティックピクセルの原型を作っており、「ドット絵で新しい表現はできないか?」ということを考えていました。

 イベントシーンをドットで描きながら、『FF』らしい“新しさ”も感じてもらいたい。具体的には飛空艇だったり、幻獣だったり、巨大なものが複雑な動きをするところも、新しい表現で見せたかったんです。そこからいろいろと試行錯誤をして、現在の形にたどり着きました。
『FFレゾナンス』発売記念インタビュー。「新たなコンソール版『FF』を作る」という意気込みで『FFBE』の物語を徹底的に再構築。メインキャラに込めた想いも訊く【ネタバレあり】
――オープニングムービーでは、おなじみの外見をした黒魔道士が戦っていたり、魔導アーマーが出てきたりと、『FF』ファンとしては一気に心を掴まれました。

古屋
 じつはあのオープニングについては、開発中はナレーションを入れていなかったんです。「すごい『FF』を作るからとにかくこれを見てくれ!」という感じで、とにかく映像を見せる作りになっていました。しかし社内でその映像を見せたときに、「どういう話なのかわからない」というフィードバックをいただいて、そこでナレーションを入れて、大まかな物語がわかるようにしています。

 ただ一方で、ゲームが始まったときに「これはいったい何なんだろう?」という感覚も『FF』らしさだと考えていました。たとえば『FF6』の冒頭では、魔導アーマーが雪原を歩いているシーンが描かれています。あのシーンだけではどんな物語がよくわからないですが、カッコいいですし、プレイしたときに「これから何が始まるんだろう?」とワクワクしたと思うのです。そういった感覚もしっかりと取り入れようと意識して、わかりやすさとのバランスをとりました。

――カメラアングルもほかのHD-2Dタイトルとはかなり違う印象を受けました。

中島
 HD-2Dタイトルは俯瞰気味のカメラが多いと思います。それに対して本作では、プロトタイプのころからカメラをかなり寝かせていて、背景の迫力が出るようにしていました。グランシェルト城、飛空艇、幻獣のような巨大なものや華やかなものを、きちんと迫力のある絵として見せるためにそうしており、それが『FF』のHD-2D表現としては適しているのではないかと考えたのです。

 ただ、カメラを寝かせると遊びやすさとトレードオフになります。ですので、見せたいシーンではカメラを寄せて寝かせる、探索など遊びやすさが大事な場所では少し引いてカメラを立てるといったように、ギリギリのバランスを攻めながら調整していきました。
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古屋
 3Dゲームのようにカメラを自由に動かす形も試してはいました。ですが、そうするとどうしても遊びづらくなってしまう。それでは本末転倒なので、最終的に“遊びやすくてカッコいい”を目指して調整しました。

――音楽に関しては、『FFBE』の楽曲に加え、『FFレゾナンス』ならではの新曲も多数収録されていますよね。

中島
 本作の楽曲は、上松さん(Elements Garden代表の上松範康氏)やElements Gardenの皆さんにお願いしています。上松さんたちも『FF』が大好きで、できあがった楽曲が本当に素晴らしく、細かく指示を出したことは少なかったですね。

 なお、『FF』はイベントシーンで音楽がどう鳴るかというところも、シリーズらしさが出る部分です。ですので、イベントムービーを見ていただいたうえで、そこに音楽を当ててもらうという作りかたも行いました。

古屋
 実際に映像をお渡しして、それに合わせて曲を作っていただいたシーンがいくつかあります。映像と合わせて作っているので、エフェクトが出るタイミングで音楽のアタックが入る……といったこともしています。ドット絵のゲームでここまでやるのは、けっこう珍しいかもしれません。

――キャラクターのボイスも物語をさらに盛り上げる要素だと感じました。

中島
 メインシナリオのキャラクターボイスは、基本的に新録です。一部のCGムービーでは既存ボイスを活用している部分はありますが、基本的には新しく収録しています。

――ボイスが入ったことで、レインの繊細さなど、テキストだけではわかりづらかった部分も伝わりやすくなったように思いました。

古屋
 キャラクターのお芝居はかなり気を遣っていて、派手な芝居にするというよりも、比較的リアルな感じを意識して演じていただきました。ファンタジー作品ではありますが、感情を一気に大げさに出すのではなく、じっくり出していくようなイメージですね。

中島
 音声制作のスタッフは、アプリ版に関わっていた方にあえてお願いするなど、キャラクター性が崩れないようにしています。原作のことをかなり深く理解している方たちなので、その点でも安心感がありました。
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バトルの“気持ちよさ”は継承。全26体のビジョンは個性を意識

――本作はコマンドバトルがベースです。開発初期には現在とは違うタイムライン型のシステムも検討されていたそうですが、ATB(アクティブタイムバトル)を採用する案はなかったのでしょうか。

中島
 内部で案として出たことはありますが、大きな方向性としてATBは合わないなと思っていました。理由は本作のコンセプトにあって、現代の『FF』はリアルタイム性が高く、反射神経が求められる難しさもあります。だから今回はあくまで、“じっくり考えてプレイできるもの”にしたかったんです。

 もちろんATBにもウェイトモードはありますが、それでも少し忙しい印象があって、今回のコンセプトには合わないかなと。その一方で、もともと『FFBE』にあった“チェイン”(※)を導入するかはすごく悩みましたね。
※『FFBE』にあったバトルシステム。異なるユニットの攻撃が連続してヒットした際に発生し、コンボ数が増えるごとに与えるダメージがアップする。
――『FFBE』のバトルは、チェインをつなぐ爽快感が特徴的でした。やはりそれを大きく変えることには抵抗がありましたか?

中島
 バトルの方向性が固まるまでは、かなり抵抗がありました。ただ、あくまで“コンソールゲームとしてどうするのが最適か”ということを優先して開発を進めた結果、チェインは使わないと決断しました。その代わり、エクストラフェイズで自分たちだけのターンが発生する部分などに、“チェインに負けないぐらい気持ちいい要素”を入れ込もうと考えていきました。

――その気持ちよさの部分を体現しているのが、本作で新たに導入された“ブレイク”だと思います。この仕組みを導入した理由を教えてください。

中島
 ひとつは、これだけ多くのビジョンがいる中で、各ビジョンならではの役割を持たせるためです。さらにもっとも大きな理由は“パッと触ったときの気持ちよさ”です。いまのRPGでは、序盤から爽快感や気持ちよさを体感できることが大切だと思っています。まさにブレイクは、それを早い段階からわかりやすく感じられるシステムとして優秀でした。じつは開発初期のバトルは、もっとベーシックだったのです。
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――通常攻撃とキャラクターごとの特技で戦っていくようなイメージですか?

中島
 そうですね。でも社内のフィードバックで、「アプリ版は最初から歴代『FF』キャラクターがたくさん出てきて派手なのに、こちらは全然派手さが足りない」と言われて……。たしかに『FFBE』ファンも現在のRPGプレイヤーも、序盤からある程度の派手さは求めるだろうと。そういったフィードバックを参考にしつつ、ブレイクを導入して、さらに歴代シリーズのキャラクターが序盤からビジョンとして活躍する現在の形にしました。

――システム自体はシンプルですが、育成が進むとビジョンやアビリティの組み合わせがかなり奥深いと感じました。

古屋
 そこが『FF』の魅力だと思っています。『FF』シリーズには、ジョブをはじめとして、いろいろなカスタマイズ要素や育成システムがありました。「これとこれを組み合わせたらとんでもない効果が生まれそう」と思わせるものがあり、ときにはバランスが壊れそうなくらい強い組み合わせを、ある程度許容してきたシリーズだと思っています。

 だから、本作でもプレイヤーがそういった遊びを楽しめるように意識しました。もちろん、それによってゲーム全体のバランスが完全に崩壊しないようには気を付けています。さらに、しっかりとやり込んだプレイヤーに向けての強敵もちゃんと用意しています。
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――ビジョンのマスタリーランク(MR)を上げて、いろいろなアビリティが組み合わせられるようになると、ビルドを考える楽しさがさらにアップしました。

中島
 そこは意識しました。一方で、わかりやすさにはかなり気を配っており、基本的にひとつのダンジョンにつき、新しい要素をひとつ覚えてもらう、というくらいの感覚で設計しています。いきなりすべての要素を出すとプレイヤーが混乱してしまうので、段階を追って学べるようにしています。

――火や氷などの攻撃の属性についても、最近の『FF』では属性の影響が少ない作品も多かったので、懐かしく感じました。

古屋
 属性という要素は、RPGの中でもかなり直感的なシステムだと考えています。「火の敵なら水が効く」、「氷の敵に対して火は強そう」といったことは、物理現象に近いので、ゲームのルールを知らなくても何となく想像できます。だから本作でも属性をきちんと入れようと考えました。

 たとえばイフリートに挑むなら、戦う前から「水属性の攻撃ができるビジョンを装備しよう」と考えて、実際にそれによって有利にバトルを進められます。本作では、そういうRPGらしい直感も大事にしています。

中島
 『FFBE』のファンの方に話を聞いたときにも、「見た目からなんとなく弱点属性が予想できて、それを突けるのが楽しい」という話がありました。そういうところも意識しています。
『FFレゾナンス』発売記念インタビュー。「新たなコンソール版『FF』を作る」という意気込みで『FFBE』の物語を徹底的に再構築。メインキャラに込めた想いも訊く【ネタバレあり】
――ビジョンは全26体が登場し、バリエーションも豊富です。しかも「全員使えるようにする」というオーダーがあったそうですね。

中島
 そこはバトルディレクターの白神(白神剛志氏)たちが本当にがんばってくれました。あるキャラクターが別のキャラクターの完全な上位互換になるのは避けて、それぞれに意外な使い道がある……。そういうことを大事にしています。

――クラウドならリミットゲージに関するアビリティが多い構成になっているなど、原作のキャラクター性も反映されているのが印象的でした。

中島
 もちろん各作品の監修も受けていますので、原作へのリスペクトは伝わるようにしています。ただ、原作のイメージを守ることを意識しすぎて、『FFレゾナンス』としておもしろくなくなっては意味がありません。ですから変えるべきところは相談したうえで変えています。

――ビジョンのロールを見ると、ヒーラーやジャマーはかなり少ない印象があります。これはあえてそうしたのでしょうか?

古屋
 白神と話したとき、彼は26体すべてを使えるバランスにするために、“どう火力を出すかを考えること”に重きを置いたほうがいいという話をしていました。たとえばバッファーですと、役割としてはすごく重要なのですが、攻撃力や防御力を上げるといった能力から離れづらく、バリエーションを作りにくいのです。だから、本作ではアタッカーやブレイカーの中に、それぞれ異なる“火力の出しかた”を持たせることで、バリエーションを作る方向性にしています。

中島
 また、ゲーム内ではわかりやすさを重視して“アタッカー”と表示していますが、育てていくと複数の役割を持つキャラクターも多いです。アタッカーと書かれているから、攻撃しかできないということではありません。成長するとエンハンサー的な役割を持てるビジョンも登場します。ロールはあくまで、初めて見たときに理解しやすいように、代表的な役割を表示しているというイメージですね。
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物語を彩るメインキャラクターたちの制作秘話を直撃

――メインストーリーはもちろんですが、サブストーリークエストでのキャラクターの掘り下げも、すごく力が入っている印象を受けました。これらはどのようなことを意識して作られていったのでしょうか?

古屋
 サブストーリークエストをメインストーリーと同じくらい力を入れて作ることは、私のこれまでのゲーム開発でもずっと意識してきました。私は『ウィッチャー3』や『The Elder Scrolls』シリーズなど、海外のRPGも好きでよく遊ぶのですが、それらの作品はメインストーリーだけではなく、サブストーリーもすごくおもしろいじゃないですか。海外プレイヤーにも楽しんでいただくことを考えると、そこは欠かせないと思い、本作もその考えで作っています。

中島
 一方で“お使いクエスト”に見えるものは、ゲームプレイが単調になってしまうので、極力少なくしてほしいという話はしていました。そう見えてしまうサブクエストは、実際にいくつか削っています。

古屋
 掲示板から依頼を受けて、そのまま目的地へ行くような形式も一度試したのですが、本作ではそれだとプレイのしがいがなくなってしまうなと。もちろん、そういうゲームもあっていいと思うのですが、本作ではつねに物語を中心に置いているので、そういった要素は一切なくすように意識しました。
『FFレゾナンス』発売記念インタビュー。「新たなコンソール版『FF』を作る」という意気込みで『FFBE』の物語を徹底的に再構築。メインキャラに込めた想いも訊く【ネタバレあり】
――サブストーリークエストとともに印象的なのが“アクティブタイムチャット”(ATC)です。これはどのような意図で導入したのですか?

古屋
 原作の『FFBE』は、キャラクターどうしの掛け合いがすごく多くて、バトル開始時にも会話があったのです。ただ、それをコンソールのRPGとして作り直すときに、すべて同じ形で残すのは難しい。でも、その掛け合いがあったからこそ、『FFBE』には明るい印象があったり、キャラクターどうしの仲のよさが伝わったりしていたと思うんです。

 それをいまのゲームシステムにどのようにして導入するかを考えた結果、移動中にしゃべってもらう形にしました。ATCという名称に関しては、移動中にしゃべる=アクティブタイム、そしてATBをオマージュして……という言葉遊びです(笑)。

中島
 ATCは、キャラクターの掛け合いだけではなく、世界観の補完にも使っています。たとえば「オルデリオン連邦ってどんな国なの?」というような、本編だけでは説明し切れない部分ですね。開発チームとして、アプリ版の『FFBE』以上に世界観を深掘りすることを重視していたので、ATCもそのために活用しています。
『FFレゾナンス』発売記念インタビュー。「新たなコンソール版『FF』を作る」という意気込みで『FFBE』の物語を徹底的に再構築。メインキャラに込めた想いも訊く【ネタバレあり】
――ここからはキャラクターについてうかがっていきます。まず主人公のレインですが、『FFレゾナンス』ではどんな部分を魅力として見せようと考えましたか?

古屋
 レインは『FF』の主人公の中では、かなり明るい性格をしていて、パッと見たときは熱血系の主人公に見えると思います。実際にそういう側面もありますが、原作をプレイしていくと、ただ熱いキャラクターというだけではありません。改めて原作の物語をチェックしたときに、彼はどこか大局を俯瞰して見るような賢さがあるなと。北島さんに確認してみたところ、そこは意識しているとのことだったので、その魅力をしっかりと出そうと考えました。

 王様と語り合う場面などで、じつはしっかり考えている姿を見せたり、仲間の中では兄貴分として振る舞ったり……。たとえば第1章に追加したサブクエストには、“きれいごと”に関するレインの言葉が出てきます。レイン自身、自分が言っていることがきれいごとだというのはわかっている。わかっているけれど、それでも理想を目指したい。もともとそういうキャラクターではあるのですが、今回はそこをしっかり表現することを意識しました。
『FFレゾナンス』発売記念インタビュー。「新たなコンソール版『FF』を作る」という意気込みで『FFBE』の物語を徹底的に再構築。メインキャラに込めた想いも訊く【ネタバレあり】
――熱血だけど、何も考えずに突っ走るタイプではないと。

古屋
 そうです。じつはいろいろ考えているんです。ただ、それを周囲にうまく説明するタイプではないので、外から見ると突っ走っているように見えてしまう。そのあたりもきちんと伝わるように気を配りました。

――レインの相棒であり、もうひとりの主人公とも言えるラスウェルはいかがでしょうか?

古屋
 ラスウェルはレインとは逆ですね。パッと見て、途中で裏切りそうな雰囲気があるじゃないですか(笑)。

――初めてプレイしたときは、いかにも何かありそうと思いました(笑)。

古屋
 だから、それを逆手に取って、クールに見えるからこそ、じつは情に厚いヤツだと伝えたいと考えました。ラスウェルは理知的で、すごくロジカルに話しますし、レインを諫める場面も多い。そういう意味ではクールなキャラクターという認識は合っています。でも本当は、めちゃくちゃ熱い男なんですよ。理屈ではわかっているけど、見捨てられない、割り切れない……そういう情がかなり強いキャラクターです。ただ本人は、自分自身についてレインの半歩後ろを歩くようなイメージを持っているので、それを素直に出し切れないんです。
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 本作では、そういった側面をサブストーリークエストなどで表現しました。レインはラスウェルのそういう部分を長所だと思っているけれど、ラスウェル自身は自分のよさを認め切れていない。それは中盤以降によりはっきり見えてくる部分ですが、序盤でもその前振りとなるようなクエストを入れています。

 レインもラスウェルも、わかりやすい熱血キャラクター、クールなキャラクターにはしたくありませんでした。血の通った人物として、二面性や悩み、葛藤を描くことは、かなり重視しています。
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――レインとラスウェルが最初に出会う仲間のフィーナは、物語の重要な役割を担うキャラクターです。彼女はどのようなイメージで作られていったのでしょうか?

古屋
 フィーナは、パッと見たときから「『FF』にこういう女性キャラクターいるよね」と思える、ど真ん中のヒロインだと思いました。存在自体が不思議ですし、物語のキーパーソンでもあります。だったら、その要素をもっと強くしようと考えました。そこで本作で追加した設定のひとつが、“幻獣と交感できるのはフィーナだけである”というものです。これは原作にはない設定で、原作ではほかのキャラクターも幻獣を扱えますが、本作ではフィーナの役割に集約しました。

 自分の中には『FF6』のティナのようなモチーフも少しあって、「この少女は幻獣と何か関係がある不思議な存在なんじゃないか」と思わせたかったんです。そこは北島さんにも設定的に無理がないかを確認して取り入れています。バトルで幻獣を呼べる不思議な少女で、ストーリー上でも幻獣と深い関係がある。そうした“『FF』のヒロイン”として皆さんが持っているイメージをどんどん詰め込んでいって、現在のフィーナになりました。
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――フィーナと魔人フィーナというふたつの側面があるのも独特なキャラクターですよね。

古屋
 そこもおもしろいと思ったところです。少女らしいフィーナと、大人のお姉さんのような魔人フィーナが入れ替わる。でも本人としては同じ存在なので、レインからすると距離感を測りかねるんですよね。そういう関係性のおもしろさも表現しました。

中島
 シナリオ全体を読んだとき、『FFBE』のお客様のことも考えると、最終的にはレインとフィーナの物語として終わっていくのがいいだろうと思っていました。世界の成り立ちだったり、いろいろな謎だったり、物語にはたくさんの要素があります。でも、最後はちゃんとわかりやすい話にしたかったんです。突き詰めると、“レインとフィーナというふたりの関係性の物語だった”と理解できるものにしたい。そこはかなり意識しています。
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――そのほかの仲間に関してもうかがっていきます。リドはサブストーリークエストも含めてかなり掘り下げられていました。

古屋
 リドは、わかりやすく言えばメカニック的なキャラクターです。技術の発展に情熱を注いでいて、飛空艇で空の世界を見渡したいという思いを持っています。キャラクタークエストでは、なぜ彼女がそう考えるようになったのかを掘り下げています。

中島
 社内でのテストプレイでは、「リドが入ると会話が生き生きし始める」という感想が多かったですね。ピュアな性格をしている3人の中に、現実的な目線を持っていて、しっかりとツッコんでくれるリドが仲間に入る。彼女の存在は、第2章以降の会話がおもしろくなる大きな要因になっているかなと。

古屋
 リド自身、わからないことは「わからない」と言ってくれるため、プレイヤーと同じ立場にいてくれるんです。そういうキャラクターを目指しました。
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――ニコルの物語はかなり重いテーマになっていますよね。

古屋
 ニコルは非常に難しかったです。彼のエピソードはキャラクターの生死に関わるので、ここをどう描くかによってこの作品全体が“人の死をどのくらいの重さで扱う世界なのか”が見えてしまうんです。RPGでは戦闘がたくさん起きますし、裏では多くの人が傷ついている。その中でニコルは、命について選択をしなければならないキャラクターでもあります。だから、そこの表現にはかなり気を遣いました。

 さらに本作には“ビジョン”があって、すでに亡くなった人物がビジョンとして現れることもあります。生と死に関わるシナリオがある中で、死者を召喚していっしょに戦えるというゲームシステムが存在しているわけです。そこが嘘っぽく見えてしまうと、物語全体が嘘っぽくなってしまいます。

――そのバランスはすごく難しそうですね……。

古屋
 ニコルの物語は、かなり書き直しました。亡くなった人物がビジョンとして現れたとき、その人物にどれくらいしゃべらせるのかということもかなり議論して、結果的にはほとんどしゃべらない形にしています。死者がしゃべりすぎると、“生者の物語”ではなくなってしまうんです。そうすると、「いま生きている人たちは何のためにいるんだ」ということにもなりかねません。だから、ここは本当に気を遣いました。

中島
 原作をコンソールゲームとして再構築する中で、社内では「死に対して周囲のキャラクターの反応が薄く見える」というフィードバックもありました。原作では、ニコル自身も切り替えが早く見える部分があって。今回は、この世界の人たちが“死”をきちんと受け止め、そのうえで前へ進んでいることを表現するようにしました。

古屋
 ドット絵のゲームは、限られた情報を見て、プレイヤーに想像してもらうゲームでもあるので、ごまかせない部分もあります。ニコルがどれほどの熱量で復讐心を抱えるべきなのか、パーティに留まりながら自分の気持ちにどこまで決着をつけられるのかは、かなり考えましたね。
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――ジェイクは軟派なキャラクターかと思いきや、反乱軍の熱きリーダーとしても描かれたキャラクターでした。

古屋
 ジェイクは革命家なので、自分の中ではかなりわかりやすく『FF』らしい物語を作れるキャラクターでした。帝国に反逆する物語というのは、『FF2』などにもありますし、すごく王道ですよね。

 それと、もうひとつ重要なのが兄弟の存在です。兄弟は“異なる人生を歩んだ、もうひとりの自分”のような部分があると思うのです。自分とつながっているからこそ、「お前がその道を行くなら、俺はこっちの道を行く」と考える。『FF6』のエドガーとマッシュもそういった関係でした。ジェイクのキャラクタークエストでは、そういった“兄弟”と“革命家”というふたつの要素をまっすぐに描いています。
『FFレゾナンス』発売記念インタビュー。「新たなコンソール版『FF』を作る」という意気込みで『FFBE』の物語を徹底的に再構築。メインキャラに込めた想いも訊く【ネタバレあり】
――魔道国家ミシディアで出会うサクラについてはいかがでしょう?

古屋
 サクラは、原作のイメージにかなり近いですね。キャラクターエピソードも原作にあったものをアレンジして入れている部分があります。もともと過去も含めて深く描かれていて、すでに完成されたキャラクターでした。だから無理に変えるよりも、それをいかにコンソール向けにアレンジするかを考えていきました。

 見た目は幼いのに大賢者という時点で、ものすごくキャッチーじゃないですか。そのキャッチーさを損なわないように、コメディの場面はかなりコミカルにして、一方でシリアスな場面は思い切りシリアスにする。その温度差をかなり極端につけています。私はコメディを書くのも好きなので、そこはノリノリで作りました(笑)。
『FFレゾナンス』発売記念インタビュー。「新たなコンソール版『FF』を作る」という意気込みで『FFBE』の物語を徹底的に再構築。メインキャラに込めた想いも訊く【ネタバレあり】
――後半は設定もかなり複雑になっていきますが、一方でプレイヤーが置いていかれないよう、サクラが詳しく説明する場面が用意されているのも印象的でした。

中島
 あそこは僕がテストプレイしたときに、伏線が一気に回収される場面があって、その際に物語の理解が追い付かないなと感じたのがきっかけでした。そこで、サクラを解説役として立たせる形にしてもらいました。

古屋
 ある日、会社に行ったら中島から「ここの設定が全然わからないんだけど……」と言われて(笑)。ただ、ここは単純に説明を増やせばいいわけではないんですよね。ひとつのイベントで説明できる情報量には限りがあるというのが僕の考えで、不必要なイベントを増やさざるを得ません。そうすると、ゲームとしてのテンポが悪くなってしまう。さらに、どこまで理解できたかも、お客様によって異なります。ゲームのテンポを損なわずに、お客様に理解していただくにはどうしたらよいだろうか、と、頭を悩ませました。

 そこで、複雑な設定が開示された後に、いったん整理して説明してくれるキャラクターを置こうと考えました。そういった経緯もあって、開発中は“なぜなにサクラ”と呼んでいました(笑)。その後もサクラがいろいろな場面で世界設定を解説してくれるのは、それがきっかけでしたね。

――キャラクターについては、主人公たちと敵対関係になる“パラデイアの六盟傑”たちもすごく印象的でした。中盤以降になるとかなり印象も変わってきて……。

中島
 大きなところでは、“暗い『FF』にはしたくない”という思いがありました。そのうえで、敵側にもきちんと背景があって、それを理解するとプレイヤーが感情移入できる、完全な勧善懲悪ではない物語にしたかったんです。暗くなりすぎず、でも敵側の魅力や事情もお客様に伝わる。そうしたうえで物語が進んでいくように、敵側の背景もきちんと描いています。
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『FFBE』ファンが支えてくれたからこそ作れた新しい形

――本作にはシリーズファンならニヤリとする要素も大量に入っています。おふたりがとくにこだわった“『FF』らしさ”をひとつ挙げるとしたら何になりますか?

中島
 僕はギルガメッシュですね。本作には歴代『FF』シリーズのキャラクターが多数登場しますが、全員にストーリーやセリフが用意されているわけではありません。だからこそ、本作と歴代『FF』の系譜を直接つないでくれる象徴的な存在を、ひとつ入れたかったんです。そういう思いで入れたのが、ギルガメッシュでした。

――ギルガメッシュはかなりしゃべりますし、専用のクエストも用意されていますよね。

中島
 そうなんです。歴代シリーズとのつながりを、いちばん直接的に表してくれるキャラクターとして、すごく大事に描いています。シナリオについては、“コメディベースだけれど、最後は漢気を感じるものにしてほしい”という部分だけお願いして、あとはシナリオライターにお任せしました。僕としては、ギルガメッシュにかなり『FF』らしさを詰め込めたと思っています。
『FFレゾナンス』発売記念インタビュー。「新たなコンソール版『FF』を作る」という意気込みで『FFBE』の物語を徹底的に再構築。メインキャラに込めた想いも訊く【ネタバレあり】
――古屋さんはいかがでしょう?

古屋
 いろいろなインタビューでもお話させていただいていますが、私はワールドマップですね。ワールドマップを復活させるというのは、私のゲーム開発人生における大きな命題でした。

 最近の『FF』シリーズではフィールドをしっかり描く半面、ワールドマップ上を移動するという要素を導入しない傾向になりつつあります。ただ、私は“ワールドマップで遊ぶ体験”にすごくこだわりがあって、どうしても『FF』にワールドマップを復活させたかったんです。もちろん、作るうえではたくさんの課題があって、それを乗り越える必要がありました。

 ワールドマップがあると、その世界を自分の足で冒険したからこそ、自分の手でその世界を守りたいと強く感じられると思っています。さらに『FF』なら、飛空艇を手に入れた後は自由にマップ上を飛び回れる。飛空艇を含めて絶対に外せないゲーム体験だと思い、ここはかなり力を入れました。

――飛空艇を手に入れて、「あの小さな島に降りたら何かあるかも」と探す感覚も、本当に久しぶりでした。あと、飛空艇を操作するときにカメラを動かせるのも、こだわりを感じられました。

古屋
 いろいろと詰め込んでいるので、飛空艇で世界中を探索していただけるとうれしいです。おっしゃるとおり、飛空艇で移動しているときにカメラを動かせるのもこだわったポイントです。そこは『FF6』をリスペクトして、「飛空艇を操作しているときにカメラを動かせないと『FF』じゃない!」くらいに思っていました(笑)。開発会社でワールドマップを作っていたスタッフも、「縮尺を『FF6』に合わせました」と持ってきたくらいなので、本当にいろいろな人のこだわりが入っていると思います。

中島
 カメラを動かせるからこその遊びや仕掛けもありますので、そこもぜひ楽しんでほしいですね。
『FFレゾナンス』発売記念インタビュー。「新たなコンソール版『FF』を作る」という意気込みで『FFBE』の物語を徹底的に再構築。メインキャラに込めた想いも訊く【ネタバレあり】
――本作にはやり込み要素も多数あって、なかでもコロシアムのバトルは『FF』シリーズおなじみの敵が登場するなど、すごくおもしろかったです。

古屋
 コロシアムは、バトルチームが各ボスの細かなギミックをひとつひとつ作っています。同じ編成ですべてのバトルに勝てるということはなくて、このボスでは有効だった戦法がつぎのボスではまったく効かない、といったことが普通に起こります。

 テストプレイをしたときも、改めてコロシアムのバトルはすごく奥深いと感じました。ぜひ、すべてのボスを倒すところまで遊んでほしいですね。

――戦闘中でもポーズからすぐロードできるので、試行錯誤もしやすいですよね。

古屋
 それについてはバトルチームから、「これくらい難しく作るからリトライしやすくしてほしい」と言われました。そういった意見も反映して、すぐにやり直せるシステムにしています。
『FFレゾナンス』発売記念インタビュー。「新たなコンソール版『FF』を作る」という意気込みで『FFBE』の物語を徹底的に再構築。メインキャラに込めた想いも訊く【ネタバレあり】
――遊びやすさという観点でいうと、世界各地に「ここは経験値を稼ぐ場所だな」とわかりやすいポイントが用意されていたのも印象的でした。

中島
 コンセプトとして、“当時の懐かしいRPG体験は味わってほしいけれど、理不尽さやストレスはなくしたい”というものがあります。サボテンダーやマジックポットなどは、そういう意味で入れています。

古屋
 メインストーリーを進めているときの育成は問題ないのですが、いざやり込もうとなったときに、新しいビジョンをランク1から育てるのはかなりストレスになります。ですから、それを緩和する“稼ぎポイント”を各地に配置しました。

 別の方法として“後から入手したビジョンは初期ランクを高くする”といったこともできたのですが、それはそれで育てる楽しさがなくなってしまいます。ですので、“自分で育てる楽しみはありつつも、育てやすくしておく”という設計にしています。ゲームを進めるほど、より効率のいい稼ぎ場所も見つかります。

――これから遊び始める方に向けて、“これを意識するとバトルが楽になる”というポイントはありますか?

中島
 ビジョンをまんべんなく育てるとコストの上限が上がるので、かなりバトルが有利になります。特定のビジョンを最初から最後まで育て切るというより、いろいろなビジョンをある程度のところまで育てる。そうすると一気に楽になりますし、戦術の選択肢も広がっていくと思います。

古屋
 有用なアビリティを持っているビジョンもけっこういます。一度いろいろなキャラクターでアビリティを覚えてから最終的な構成を考える遊びかたでもいいですし、好きなビジョンを徹底的に育てる遊びかたでも構いません。ただ、ゲームの設計としては、いろいろなビジョンを付け替えて育てるほど遊びやすくなるようにしています。多くのビジョンを育てることに、きちんとリターンを用意しているのです。

――『FFBE』のようなサービス運営型のタイトルが、ここまで作り直されてコンソール作品として残るのは、今後のゲーム業界にとっても興味深いケースになりそうです。

古屋
 個人的にも、スマートフォンゲームをかなり熱心に作っていた時代があります。ですが、それらはサービスが終了して遊べなくなってしまえば、それで終わってしまいます。それぞれの作品には、プレイヤーの皆さんの思い出はもちろん、開発者の血と汗と涙もたくさん詰まっています。それをそのまま終わらせるのではなく、こういう形で残せるのであれば、非常に意義のあることだと思います。本作もそういう心構えで取り組んでいきました。
『FFレゾナンス』発売記念インタビュー。「新たなコンソール版『FF』を作る」という意気込みで『FFBE』の物語を徹底的に再構築。メインキャラに込めた想いも訊く【ネタバレあり】
中島
 『オクトパストラベラー0』が、アプリをベースにしつつも、まったく違う品質の作品として評価されていたことも、僕らとしてはありがたかったです。そうした作品がバトンをつないでくれたからこそ、今回も“アプリがベースだから”と構え過ぎず、受け入れていただけた部分はあると思います。

――最後に、『FF』シリーズのファンやゲームファンの方々へのメッセージをお願いします。

中島
 『FF』にはたくさんの魅力があり、それらを詰め込んで本作を作りました。だからこそ『FF』を長年愛してくださっている方に楽しんでいただける作品になったと思います。さらに、誰かにとっての“初めての『FF』”、“ひさしぶりの『FF』”になってくれたら、本当に素敵なことだと思います。

 “懐かしくも新しい”という言葉は、いろいろなゲームでよく使われるので、個人的にはあまり使いたくないなと思っていたのですが、それでも本作は、本当に懐かしいし、本当に新しいゲームになっていると思います。ぜひ新鮮な気持ちで触っていただけたらうれしいです。

古屋
 私はそもそもクラシカルなRPGの大ファンで、ずっとこういうゲームを遊びたいと思って生きてきた人間です。そして同じように感じる世界中の方々を、私は“仲間”のように感じています。そういう方がいてくださるからこそ、こういうゲームを作ることができました。

 本作は、そのように仲間だと感じている皆さんが遊んだときに「楽しい!」と言ってもらえるように、スタッフ一同、丁寧に作ってきました。だからまずは、「新しいファンタジーRPGを遊んでみよう」というくらいの気持ちで、肩肘張らずに触ってほしいです。

 また、『FFレゾナンス』は、『FFBE』がなければ存在しなかったタイトルです。『FFBE』は10年のあいだ皆さんに愛されて、ストーリーを最後まで届けることができました。そこまで育った作品だったからこそ、『FFレゾナンス』というタイトルが誕生できたと思っています。

 運営型のゲームは開発者だけで作るものではなく、プレイヤーの皆さんもいっしょになって育てていくものです。そうやって皆さんが育ててくださった作品が、いま新たな形になって、改めて世の中へ羽ばたいていく。だからこそ『FFBE』を愛してくださった皆さんには、ぜひ手に取っていただきたいです。もちろん、『FFBE』を知らない方にも遊んでいただきたいと思っていますし、欲張りではありますが、すべての『FF』ファンの皆さんに、このゲームを楽しんでほしいですね。
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