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『エターナルアニマ』植松伸夫氏×崎元仁氏によるゲーム音楽対談。「こりゃヤベぇ奴が入ってきた」植松氏がかつて脅威に感じた崎元氏の“JRPGらしいメロディー”とは

『エターナルアニマ』植松伸夫氏×崎元仁氏によるゲーム音楽対談。「こりゃヤベぇ奴が入ってきた」植松氏がかつて脅威に感じた崎元氏の“JRPGらしいメロディー”とは
 2027年3月4日発売予定(※)のマーベラスの完全新作RPG『ETERNAL ANIMA』(エターナルアニマ)。記憶を読み取る“読思術”を使う主人公が、過去と現代のふたつの時代を巡り、4つの大陸を旅する作品だ。
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 2026年9月には、本作のディレクターである樋口勝久氏と、『ファイナルファンタジー』シリーズの生みの親である坂口博信氏による対談動画や記事が公開された。
 この対談に続き、今回は樋口氏と本作で作曲を手掛けたベイシスケイプの代表取締役社長を務める崎元 仁氏、そして『ファイナルファンタジー』シリーズをはじめ、数々の作品で作曲を手掛けてきた植松伸夫氏との対談が行われた。

 本記事では、その対談を記事として掲載。なお、記事として読みやすくするため、映像とは一部言い回しを変えている部分や補足をしている箇所があるので(おふたりには事前にご確認済み)、あらかじめご了承いただきたい。そしてこの対談記事は週刊ファミ通2026年11月12日号(No.1969/2026年10月29日発売)にも掲載されているのでそちらもあわせてチェックしてほしい。
※Steam版のみ3月5日発売。

樋口勝久(ひぐちかつひさ)

『ETERNAL ANIMA』ディレクター。坂口博信氏のもとで『ファイナルファンタジーII』から『V』、『XI』、『クロノ・トリガー』などでバトルを中心に開発に携わり、『ロストオデッセイ』にもテクニカルディレクターとして参加。現在はマーベラス所属。

崎元 仁(さきもとひとし)

ベイシスケイプ代表取締役社長。『タクティクスオウガ』や『ファイナルファンタジータクティクス』などを始め、数多くのゲーム音楽を担当。直近では、『朧村正怪奇譚』などを手掛けている。

植松伸夫(うえまつのぶお)

『ファイナルファンタジー』シリーズを始め、数々のゲーム音楽を手掛ける作曲家。2004年にスクウェア・エニックスを退社し、現在はSMILE PLEASE代表として、作曲やバンド“con TIKI”の活動に励んでいる。

メロディーがハッキリしているのがJRPGの曲の特徴

――まずは皆さんの関係性からうかがっていきたいのですが、お仕事やプライベートでどういった関わりがあったのでしょうか。

植松
 樋口さんとはスクウェア(現スクウェア・エニックス)に20代前半で入社してきてから40年近い付き合いです。崎元さんは僕が『ファイナルファンタジーVII』の曲を作っているときに入って来て、『ファイナルファンタジータクティクス』の音楽を作っていましたね。彼は若いころからすごい音楽を作っていて、正直、僕はちょっと怖かったんですよ。
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――脅威に思えるぐらいすごい人材だったわけですね? 植松さんから見た樋口さんは、チームの中ではどんな存在でしたか?

植松
 表立って「俺が俺が」って騒ぐタイプじゃなかったですね。しかも僕は音楽、彼はプログラマーで、ふだん働いている場所も違いましたから、顔を合わせるのはお酒か喫煙室だったよね?

樋口
 そうですね。植松さんは巨匠なんですけど、本当に砕けた人で当時はくだらない話ばかりをしていました。ただ、入社初日に挨拶に行ったら、「うん、うん」しか言わないので、最初は怖い人かなと思いました。

植松
 多分、何かおもしろいことを言おうと考えていたんだと思う(笑)。

樋口
 芸術家肌の人かと思ったんですけど、実際はそんなことはなくて、気さくなお兄さんでした。そこはいまでも変わらないですね。
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――崎元さんから見た植松さんの印象はいかがでしたか?

崎元
 世間話をしている時は掴みどころのない人だなという印象でしたが、珍しく音楽の話をしていた時に「翌日の朝に簡単に手を付けられるような仕事を残しておく」と言ってたんです。私の場合、夜中にテンション高く仕事をしていても、一度寝て朝に仕事を再開しようとしてもダラダラしてしまうことが多いので、長く作曲家をしている先輩の経験を教えてもらえてうれしかったのを覚えています。
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植松
 人によって違うんでしょうけど、少なくとも僕は朝起きて仕事に向かっても、なかなかエンジンがかからない。サボりたいわけ(笑)。なので、簡単に手を動かせる単純作業のようなものを残しておけば、朝はそこから仕事を始めて単純作業をこなすうちに調子が出てくる。

 そこで、たとえば夜に18小節目のドラムパターンまで決めておいたら、19、20小節目のアイデアはすぐに出てくるから、ここは明日の朝から始めよう、みたいにするんですよ。そういうふうに朝からでも仕事に向き合えるものを作っておかないと、なかなか仕事をしないんです(笑)。
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――先ほど、崎元さんがスクウェアに入られた際に、植松さんが脅威に感じたというお話がありました。どういったところにその脅威を感じられたのでしょうか。

植松
 当時はプレイステーションの時代になり、ファミコンやスーパーファミコンの時代とは違ってガッチリとした音楽を作れる人じゃないと生き残れなかったんです。しかも、ゲーム全体がハリウッド映画のようなものを目指すようになって、映画音楽みたいな曲を作れる人が重宝されるようになり始めた。そんな時期に崎元さんは入ってきたんですよ。

 僕はロックから来た人間なので、オーケストラのことなんかぜんぜん知らないわけです。でも、崎元さんの音を聴くと映画音楽のような感じで。「こりゃヤベぇ奴が入ってきたな」と思いましたね。

崎元
 多分、新しいオーケストラの曲が映画音楽しかなかったからだと思います。僕らもオーケストラの曲を要求されることが多かったので、一生懸命、勉強していました。映画音楽でも、オーディオデザインに寄っている曲と、ちゃんと音符で作ろうとしている曲があるじゃないですか。僕は、どちらかと言うと音符系の曲が好きだったんですよ。植松さんもそうで、そのあたりで話が合っていたんだと思います。
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植松
 そうそう。僕もメロディーや音がハッキリ主張してくる映画音楽が好きだった。

崎元
 これは『エターナルアニマ』の曲にもつながってくるんですけど、JRPGの曲の特徴はメロディーがハッキリしていることだと思うんです。植松さんもメロディーライターですよね。

植松
 どっちかと言うと、構成を作るのがあんまり得意じゃないから、メロディーに逃げちゃうところはあるかもしれないね。

崎元
 いやいや。『ファイナルファンタジーXII』の仕事をしていたときに、植松さんの曲もアレンジさせていただいたんですけど、本当にいいメロディーを書くなといつも感動していました。

植松
 ……いくら欲しいんだ?(笑)

崎元
 (笑)。なかなかこういう、面と向かって愛の告白みたいなことをする機会もなかったですよね。でも本当に、この場だから言っているわけではなくて、本当にいいメロディーを書く方だと憧れていました。
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『エターナルアニマ』の音楽は植松氏の音楽が大きなヒントに

――ここからは『エターナルアニマ』の音楽について、詳しくおうかがいしていきます。本作の音楽を作っていくにあたり、どんな楽曲にしたいと思われていたのでしょうか。

樋口
 本作の世界には4つの大陸があって、それぞれ風土も違うし、訪れる時代も変わっていきます。季節の要素も入れたかったので、春夏秋冬それぞれのイメージも入れたいと考えていました。

 ですので、崎元さんには各大陸で文化も風習も季節も違って、かつ過去と現在というふたつの時代にまたがって物語が展開するので、それらをイメージした曲でお願いします、とお伝えしていました。
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『エターナルアニマ』の世界地図。中央にある“白の都”を4つの大陸が取り囲んでいる。各大陸はゲーム開始時点では海の底に沈んでおり、物語を進めることでその姿を現す。
――そもそも、今回ベイシスケイプさんに依頼された経緯は?

樋口
 僕自身、ベイシスケイプさんが音楽を手掛けたゲームを触ってきましたし、もちろんスクウェア時代から崎元さんのことは知っていて、音楽も好きだったので打診させていただきました。

――そんな形でオファーを受けて、崎元さんはどのような印象を?

崎元
 けっこう盛りだくさんなお話ですよね。舞台設定も幅広くて、ストーリーも複雑だと思いましたし。そういった部分をある程度音楽でも整理ができたらいいな、とは考えていました。

――樋口さんから何かリクエストは出されたのでしょうか。

樋口
 唯一ハッキリとオーダーを出したのは、先ほどもあったメロディーの部分です。バトルの曲は何百回も聴くことになるので、ここに関してはメロディーラインがハッキリした、すぐ思い出せるような曲にしてください、とお願いした覚えはあります。結果、ピッタリな曲が上がってきて、すごく満足しましたね。
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――ベイシスケイプさんは過去にもマーベラスさんのさまざまな作品で楽曲を制作されてきましたが、『エターナルアニマ』ならでは、の部分はありますか?

崎元
 いま話に出た、メロディーの部分ですね。やはりJRPG特有のメロディーのようなものがあり、そのときにすごく参考にさせていただいたのが、植松さんの曲なんです。

樋口
 最初にイメージをお伝えするときに、『ファイナルファンタジーIII』のバトル音楽を例に挙げていたんです。

崎元
 植松さんの曲を改めて研究して、いいところをたくさん見つけることができました。多くの人に愛されている理由はきっとここだろう、というものを見つけつつ、それをそのまま形にするのではなく、僕らだったらこういうアプローチをしてもいいんじゃないか、というふうに拡張しながら作ってきました。

 樋口さんや開発チームの皆さんの反応も窺って、「お、これで正解か」と確認しながら、とくに最初のころは慎重に進めていましたね。
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――送られてきた楽曲について樋口さんの判断基準はどういったところに?

樋口
 各楽曲は使用するシーンを指定しているので、そのシーンに当てはめたときに合うか合わないか、その一点で決めています。

植松
 ゲームの最終的な形をいちばん理解しているのが、ディレクターじゃないですか。だから、その人の言っていることが多分、いちばん正しいんですよ。そういうのって理屈じゃなくて、「何かいい気がする」、「何か違う気がする」でいいんだと思います。ディレクターのそういう意見は大事だと思いますね。
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崎元
 ディレクターの頭の中の基準をちゃんと満たすか、あるいは超えていけばいいんだと思います。ですので、僕はディレクターと話をして人間性などを知りたいタイプですね。

樋口
 よく話しましたね。崎元さんと話しているうちに「ここにはこういう曲が必要ですよね」となって、最初のオーダーより曲がどんどん増えていくんです。当初は80曲程度だったのが、もう100曲近くなっていますからね。本当にありがとうございます。

主人公ウェイドのテーマとヒロイン・ネリアの音楽は注目

――『エターナルアニマ』の曲で、とくに印象的な曲はどれですか?

崎元
 主人公であるウェイドのテーマですね。ウェイドはかなりピュアで、非常に強い信念も持っていて、とにかくあきらめない性格です。そういう雰囲気が出るといいな、と思って弊社の武田に作ってもらいました。これは本作で基本となる曲で、明るい場面や勇ましい場面などではアレンジが入るんですけど、メロディー自体は共通したものになっています。
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植松
 ヒーローの曲ですよね。おとなしい人なのかな、内に秘めている何か、という感じがありますね。

樋口
 ウェイドは3年より前の記憶がなくて、いろいろと抱えた問題を何とか解消しようとしている人物なんですよ。20代後半の大人という設定なので、若者の勢いというより、大人の落ち着いた雰囲気をイメージして作ってもらいました。

植松
 あと、イケメンでしょ。

崎元
 イケメンです(笑)。

植松
 わかる(笑)。あと、崎元さんの独特な部分転調みたいなのがあちこちに出ていますよね。

崎元
 今回の音楽は僕も含めて5人で曲を書いていて、ウェイドのテーマは私ではないんですが(笑)。

植松
 あの部分転調のような崎元さんの特徴が継承されているのかもね(笑)。曲が素直にはいかないんですよね。どこかちょっとひねったところがあって、それが崎元さんの曲の特徴に似ていて、すごく懐かしかったです。
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――樋口さんのお気に入りはどの曲ですか?

樋口
 私のお気に入りは、ヒロインであるネリアのテーマ曲です。彼女は調査隊の隊長ということで、女性的な部分と凛とした強さを持ったキャラクターなので、それを楽曲でも混ぜていただけませんか、とオーダーさせていただきました。じつはネリアのテーマにはもう1パターンあって、そちらはもっと落ち着いた、静かなイメージになっています。こちらもすごくいい曲になっているので、その対比も楽しんでもらいたいですね。
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崎元
 じつは、最初に書いたのは静かなほうの曲だったんです。僕の中ではネリアは女性的なイメージで曲を作ったんです。それに対して、もう少し勇ましさが欲しいと言われたので、そこで改めて作ったのがゲームの中で最初に出てくるネリアのテーマでした。ネリアも非常に重要な人なので、覚えやすいメロディーを何回も反復させています。

植松
 ヒーローの曲がおとなしめだったのに対して、ヒロインのテーマは快活で、メリハリがついていていいですね。静かなバージョンがあるのもいい。快活なイメージで聴いていたメロディーが、ゲームの途中でスロウになって流れると、これが効果的なのよ。

崎元
 そうなんですよ。しかもネリアは、いいポジションなんです。

樋口
 静かなバージョンはウェイドとネリアがしんみりと話しているような場面で流れるんですよ。

植松
 そこにいたるまでにアップテンポなバージョンでメロをしっかり覚えさせてくれる、と。すごく効果的だよね。さすがでやんす。

崎元
 ありがとうございます(笑)。
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その人にしか書けない曲を書かなければ価値がない

――RPGの音楽そのものについてもお話をうかがいたいと思います。ゲーム音楽を作るうえで大事なことは何だと思われますか?

崎元
 僕はもともとゲームが好きなので、ゲームを遊ぶうちに、だんだんゲームの中に入っていく感覚は実体験として持っているんです。そのときに鳴っていてほしい音、みたいなものがあるので、そういう音を作ろうとしています。たとえばアクションゲームだと、プレイするうちに体感時間も変わってきて、音もより細かい部分が聞こえるようになってくるんです。なので、ふつうに聴いても成立するし、細かい音に気付けるようになっても曲として成立するような、そういう曲を書こうと思っています。

 逆にRPGだと、アクションとはまた違った体感時間の変化があるので、長時間聴いていても何かしらのドラマ性を感じられるような曲を心掛けています。とくに、JRPGはある程度の長さがある曲がずっと流れるシチュエーションがありますが、イベントと同期させていないときでもドラマティックに聴こえるようにというのは意識しています。
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植松
 僕はもうけっこう昔に、ゲーム音楽は好き勝手に作る時代じゃなくて、流行もちゃんと取り入れて、オーケストラも理解して、という人じゃないと、この先やっていけないなと思ったんです。いまは、そういう重たいものから解放されて、自分の好きなものを作ろうと思っています。『エターナルアニマ』の曲は、昔からのまっとうなゲーム音楽が歩むべきところに進んでいる、継承しているなというのを感じて、ちょっとうれしいのと、すごいなと思いましたね。

崎元
 ありがとうございます。
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――ゲーム作りの環境が変化していくなかで、ゲーム音楽を作るうえでよくなったところ、逆に難しくなった部分などがあればお聞かせください。

植松
 いまオーケストラで迫力ある音楽を、と考えるとどうしてもハリウッド映画の音楽に行きつきがちなんです。そういう意味で、質感での差別化は難しくなっているんじゃないかと思います。これから先、ゲーム音楽の作曲をやりたい人は、もっと自分のクセを前面に押し出して、いわゆる個性的な音楽を作れるようにするとおもしろいんじゃないかな、と思います。

崎元
 たしかに作曲家は、その人しか書けない曲を書かない限り価値がないですよね。劇伴だとある程度の制限は出てきますけど、その中で何とかやっていくのは、なかなかチャレンジングでおもしろいと思います。僕は作曲家として変な、マニアックなこともやりたいんです。それは、ふつうに聴いてわかるようなことではなくて、どこかの作曲家が聴いたときに「変なスケール使ってるよね」みたいに言ってくれたらうれしいです。
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――となると、『エターナルアニマ』の曲にもよく聴くとおもしろい音が隠れていると。

崎元
 変なことは必ずやっていますよ(笑)。いまはAIなどでもいい曲が書けるようになってきているので、僕たちはちょっとくらい滑稽でも、何か新しいことをやらないと、と思っています。

 あと、僕は基本的に音楽の音符は少なければ少ないほど偉い、と思っています。ただ同時に、音数が少ないと個性的なものを作るのは難しいんですよね。そこはせめぎ合いになる部分かなと思います。できるだけシンプルに作りたいけど、だんだん時間もなくなってきて、最終的にいっぱいブチ込んじゃう、ということが多いのですが(笑)。

植松
 自信がないと音数が多くなるね(笑)。

崎元
 昔、『ドラゴンクエスト』ですぎやまこういち先生の曲の打ち込みをやったんですけど、いちばん音が少ないところは、メロディーとベース音しかなかったんです。これはさすがに……と思ったんですけど、実際に打ち込んでみると、それで十分なんです。私はその境地にまで達していませんが。

植松
 できないね。

――音数が多くなりがちなのは作曲家あるあるなのでしょうか。

植松
 みんなそうなんじゃないですかね。空間を埋めてごまかそうとする、という(笑)。でも、何年も経ってから聴くと、何もなくてよかったんだ、と思うときもあるよね。僕も67歳にしてそういう音を抜こう、抜こうと努力している。
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自分が好きなものを一生懸命追い続けていれば何かしらの形になる

――『エターナルアニマ』のテーマは“継承”ということで、この継承についてもうかがえればと思います。ベイシスケイプさんはチームで曲作りを進められていますが、若い世代にゲーム音楽作りを継承するというのは、どういうことだとお考えでしょうか。

崎元
 ゲームに限らずですが、先ほども言いましたが音楽を書く人は自分にしか書けないものを書かないといけないと思います。それはメロディーでも、別のことでもいいんです。個性を作るって、じつは訓練なんですよ。人とは違うことを、ちゃんとやる。それを突き詰めていくことなんですけど、これがけっこうたいへんなんですよね。

 ツールの使いかたや和声の作りかたなどは技術論なので、やればできるし、簡単に教えることもできるじゃないですか。それ以外のところが鍛えられているといいな、と思っています。
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植松
 崎元さんもおっしゃいましたが、この世界って最終的には個性の勝負なんですよ。個性を出すためには流行っているものすべてを追う必要はまったくなくて、あなたがいま、なぜ音楽をやっているのか、その土台を思い出すことが大事だと思います。

 どんな音楽に感動して、あなたを作曲家にさせようとしているのか。その土台の感動は、忘れちゃダメな気がしますね。まわりの意見とか流行は気にせず、自分が好きなものを一生懸命追い続けていれば、何かしらの形になるんじゃないかな、と思います。

――本日は貴重なお話をありがとうございました。最後に、今回の対談のご感想をいただければと思います。

植松
 スクウェアでずっとプログラマーをやっていた樋口さんが、いつの間にかディレクターになっていて、すごくうれしく思いました。しかも、僕の好きな作曲家の崎元さんといっしょにやっている『エターナルアニマ』は、僕としても非常に楽しみなゲームです。

崎元
 このプロジェクトで樋口さんとお会いしたとき、じつはスクウェアの初期から開発をされていた方だとは知らなかったんです。お話をする中でそのことを知って、当時のゲーム業界の話で盛り上がれたのがすごく楽しかったです(笑)。

 曲の方向性についても、僕は最初に参考にさせていただこうと思ったのが植松さんの曲だったので、今回こうして3人でお話ができて、すごくうれしいです。無事開発が終わって、皆さんに遊んでいただける日を楽しみにしています。

樋口
 今回、植松さんのお話を聞いて、真面目な人だったんだな、と(笑)。崎元さんとはお酒の席でも『エターナルアニマ』についてかなり話し合っているのですが、ゲーム制作はチームで行うものです。ディレクターひとりで作れるものではなく、絵を描く人、音楽を作る人、ゲームを動かすプログラマー、それらを全部含めてのチームだと思っています。崎元さんという強力な方の助けも得て、ゲームとしてもよいものになると思っているので、皆さん期待して待っていてください。
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