2027年3月4日発売予定(※)のマーベラスの完全新作RPG『ETERNAL ANIMA』(エターナルアニマ)。記憶を読み取る“読思術”を使う主人公が、過去と現代のふたつの時代を巡る冒険に出る作品だ。 本作の発表とともに、ディレクターを務める樋口勝久氏と、『ファイナルファンタジー』シリーズの生みの親であり、これまで樋口氏とさまざまなゲームを制作してきた坂口博信氏による対談動画が公開。聞き手をファミ通グループ代表の林克彦が務めた。
両名の対談は、マーベラス公式YouTubeチャンネルにて公開中。本稿では、その対談を記事として掲載。なお、記事として読みやすくするため、映像とは一部言い回しを変えている部分や補足をしている部分があるので(おふたりには事前にご確認済み)、あらかじめご了承いただきたい。
※Steam版のみ3月5日発売。坂口博信(さかぐちひろのぶ)
『ファイナルファンタジー』シリーズの生みの親。2004年にゲーム制作会社ミストウォーカーを設立、『ブルードラゴン』、『ロストオデッセイ』、『ラストストーリー』、『テラバトル』、『FANTASIAN Neo Dimension』などを手掛けてきた。
樋口勝久(ひぐちかつひさ)
坂口博信氏のもとで『ファイナルファンタジーII』から『V』、『XI』、『クロノ・トリガー』などでバトルを中心に開発に携わり、『ロストオデッセイ』にもテクニカルディレクターとして参加。現在はマーベラス所属。
樋口氏が坂口氏から学んだもの
――まずは坂口さんと樋口さんおふたりの関係性をおうかがいできますか?
樋口
1988年くらいからですか?
坂口
そうだね。40年くらいの付き合いです。
――ファミコン時代からってことですよね。
坂口
そうですね。タイトルでいうと『FFII』のバトルを担当してもらったのがきっかけですね。
そのうちバトルの内部計算のほか、全体的な成長システム、さらにはバランス調整なども彼がほとんど関わることになるんですけど。

――当時の樋口さんの印象は?
坂口
いい意味で、ちょっとプログラマーっぽくないんですよ(笑)。偏見かもしれませんが、プログラマーって興味の方向性がすごく偏ってる人が多い(笑)。
たとえば、RPGをプログラミングしているけど、RPGにはぜんぜん興味はなくて、ふだんはレースゲームしかやりませんとか。ですが、彼はいろいろな意味でゲーマーであり、アイデアマンでもあり……。
その中でとくに成長システムやバトルの内部計算といったものの適性の持ち主だったという印象ですね。
――いろいろなゲームがお好きだったからバトルシステムのアイデアなどにもそれが活かされていたと。
坂口
そうですね。スクウェア退職後も『ロストオデッセイ』に参加してもらったり。私はこの作品のバトルすごく好きだし、いい感じでまとまったと思っているんですけど、それは樋口のおかげです。
――なるほど。
坂口
それだけだとキレイな付き合いに聞こえますけども(笑)。
――(笑)。樋口さんは出会って間もないころの坂口さんの印象は?
樋口
たしかスクウェアに入って初日だったと思うのですが、朝会でいきなり坂口さんがみんなに対し「お前らぜんぜんダメだ!」などと上から目線でガンガンに怒っているんですよ(笑)。

それが最初の印象だったんですけど、坂口さんってふつうにゲームを作ることはしないんですよね。最初に必ずインパクトを求めるんです。たとえば初代『FF』なら最初のボスを倒した後、橋を渡るとタイトルが出てくる映画的な演出とか、『FFII』だと最初バトルから始まって全滅して終わるとか。
そういったインパクトを大事にされている方だなと思っていて、ユーザーの予想を超えるインパクトを入れることは私もつねに意識しています。
――坂口さんご自身は、ゲーム作りにおいていまでも意識していることはありますか?
坂口
必ず自分で全部チェックする。任せ切りにはしない、ということですね。意外と私は重箱の隅を突くタイプだと思うので。
樋口
相当細かいですよ(笑)。
坂口
宝箱の中身もすごく気になりますから。「絶対ここ違うよね、この中身」とか(笑)。

ゲームは多くの人間が開発に関わり、それぞれが得意分野で穴を埋めていく作業のようなものなのですが、やはり各々で能力や思考、クセが違いますから、多少凸凹のようなものができる。ですから、自分でチェックしてその凸凹をならす必要があるんです。
――そうした作りかたについて樋口さんは影響を受けているところはありますか?
樋口
自然と影響を受けていたのかもしれません。私も基本的にはスタッフにお任せと言いますか、まずはスタッフの思うものを作ってもらった後に、調整したり丸め込んだりする仕事がディレクターだと思っています。
最初からガンガン「こうやれ、ああやれ」と言うと、各々がゲームに込めたいものを消してしまうことになるというのは過去の経験からわかっていますので。私は最後に調整するタイプですね。坂口さんは最初からガンガン言ってますけど(笑)。
坂口
いやいや、あなたたちも言ってたよ。それで「できんのかできないのか?」、「じゃあやってやるよ!」みたいな(笑)。
――おふたりのあいだにも熱いやり取りがあったんですね(笑)。
『エターナルアニマ』で実現したかったのは本当におもしろいバトルシステムの構築
――ここからは『エターナルアニマ』についてうかがいます。いわゆる王道のJRPGと言われるようなジャンルのゲームなのかなという印象を受けたのですが、いまあえて、そこに挑戦された理由は?

樋口
私は約40年間ずっとゲームを作ってきたのですが、そのほとんどがRPGなんです。やはりRPGが好きですし、ずっと作っていきたいと思っています。40年経っても、やっぱりJRPGにこれからも挑戦していきたいですね。
――本作で、「これだけは絶対にやりたい」と思っている部分は?
樋口
私はバトルのプログラマーを何十年もやってきて、本当にバトルが大好きなんです。RPGのおもしろさの要因の7割から8割はバトルだと思っています。
本当におもしろいバトルシステムの構築というのは絶対にやりたかったことでしたし、そこにすごくこだわって開発しています。
――チャレンジしている要素はありますか?
樋口
3Dグリグリの時代にあえて逆行して見下ろし型で、どれだけいまの人たちに刺さる映像が作れるか、というのはチャレンジしている部分ですね。

坂口
見下ろし型RPGだととくにそうだと思うのですが、歩ける、歩けないといった範囲や、何か仕掛けがありそうだという探索心を刺激するものが絵に仕込まれていないと、おもしろくないと思うんです。
美しさを追求しつつ、パッと見たときに「あれ、あそこ入れそうだよね? そこ、もしかしたらスイッチかも?」というのを瞬時に感じさせる工夫がいちばん大事かなとは思っています。
――ありそうで、行ったらやっぱりあったときの喜びだったり。
坂口
やはり自分で見つけたというのはプレイヤーにとってはうれしい体験ですし。
樋口
歩ける、歩けない、というのはすごく大事で、「どこまで行ったらいいの?」と感じさせるとプレイヤーを不安にさせるので、そういったストレスはなるべく与えないようにというのは坂口さんもずっと前から言っていることで、そこは私も意識しているところですね。
過去の世界の仲間の子孫たちと現代で協力するといった胸アツな展開も
――本作のテーマとして“継承”というものを掲げられていますが、この発想はどこから?
樋口
最近、伝統芸能や農業などに後継者がいなくてたいへんだという話をよく聞くじゃないですか。そうした技術が師匠から弟子へ、親から子や孫へ継承されていくのは、人間のつながりという意味においても、すごく大事で大切にしなければいけないものだと思うんです。そこで、今回のテーマに継承という要素を入れることにしました。

――ゲームの中では具体的にどういった形でプレイヤーは継承を感じられるのですか?
樋口
主人公には、右手で物に宿った知識を吸い取って自分のものにする“読思術”という能力があるのですが、武器に残された記憶を読み取り、もとの持ち主の想いとともにスキルを自分の能力として継承するというのがシステムの根幹になっています。

坂口
変なヤツがいて、それを下手に継承しちゃうと「混乱した」とか(笑)、ネガティブなものはないの?
樋口
そういうのはないですが(苦笑)、継承するものは選べます。ジョブやスキル、レシピなどもあるんですが、そうしたものを継承するとき、ちょっとしたことがあります。まだ詳しく言えませんが。
坂口
タイムトラベルの要素も入っているんでしょう? 作った人間に会えるってこと?
樋口
この機会に本作の世界観をご説明すると、主人公が住む“白の都”という都市以外はすべて海の下に沈んでしまっている世界から始まります。主人公は過去に行って大陸ごとに沈んだ原因を突き止めて、解決していくことをくり返すゲームになっています。

中央にあるのが白の都。まわりを取り囲む4つの大陸は、ゲーム開始時点では海の底に沈んでいる。
――大陸が沈んだ要因を解決すると、主人公の時代に戻ったとき、その大陸が存続した形で残っているということですか?
樋口
はい。過去の時代で主人公とともに戦った仲間の子孫がいたりして、今度はその子孫と協力して問題を解決したりします。
――そこにも継承要素があると。
樋口
そうです。
――タイムトラベルものは坂口さんも経験済みですが、どういった印象をお持ちですか?
坂口
タイムトラベルものって物語の整合性も取らないといけないですし、ヘタするとマップも書き換えなければいけないのでたいへんなんですよ。ですので、苦労しただろうなとは思いました(笑)。

樋口
『エターナルアニマ』は過去で問題を解決して現代に戻ると現代が変化している、という一方向の作りになっているので、矛盾が山ほど出て……ということにはならないと思っています。過去で旅したロケーションが現在では「こんな感じになっちゃったのか」といったことも感じてほしいですね。
――ちなみに、世界観やストーリーを構築する際、取っ掛かりとなるのはどういったところなのでしょうか。
坂口
最初は映像ですかね。どういう世界をどんなキャラクターが歩いているか、そういう映像ですね。そこが近未来なのか、荒野なのか、雪国なのか。空気が乾いているか湿っているかでも、ゲームのトーンって変わると思うんですよ。そのうえで、やっぱり大事なのはキャラクターですね。
樋口
今回に関して言えば、“物から継承する”ことがスタートでした。坂口さんと違って、映像からというよりは「こうやって遊ばせたらおもしろいだろう」みたいな、システム面から考えますね。その遊びが成立したあとに、まわりをくっつけていくのが僕のやりかたです。
タイムラインで予測できる結果を戦略でどう変えるか
――つぎにキャラクターの育成についてもうかがいます。先ほど、読思術を使ってジョブやスキルを継承していくという話でしたが、もう少し詳しく教えてください。
樋口
読思術であらゆるものからスキルやジョブ、レシピなどを手に入れるのですが、それらは本編だけではなく寄り道のダンジョン内など、さまざまな場所に散りばめられています。
ですので、プレイヤーによって育成の最終形は違うのかなと思ってます。ジョブは古びた杖が落ちていて触ったら“いにしえの大魔導士”のジョブが手に入るとか、そういう感じになってます。

――バトルシステムはRPGファンにはおなじみのターン制のコマンドバトルということですが、本作ならではの特徴もあるとか。その点についてもご説明いただけますか?
樋口
本作のバトルシステムの大きな特徴は“未来予測”という要素なのですが、主人公の能力で敵がどんな行動をとるか事前にわかるんです。技も含めて全部わかります。

このターンでこのキャラは必ず死ぬ、といったことも画面上のタイムラインでわかるので、その決められた未来をいかに打破して有利に進めるか、というのが本作のバトルのキモになっています。
――決められた運命をどう変えていくか、ということですね。
樋口
はい。詰将棋ではないですが、決められた手駒……能力やスキルを使ってどう有利に持っていくのがこのゲームの醍醐味です。
――戦略を考えずに漫然とプレイすると勝つのは難しそうですね。
樋口
雑魚戦は簡単に勝てるようになっていますが、ボス戦はそうですね。先ほど、坂口さんに少しプレイしてもらったんですが、苦戦されてました(笑)。
坂口
タイムラインが大事だよね。画面のタイムラインで行動順が全部表示されていて、このターンで自分のHPがどれだけ減るか、ヘタしたら死ぬ、というのが予告されるので。それをどう打破するか。

いちばんわかりやすいのは“ブレイク”という要素で、敵の弱点を突いて敵の行動を遅らせるんですね。プレイしながら説明を受けたので、私が説明しちゃっていますけど(笑)。
樋口
ありがとうございます(笑)。
坂口
ブレイクするとタイムライン上の敵の位置がずれていって、攻撃を食らわずに済んだりするんです。敵には弱点があるので、ジョブを切り換えたりしながらその弱点を突くのがブレイクのポイントなんですよ。
弱点を突いていって、敵がタイムラインからポコッと落ちるのが気持ちよかったですね。あそこもちょっと効果音が欲しいですね。“ボヨン”って。「ほら見たか!」って感じられるじゃないですか(笑)。

――なるほどなるほど。
樋口
ただし、弱点を1回突くと、つぎのターンは“弱点警戒”が発動し、同じ戦略は使えなくなる、といった要素もあります。
坂口
「弱点突けばいいじゃん、ブレイクしまくればいいんでしょ?」と思っていたら、つぎのターンで急にその戦略が使えなくなって(笑)。「ふざけんなよ!」と(笑)。

――つまり、よくできていると(笑)。
坂口
ええ(笑)。でも、弱点は複数あって、つぎは別の弱点を突くといったターン制の楽しさがしっかりとありました。
樋口
完全に未来が見えていて手順が決まっていて、その通りにやったらこうやって勝てるというところにおもしろさを感じてほしい、と思うのが今回のバトルですね。
――坂口さんの『FANTASIAN Neo Dimension(ファンタジアン ネオディメンジョン)』も、タイムラインというか行動順が表示されたバトルシステムでしたが、『エターナルアニマ』のバトルは好きなタイプのバトルでは?
坂口
そうですね。バトルで防御ってあまり使わないじゃないですか。ですが、タイムラインが見えていると、防御を意識したりするんですよね。そういった戦いかたの幅が広がるという意味ではタイムラインがあるバトルは好きですね。
かつての仲間たちから継承され生まれた作品が『エターナルアニマ』
――キャラクターデザインはどのように決められたのですか?
樋口
マックス・ベルテロさんというフランス人の方なんですけど、坂口さんが手がけられた『テラバトル』にも参加されている方で。
海外の方らしい感性がありつつ、でも彼は日本のゲームも大好きなので、そのことが絵からも伝わってきます。それでマックスさんに打診したのがキッカケですね。


坂口
最初、スタッフリストを見て驚きました。マックスさんは日本の文化が大好きで、絵も日本の匂いがする、不思議な絵なんですよ。『テラバトル』も何年も前なので、ぐるっと回ってこうして樋口の作品に関わっているのはビックリですね。
それに音楽は崎元さん(崎元 仁氏)で、シナリオは野島さん(野島一成氏)でしょ? 知った方々が多い作品なので楽しみです。
――おふたりが長年にわたってゲームを作られてきて、自分のもの作りのエッセンスを、この後どうやってつぎの世代の皆さんに継承していきたいと思っているのか。最後にうかがえればと思います。
樋口
ゲームを40年も作ってきて、質問されたときは「こうしたらいいよ」とパッと出てくるくらいの経験は積んでると思うので、そういった経験を継承していきたいですね。言われた本人も自分のものにしてつぎの世代に継承していってもらえればうれしいです。
坂口
少し話がズレるかもしれませんが、“継承”という言葉でまず思い浮かぶのは、孫です。孫というのは娘ができたときとちょっと違って、「ああ、こうやって人間って継承されていくんだな」というのを本能的に感じるというか。
孫が成人したころには私は死んでる可能性もありますが、自分が世界から消えることと、自分のDNAや、自分の伝えたことが“継承”されていくというのは、いまの私にはすごく実感のあることなんですよね。
今回こうやってお話をさせていただく機会をいただいてあらためて思ったのは、仕事した仲間たちがいろいろな形で継承してくれていて、その結果、『エターナルアニマ』のようなゲームが世の中に出ていくということです。つまり、本人の計り知れないところで執り行われているものが“継承”ということだと思います。

――それを意図したわけではないけれど、自然に継承されていると。
坂口
今回もビックリですね。継承されたものが驚きとともにやってきた感じです。
――最後に『エターナルアニマ』に期待することをひと言いただけますか?
坂口
先ほど少し遊ばせてもらって、バトルはおもしろかったし、さすが樋口だなと感じましたので、純粋に早く遊ばせてよ、という感じなんですけど、リクエストをひとつだけ言うとしたら、崎元さんに1曲でも多く曲を書かせてほしい(笑)。ファンなので。彼の曲が1曲でも多いゲームにしてほしいです。
樋口
崎元さんは話し合いながら「こういう曲が必要ですよね」とか、こちらがリクエストしなくてもどんどん「こういう曲書きます」と言ってくれる方なんですよ。気がつくとすごく曲数が増えていて、本来80曲だったところが気づくと100曲とかになってるんですよ。
坂口
では、あと10曲いけるね(笑)。
――そのあたりのお話はまた別の機会に聞けるかもしれません。ありがとうございました。
