ゲームプレイヤーが楽しそうに遊んでいるのを見ると引きつけられてしまうのは人情というもの。先日行われた“BitSummit PUNCH”(ビットサミット パンチ)の会場で、ひときわ楽しそうなブースに出くわした。会場内にゴルフカートを設置して、4人でニコニコしながらゲームの試遊に打ち興じていたのだ。
ここはキュー・ゲームスのブース。出展されていたのは発表されたばかりの新作『ヨーデルゴルフ』だ。ゴルフでヨーデルとは、どんなゲームなんだろう……と、そのタイトル名にさらに興味を惹かれた記者は、引き寄せられるままに、ゴルフカートの席に腰を落ち着けていた。

『ヨーデルゴルフ』は、“オープンワールド型のゴルフアドベンチャーゲーム”だ。最大4人でプレイしながらゴルフを楽しむことになる。本作は協力プレイ形式で、参加したメンバーは、ひとつのボールを打ちながらカップインを目指すことになる。ゴルフはほかのプレイヤーに任せて……ということも可能だ。
大きな特徴は、本作はボイスチャットに対応しており、プレイヤーの会話がリアルタイムでゴルフコース内に巨大な3D文字として現れるということだ。カップを目指してボールを打ちながら4人が思い思いに発した言葉が、そのまま画面上に表示されるというのはなかなかにシュール。タイトルが『ヨーデルゴルフ』となる所以だ。

ゲーム内でもゴルフカートで移動することになるのだが(もちろん歩いて移動することも可能)、おいてきぼりを食らったときに思わず発した「ああ、待ってくださいよー」という言葉がそのまま画面に表示されたときは思わず笑ってしまった。
まさに、気軽に楽しめるパーティーゲームといった趣きだ。ゴルフカートに入った皆さんが楽しそうな表情で試遊していたのも納得というもので、プレイしていると思わず顔がほころんでしまうタイトルだ。

本作のディレクターを務めるのは、キュー・ゲームスの小林鈴果氏。入社4年目にしてディレクターに抜擢されたという期待の新星だ。小林氏に『ヨーデルゴルフ』の経緯などを聞いてみた。
ゴルフのプレイ環境は近接ボイスチャットに向いているのではないかとの発想から

――どのような経緯で本作が生まれたのですか?
小林
本作は社内での技術実験がベースになっています。近接ボイスチャットの“プロキシミティチャット”というテクノロジーがありまして、実際の距離に合わせてプレイヤーのボイスの音量が変わって距離感がわかるという技術なのですが、それを使っておもしろいゲームが作れないかということで技術実験がスタートしたんですね。
私はそのチームのコアメンバーのひとりだったのですが、実験を続けているうちにある程度ボイスチャットの機能が固まってきたので、「BitSummitに出してみようか」となったんです。それがBitSummitが始まる3ヵ月くらい前ですね。
――3ヵ月で出展まで持っていったのですか?
小林
ものすごいスピード感で、怒涛でした。
――近接ボイスチャットの研究が、ゴルフにつながったのはなぜですか?
小林
近接ボイスチャットはパーティーゲームと親和性が高いのですが、ゴルフのプレイ環境は近接ボイスチャットに向いているのではないかと思ったんですね。いっしょに移動したり、けっこう遠いところにいる人に話しかけたり……。同じ空間内でプレイヤーどうしが緩くつながれる環境ということで言えば、ゴルフなのではないか、ということでゴルフになりました。
プレイヤーどうしがいっしょにその場にいるような感覚が大事だということで、ボイスチャットメインで、ゴルフも楽しめたらいいねという感じでした。
――メインはボイスチャットを楽しむゲームなのですね。ボイスチャットをしていて3Dで文字が出てくるというアイデアはどのような発想から生まれたのですか?
小林
しゃべりながらふつうにプレイしていたら、「どこかでしゃべっているな」くらいの感覚になりますよね。“どこかでしゃべっている”に加えて、そこにリアルタイムでテキストが文字起こしされるシステムを加えて、プレイヤーの会話そのものが遊びになるようにしようと思ったんです。
――会話そのものが遊びになるというのはおもしろいですね。ボイスチャットということで言うと、洞窟の中で声が反響したりもしていましたね。
小林
プロキシミティチャットをベースに、環境によって声の聴こえ方が変わる音響表現も入れています。部屋の中で話すのと外にいる人と話すのとでは聴こえかたが違ってきますよね。実際にその場にいるかのような感覚が、より臨場感を持って感じられますね。
――『ヨーデルゴルフ』は、テクノロジーをどう活かすかにこだわったタイトルとも言えそうですね。
小林
テクノロジーは新しいことに挑戦するという意味でも好きですし、実験しながらゲームを作れるプロジェクトに関われて幸運でした。

――近接ボイスチャットは本作のキモだとして、そのほか本作でとくに注力したポイントはありますか?
小林
このゲーム、ゴルフがテーマなのですが、私ぜんぜんゴルフをしたことがないんですよ。私自身はゴルフに詳しくなく、チーム内でも本格的なゴルフ経験がある人は多くありませんでした。
それでゴルフのゲームを作るとなったときに、このプロジェクトでやるべきことは、“ゴルフっぽくすること”ではなくて、同じゴルフをご存じでないプレイヤーの皆さんがこのゲームを遊んだときに、楽しめるポイントを増やすことだと思ったんです。そこがけっこう気にして作ったところです。
――具体的にはどのようなところですか?
小林
ゴルフカートに乗ってみんなで移動するとか、突然鹿が現れて乱入してくるとか……。プレイヤーの皆さんがゴルフ以外の要素で盛り上がれるような楽しめるコンテンツを増やしていこうというのは、私はけっこう気にしていたかなと思います。
――『ヨーデルゴルフ』というタイトルもユニークですね。
小林
本作では、しゃべった言葉が3Dテキストになります。逆に言えば、しゃべらないと3Dテキストになりません。誰かに声で伝えるというのがいちばん大きな要素だということで、それが伝わるようなタイトル名にしたいと思ったんですね。ご存じの通り、“ヨーデル”はアルプス地方の牧童たちが、山間にいる仲間たちなどに合図を送るために発達させた伝達手段です。
ゴルフも自然って重要ですよね。自然の中にあるコースでいっしょにコミュニケーションを取りながら共通の目的で遊んだり集まったりするのがマッチするかなと思って、『ヨーデルゴルフ』になりました。

“冒険をしながら楽しめる”コースも実装予定
――せっかくなので、少し小林さんのこともおうかがいしたいのですが、もともとゲーム業界を目指していたのですか?
小林
はい。大学のころからずっとゲームを作っていました。京都芸術大学のキャラクターデザイン学科のゲームゼミですね。もともとお父さんがゲームが大好きで、その影響ですね。
大学のころにBitSummitのゲームジャムにも参加していたんですよ。ゼミの村上聡先生がゲームジャムの審査員を担当しているつながりもありまして。それでBitSummitに行ってみて、「すごいな、BitSummitというイベントは!」と驚かされました。それで主催しているキュー・ゲームスに興味を持ったのが入社するきっかけですね。
――なぜキュー・ゲームスに?
小林
やっぱり働く環境がいちばん大きかったです。京都で生まれて京都で育って学校もずっと京都で、京都が基本的に好きで、京都のゲーム会社もすばらしいゲームをたくさん出している。地元でゲームが作れるのって最高だなと思ったんです。
それで、働いている人たちや働く環境が自分に合っているかなと思って、キュー・ゲームスに入社することにしました。
――お話をうかがっていると、“BitSummitの申し子”というか、“BitSummitチルドレン”みたいな感じですね。
小林
(笑)。
――Steamのサイトでは“近日登場”となっていますが、『ヨーデルゴルフ』はいつごろ発売になるのですか?
小林
発売時期はまだ調整中ですが、まずは年内をひとつの目標として開発を進めています。
――ゲームのボリュームはどのくらいになるのですか?
小林
ひとつの大きなエリアの中に、いくつかホールがあるというオープンワールド型にしようと考えています。
――1ホール目から順番に……ということではないのですか?
小林
それもできるようにしたいですし、フィールドを回りながら、「ここにゴルフのコースがあるから、ちょっとゴルフするか!」くらいの感覚で、フィールドで楽しみつつ、ゴルフを遊ぶといったイメージです。
BitSummitに出展したデモ版では比較的整えられたホールをふたつプレイできるのですが、製品版では山の上や崖の上にホールがあってそこまでボールを運ぶといった、けっこう高低差があったり、自然の中にホールがあるといった具合に、言ってみれば“冒険をしながら楽しめる”コースの実装も予定しています。
クルマやバイクに乗ったり、湖で少しスワンボートに乗って寄り道しながら遊べたり……。ゴルフコースを楽しみつつ、寄り道をしながら、気が向いたらちょっとゴルフに戻るくらいのテンション感のバランスになるようにできたらいいなと考えています。
