「ウチの娘はどうなったんだ!? 大丈夫なんだよな!? “続きは正式版でお楽しみください”じゃないって……!」
これは、今回紹介する『火山の娘』の体験版をプレイし終えた筆者の率直な反応である。PC版の展開を知らない人であれば、だいたいこうなるはずだ。
『火山の娘』は、Egg Hatcherが開発を手掛けるマルチエンディング育成シミュレーションゲーム。2023年4月にSteamで発売された人気作であり、今回“完全版”として登場。サイバーエージェントグループのColorful Paletteがパブリッシャーを担当している。
発売は2026年7月30日(木)を予定しており、対応プラットフォームはSteamのほか、Nintendo Switch、プレイステーション5(PS5)、iOS/Android。
完全版の大きな特徴は、ローカライズの刷新だ。PC版も全レビューが“圧倒的に好評”、日本語レビューも“非常に好評”(執筆時点)という高い支持を得ているが、一方でプレイヤーからは日本語翻訳の粗さを指摘する声も目立っていた。
完全版では新規フルボイスが収録され、よりストーリーに没入できるようになった。日本語版キャストには2023年のリリース時から担当していた中原麻衣さんをはじめ、井上麻里奈さん、伊東健人さんなどが担当するという。
今回はそんな本作の体験版をひと足先にプレイできたので、その魅力をレビューしていく。なお、今回プレイしたのはAndroid版で、開発中のビルドである点にご留意いただきたい。
※体験版の終盤までのネタバレが含まれています。
あっという間にプレイヤーを“父親”へと変えてしまう、かわいすぎる娘に終始デレデレ
本作は、いまは亡き妻との過去の回想から物語が始まる。妻の名はルカ(声:遠藤綾)。

主人公の妻・ルカ。
彼女の大好きな花をプレゼントし、間もなく生まれてくる娘の話で盛り上がる。そのまま読み進めると、娘の名前・血液型・誕生日、そして父親(プレイヤー)の名前・誕生日を設定するパートへと移る。デフォルト設定では、娘がローズ(声:中原麻衣)、父親がウーバー(声:小林親弘)となっている。筆者はとくに変更せず、そのままプレイすることにした。


情報の入力が終わると、妻は「これからは娘といっしょに、誰よりも幸せに暮らしましょう」と温かい言葉をくれる。しかし、これはあくまで過去の記憶。画面が切り換わるとそこにはもう妻の姿はなく、ふたりで撮った写真だけがポツリと残されていた。
「おはよう、ルカ。また、5年前の夢を見たよ」と、悲しげにつぶやく父親。なんとも悲壮感の漂う幕開けだ。

ゲームが始まると、まず“どんな父親になりたいか”を選択することになる。“娘が安心できるパパ”、“娘が自慢できるパパ”、“娘をかわいがるパパ”の3つから選び、父親がその理想にふさわしい言動をとることで、娘からの評価が上がる。期間内に評価を一定まで上げられれば、育成に役立つ報酬がもらえるという仕組みだ。



リーという名のしゃべる鳥も登場。ゲームの進行を助けてくれるサポートキャラのような存在だ。
理想の父親像を選んだら、いよいよ娘の部屋へ。プレイヤーにとっては愛娘との初顔合わせだ。期待に胸を膨らませて入ってみると、そこには後ろを向いた娘の姿が。どうやら、ベッドの下に何かを隠している模様。

こちらに気づいた娘は「パパ、おはよう!」と挨拶。しっかり挨拶ができる、じつにいい子である。何をしていたか尋ねると「ひみつ~!」との答え。かわいいぞ、愛娘よ。ここで“秘密”に対してどう対応するか選択肢が表示され、この判断が前述したパパへの評価に直結する。

「どの勇者にも自分だけの宝箱があるからね!」を選ぶと、娘は「いつかすごい勇者になれるかな。そのためにも朝の体操をしなくちゃ!」と意気込んでいた。

プレイヤーにとっては出会って間もない存在なのだが、屈託のない“パパ”という呼び声や、たどたどしい隠しごと、選択肢に対する健気な反応など、短い会話の中に“子どもらしさ”がぎゅうぎゅうに詰まっていた。筆者は、あっという間に心を奪われてしまった。
さらに、亡き妻が喜んでくれるよう子育てに励むという主人公のバックボーンも相まって、ゲーム開始からわずか数分。筆者はすでにローズの父親と化していた(念のために言っておくが、筆者は独身である)。


オープニング映像より。ショーウィンドウに“ほっぺたずり~”がかわいすぎる。
ちなみに、“勇者”という単語に違和感を抱いた読者のために補足しておくと、本作は人間と魔物の対立が激化している“火山国”というファンタジー世界が舞台だ。作中には、実際に本物の勇者も登場する。
緩い育成モノと思っていたら、ガッツリした育成ゲーだった
秘密にまつわる会話を終え、すっかり父親気分の筆者は「こんな風に選択肢を選びながら、娘を育てていくアドベンチャー形式の作品なのかな」とのんきに考えていた。
ところが、直後に画面へ現れたのは、ターン数、行動力、気分、そしていくつものUI。その瞬間、「あ、違う。これ、ちゃんとした(本格的な)育成シミュレーションだ」と察した。

改めて本作のゲームサイクルを説明しておこう。本作は、娘が成人するまでの42ターンのあいだに、勉学を教えたり、さまざまな場所へ出かけたりしながら、彼女を立派な大人へと導く育成シミュレーションゲームである。
行動範囲には“自宅”と“外出先”があり、自由に行き来が可能だ。各地には行動力を消費するさまざまなアクティビティがあり、それらをこなすことで娘のステータスや好感度、気分などが上昇していく。また、各ロケーションには独自のコンテンツも用意されている。
自宅では愛娘とおしゃべりをしたり、行動力を消費していっしょに遊んだりできる。なかでも重要なのが“授業”だ。これは娘の能力に合わせたカリキュラムを組み、各種ステータスを伸ばすコマンド(行動力は消費しない)。これを行うと強制的にターンが終了し、翌ターンへと移行。行動力が全快する。

積み木で知力を培う様子。



授業の光景。気分が低いと基礎ステータスが半減し、授業効率が落ちるので注意。
自宅の地図からは、火山国の各地にあるロケーションへ移動できる。今回の体験版で行けるのは、“レストラン”と“野馬湖”の2箇所のみ。各地には住民がおり、世間話や、世界観を深めるような情報を聞けるほか、選択肢が発生する会話で娘のステータスや父親への評価を上げることも可能だ。


さらに、レストランなら食事で行動力を回復させたり、湖では耕作で得た食材をその場で調理して育成に役立つ料理を作ったりするなど、場所に応じた遊びも充実している。

自宅や外出先で行動力を使い切り、会話やコンテンツをこなしたのち、最後に自宅で“授業”を行ってターンを進める。これが体験版における本作の基本的なサイクルとなっている。
奥深いステータスと不穏な言葉が記された才能スキル
本作ではさまざまな場面で娘のステータスが上昇していくが、これらは大きく分けてふたつのカテゴリーに分類される。
ひとつ目は“基礎ステータス”。体力、知力、感受性、想像力があり、これらの数値が高いほど効率的に授業をこなせるようになる。また、これらにはレベルの概念があり、1レベル上がるごとに“才能ポイント”をひとつ獲得。このポイントは、後述する“才能スキル”の習得に使用する。
ふたつ目は“主要ステータス”。こちらは筋力、頭脳、魅力の3つだ。会話の選択肢には特定のステータスが要求される場合があり、数値が不足しているとうまくいかないこともある。逆に成功すれば、通常の会話よりも大きな恩恵が得られる仕組みだ。このように娘のステータスは意外なほど豊富で、試行錯誤しながら育成する楽しさに満ちている。

娘が幼いあいだは、父親の主要ステータスが参照される。
せっせと育成に励む筆者は、貯まったポイントで才能スキルを習得しようと画面を開いた。そこには“戦闘”、“生活”、“社交”という3つのカテゴリーが並んでいた。
「生活と社交はわかる。でも、戦闘ってなんだ?」恐る恐る戦闘スキルをタップしてみると、“攻撃が5増加する”、“HP上限が8増加する”など、何やら不穏なワードがズラリ。

体験版の範囲ではまだ触れられないが、じつは本作、娘がある程度成長すると、冒険者として魔物と戦うコンテンツが解禁されるのだ。装備やスキル、仲間キャラクターといった要素も備わった本格的なターン制バトルが展開されるため、人によってはこれこそがメインの楽しみになるかもしれない。


オープニング映像より。成長した娘の姿。最前線で剣を振るうゴリゴリのアタッカータイプ。
さらに友人との交流や恋愛要素も完備されており、好感度を上げたキャラクターに応じてエンディングなどが変化する。婚約者候補も相当数用意されているらしく、何周でもプレイしたくなる奥深さがある。

オープニング映像より。友だちがいっぱいできるのはうれしいことだ。
のどかな体験版からは想像もつかないほど、遊びの幅が広いゲーム性だ。というか、愛娘が魔物と戦ったり、誰かと色恋沙汰になったりするなんて……父親としては、もう気が気ではない。
娘とお祭りを満喫。そして、終わりは唐突に訪れる
育成開始から6ヵ月が経過した37ターン目。ついに“小鳥の日”がやってきた。これは毎年6月に開催される恒例行事で、親たちが愛する子どもにプレゼントを贈るお祭りだ。

プレイヤーもプレゼントを贈れるのだが、その仕様は少々特殊である。まず、お金を消費して最大3つまでプレゼントを用意。これは“娘が欲しがっている特定の品”ではなく、“プレゼント”という名のアイテムを渡すことになる。
渡したプレゼントはすべて“くじ引き券”に交換され、祭り会場の景品交換所で使用可能になる。くじ引きで手に入るのは、前述した友人や恋愛候補たちへの贈り物だ。お父さんからのプレゼントが、巡り巡って他人への贈り物に変わってしまう……。システム上の都合とはいえ、父親としては少し切ない。

なお、小鳥の日は外出コマンドが使えず、授業コマンドを選択すると強制的に祭り会場へ移動する。そのため、自宅で行動力をすべて消費してから向かおう。
さっそく会場へ足を運ぶと、街はお祭りムード一色。娘もあちこちの出し物に興味津々で、ふと「連れてきてよかったな」と心が和む。

祭りには専用のミニゲームも用意されており、体験版では、矢印が止まる色を当てて賭け金を得る“ルーレット”(思い切りギャンブルだ……)と、制限時間内に問題を解く“親子算数競技”が楽しめる。算数競技を行うとお祭りが終了してしまうため、事前に住民との会話やルーレットを楽しんでおくのがいいだろう。

算数競技は、30秒間に次々と出題される計算問題を解いていくミニゲームだ。結果に応じて追加のくじ引き券がもらえるため、父親としての威厳を見せるチャンス。筆者は30秒で20問を完答、ミスもゼロという好成績を収め、娘も大喜び。追加で3枚の券を手に入れた。

競技が終わると景品交換所へ。好きな数字を選んで贈り物を獲得していく。すべて交換し終えると、帰宅イベントが発生する。

親子ふたりで家に帰るべく歩いていると、金色の小鳥が目の前を横切った。この世界で幸せの象徴とされるその鳥を捕まえようと、娘は無我夢中で追いかけ始める。

慌てて後を追い制止を試みる父親だったが、娘はそのまま崖から転落。父親も必死にその手を伸ばし……。


「さっきまであんなに楽しくお祭りを満喫していたのに……唐突すぎる! おいおい、どうなっちゃうんだ!?」と、筆者は思わず悲痛な叫びを上げた。

画面が切り換わると、そこはベッドの上。亡くなったはずの妻・ルカに起こされる。これは夢か、それとも幻か。娘の安否を案じる父親に、ルカは「大丈夫。私に任せてくれたら、全部うまくいくから。だから本当に心配しなくていいの」と優しく言葉をかける。そして無情にも映し出される“続きは正式版でお楽しみください”の文字。


これが、冒頭で記した筆者の反応の全貌である。それまでどっぷりと父親気分に浸っていただけに、娘のことが心配でたまらない。なぜそこにルカがいるのか、彼女の発言の真意は何なのか。気になる謎が多すぎて、気づけばSteamのストア画面を開いている自分がいた。正式版が待てない。
あの引きの強さは“卑怯”と言いたくなるほど見事。続きを追わずにはいられない、まさにお手本のような体験版だった。

正式版への誘導が完璧すぎる本作の体験版は、製品版が発売される7月30日より各プラットフォームで配信予定。今回のレビューで紹介した小鳥の日までの37ターン(約1時間分)をプレイでき、育成の基礎や住民との交流を体験できる。
製品版ではさらに奥深い育成やバトル、恋愛、50種類以上のマルチエンディングと、圧倒的なボリュームが待ち受けている。また、今回は体験できなかったが、娘とキャラクター2人のみで探索する“双影の路地”という新コンテンツも追加されるとのこと。





あわせて、探索中の会話やストーリー、スチルなども追加される。日本語のローカライズも一切の違和感がなかったため、PC版をすでにプレイ済みという方にもおすすめしたい。ぜひこの体験版で、愛娘との生活に足を踏み入れてみてほしい。


サービス基本情報
- タイトル :火山の娘
- 対応機種:iOS/Android /Nintendo Switch/PlayStation 5
- 販売日:2026年7月30日(木)
- 価格:PS5版……1320円[税込]、その他プラットフォーム版……1300円[税込]
- ジャンル:マルチエンディング美少女育成シミュレーションゲーム
- 開発:Egg Hatcher/Colorful Palette
- メーカー:Colorful Palette
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