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龍が如くスタジオ代表・横山氏が考えるキャラクターづくりの流儀。魅力を引き出す秘訣は"どうでもいい話"?

龍が如くスタジオ代表・横山氏が考えるキャラクターづくりの流儀。魅力を引き出す秘訣は"どうでもいい話"?
 2025年12月8日に20周年を迎えた『龍が如く』。“東京・神室町”を舞台に主人公・桐生一馬を始めとした“裏社会”に関わる人間ドラマや、主人公・桐生一馬を始めとしたさまざまなキャラクターが交差する物語が話題を呼び、いまなお多くのファンに支持されているタイトルだ。

 その後、『龍が如く』は続編となるナンバリングタイトルに加え、外伝やスピンオフなども数多くリリース。最新作としては、2026年2月12日にNintendo Switch 2、プレイステーション5(PS5)、プレイステーション4(PS4)、Xbox Series X|S、PC(Steam)にて『
龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』の発売が控えている。
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 そんな“大人のためのエンターテインメント”として始まった『龍が如く』シリーズにおいて、その魅力の核となるのはやはり物語に登場する“大人のキャラクターたち”だろう。そこで、「龍が如くスタジオ」の代表を務める横山昌義氏に改めて“大人の魅力”について深掘りしつつ、キャラクターをいかに魅力的に描き出すのか、その秘訣について語っていただいた。

※本記事は週刊ファミ通 2025年11月27日号(11月13日発売)に掲載されたインタビューに加筆、編集したものになります。

横山昌義よこやま まさよし

龍が如くスタジオ代表として『龍が如く』シリーズの制作総指揮を担当。本作でもシナリオやキャスティングなどに関与しつつ、統括的な立場で制作に携わる。

憧れの“オトナ”像を届けるのがエンタメを生み出すうえでの使命

――これまで魅力的な中高年の男たちを生み出してきた横山さんが、大人の男性を最初にカッコイイと感じたのはいつですか?

横山
 すでに子どものころからカッコイイと感じていましたね。世代的にはいわゆるトレンディードラマが流行していたころです。それを観て「大人になったら、赤いオープンカーに乗って女の子とデートするものなんだろう」と思っていました。

 俳優で言うと、石田純一さんや岩城滉一さんといった方々ですね。仕事もできるし“遊び”も一流、お金も稼げてデキる男……それが“カッコイイ大人”のイメージでした。そのため、自分がキャラクターを作る際にも、そういった大人をイメージして作っています。

 マジメに生きているだけではない、つまり“ワル”の魅力ですよね。マジメに実直に生きていくことは自分自身がやればいいことであって、自分にない生活をしている人だったり、自分にない考えかたや生きかたをしたりする人だからこそ憧れを持つんだと思います。

 いわゆるドラマなどで扱われる題材に刑事ものや任侠ものが多い理由は、多くの人の日常にとって、戦ったり喧嘩したりといった場面があまりないからなんですよね。

――なるほど。ちなみに横山さんがこれまでで一番カッコイイと思った実在の人物についても教えてください。

 『龍が如く』シリーズで言えば伊達真を演じてくださった山路和弘さんですね。声ももちろんそうですが、雰囲気含めた生の山路さんを見たら色気の塊すぎて、すごいです。

――山路さんのカッコよさについては完全に同意です! ちなみに昨今のエンターテインメントでは“カッコイイ大人”が少なくなっているようにも感じますが、その点はいかがでしょう。

横山
 時代が進むにつれて等身大のキャラクター性がウケるようになっていき、クールでニヒルなキャラクターが減っていきました。そして、カッコイイ大人の魅力を見る機会が少なくなっていったんです。いわば、大人の遊びかたのようなものが提示されなくなってきた、とも言えると思います。

 “これぞ大人である”という憧れのフォーマットが、いまはないに等しいんですよね。でも少なくとも僕らの世代には憧れの男性像がありました。それを提示するというのが、僕らの世代がエンタメを作るうえでの責任だと思っています。

――そういった考えがもとになり、『龍が如く』の魅力的なキャラクターは生まれたのですね。

横山
 たとえば桐生一馬は、昔からある任侠映画の無口で無骨な男のイメージ像を、現代的にしたものです。じつのところ桐生はわりとおしゃべりなんですが(笑)。イメージとしては寡黙かと思います。そんな男を主人公にしたのが初代『龍が如く』なのですが、当時シナリオを書きながらも「無骨すぎるな」と思っていました。

 大名のために命を投げ出す武士のような精神の人って、現代にいたらおかしいじゃないですか。ですが桐生はそういう男です。そのため、桐生のシナリオを固めている当時、僕は時代劇を作っているような気分でした。親友のために刑務所に務めて裏切られて……と、まさに任侠な存在であり、ある意味型にハマって作られた時代遅れな存在とも言えます。

 しかし、ずっとそのままだとプレイヤーは共感できませんし、好きにもなれません。そこで『
龍が如く3』から“子育て”を始めとした、現実の人々にとって身近なテーマにも桐生が触れていくようになり、ようやくリアリティーのある男性に近づいていきました。『龍が如く3』以降の桐生の魅力というのは、パーソナルな部分が明らかになってきたという要素が大きいです。

 ですから、キャラクターを作るうえで最初から決めていることは、じつはそれほど多くなくて、シリーズが長くなると自然にその人物の魅力が肉付けされていくのかなと思います。ちなみに昔の芸能人だとプライベートを徹底的に隠してイメージを崩さないようにしていた人もいましたが、いまだとSNSなどでプライベートも含めてオープンにされている人も多いですよね。

 ですから、ある意味そうやって桐生自身の素性を明らかにしていったのが『龍が如く3』以降というわけです。カラオケをしたりポケサーをしたりといった、彼の意外な側面などについては最初から決めて作っているわけではないのですが、シリーズが長くなるにつれてそういった一面が付け足されていった感じです。
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それぞれ『龍が如く 極』での桐生一馬
――そうなんですね。『龍が如く』シリーズでは俳優の方がフェイスモデル含めて演じることも多いですが、桐生のようなオリジナルキャラクターと作りかたの違いはあるのですか?
横山
 俳優の方に演じていただく場合は、その人のイメージありきで作っています。俳優に寄せて作ったうえでシリーズのキャラクターに当てはめていくやりかたです。実写ドラマのキャスティングに近いかもしれません。ただそれは、俳優をキャスティングする前提のキャラクターに限った話で、僕がメインで物語を作っていたときは、まず人物相関図を作ってからストーリーを構築して、7割ほど人物が固まってからようやくキャスティングを決めていました。

 最初の段階で俳優が演じることを想定していたとしても、そのキャラクターの人物像が現実的でなければオリジナルキャラクターに変更するといったこともあります。オリジナルでいくかキャスティングでいくかはいつもギリギリまで悩むところです。ただ、これはゲームだからこそできる贅沢な作りかただと思いますよ。

 たとえばドラマのプロデューサーだと、絶対に実写の人間でしか当てはめられないわけですが、我々はそこにオリジナルキャラクターと実写の人間を混在させられますから。オリジナルのキャラクターをキャスティングでもできるというのは、ひとつの強みだと思います。

――相関図から物語を構築する際、キャラクターの個性はどのようなタイミングで、どうやって肉付けしているのでしょうか?

横山
 僕のシナリオ制作の手法に限って言えば、相関図を作ると物語のあらすじも固まっていきます。そのときにキャラクターの全体像も浮かんできますが、その段階ではどんな展開になるのかまでは決めていません。そこからシナリオを作りつつ、意外性や物語の展開を決めていくことで、キャラクターの性格や趣味趣向が足されていく感じです。

 ですから最初に決めていることはほぼなく、そのキャラクターの魅力的な部分は、後付けで足されているケースがほとんどですね。正直、魅力的なドラマを描くよりも魅力的なキャラクターを作るほうがよっぽど難しいと思っています。

キャラクターの魅力を描き出すには、いかに“どうでもいい話”を含められるかが勝負

――『龍が如く』シリーズといえば、キャラクターの描写が細かいことも印象に残りやすい部分だと思います。

横山
 話を成立させるためにキャラクターを置いているという都合上、ただシナリオを書いているだけだとキャラクター性が薄くなってしまいます。だからこそ、キャラクターの性格を出すという意味では、“ろくでもない話”や“どうでもいい話”を描くことがとても重要なんです。このムダ話をどれだけ入れられるかが勝負です。

 スケジュールと予算という制約があるなかで、ムダを入れ込むことほど怖いものはありません。ムダなものほど、真っ先に削る対象になるわけですから。ですが、じつはそこにこそ魅力が眠っていると考えています。これは人付き合いと同じで、たとえば上司と仕事の話だけしていてもつまらないですが、重要ではないプライベートの会話などをすることで人間性が見えてきて楽しくなってくることもありますよね。

 ゲーム内の話で言うと、『龍が如く』シリーズでは食事シーンを描くことにもかなり注力しています。何かを“食べる”という行為は本能でもあるので、飲み食いする量やそのときの振る舞いにも人間性というのは色濃く現れるんです。結果としてそれがプレイヤーの印象にも残るんですよね。
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『龍が如く7 光と闇の行方』より
――ああ、『龍が如く5 夢、叶えし者』のホルモン焼き、『龍が如く0 誓いの場所』のおでんのシーンなどですね。
横山
 食べ物系の描写には相当こだわっているのでCG班の負担も大きくなってしまうんですが(笑)。相手のいろいろな一面を知っていくことと、そのキャラクターが魅力的に映っていく、ということはイコールになると思っているので、そういった部分はすごく意識して取り入れています。

 コワモテの男なのに冷麺が妙に好きだったら、ちょっと愛嬌があるじゃないですか。現実でも感じられるようなことを、ゲームでもやっているわけです。それらは物語に必ずしも必要ではない描写と言えるかもしれませんが、意図的に取り入れることで、キャラクターの魅力を引き出そうとしています。

 ちなみにですが、“相手の一面を知る”という体験で個人的におすすめしているのは飲み会に行くことです。なぜなら、人をものすごく嫌いにならなくて済むからです。飲み会って何かしら食べているので、どんな人かわからなくてイメージがつかめないような人や、「自分とは合わないな」と思っていた人でも、食べ物やお酒の好き嫌いなどがわかっていくことで少しずつ相手のパーソナルな部分を知ることができます。

 もちろんプライベートにまでずけずけと入り込めとは言いませんが、いっしょに飲み食いするだけでも相手に対する印象は変わっていくと思います。だからこそ“飲み会に行ってムダ話をして仲よくなる”、といった要素をゲームにも同じように落とし込むことを『龍が如く』シリーズでは大切にしています。加えて、食べ物の話からは逸れてしまいますが、キャラクターが住んでいる部屋にも各々の個性が現れるようにしています。

――数々のキャラクターを作るなかで、人気が出ると確信していた登場人物はいましたか?

横山
 いないですね。大前提としてゲームが売れないことにはキャラクター人気も出ないと思いますから、「こいつ、人気出るだろうな」と思ってキャラクターを作ったことはありません。

 そもそもシリーズを意識し始めたのが『龍が如く3』からなんです。初代『龍が如く』は続編が出ると思って作ってなかったですし、『
龍が如く2』も「ここで終わるかな」くらいの感覚で作っていましたから。やっぱりシリーズになってもその癖がついているというか、「毎回ここで終わり」という意識で作っています。たとえば、“春日一番のその後”なども、現時点ではまだ何も考えていません。

――逆に真島吾朗のように、プレイヤーの反応次第で出番が増えることはありそうです。

横山
 真島はまさにそうですね。初代『龍が如く』で人気が出たので、活躍が増えていきました。じつは初代のときって、真島には刺青のデザインがなかったんです。それを『龍が如く2』を制作するにあたって追加したのですが、作ったのを忘れていて、当初は全編上着を着たままの登場でした。

 あとでデザインチームから「刺青、作りましたよね!?」と言われて、ハッと気づいて(笑)。そこから、“上着を脱いで、たったひとりで敵対する組に対抗する”という見せ場を急きょ作りました。物語の本筋を左右しないからこそできたのですが、それも先ほど言った“ムダ”なわけです。
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『龍が如く 極』での真島吾朗
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『龍が如く0 誓いの場所』より
――あのシーンにはそんな裏話があったのですね。ちなみに真島だけでなく、『龍が如く』シリーズの主役級キャラクターは軒並み人気が高い印象がありますが、いかがでしょう。
横山
 どうなんでしょうね。真島は間違いなく人気だと思います。グッズの売り上げも高いですね。桐生も冴島大河も人気です。ただおもしろいのが、春日一番も人気が高い男なのにグッズの販売数はそれほど高くないんです。春日は、皆さんの中でずっと“ナンバー2”の男なんですよ。

 憧れの男というより、友だちになりたい男なんだと思います。それは冒頭にお話した内容につながるのですが、桐生や真島は現実ではありえない男たちです。でも、春日は完全に“いいやつ”というか等身大の主人公で、みんなが憧れるような対象ではないキャラクターにしようと思っていました。憧れの対象としては、すでに桐生がいますから。

 あえてそこを狙ったキャラクターなので、その目的自体は達成できているものの、アクリルスタンドのようなグッズの販売数と結び付かないのは不思議ですね。“一番せんべい”だけは異常に売れていますが(笑)。
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それぞれ『龍が如く7 光と闇の行方』より春日一番
――春日は憧れというよりも親しみやすさが魅力というファンの気持ちはわかります。ちなみに『龍が如く』シリーズでは10~20代の人物がメインの役どころを担うことがほぼないのは、どんな理由からでしょうか。
横山
 極道モノだからですね。極道の世界で10代の組長なんて、絶対にないわけです。まあ昭和以前の世界ならあるかもしれませんが、いまは実績を積まないと現実味がありません。単純にリアリティーが失われてしまうのが嫌なので、メインにはならないだけです。

どんな困難にも屈しない姿が“桐生一馬”の魅力

――一方で、シリーズでは数々の敵キャラクターも人気です。敵となる男たちの魅力は、どのように作っていったのでしょうか?

横山
 よく敵キャラクターについては「殺さないでほしかった」と言われます。ですがはっきり言ってしまうと、最初から死ぬことが決まっているからこそ見せ場を作れたり、ありえないくらい悪いことができたりするんです。いい人になる必要がないからこそ、破天荒な魅力が付くんですよね。

 僕は悪いことをしたキャラクターには報いを受けさせるというか、何か代わりになるような出来事を与えるようにしているのですが、そういった役回りがあるからこそキャラクターの魅力が描かれると思っています。結末が決まっているからこそ愛着があるキャラクターとして描けるので、そこが決まらないとどっちつかずになってしまうんですよね。

――悪役だからこその魅力の描きかたですね。では最後に、桐生は現在50代後半ですがシリーズを通してずっと魅力的な男として描かれています。歳を重ねてもカッコよさを崩さないように工夫したことはありますか?
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横山
 年齢という意味では、もはやカッコイイおじさんは現代では珍しくないのかもしれません。いまの50代って、昔とイメージが違って皆さん若々しいですよね。僕も来年から50代ですが、僕が昔に思っていた50代って、もっと老けているイメージでした。だから50代の桐生も、現代に生きていたらこれくらいのビジュアルになるだろうと自然に収まりました。
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『龍が如く8』での桐生

 ちなみに『
龍が如く8』の結末の話で言うと桐生については最初は死ぬつもりで描いていました。どこかで桐生の人生を終わらせないといけないとは思っていて、だから『龍が如く8』ではサイドコンテンツとしてエンディングノートをつくりました。先にもお話しましたが、シリーズの途中で桐生には人生で起こることを体験させたいとも思っていたので、桐生自身は結婚こそしなかったものの、“アサガオ”での生活や、遥や遥の子どもである遥勇(ハルト)との、家族同然のつながりも描いてきました。

 そして、人生で起こる要素として最後に残ったのが“病”というテーマだったんです。自分の人生が終わるかもしれない中で桐生は何を思うのか、その葛藤を描きたいと考えていたのですが、途中で「死ぬことをそのまま描いて楽しいのか?」と思うこともありました。また、ちょうどそのあたりの時期に僕の母親ががんで亡くなりまして、そのとき主治医の先生が力を尽くしてくださっているのを身近で見ていたんですが、やっぱり最後まで諦めないんです。

 その尽力を目の当たりにしたときに、「病が進行したからといって諦めて放置する桐生はカッコ悪いな」とあらためて思いました。ここまで力を尽くしてくれるということは、簡単に逃げてはいけないことなんだと。だったら重たい病であろうとも立ち向かう桐生を描こうと決意しました。それを決めた日に、チームの各リーダーを集めて「ごめんなさい、やっぱり病から逃げない桐生を描くことにしたので話を変えます」と言ったら、全員「そっちのほうがいいです」と言ってくれたんです。病によって当然桐生は苦しむことになるわけですが、“桐生一馬”というキャラクターを考えたときに、どんな病に対しても簡単には屈しない姿を見せる方がカッコイイ。そんなカッコよさこそが“桐生という男の魅力”なのではないでしょうか。
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