『コードヴェイン2』アートからも物語を感じてほしい。前作にはなかった明るくカラフルな世界や印象的な“金継ぎ”について、アートディレクターの板倉耕一氏にインタビュー

by西川くん

『コードヴェイン2』アートからも物語を感じてほしい。前作にはなかった明るくカラフルな世界や印象的な“金継ぎ”について、アートディレクターの板倉耕一氏にインタビュー
 バンダイナムコエンターテインメントより、2026年1月29日発売予定(※)のプレイステーション5、Xbox Series X|S、PC(Steam)用ソフト『CODE VEIN II』。本作は2019年に発売されたドラマティック探索アクションRPG『CODE VEIN』の続編。続編ではあるものの物語のつながりなどはなく、本作ならではの新たな世界観とストーリーが展開される。
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※PC(Steam)版は2026年1月30日発売予定。
 そんな同作でアートディレクターを務める板倉耕一氏にインタビューを実施。本作のアートコンセプトや印象的な“金継ぎ”などについて聞いた。

板倉耕一氏イタクラコウイチ

『CODE VEIN II』アートディレクター。(文中は板倉)

失われた部分から伝わる“金継ぎ”の物語性

――本作のアートのコンセプトを教えてください。

板倉 
本作は高難度ゆえに、強い達成感が味わえるアクションゲームです。高難度な部分を強調するために、重厚で退廃的な世界を構築しました。また、フィールドが広大なので、基本的には殺伐としていながらも、探索の楽しみとしてさまざまなロケーションを用意しました。とくに、過去と現在のふたつの世界の違いは、本作の大きな特徴になっています。アニメ調のキャラクターデザインは踏襲しつつ、登場人物たちがカッコよく映えることも強く意識しているので、よりドラマティックな物語も楽しんでもらえると思います。

 これらはすべて、難関を乗り越えた先にある達成感や、進化したドラマティックなヒーロー体験など、本作の柱となるコンセプトに基づいて考えたことです。

――現在の世界は退廃的でしたが、過去の世界は明るくて、希望がある見た目ですよね。

板倉 
ゲームとして新しい要素ですし、パッと見ただけで自分がどちらの時代にいるのかわかるようにしました。現在の世界は地獄みたいな雰囲気になっています(笑)。

 現在の世界はもう崩壊しかけていますので、灰色主体と言いますか、世界全体が闇に包まれたようなイメージです。100年前の世界はまだ少し希望の残る、生きる活力が残っているような差を出したくて、現在の世界よりもカラフルで明るい世界にしました。
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現在の水没都市。人影はなくバケモノが闊歩している。
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過去の水没都市。シェルターでは避難民が生活している。
――なるほど。前作から差別化したこと、魅力として継承した要素はありますか?

板倉 
“吸血鬼”モチーフであることと、近代的な荒廃した世界観が、シリーズの特徴です。今回は吸血鬼をモチーフにしながらも、吸血鬼自体を差別化しました。前作は怪物に対抗するために産み出されたような設定でしたが、本作の吸血鬼は世界の遥か昔から存在する者たちです。時間の価値観などが人間と違うので、より人間と吸血鬼をデザインとしても明確に分けるようにしました。

 特徴的なのが、身体の一部分が金色の何かに置き換わっている“金継ぎ”といった要素です。吸血鬼らしいゴシック感もありつつ、人ならざる存在なんだなと強く感じられ、本作ならではのデザインになったのではないでしょうか。

 ちなみに近代的な世界がモチーフになっているのは、プレイヤーに近しい世界が崩壊しかけたほうがより「世界を救ってやるぞ!」と強く思ってもらえるのではないかと考えて設定した部分です。これは前作からそのまま継承されていますね。
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――キャラクターの全体的なデザインはどのようなことを心掛けていましたか?

板倉 
世界観を考える吉村さんと、密接にすり合わせながら作っていきました。とくに本作の吸血鬼は、身長3メートルの者やふつうのサイズの者も存在します。かなりデザインの自由度が高いので、キャラクターらしさをより強調できました。登場人物それぞれ、なぜその部位が“金継ぎ”になっているのかなどからも、物語性を感じてもらえると思います。

 ちなみに武器やバイクなど、吸血鬼の技術が使われているものは金色が施されています。吸血鬼の血は金色で、特別な効果があるんです。

――吸血鬼の血、ですか。武器やバイクなどは、血を取り入れるといった要素がありつつ、どのようなアイデアでデザインされていったのでしょうか?

板倉 
ものによりますね。たとえば吸血鬼の力を利用した装備“ジェイル”は、吸血鬼たちが昔から練り上げて作っていった、伝統的なものであることを印象付けしたかったので、細かな装飾の凝った意匠が取り入れられているような見た目にしています。

 一方で近接武器などは、人間たちがいままで作った技術を用いたものや、吸血鬼たちの技術が取り入れられたものなどさまざまです。いずれにしても、人間と吸血鬼たちが長く争ってきた歴史を感じてほしくて、もはや火縄銃のような見た目のものであったり、近未来的なものまで、多種多彩に用意しています。

 共通しているのは、刃などの部分には必ず金色、つまり吸血鬼の血が使われていることです。
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――なるほど。主観的な印象ですが、前作は黒・赤が作品のテーマカラーだったのかな、と感じていました。本作はどんなカラーですか?

板倉 
本作は黒・金ですね。前作の血の色は赤でしたので、ダークなイメージのある黒と、そして赤が主体でした。本作は吸血鬼の血が金色なので、黒・金になったわけです。ここは前作を踏襲しつつも、本作ならではの変化が付けられたと思います。

――とてもいい変化だと思いました。そういったなかで、バディである吸血鬼たちそれぞれの個性を際立たせるのは、どのような苦労がありましたか?

板倉 
デザイン面の前にキャラクター設定がしっかりありますし、主人公と関わることで描かれるキャラクター性がとても濃厚に用意されています。各登場人物の活躍を、シナリオチームが考えてくださるので、その物語を見ながらデザインを決めていきました。

 キャラクターデザインチームもシナリオを見てキャラクター性のアイデアを出したりすることもありますし、シナリオチームから取り入れられたデザイン性もあります。そこが密接にやり取りしたおかげで、さまざまなアイデアが生まれました。

 といった部分は、キャラクター性を高めたいと考えたら、自然とそうなるのかなと思います。これは本作に限った話ではなく、少なくとも自分のなかではどのタイトルでも同じ気持ちで挑んでいることです。

――本作は前作と異なるフィールド表現となり、苦労した部分も多いのでは?

板倉 
試行錯誤の連続でとても苦労しました。前作はステージごとに1本の柱があって、それに沿ってエリアを作っていきましたが、本作は地続きのフィールドなので、そのなかでバリエーションを持たせなくてはいけないので。また、現在と過去で2パターンのフィールドが必要な点も、難しかった部分です。

 本作のアートディレクターは僕のほかにも存在し、僕はアート全体を見つつもコンセプトアートに軸足を置いて、前作とどう差別化するのかを吉村さんと考える立場です。ほかのふたりは、キャラクターモデリング担当と、フィールドを見る担当です。ですから、フィールドだけでも統括するスタッフをひとり立てているほどです。ということは、キャラクターモデリングもそれくらい大事に、苦労している部分になりますね。

――しかも今回は、ファストトラベルや、バイクでの高速移動もあるので、美麗ながらにフィールド移動を滑らかに動くようにしないといけないので、負荷の処理などもたいへんだったのではないでしょうか。

板倉 
そこはエンジニアの皆さんと、ものすごく話し合いをしながら苦労しました。いまもまだ発売に向けて、磨いている部分のひとつです。

――キャラクターカスタマイズを見させていただきましたが、ゴシック、近未来な世界観は基本かと思いますが、クリエイトパーツを見ると、吸血鬼、ミリタリー、ハロウィンみたいなものなど、ものすごい数のバリエーションが用意されています。どのようにしてクリエイトパーツを決めていったのでしょうか?

板倉 
基本は、世界観に合うものです。もちろん作りかたにもよりますが、バディの隣に立っても違和感のないキャラクターになるような衣装・パーツを多数ご用意しています。ただ、プレイヤーの皆さんには自由に楽しんでほしいですから、ちょっと笑えるようなパーティーグッズ的なパーツも含めて、いろいろなバリエーションをご用意しています。

 ちなみにキャラクターカスタマイズだけで、専門のディレクターが担当しているおかげもあって、ものすごくクリエイトの幅が広いです。前作でも評価されたポイントだったので、やはり進化を望まれているだろうなと。

 たとえば本作は衣装のパーツの有無までカスタマイズできますが、我々が提示した衣装をただ着てもらうだけでは「袖がないほうがいいのに」と、細かい部分で物足りなさを感じられてしまうかもしれません。少しでも細かな調整ができるようにしています。

 しかも、いずれにしても簡単操作になっています。複雑なパラメータをいじる要素はかなり少ないですから、カッコイイ、またはカワイイキャラクターを誰でも作れることを目指して作りました。
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――最後に、プレイヤーの皆さんにどのような点を注目してほしいですか?

板倉 
この世界に存在する主人公として、バディたちと世界を救ってほしいです。もちろん見た目で好きになってもらえるようなポイントは複数詰め込んではいますが、そこを見てもらうというよりも、まずはこの世界に生きる人として生き、この作品ならではの体験を楽しんでほしいです。
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