ロゴジャック広告

『Million Depth』レビュー。ギリギリ攻撃避けつつ敵を捌く時間停止バトルがお手軽ながら爽快なアクションストラテジー。それはそれとしてプレイすればするほど武器がどんどんバカになる

by友野辰貴

『Million Depth』レビュー。ギリギリ攻撃避けつつ敵を捌く時間停止バトルがお手軽ながら爽快なアクションストラテジー。それはそれとしてプレイすればするほど武器がどんどんバカになる
 本格的でありシリアスなSFストーリー、かわいらしいドット絵アニメーション、自由度の高い武器カスタマイズ要素などを楽しめる『Million Depth』(ミリオンデプス)が、2025年11月12日にSteamにてリリースされた。

 Cyber Space Biotopeが開発を手掛け、PLAYISMが販売する本作は“深層墜下アクションストラテジー”だ。宇宙で絶望する少女・モマを操作して、地球にあるという100万階層の危険な地底世界“ミリオンデプス”を探索。“キミ”と呼ばれる人物に会うためひたすら下層を目指す。

 本稿ではそんな本作のプレビューをお届け。物語そっちのけで武器クラフトにのめり込んでしまう一作だった。
広告
[IMAGE]
※この記事はPLAYISMの提供でお届けします。

断片的な情報から考察したくなる奥深いストーリー

 かわいらしい少女のメインビジュアルに騙されてはいけない。前述した通り、本格的でシリアスなSFストーリーにどっぷりと浸かれる。

 主人公は宇宙で暮らす少女“モマ”。宇宙でひとりぼっちになったこと、仲間を助けられなかったことに絶望しているという導入の限界ストーリーから幕が上がる。
[IMAGE]
唯一の心の友であった“キミ”とも音信不通に。「お願い。どうか、ここには来ないで。」と意味深なメッセージを最後に連絡が途切れる。
 そんな彼女は荒廃した地球の地底で、ダイバーとして生きているという“キミ”と呼ばれる人物に会いたいと願う。かくして彼女は危険な地底世界“ミリオンデプス”にその身を落とすこととなる。
[IMAGE]
地底世界・ミリオンデプス。その昔、宇宙へ逃げられなかった人たちによって開拓されたという。
 地底世界はひたすら暗く、生きている人もまばら(というかぜんぜんいない)。しかし、壊れたアンドロイドや先駆者のメッセージなど、過去に人がいた形跡はあるためそれが逆に不安を加速させる。

 本当にこの地底に人はいるのか? このかわいらしい少女のビジュアルに騙されたのでは? いろいろな感情がよぎる。しかしここまで落ちてしまった以上もう止まることはできない。謎の天罰で人が死んだり、意味深なメッセージがあったりと、世界の謎に迫りそうなイベントもつぎつぎ起こるが、もう引き返せないのだ。
[IMAGE]
地下なのに理由不明の謎の雷で死亡。怖すぎる……。
 謎が謎を呼び困惑させられる、いわゆるホラーとはまた違った怖さがある。しかし謎は解決したくなるもの。1周目の謎は2周目で、2周目の謎は3周目で……といった具合に、真実を求める以上、止めたくても止められない。つぎの謎と解決を求めるストーリー構造になっている。

 ネタバレしたくないので詳しいことは語れないが、きっとよりよい“先”を目指して何度もプレイしてしまうだろう。
[IMAGE]
ふれあいを楽しむかわいいワンちゃんとモマ。守護りたいこの笑顔。

つぎの一手をじっくり考えられる斬新なアクション

 バトルの手触りとしては、ローグライク要素を含むシンプルな2Dアクションだ。

 プレイヤーはどんどん下に落ちつつ、さまざまなイベントが用意された階層を巡りながら地底を探索していく。特定の階層では現地生物とのバトルが発生。敵の攻撃を避けつつ、ドローンのように動く武器と自動の体当たりを駆使して倒す。アクションとしてはかなりベーシックなスタイルとなっている。
[IMAGE]
地上の敵はオートの体当たりで攻撃。上の敵は飛びまわる武器を操作しぶつけて倒す。
 だがここで加わる斬新な戦闘システムがバトルをひと味もふた味も変えてくれる。自機を操作していないあいだ、周囲の時間を停める時間停止システムが搭載されているのだ。

 この恩恵と気持ちよさを感じられるのは中盤からだろう。多彩な敵が数多く登場し囲まれてしまったときに大活躍する。

 たとえばシューティングゲームにて、弾幕と敵機が迫って焦った経験はないだろうか。本作でもそんなシチュエーションがしばしば登場する。体当たりしてくるうえ弾も吐く敵たち。ふだんなら焦ってプレイを台無しにしていたかもしれない。

 しかし、時間停止のおかげで焦ったら自機の操作をいったんストップするだけで対処法をゆっくり考えられる。「弾が来ているからジャンプで避けよう」とか、「体当たりを避けてカウンターを決めよう」とか、じっくりゆっくりつぎの一手を考えたい放題。アクションでありながらコマンドバトルのように熟考できる。
[IMAGE]
敵だらけかつ弾が迫る場合でも心配無用。どう避ければいいかゆっくり落ち着いて考えられる。
 これが中盤から終盤にかけてありがたいし、なにより気持ちがいい。高難度シューティングで弾を避け続けているような感覚になれる。極度の集中状態になると時間が止まって見えるなんて言われるが、それを自分で起こせるのだ。気軽に超人気分を味わえるのに気持ちよくないわけがない。

いちばんハマったクラフトシステム。パーツを求めすぎて本末転倒に

 パーツを自在に組み合わせて武器を作るクラフトシステム。ここがもっとも筆者が語りたかった部分だ。

 ドローンのように動いて敵を攻撃する武器を自由にクラフトできる。リング型のデバイスをベースに、個性的なブロック型のパーツを配置していって武器を製作。プレイヤーの発想力がそのまま戦闘力につながる。
[IMAGE]
最初の武器クラフト画面。非常にシンプルなハンマー型からスタートする。
[IMAGE]
予備パーツを使って改造。攻撃力、耐久度など各種ステータスは下に表示される。
 デコボコに配置すれば攻撃力が上がり、逆に四角にまとめればその分耐久値が上昇するなど、配置によってステータスが変化するのも特徴。支柱を使ってブロックをまとめて頑丈にしたり、攻撃用のトゲパーツを長くしたりするなど、組み合わせによるボーナスといった要素を活用すれば、より強力に生まれ変わる。

 このクラフト要素が本当に沼でいちばんハマった。もはやメインコンテンツまであった。最初は配置できるスペースがロックされていたり、そもそもパーツが少ないのもあって、「もっとパーツがあればいい感じになりそうなのに」と歯噛みする場面もあったが、それらの障害が払拭される中盤以降はやりたい放題。

 トゲを置きまくったり、とりあえず長くしてみたり、ハンマーや槍っぽくしてみたりなどなど。パーツがあれば、その分アレコレとアイデアが浮かびまくり試したくなる。こうなったらもう止まれない。アイデアが浮かんだらやるしかない。
[IMAGE]
序盤のハンマーがトゲ付きに進化。トゲ部分をぶつけるとクリティカルダメージで爽快に倒せる。
 そして気が付けば目的と手段が入れ替わりストーリーそっちのけ。探索の都合上、敵はある程度避けたほうがいいのだが、パーツが欲しいがゆえに勝負を挑んでしまうという、本末転倒にも陥ってしまった。でも、いろいろな武器作りたいので仕方ない。
[IMAGE]
アンドロイドの残骸から塊のパーツが手に入ることもある。
 また、パーツのバリエーションが豊かになれば、その分かなり極端な構成も組めてしまう。耐久に特化させて巨大なブロック型にしてみたり、四方八方にトゲを生やしてみたり、長すぎるフォークを作ってみたりなどなど。下層に行けば行くほど、バカが考えた武器になる。自分のせいなのに戦闘中に思わず笑っちゃうのが少し悔しい。
[IMAGE]
試行錯誤のうえ完成したトライデント……のつもりだったが、どう見てもデカいフォークである。あるいは先割れスプーン。
 しかも、クリアーすると武器パーツや設計図が解放されて新しい武器が作れるようにもなる。こうなると別のアイデアも浮かんで仕方がない。武器クラフトに止めどきはないようだ。
[IMAGE]
1周クリアーで爆弾の設計図が解放。こんなの絶対におもしろいに決まっている。

アンドロイドとの交流にホッコリ。もっといてほしい

 シリアスでハードな世界観だからこそ光るものもある。旅の道中で出会う個性的なアンドロイドとの交流がまさにそれ。怖い世界だからこそ彼らとの会話に心の底から安心できた。

 サビ残が続いて家に帰りたいと嘆くドリルアンドロイド“ドリるん”、手(?)作業にこだわる“鍛冶職人ロボ”、妙に紳士的で怪しい商人アンドロイド“キャブタニ”、パーツにしか興味がない“トレーダー”、ガラクタを集める“ゴミあさり”など、アンドロイドとは思えないかなり個性的なメンツがつぎつぎと登場。人物像や背景が透けてくる会話も楽しいので、見かけたら積極的に話しかけたくなる。
[IMAGE]
ロケット作りに勤しむ鍛冶職人ロボ。豪快だけどやさしい。
[IMAGE]
アイテムを交換してくれるトレーダー。いろいろなパーツを持っているのでクラフトにハマった人は絶対に会っておきたい。
 武器のスペースを解放したり、レリック(特殊なスキル)を習得したり、パーツやアイテムを調達したりなどそれぞれ役割はあるのだが、ストーリーでいろいろ不安になる初見プレイ時にはホッとする一瞬のほうが大事。バリエーション豊かなドット絵アニメーションの効果もあって、主人公を含むどのキャラクターも魅力的だった。

 個人的には“ドリるん”がいちばん好みだ。仕事をしないと帰れないのに、人間がいないせいで仕事が発生しないというジレンマを抱えており、ずっと家にも帰れないという不憫すぎる背景。かわいいし素直なので思わず手助けしてあげたくなる。
[IMAGE]
クラフトのための空間を拡張してくれる便利なアンドロイド。穴を開けることを“ドリる”と表現する。
 シリアスで本格的なSFストーリー、かわいいドット絵アニメーション、個性的なアンドロイドたちとの交流、時間停止を駆使したアクション、武器カスタマイズなど、多彩な要素を心ゆくまで楽しめる一作だ。

 とくに、時間停止バトルはギリギリで弾を避ける爽快感が心地よく、武器カスタマイズも自由度高すぎて最高。無料のデモ版もあるので気になった方はぜひお試しあれ。
[IMAGE]
作った武器が活躍した瞬間は脳汁ドバドバ。新しく作ってはまた試すループがキモだ。

『Million Depth』

  • 発売日:2025年11月12日発売
  • 対応プラットフォーム:PC
  • ジャンル:アクション
  • 発売元:PLAYISM
  • 開発元:Cyber Space Biotope
  • 価格:1870円[税込](発売日から2週間は10%OFFのロンチセールを実施)
この記事を共有

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

週刊ファミ通最新刊
週刊ファミ通表紙
購入する
ebtenamazon
電子版を購入
bookWalker