2025年10月23日(木)に発売となる、『 塊魂 』シリーズ最新作『 ワンス・アポン・ア・塊魂 』。家庭用ゲーム機向けの完全新作としては『 塊魂 ノ・ビ~タ 』以来、じつに14年ぶりとなる本作は、どのような想いから作られたのか? もうすぐ発売、そして9月25日~28日に幕張メッセで開催される(※)東京ゲームショウ2025(TGS2025)でも試遊出展が行われるとのことで、本作の開発や内容について、バンダイナムコエンターテインメント石田プロデューサーに詳しい話を訊いた。 ※25日(木)、26日(金)はビジネスデイ。 『ワンス・アポン・ア・塊魂』プロデューサー・石田僚氏
なお、本作の対応プラットフォームはNintendo Switch、プレイステーション5、Xbox Series X|S、PC(Steam)となっている。さまざまなプラットフォームでプレイできて、幅広いプレイヤーが夢中になれるゲームなので、シリーズファンも、まだ『塊魂』をプレイしたことがない人も、ぜひチェックしてほしい。
※Steam版は2025年10月24日(金)発売。 石田僚 氏(いしだ りょう)
本作のプロデューサー。バンダイナムコエンターテインメントにて、『風のクロノア1&2アンコール』、『みんな大好き塊魂アンコール+王様プチメモリー』などの制作に携わる。
プレイリポートもあわせてチェック!
いま、完全新作が開発された理由 ――14年ぶりの完全新作となりますね!
石田
最初に「なぜいまなのか?」をお話します。まず、最後に出た家庭用ゲーム機向けの新作は2011年の『塊魂 ノ・ビ~タ』。その後、リマスター版としては2018年に『 塊魂アンコール 』、2023年に『 みんな大好き塊魂アンコール+王様プチメモリー 』をリリースしています。 リマスター版2作品への反応として、よろこんでくださる方もたくさんいらっしゃって、また、「新作も作ってください!」という声もお見掛けしていました。『塊魂』というシリーズの人気を改めて感じまして、完全新作の制作を決定しました。 ――『塊魂』は1作目、2作目の時点でかなり完成されたゲームでしたが、新作を作るならば新しさも必要だったかと思います。本作にはどんな新しさを取り入れたのでしょうか。
石田
開発時、「新しいものを足さなきゃ」というよりも、「どこを変えちゃいけないのか?」が重要だと考えました。「ここを変えちゃうと『塊魂』じゃなくなるよね」という部分をチームですり合わせたうえで、新たな要素をどのように加えるのか。根っこの体験を損ねずに、“モノを連続で巻き込んでいく爽快さ”をさらに伸ばすには何が必要なのか? というところで、議論を重ねて参りました。 ――確かにプレイしてみて、『塊魂』にしかない魅力をしっかり残したうえで、“+α”のおもしろさを加えようという意識が伝わってきました。
石田
“転がして、巻き込んで、大きくする”といういちばん根っこにあるおもしろさ自体に手を加えてしまうと、『塊魂』を遊びたいプレイヤーさんにはノイズになってしまうだろうと。あくまでそれらの外側にある要素で、根っこの体験を拡張するようなイメージですね。 各ステージをプレイするうえでの新要素であるアイテムも、過去作でも似たようなものはありましたが、今回「巻き込む体験をより爽快にするには?」という観点から設計を考えました。それでできたのが近くのモノを引き寄せる“マグネット”や、ハイスピードで塊を転がせる“ロケット”などです。
石田
あくまでアイテムは、補助的な役割に徹した作りになっています。より爽快にプレイできて、クリアー時のランクを上げるためにも有効。隠し要素を収集するのに役立つものもありますが、どのステージもアイテムを一切使わなくてもクリアーできるように作っています。 ――マグネットはただ使うだけでも気持ちよかったですが、「この局面で使うとさらに効率的にモノを巻き込めて、さらにハイスコアを狙えるんじゃないか?」みたいな使いどころを突き詰めていくのも、やり込みでアツくなれそうですよね。
石田
プレイヤーさんが各ステージでどのようにSランクを獲得するのか? というのは我々も楽しみにしているところですので、そういうところで試行錯誤していただけるように、アイテムの配置を考えています。 ――ちなみにApple Arcade向けの新作『塊魂 Rolling LIVE』も2025年4月にリリースされましたけど、2作のリリース時期が近かったのは、たまたまですか?
石田
開発チームも異なるので、完全にたまたまです。「同じ年に出ちゃったなぁ」、という(笑)。 とはいえ、スマートフォンで遊べる新作と、家庭用ゲーム機向けの新作、どちらも出せることで『塊魂』というコンテンツとして盛り上がる1年になったので、結果としてよかったかなと思っています。
『塊魂 Rolling LIVE』
――とくに「ゲーム内容も差別化しなきゃね」みたいなやりとりがあったわけではなく、それぞれのプラットフォームで最高のゲーム体験を追求した結果として違うものが生まれたのでしょうか?
石田
そうですね。『ワンス・アポン・ア・塊魂』に関しては、コントローラー操作という家庭用ゲーム機で親しまれてきたゲームプレイで楽しめるものを、というところで考え抜いたゲームデザインになっています。
江戸、海賊船、ギリシャ……時代も場所もさまざまなステージには、笑顔になってしまう工夫が満載 ――タイトルのネーミングについても「そう来たか!」という感じです。今回の“ワンス・アポン・ア・”にはどのような意味を込めたのでしょう?
石田
今回のストーリーが“世界各地の歴史が描かれた巻き物”をもとに、王子シップでタイムトラベルしていく、というものなので、「大昔でも、どんな時代でも塊を転がすことはできるよね」というところから、昔話って「むか~し、むかし」から始まるよなぁと。 ひさしぶりの完全新作ということもあり、「むかしから転がされてきたよね、塊」みたいなニュアンスとか、いろいろと掛け合わせて、“むかしむかし=ワンス・アポン・ア・タイム”がしっくり来ました。 「昔からある『塊魂』シリーズの最新作ですよ」と言いますか、操作とかもぜんぜん変えていないので、体験としては間違いなくあの『塊魂』、でも新しさもありますよ。みたいなところが伝わればいいなぁと。
――先ほどTGS2025の試遊範囲より少し先のステージもプレイさせていただきましたが、江戸、海賊船、ギリシャなど、時代も場所もバラバラなステージで塊を転がすのがとても楽しかったです。モチーフとなる時代・場所の選定基準はどのような部分だったのですか?
石田
これに関しては、本当に“どんなものを巻き込めたらおもしろいか?”に尽きます。「恐竜を巻き込めたらおもしろくない?」と(笑)。 ――そりゃ、おもしろいですよ(笑)。
石田
あとは今回、ワールドワイドで発売することもあり、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなどなど、いろいろな地域が登場するという意味でのバリエーションは意識しました。 ――ギリシャステージで、哲学者としていまなお知られている偉人を巻き込んだとき、彼らの名言のパロディが画面に表示されるシュールさには笑いました。
石田
あそこは開発のかなり初期にアイデアとして出たステージですね。「偉人を巻き込んで名言が出たらおもしろくない?」と。 ――そりゃあ、おもしろいですよ(笑)。
石田
すみません、終始このノリで作ってきました(苦笑)。 ――いえいえ、そこが最高だと思いました。1作目から一貫して“ブレずに変”で素晴らしいなと。
石田
巻き込むモノに関しては、時代ごとにいろいろと作り込んでいますので、これからプレイしていただくステージでもぜひ注目していただければと思っています。
――ところで、このあたりのユーモアって海外でもわかってもらえているものなのでしょうか?
石田
日本以外ですと、ヨーロッパやアジアでも支持していただいているのですが、北米でとくに人気のようです。トレーラーなどを公開したときの反響も大きいですね。ゲームのコンセプトはもちろん、ヘンテコな要素を愛してくださっていることもコメントから伝わってきます。
さだまさしさんも、『学マス』花海咲季さんも。とんでもない顔ぶれの人たちが歌う“素敵ソング” ――『塊魂』の魅力を考えたとき、音楽は欠かせない要素だと思うのですが、今回の“素敵ソング”もすごい方々が歌われています。
素敵ソング歌唱者一覧 朝倉さや ウ山あまね 花譜 Clémentine こっちのけんと さだまさし San Francisco Boys Chorus suis from ヨルシカ Daoko chelmico 新沼謙治 花海咲季 松崎しげる やくしまるえつこ ――すごいですよね!?
石田
過去作から音楽も含めて高く評価していただいていたと認識しておりますので、それらと肩を並べられる楽曲ラインアップを揃えたいと考えました。検討に入る段階で本作のコンセプトは決まっていたので、「いろいろな時代を旅するのだから、いろいろな時代をイメージできる曲を入れたい」と。 「江戸時代をモチーフにしたステージがあるから、江戸時代っぽい楽曲を入れてみましょう」となったら、その楽曲はどんなアーティストさんに歌っていただくのがおもしろいのか? といったことをチーム内で話し合いを重ねて、僕たちからお声掛けさせていただきました。 作詞作曲に関しては、すべて『塊魂』のサウンドチームが行い、『塊魂』ならではのものを作っています。そのうえで歌唱をアーティストさんたちにお願いしたかたちです。幸いなことに、皆さん快く引き受けてくださって、あのものすごいラインアップが実現しました。
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――さだまさしさんがその依頼に対してどのようなリアクションを取ったのか気になりました。
石田
さだまさしさんって、じつはけっこうゲームを遊ばれるらしくて。「あぁ、『塊魂』、知ってるよー」くらいのテンションで快諾いただきました。すごく話しやすかったです(笑)。 ――へぇ~! ものすごい人々が名を連ねているなかで、やはり『学園アイドルマスター』の花海咲季さんの起用はとくに異彩を放っていますよね。さだまさし、新沼謙治、花海咲季。すごい並びで腰が抜けます。
左から、さだまさしさん、新沼謙治さん、花海咲季さん(さだまさしさん、新沼謙治さんの画像はそれぞれのオフィシャルサイトから引用)
――花海さんが歌う『カタマリ オンザ ドゥン』はまだどんな楽曲なのか明かされていませんが、ちょっとだけコンセプトなどをうかがったりとかは……?
石田
MVが近日公開される予定ですので、ぜひそちらをお待ちいただければと思います。 ――楽しみにしています! ちなみに本作のサウンドトラックの発売予定はあるのでしょうか?
石田
サントラCDは“『ワンス・アポン・ア・塊魂』 オリジナルサウンドトラック‐かたまりのまにまに”のタイトルで受注が始まっています! 各種サービスでの配信のほか、物理CDでも展開します。歌唱あり楽曲のインスト版なども収録予定ですので、シリーズの楽曲が好きな方にはぜひチェックしていただければと思います。よろしくお願いいたします。
――本作のDLC(ダウンロードコンテンツ)では、シリーズ過去作のBGMがゲーム内で楽しめるようになるそうですね。
石田
ゲームの発売と同時に配信するDLCでは、過去作の歌唱あり楽曲と衣装アイテムを集めたパックを2種類販売します。“塊魂素敵ソングコレクション~上巻~”には『塊魂』、『 みんな大好き塊魂 』、『 僕の私の塊魂 』の楽曲が、“下巻”には、『 塊魂TRIBUTE 』、『 ビューティフル塊魂 』、『塊魂 ノ・ビ~タ』の楽曲が収録されています。それぞれのDLCには、過去シリーズの衣装もついてきます。 一度クリアーしたステージを再度プレイするときは、お気に入りの楽曲を詰め合わせたセットリストなどをBGMにして楽しめますので、ぜひあわせてお楽しみください。 各ステージの収集要素と、新モード“スポーツ塊”の仕様は? ――細かいゲームの中身についてもお伺いします。ステージ内には収集要素もありましたが、集めるとなにかゲーム的にメリットがあるのでしょうか?
石田
ステージ上にいる“メイツ”を見付けて巻き込めば、そのメイツがプレイアブルキャラクターになります。プレイアブルになったメイツの特徴は、“メイツカスタマイズ”で組み合わせて使えるパーツのもとにもなります。 “クラウン”に関しては、“セレクト広場”と呼んでいるステージセレクト用のマップがあるのですが、クラウンを集めることで広場のモブキャラが増えたりと、どんどん賑やかになっていくんです。集めるほど、マップの散策が楽しくなっていくんじゃないかと思います。
――セレクト広場が賑やかになると聞いて、『アストロボット』(PS5/ソニー・インタラクティブエンタテインメント/2024年発売)でボットを救出することで拠点の惑星が賑やかになっていくあの感じを思い出しました。
石田
そうですね。イメージとしてはあれに近いと思います。 ――新モードの“スポーツ塊”の仕様についても、お聞かせください。
石田
“スポーツ塊”は、オフラインではプレイヤーさんとCPU3人による4人プレイ、オンラインでは4人のプレイヤーによる対戦プレイが基本で、4人のうち何人かをCPUにすることも可能です。 オフラインとオンラインで対人戦とCPU戦、どちらが基本になるかという違いはありますが、ゲームルールやステージ、勝利報酬などは共通しています。勝利報酬としては1勝するごとに段位が上がって、そのたびに“スポーツ塊”専用で使用できる塊の柄が増えていくというものになります。
――ランクマッチみたいなものでテクニックを競うというよりは、もうちょっとパーティーゲーム寄りのゲームモードなのでしょうか?
石田
そうですね。ランクでマッチングがわかれるようなものではなく、ランダムマッチか、プライベートマッチか、どちらかで遊んでいただくものになります。 ――クロスプレイや、オフラインでの対人プレイには非対応なのですね? はい。対人のマルチプレイはオンラインのみで、同一プラットフォーム間でお楽しみいただければと思います。
いまも昔も変わらない、“連続で巻き込む爽快さ”を楽しんで ――初代『塊魂』が出た2004年にはゲーム開発において汎用性のあるミドルウェアみたいなものってなかったと思うのですが、『ワンス・アポン・ア・塊魂』は開発環境的にはどのような感じなのでしょう?
石田
今作では、ミドルウェアはUnityを使っています。リマスター版でもUnityを使っていてノウハウのある協力会社さんが、これまでのノウハウを新作でも活かしてくださっている形ですね。手触り感としても変わらないものになるようにと、いっしょに開発を続けてきました。 ――マシンパワーも21年経つと比べ物にならないと思いますが、そのあたりを活かした表現などもあるのでしょうか?
石田
いまのハードの性能は、『塊魂』の世界を描画するには“上がりすぎている”と言っても過言ではないのですが(苦笑)。ただ、それに付随するところで言えば、今回カメラアングルに関しては調整を行っています。 過去作って塊を大きくすればするほど、視点が上から見下ろすようなものになっていったんですよね。今回は、塊を大きくした際、カメラを上ではなく後ろのほうに遠ざけつつ、進行方向の奥のほうまで見えるような調整をしています。 これまでの『塊魂』で酔いやすかった方への出来る限りの対策という面もありますし、奥のほうにあるいろいろな巻き込めるものが視認できたほうがワクワクするだろうという狙いもあって、“縦ではなく、後ろに引く”のがいいだろうと。いろいろな時代を巡ることの楽しさも見ていただきたいですし。そういった、細かな調整はいろいろとさせてもらっています。
――最後に、本作をTGS2025で試遊する方に、「こういうところを楽しんでほしい」みたいに伝えたいポイントがあれば、お聞きしてみたいです。
石田
やはり『塊魂』ならではの“連続で巻き込む爽快さ”ですね。試遊用のステージにも、一気にたくさんのモノを巻き込める気持ちいいポイントがいくつか用意されているので、アイテムも活用しつつ、爽快に、ハチャメチャに転がしていただければと思います。