『Dinkum(ディンカム)』Switch版発売決定記念インタビュー。開発者がひとりで初めて作り上げたゲームがここまで大きくなれたのは、ユーザーの反応と母国オーストラリアの大自然への愛のおかげ

byカイゼルちくわ

『Dinkum(ディンカム)』Switch版発売決定記念インタビュー。開発者がひとりで初めて作り上げたゲームがここまで大きくなれたのは、ユーザーの反応と母国オーストラリアの大自然への愛のおかげ
 KRAFTONが提供する、PC(Steam)向けサバイバルライフシミュレーション『Dinkum』(『ディンカム』)。オーストラリアの自然をモチーフにした島でのんびり自由な生活を楽しめる本作が、2025年11月6日(木)にNintendo Switchでも発売されることが発表された。
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 今回はSwitch版が発表されたこのタイミングで、改めて『ディンカム』とはどんなゲームなのかを開発者のJames Bendon(ジェームズ・ベンドン)氏に直接訊いてみた。氏からのプレゼンテーションに加え、本作ならびにSwitch版の気になる部分についてお答えいただいたので、ぜひ『ディンカム』のさまざまな歴史や魅力を知ってほしい。

 なお、以下の記事内の画面写真は注釈がある一部を除き、Switch版からのキャプチャーとなっている。
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今回プレゼンとインタビューに応じていただいた、『ディンカム』開発者のジェームズ・ベンドン氏。
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ひとりで趣味から始めた、オーストラリア大自然の再現

 『ディンカム』は2022年7月にアーリーアクセスからスタートした、サバイバルライフシミュレーションゲーム。2025年2月には日本語を含む14言語の展開を達成し、同年4月にはバージョン1.0を正式リリース。同年8月には、ナイトマーケットなどのコンテンツを含む大きなアップデートも実装した。

 この『ディンカム』は、ジェームズ・ベントン氏の個人開発で2017年から制作を開始。オーストラリアの自然からインスピレーションを受けている大きな島はさまざまなバイオームで構成され、探検、冒険が豊富に用意されている。豊かな自然だけでなく、危険なクリーチャーもまたこの島ではいっしょに暮らしているのだ。

 5年くらいはベンドン氏ひとりでの開発を進めたが、いまはKRAFTONと5minlabのサポートを得ている。5minlabはポーティングにより、『
Dinkum Together(ディンカム トゥギャザー)』の開発を進めている。両社ともに『ディンカム』について理解が深く、情熱にあふれるスタッフと協力することができて安心しているとのこと。
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 ほかのライフシミュレーションにも入る要素であるクラフトや釣り、狩りや昆虫の採集といった要素も用意されており、プレイヤーはアイテムをクラフトして自分の拠点を作り上げ、自分の街を飾ったり、建設していったりすることが可能。街作りができるなら、ほかのプレイヤーを招待できればうれしいと考えたバンドン氏は、マルチプレイも追加。自分の街を自慢できるようになった。
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 アーリーアクセスの段階で、予想以上の人気を得られたことにベンドン氏は驚くとともに、非常にポジティブな反応が多かったことに本当に感動したという。ベンドン氏のゲーム開発はもともと趣味で始めた独学で、初めて制作したのが『ディンカム』だったが、いまは専業開発者になっている。『
どうぶつの森』シリーズのようなライフシミュレーションゲームが好きだったこともあり、自分の初めての作品にはそういった要素をぜひ入れたいと考えたとのこと。

 ベンドン氏が奥さんに1年くらいフルタイムで開発に集中したい(実際には4年かかった)と申し出たときには、奥さんは理解を示し、サポートしてくれたという。アーリーアクセスリリースの前には友人や家族にゲームをプレイしてもらい、フィードバックを受けた。リリース後にはさらに大きなコミュニティーからフィードバックをもらえたという。
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プレイ動画などでプレイヤーの皆さんが本作のメカニズムやフィーチャーに反応してくれる様子を見るのが、非常に楽しかったとのこと。それで大きなモチベーションを得られたという。
 ゲームの中では、アーリーアクセス期間中に実際の季節にもとづいたアップデートを4回実施。ゲームの中で、季節要素を徐々に拡大していった。そのあとも14言語対応、フルローンチとうれしい瞬間が続き、今回そういった道しるべのひとつとして、Nintendo Switch版の発表を迎えられた。

 ベンドン氏は任天堂と、任天堂のゲームが大好きとのこと。ベンドン氏自身も、任天堂のハードでゲームをプレイしながら成長してきたということで、開発者になるためにいちばん影響を受けたゲームメーカーだという。任天堂のハードでゲームをリリースするのは一生の夢だったため、非現実的に感じているところもあるが、今後任天堂ハードでのゲームをさらに多く開発したいと考えているという。
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 『ディンカム』は開発時に意図したわけではないが、Switchに非常に適しているゲームだという。『ディンカム』は毎日毎日少しずつ進行ができるゲームで、持ち運びができるゲーム機でプレイするのがいちばん適しているタイトルだとベンドン氏は考えている。

 PCでリリースしたあとに、Switch版はいつ出るのか、というユーザーからの要望が数多く来たこともあり、ユーザーとSwitch版を共有することができるようになったことをうれしく思っているとのこと。ユーザーは今度はどのような反応を示してくれるのかと、非常に期待しているという。

【インタビュー】なにより情熱があったこと。それが『ディンカム』開発のいちばんの原動力

 プレゼンに引き続き、さらに本作の詳細や気になる点、Switch版についてなど、さまざまな質問にジェームズ・ベンドン氏から回答をいただいた。以下、インタビューの模様をお届けしていく。
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――Switch版の発表を機に改めて、『ディンカム』開発のきっかけを教えていただけますか。最初は趣味で始めたと、さきほどのお話にはありましたが。

ベンドン
 最初は、一般的に言うところのゲームへの愛というものが根っこにあったかと思います。子どものころから夢見て成長しながらも、ひとりでゲームを開発するのは不可能な時代でした。たくさんのゲームのアイデアはあったのですが、それを紙に書いておくくらいしかできなかったのです。
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こちらが氏が書いていたというメモ。NPCのことや電子機器パーツのことなど、いまの『ディンカム』に通じる内容がびっしりと書き込まれている。
 個人でのゲーム開発が可能になってきたという事実が、ひとつの情熱の根源になりました。どのようにゲームを開発するのか学びたいという欲求も高まっていきました。とはいえ、『ディンカム』の規模について言えば、大型ゲームをひとりで開発することは簡単ではありませんでした。それが、プロシージャル生成を採用することでスケール面の負担がある程度軽減されました。そしてなにより情熱があったこと、それがいちばんの原動力になったと思います。
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――最初のゲームを作るうえで、どんなゲームにしたいというビジョンがあったのでしょうか。

ベンドン
 私が経験した多くのゲームが、緑が豊かで、美しい風景の中で癒されるものでした。だからこそ、私が育ったオーストラリアの環境を、ゲームを通じて表現してみたくなりました。難しくても開発に乗り出したのには、この情熱も関わっていたと思います。

 『ディンカム』は非常に自然が豊かでリラックスできる、美しい環境を作っていけるゲームです。私自身のオーストラリアの環境の思い出だけでなく、こういった環境への愛もまた、本作には込められています。

――さきほどのプレゼンで任天堂のゲームが大好きとうかがいましたが、任天堂のゲームタイトルでとくに遊んだものや、好きだったものを教えていただけますか。

ベンドン
 いちばん最初にプレイしたのは『スーパーマリオコレクション』(スーパーファミコン/1993年)でした。非常にすばらしいゲームが4作プレイできるコンピレーションタイトルで、これを最初に手に取れたのは幸運だったと思います。

――その任天堂のSwitchで、『ディンカム』がリリースされることが発表されましたが、改めてSwicth版ならではの魅力を教えていただけますか。

ベンドン
 ゲームプレイにおける日々のループ、20~30分間の短いセッションというのが、Switchでプレイするうえで非常にうまく働くと考えています。また、ライフシミュレーションゲームというジャンルそのものが、Switchで非常に愛されているという点にも注目すべきだと考えます。Switchをお持ちのユーザーの皆さんの多くが、すでにこのジャンルのゲームを楽しんでいらっしゃいますから。
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――Switch版はJoy-Conでの操作に対応しているとのことで、PC版と操作感の違いはあるのでしょうか。

ベンドン
 操作感については、かなりPC版に忠実に作られています。Switch版ではさらに、タッチスクリーンでインベントリにアクセスしたりすることが可能です。

――Switch版とPC版では、今後アップデートでべつの展開が入ったりする可能性はあるのでしょうか。

ベンドン
 PC版とは並行してアップデートしていきたいと考えています。PCの『ディンカム』に実装されるアップデートがありましたら、Switch版にも実装していく予定です。ただ、同時並行開発というのは難しいので、先行しているPC版が先に進みつつも、両プラットフォームで最終的には同一のコンテンツ体験を提供することを目標としています。今後は段階的に、アップデートスケジュールを統一していく予定です。

――続いて、ゲームの内容で気になった点についてうかがっていきます。本作でオーストラリアの自然を再現するうえで、とくに気を付けた点などはありましたか。

ベンドン
 まずいちばん最初に盛り込もうと思ったのは“赤土”(※)です。オーストラリアで暮らしていると、すぐに土埃で服が赤くなってしまいます。この赤土のほかには“gum tree”(ユーカリノキ)もすごくオーストラリア的な存在だと考え、導入を早期に考えました。以降はどのアップデートをリリースする際にも、オーストラリア感というものをつねに盛り込んでいくようにしています。
※赤土:酸化鉄を多く含むことで、赤茶色に見える乾燥した土壌。オーストラリアの内陸部や西部に多く見られ、有名なエアーズロックの一帯でも赤土の地層が見られる。[IMAGE]
PC版の場面から抜粋。改めて見てみると、『ディンカム』の赤土がいかにオーストラリアの赤土を再現できているかがよく分かる。
――島という限定されたフィールドにさまざまなイベントが凝縮されている本作ですが、フィールドデザインにおいてとくに気を付けた点があれば教えてください。

ベンドン
 本作の島では動物がたくさん出てくるのが大きな特徴になっていますが、動物が泳いだり、プレイヤーを追いかけたりできるように具現化して管理するのは、ソロ開発者としてはかなりトリッキーな取り組みでした。

 たとえば、新しい動物キャラクターを導入する場合、それが『ディンカム』全体のエコシステム、環境全体にダメージを与えてしまう可能性があります。“エリマキ”を試験導入したときには、エリマキが率先してワニを攻撃してしまい、ワニが環境内からいなくなるという事態も起きたんです。この点には開発するうえで、かなり注意を払っています。
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PC版の場面から抜粋。いまはノンアクティブで、こちらから攻撃しなければ襲いかかってはこないエリマキ。もとはそんな恐ろしい生物だったとは。
――ゲームを開始すると最初に多少のガイドがあるとはいえ、あとはプレイヤーにこうするといい、こうしてくださいといった指示がないのも本作の特徴かと思います。そのなかでプレイヤーに、つぎになにができるか“気づき”を与えるための工夫などはあるのでしょうか。

ベンドン
 いちばん気を遣ったのは、つぎにプレイヤーが果たすことがなんであろうと、進歩している、進んでいるという感覚を得てもらうという点です。

 たとえば、プレイヤーが釣りばかりしていて、ほかのことができると気付かなかったとしても、NPCの来訪者が訪れてくることによってゲームのメカニクスについて情報を与えたりと、プレイヤーがプレイしながらゲームの可能性を自分で発見していける感覚を与えられることを重視しました。ゲームのほうからなにかを教えるのではなく、プレイヤー自身が発見していく、という感覚ですね。
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――Switch版を出してほしいというユーザーの声はかなり多かったと思いますが、ほかにもユーザーからの声で多い意見はどのようなものでしょうか。

ベンドン
 ユーザーの皆さんはさまざまな形で楽しんでおられまして、街や島の装飾が好きな方なら装飾や、配置用の新クラフトアイテムをもっと増やしてほしいと意見をくださいますし、鉱山に入って戦闘をするのが好きな方たちは、新武器や新ロケーション、探索型ダンジョンを、という声を多く寄せてくださっています。突き詰めていくと、どういうプレイをしている人であっても、もっと『ディンカム』をプレイしたい、そのためのコンテンツが欲しいということなのだと感じています。

――Switch版という大きなチャレンジが形になり、今後は『Dinkum Together(ディンカム トゥギャザー)』の展開もあるわけですが、これからさらにゲーム内でチャレンジしてみたいコンテンツなどはありますか。

ベンドン
 すべてのアップデート時がチャレンジであると考えており、さまざまなコンテンツを追加しております。つぎのアップデートでも私自身ワクワクしている挑戦が用意されていますが、それはネタバレになるのでここではまだお話しできません。

 機種展開についても、理想を言えばすべてのコンソールで発売されることを願っています。とにかくシンプルに、もっと多くの人にできるだけ『ディンカム』をプレイしてほしいですし、皆さんがこのゲームをプレイしてくださっているのを見ることは、私にとって非常に大きな喜びです。
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――最後に、読者の皆さんや『ディンカム』ファンの皆さんにメッセージをいただけますか。

ベンドン
 まず、これまでに『ディンカム』をプレイしてくださった皆さん、いまもプレイしてくださっている皆さんに、感謝の言葉を申し上げたいです。そしてSwitch版のリリースをお待ちの皆さんは、ぜひ11月までもう少しだけお待ちください。
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