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『エースコンバット8』シリーズを正当“深化”させた最新作。偶像の英雄は片渕須直監督によってどのように描かれるのか。無線会話の仕様は? 気になることを開発陣に訊いた【The Game Awards 2025】

byででお

byジャイアント黒田

更新
『エースコンバット8』シリーズを正当“深化”させた最新作。偶像の英雄は片渕須直監督によってどのように描かれるのか。無線会話の仕様は? 気になることを開発陣に訊いた【The Game Awards 2025】
 ファンが情報公開を待ち望んでいた『ACE COMBAT 8: WINGS OF THEVE』(エースコンバット8 ウイングス・オブ・シーヴ。以下、『ACE8』)のPVが、2025年12月12日に開催された“The Game Awards 2025”で公開された。

 『ACE8』は、2025年に30周年を迎えた『
エースコンバット』シリーズの最新作。フライトシューティングゲームのジャンルを確立し、その金字塔として数え切れないほどのプレイヤーを大空へと駆り立てた人気シリーズだ。最新作『ACE8』の発売日は2026年予定で、対応機種はプレイステーション5(PS5)、Xbox Series X|S、PC(Steam)が予定されている。
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 情報公開に先駆けて、『エースコンバット』シリーズブランドディレクターの河野一聡氏と、前作に続き『ACE8』のプロデューサーを務める下元 学氏にインタビューする機会をいただいた。『ACE8』の開発コンセプトやパワーアップしたポイント、さらにPVで気になった点などを伺ったので、最後までお見逃しなく!
※本記事では、シリーズ作品の名を以下のように表記する場合があります。 エースコンバット…… ACE1 エースコンバット04 シャッタードスカイ…… AC04 エースコンバット5 ジ・アンサング・ウォー…… ACE5 エースコンバット・ゼロ ザ・ベルカン・ウォー…… ACE ZERO エースコンバット7 スカイズ・アンノウン…… ACE7
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河野一聡氏こうのかずとき

バンダイナムコエンターテインメント バンダイナムコエイセス 『エースコンバット』シリーズブランドディレクター。これまでに『AC04』のアートディレクター、『ACE5』のディレクターなどを務めた。『ACE7』以降は全体を統括。文中は河野。

下元 学氏しももとまなぶ

バンダイナムコエンターテインメント 『ACE8』プロデューサー。『エースコンバット アサルト・ホライゾン』で初めて『エースコンバット』シリーズの作品に携わり、『ACE7』からはプロデューサーを担当。文中は下元 。

『ACE8』は正当“深化”させたシリーズ最新作

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――待望の新作が発表されました。本作のプロジェクトはいつごろ立ち上がったのでしょうか?

下元
 『ACE8』は、2020年に構想を固めて開発に着手しましたが、これもひとえに皆様の応援のおかげです。『ACE7』がシリーズファンの皆様から高い評価をいただき、新規のお客様も獲得できたことが開発を後押ししました。『ACE8』をリリースすることで、『エースコンバット』シリーズをさらに大きく飛躍させられる好機だと考えたからです。

――『ACE7』のセールスは好調なのですね。

下元
 『ACE7』の販売本数は間もなく700万本に達します。 『ACE8』のさらなる成功によって、『エースコンバット』シリーズを世界中のより多くのお客様にお届けしたいと考えています。ゆくゆくは50周年を目指したいなと思っていて、『ACE8』はシリーズの転換期となるような、力の入った作品として開発を進めています。

河野
 未来の話になると、下元は必ず50周年の話をするよね。でも、そのころにはもう僕は会社にいないから(苦笑)。

下元
 僕も60歳越えていますね(苦笑)。

――それだけ力の入ったタイトルになるというわけですか。本作のコンセプトについてお聞かせください。

河野
 『ACE8』は正当進化のナンバリングとなっていて、『エースコンバット』シリーズのコンセプトである以下を重視しています。

  • 大空を自由自在に飛ぶ爽快感
  • 自身の判断でつぎつぎに敵を撃墜・破壊する興奮と快感
  • 難局を勝ち抜けエースパイロットとなる達成感

これら3つのピラーとアイデンティティは堅持しています。そのうえで、シリーズファンにとって現世代機で初の『エースコンバット』ですから、ファンの期待を必ず超えるものである必要があります。また我々のつぎのステップとして、2026年に発売される最先端のビッグタイトルに並んでも見劣りしない価値を持つ、『エースコンバット』を作ることを目標としました。

 もともと『エースコンバット』は、プレイヤー自身がエースパイロットになる体験、強敵を倒して勝ち上がる達成感、そしてなにより空への憧れと、国や文化に左右されないグローバルなニーズが詰め込まれています。そういった『エースコンバット』の持つ価値と魅力を新たなアイデアや技術で、ベネフィットとパフォーマンスを最大化させることを目的としました。

下元
 開発を進めるにあたって、継承すべき要素と変えるべき要素の洗い出しを行いました。最先端のビッグタイトルを目指すとはいっても、何もかも新しくすればいいというわけではありません。30年間、ファンに親しまれてきた要素はそのままに、どこを変えると喜んでもらえるのか。検討を重ねて正当進化のナンバリングとして開発を進めていますが、進化の言葉のイメージは深堀っていく“深化”のほうがピッタリだと思います。

――なるほど。それでいうと、空の表現がより“深化”していると感じましたが、どのような環境で制作されているのでしょうか。

下元
 ゲームの開発エンジンは、『ACE7』から引き継続きUnreal Engineを採用していますが、大きく変わったのは雲を表現するのに独自開発したエンジン“Cloudly”を使用している点です。

河野
 “空の革新”を『ACE7』では、外部ツールの“trueSKY”(※)を導入していました。これはこれですばらしいツールでしたが、自分たちで開発したものではないので、改良して使おうにも限界がありまして……。
※英国Simul Software社が開発したリアルタイム天候生成システム。

――それでCloudlyを独自開発したのですね。

河野
 Cloudlyを導入することで、高度によって異なる雲を再現するなど、より多層的な雲が表現できるようになりました。菅野(昌人氏。バンダイナムコスタジオ所属の本作のアートディレクター )は気象博士みたいに詳しいのですが、彼を中心にこだわってリアルな空を開発してくれています。

 空のビジュアルはマシンパワーでも当然リッチになっていて、リアルなビジュアルはそれだけで没入感が増しますが、僕自身は機能を伴わないビジュアルの進化にはそれほど惹かれません。『ACE7』では、雲へ突入したエフェクトがプレイヤーに自然とサインを送ってしましたが、そういう「何度もプレイしていくうちに自然とゲームルールのサインを受け取る」という機能をビジュアルには求めています。飛行機雲や敵機の吐き出す煙、反射するキャノピーも、すべてプレイヤーにサインを送っています。これらの機能により、プレイヤーはプレイしていけば自然とサインを発見し、推測して自身の判断に影響をもたらすようになります。
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――『ACE8』の雲にも何らかの機能がともなっていると?

河野
 はい。多層の雲には、プレイヤーに“空の高度”をサインとして送ってもらう機能を付け加えました。

下元
 これまでのタイトルでは、自機の高度は画面上に表示される高度計で確認していましたよね。シリーズファンには当たり前のことでも、初めて『エースコンバット』を遊ぶ方にはわかりにくくて難しい。そこで『ACE8』では高度計はもちろん、自機の周囲に広がる雲の種類から高度を感じ取れるように開発を進めています。

河野
 僕自身プレイしていて、『ACE8』は計器をチェックする回数が減りました。このように、『ACE8』では「自身の判断でつぎつぎに敵機を撃墜していく快感」のベネフィットに影響する、ドッグファイトの判断材料をリッチなビジュアルとともに機能として両立させています。空に没入するというのはその世界のルールを目の前に広がる風景から、より自然に感覚として捉えられてゲームプレイにいかせることだと考えています。

河野氏の熱い想いを受けて片渕監督の続投が決定

――映像からは、空母の中を一人称視点で歩いている様子が確認できました。本作のストーリー演出は、このような形で進んでいくのですか?

河野
 『エースコンバット』は、第1作から一人称視点で進行するゲームです。一部の例外を除いて30年間、基本的に一人称で「あなた自身が向こうの世界でエースパイロットの体験をする」を貫いてきました。プレイヤーはあなた自身ですから、ゲーム内で与えられた余計な記憶もありませんし、突然、生き別れた父親に会うこともありません。あなた自身のままでモニタの向こうのストレンジリアル(※)に行き、エースパイロットとして活躍してきてくださいと送り出しています。
※『ACE3』以降ナンバリングタイトル共通となっている架空世界。

 その基本の考えからすると一人称のシネマで、その世界に関わるというのは自然な拡がりかた、“深化”でもあると言えます。よりプレイヤーに没入していただき、「向こうの世界に確かに自分はいる」と感じていただきたいのです。一方で、これまでの『エースコンバット』が今回の手法をとっていなかったのは、“語り部”と呼ばれるストーリーテラーの存在が不可欠だったからです。

――なるほど。

河野
 『AC04』では少年が、『ACE5』では戦場カメラマンが、『ACE ZERO』では敵パイロットが、『ACE7』ではスクラップクイーンがその担い手でした。いずれまた詳しくお話しますが、『ACE8』ではその語り部を“ある存在”にすることが構想初期に決まりました。そうすると、一人称でシネマに関わるということがすんなりと組み合ったこともあり、今回は一人称のリアルタイムのシネマシーンがメインになっています。

――シネマシーンは、プレイヤーが操作することはできますか?

河野
 シネマシーンでは、プレイヤー自身がその場で視線を動かせるんです。さすがに移動まではやりませんが。目の前で人が話しているときに、天井を見上げるといったこともできます。あえて視線を外すことで、会話の裏側でほかのキャラクターはこんなことをしていたのかと、新たな発見もあると思います。その世界に没入するというのは、自分がその世界にいる、存在すると感じられることが重要です。ビジュアルのリアルさも大切ですが、それだけであればプリレンダーのムービーでもできてしまいますよね。

 シネマシーンでさえプレイヤーが関わり、自身がそこにいると感じられる。そのベネフィットとパフォーマンスを最大化することで、没入感を向上させています。空でくり広げるインゲームでは、コクピットに座って戦闘機を駆り、あなた自身が興奮のドッグファイトをお楽しみください。地上が舞台のシネマシーンでは、自分の足で立って、自身の存在と仲間たちを感じながら、いっしょにこの世界の興味深い物語の行く末を見届けてもらえるとうれしいです。

下元
 『エースコンバット』シリーズはストーリードリブンの体験を大事にしてきました。本作でもこれまでのシリーズ作品同様に、シネマシーンで物語が進んでいく構成は変えていませんが、その場にいるかのような感覚をより強く体験してもらえるように視線を動かせるようにしています。ほかにも握手を求められたときに握手をするといったこともボタン操作で行えるので、これまで以上に没入感の高い体験を味わっていただけると思います。

――シネマパートを開発するうえで、とくに苦労したことは?

下元
 いろいろありましたが、いちばんたいへんだったのは広大なスケールの中で、細部まで緻密に再現していることです。ドッグファイトのマップを1万平方キロメートルにわたる広大な空間で自由に飛べるように設計しながら、シネマシーンではPVにも登場したハンバーガーのような小さなものまで作り込んでいます。

河野
 これまでのタイトルではインゲームはUnreal Engine上で10分の1のサイズで縮尺して作っていましたが、本作ではリアルスケールですべて作っています。インゲームのマップもハンバーガーも同じ世界に存在するんです。
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――よりリアルな世界を生み出しているのですね。ところで、本作の脚本は前作に続いて片渕監督(※)が担当されていますが、どのようにオファーされたのですか?
※片渕須直氏。代表作はアニメ『BLACK LAGOON』(ブラック・ラグーン)や映画『この世界の片隅に』など。シリーズ作品では『AC04』や『ACE5』、『ACE7』で脚本を手掛けている。
河野
 今回の取材を受けるにあたってSNSを見返してみたところ、2020年6月に僕から片渕監督に宛てた長文のオファーDMが見つかりました。当時、片渕監督が映画を制作中でご多忙なことは承知していましたが、DMにはただ『エースコンバット』のIPをつぎのステップに上げたいこと、自分がその責任を負う中で片渕監督のDNAがないと成立させられないこと、さらに当時の個人的な心境などが懸命に書き上げられていました。

 片渕監督は当時、映画制作でたいへんな状況にも関わらず「ほかならぬ河野さんと『エースコンバット』のことですから」とお返事をくださり、一度お会いできることになりました。当時はコロナ禍が始まったばかりの影響もあり、密を避けていた時期だったので、僕と下元のふたりだけで片渕監督のお仕事場におうかがいしていろいろお話しました。

 それで片渕監督に正式にご協力いただけることになり、その日の夕方には片渕監督からアイデアが書かれたメッセージが送られてきたんですよ。帰りの電車で受け取ったのですが、内容を読み直して鳥肌が立ちました。そのときすでに、本作のもっとも重要なファクターが決定していたんです。「うわ、もうここに本作テーマがあるじゃないか」と、いま改めて驚いています。

――片渕監督のメッセージに、どのようなことが書かれていたのか気になります!

下元
 これから本作の情報を順次公開していきますので、その話はまたの機会に……。

――楽しみにしています。本作の主人公機がF/A-18Eスーパーホーネットなのは、どのように決まったのでしょうか? 某映画を連想してしまいますが……。

下元
 そうですよね。F/A-18Eは、F-35CライトニングIIなどと比較すると世代的にはやや古い航空機ではありますが、ご指摘のあった著名な戦闘機映画でも注目されているように、空母で運用される戦闘機として非常に高い知名度を誇り、象徴的な存在です。今回の物語の舞台が空母であることを印象づけたかったため、F/A-18Eを採用しました(※)。
※F/A-18Eは艦載機として運用できる。

 事前調査を実施したところ、我々の狙い通り、公開された映像やキービジュアルをご覧になった『エースコンバット』ファン、戦闘機ファンの皆様は、物語の舞台が空母であることを読み解き、どのような物語が展開されるのか、想像を膨らませて楽しんでいらっしゃるようです。

――『エースコンバット』のタイトルで、キービジュアルに飛行中ではないシチュエーションが描かれているのは珍しいなと思いましたが、物語の舞台が空母であることを印象づける狙いがあったのですね。

下元
 シリーズを30年続ける中で、大空を自由に飛び回れることをいちばんに主張したくてキービジュアルには戦闘機の飛行シーンを採用してきましたが、今回はキャラクターも描くことによってストーリー性を感じ取ってもらいたいという意図もあります。よ~く、キービジュアルを見ていただくとアイテムを1つ発見できます。ぜひ眺めてみてストーリーの想像を膨らませてください。

――ただ、空母が物語の舞台になると、艦載機以外の機体が登場するのか、不安に思うファンもいると思います。

下元
 これまでのシリーズ作品と同じく、艦載機以外も登場するのでご安心ください。

――それを聞いて安心しました(笑)。映像内では『ACE7』のアーセナルバード(※)のような航空機が確認できましたが……本作ではどのような存在なのですか?
※架空の防衛用大型無人全翼機。めちゃくちゃデカい。
河野
 ものすごく攻撃してくるのでアーセナルバードのように見えますが、じつは超巨大輸送機なんです。この機体をトレイラーに入れた理由は、また機会があれば詳しくお話ししますが、ゲームのメカニクス、とくに空戦を裏側で支えている設計の見直しの成果がわかりやすく、かつダイナミックな表現につながっているからです。トレイラーをよくよく見ると、いままでの『エースコンバット』では起こらなかったことが起こっていることに気づけると思います。

――あと、映像内で敵機のSu-57フェロンがポストストールマニューバ(※)を行っているように見えました。あれはどのような状況なのでしょう?
※失速した状態で機体を操縦する“失速後機動”のこと。コブラ、フック、クルビットといった、さまざまな空戦機動がある。
河野
 あのシーンは、シリーズに欠かせないライバル機の登場をドラマティックに印象づけるために入れました。設定的には、“パルティアンショット”という我々が考えたポストストールマニューバを使った敵機の戦闘行動です。“パルティアンショット”は開発でつけた名前ですが、もしかしたらゲームの中では名称として語られていないかもしれません。

――なるほど。弓騎兵の射法のひとつにパルティアンショットというものがありますが……本作ではどういったものなのでしょう?

河野
 パルティアンショットと名付けたのにはもちろん理由があって、ライバルや相手の国の文化の設定からのつながりです。今回も、きちんと細かいところまで設定された世界設定を用意しています。

下元
 “パルティアンショット”のシーンをじっくり観ていただくと、機体に“SHADOW22”と書かれていて、無線で「シャドウズ」と言っているのがわかると思います。このシャドウズが何を意味するかは、続報をお待ちいただければ。

――ちなみに、本作でも『ACE7』のように、プレイヤーがポストストールマニューバをくり出すことはできますか?

河野
 実現できるように、現在絶賛調整中です。

――こちらも続報を楽しみにしています。先ほど世界設定のお話がありましたが、本作の舞台もストレンジリアルの世界で、これまでの架空世界と同じなのでしょうか?

下元
 はい。“中央ユージア連合(Federation of Central Usea 通称FCU)”が存在するストレンジリアルの世界になります。

――中央ユージア連合がどのような存在なのか、改めて解説をお願いします。

下元
 中央ユージア連合(FCU)は、ユージア大陸に存在する連邦国家です。『ACE8』をお楽しみいただくうえでは、FCUはユージア諸国が集まった連邦国家である、という点をご理解いただければ十分です。

 シリーズのファン向けにもう少しお話すると、『AC04』の主人公が所属していた独立国家連合軍(ISAF)は、このFCUを中心としたユージア諸国が集まった軍事同盟でしたが、前作『ACE7』の時点でユージア大陸の治安維持活動は国連軍(IUN-PKF)に引き継がれ、ISAFは発展的解散しています。

 本作『ACE8』の時代では、ISAFを経て中央政府が樹立し、ユージア諸国はFCUの構成国となりました。しかし、FCU政府は長年に渡る戦後処理や蓄積した経済課題に対応できず、構成国からの不満が高まる最中、ソトアからの侵略を受けることになる、というのが冒頭の出来事になります。より深く知りたいという方々に向けて、別途解説の機会を設けたいと考えているので、こちらもお楽しみに。

プレイヤーの分身であるパイロットは“シーヴの翼”こと“REX”……の偶像?

――ヘルメットに書かれた“REX”という3文字と、赤い翼のエンブレムも気になります。これらは……?

下元
 あの赤い翼こそ、本作のサブタイトルにもなっている“シーヴの翼”です。主人公のTACネームは“REX”で、希望の象徴として語られる伝説のエースの名を冠していますが、その名声は真実ではありません。プレイヤーはある出来事をきっかけにシーヴの翼の名を背負い、空へと上がることになります。映像の最後に現れる「空よ、教えてくれ」という言葉は、複雑な使命を背負わされた主人公の、心の葛藤を表しているのです。
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――偶像の英雄から、エースパイロットへと成長する物語が体験できそうですね。PVではパイロットの顔がアップになる視点もあり、ハリウッド映画の予告のようでした。ゲーム内でもこういった視点での演出は出てくるのでしょうか?

河野
 はい。いままでは、無線と機外からの戦闘機の演技で見せることしかできなかったナラティブなシーンが、今回はコクピットカメラで僚機のキャラクターたちを映すことができるようになりました。ミッションに臨むときどきの会話でこのようなシーンを用意していますが、制作はとてもたいへんでした。

 きちんとしゃべっているパイロットのカットを入れることで、ストーリーがわかりやすくなるのは以前から想像できていましたが、実現するにはすべての機体でコックピット内のカメラを作る必要があります。それでこれまでのタイトルでは実現できていなかったのですが、本作では新たにチャレンジしています。

 ただすべてをコクピットカメラのシーンにするわけではなくて、「ここのキャラクターの表情はプレイヤーに想像して欲しい」というシーンなどは、別の演出を考えています。また、プレイヤーらしきパイロットのカットが出てきますが、あれはリプレイカメラ専用です。リプレイ専用のカメラにもこだわっていて、実装することでドッグファイトがグッとエンターテインメント化したと手応えを感じています。

――『エースコンバット』シリーズと言えば、無線会話がどんな感じになるのかも気になります。やはり本作でも激しいドッグファイトをしながらの熱い会話に期待していいんでしょうか?

河野
 もちろんです。無線会話は、『エースコンバット』におけるひとつの発明だと思っています。今回も自分自身がコクピットに乗って戦場を飛び回りながら、周囲の熱いドラマや画として描き切れていない背景を無線から知っていただくことができます。

 ただご存じの通り、『エースコンバット』は空を自由自在に飛び回れるゲームで、プレイヤーがその瞬間どこにいて何をしているのか、同じミッションを遊んでいてもいつも違います。今回はなるべくその状況に合わせて、細かく再生するセリフやタイミングなどを調整していますが、状況によっては再生されない無線も入れると、おそらくシリーズ最大量の収録になっていると思います。

――無線会話は楽しみですが……もし上級者が無線会話を上回るペースで敵機を撃墜した場合はどうなるのですか?

下元
 その質問は、先ほど話に出た“状況によっては再生されない無線”というのに関係しています。我々が想定しているプレイングよりも遥かに上手いプレイをしたときにだけに聞ける特別な無線を要所要所に仕込んでいるんです。開発内ではこれらを“ごほうび”と呼んでいます。

――なるほど。周回プレイのときにでも挑戦してみます。今度は音楽の話に変わりますが、PVで流れた楽曲は本作のメインテーマにあたるのでしょうか。サウンドはやはり小林さん(※)が参加されているとか……?
※小林啓樹氏。『AC04』から参加し、『ACE7』ではメインコンポーザーを務めている。
河野
 PVで流れたのは本作のメインテーマです。じつは後半の盛り上がりはまさに調整と演出調整の真っ最中なんです。トレイラーの曲はとても重要な場面でかかるのですが、あと数曲、『ACE8』を代表する曲があります。

 サウンドチームに関しては、今回渡辺(※)、北谷(※)を中心としながら、小林さんをはじめとするシリーズの名曲を生み出してきたスタッフが揃っています。楽曲はいつも最後の最後まで苦労します。「これだ!」と思うまで入れ換えやアレンジ変えなど、ずっと続くので。プレイヤーの皆様に、最高の感動をお届けするために尽力しているところです。
※渡辺量氏。『ACE ZERO』より参加し、『ACE7』ではサウンドディレクターを担当。 ※北谷光浩氏。さまざまなタイトルのコンポーザー業務を中心に携わり、『エースコンバット』シリーズでは『ACE7』の『Enchanter Ⅰ』や『Mimic』の作曲を担当。

――楽曲も楽しみです! あと、オンライン要素はあるのですか?

下元
 マルチプレイモードも、もちろん搭載しております。詳細につきましては、後日改めて説明します。

――そちらの詳細も楽しみにしています。

下元
 2026年中の発売を目指し、鋭意開発を進めております。今後の情報公開にご期待ください。
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――『エースコンバット』シリーズは今年30周年を迎えました。せっかくの機会なので、これまでを振り返ってみてのお気持ちをお聞かせください。

河野
 シリーズの30年は、初代『ACE1』を生み出してくれた先人への感謝から始まります。彼らがいなければ、後の30年はありませんでした。そして後の30年を続けさせてくれたのがファンの存在であり、そのファンに力をもらったスタッフたち、またそのスタッフを支えてくれた家族や関係者です。そうやって想像すると、膨大な数の人たちがこの『エースコンバット』シリーズを支えてきてくれたわけで、僕はただただ感謝しかありません。この30年間ありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いいたします。

下元
 僕は2009年から『エースコンバット アサルト・ホライゾン』の開発に携わっていて約15年になりますが、あっという間だったというのが正直な感想です。いまはプロデューサーということで、『エースコンバット』をさらに大きく飛躍させたいと常々考えています。冒頭にもお伝えしましたが、50周年を迎えられるように、『ACE8』を新たな盛り上がりのきっかけにして、シリーズを拡大させていきたいと思います。

――『ACE8』が発表されて、全世界の『エースコンバット』ファンはワクワクが止まらないかと思います。彼らに向けてメッセージをお願いします。

下元
 ようやく『ACE8』を発表させていただくことができました。シリーズ最大の大作であるのは間違いないので、ぜひご期待のうえ、今後続々と展開していく情報をチェックしながら発売まで楽しみにお待ちいただけるとうれしいです。

河野
 お待たせしました。皆様がご想像されているよりも、開発は進んでいると思います。『ACE8』は『エースコンバット』シリーズの新たな時代の幕開けを飾るタイトルになります。その瞬間をぜひともプレイして、いっしょに共有しましょう。
[IMAGE]画面写真はThe Game Awards 2025の映像をキャプチャーしたもの。
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