『オクトパストラベラー0』は“創る”ことに重きを置いたゲーム。ゲームプレイの約半分が『大陸の覇者』とは違う新しい体験! 鈴木Pインタビュー

『オクトパストラベラー0』は“創る”ことに重きを置いたゲーム。ゲームプレイの約半分が『大陸の覇者』とは違う新しい体験! 鈴木Pインタビュー
 スクウェア・エニックスより2025年12月4日に発売予定の『オクトパストラベラー0』(※)。本作は『オクトパストラベラー』シリーズの最新作。そして、スマートフォン向けに展開中の『オクトパストラベラー 大陸の覇者』をベースに、新たな解釈を加えて家庭用ゲーム機向けに再構築したものであるということが、鈴木裕人プロデューサーのコメント動画にて語られている。
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※対応機種は、Nintendo Switch 2、Nintendo Switch、プレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、Steam、Windows。 ※パッケージ版はNintendo Switch 2、Nintendo Switch、プレイステーション5、プレイステーション4版のみ。
 『オクトパストラベラー 大陸の覇者』をプレイしたことがある人は、『オクトパストラベラー0』と『大陸の覇者』は、具体的にどこが違うの? と疑問に思うところもあるだろう。また、シリーズファンは“0”というタイトルの意味が気になっているはず。

 そこで本記事では、本作のプロデューサーを務める鈴木裕人氏へのインタビューをお届け。本作の開発のきっかけや、『大陸の覇者』との違い、本作独自の要素であるキャラクターメイクやセレクトアビリティ、料理システム、タウンビルドなどについて語ってもらった。

鈴木裕人氏すずき ひろひと

『オクトパストラベラー0』プロデューサー。

『大陸の覇者』を遊んだ人にも喜んでもらえる作品を目指して

――先日のNintendo Directで突然発表され、ファンを驚かせた『オクトラ0』ですが、本作はどういった経緯で開発がスタートしたのでしょうか。

鈴木
 そもそも、本作のベースとなった『オクトパストラベラー 大陸の覇者』は、「スマートフォンでコンソールライクなゲームを届けたい」というところから始まったタイトルだったんです。ですので、『大陸の覇者』をそのまま家庭用ゲーム機に移植するという案はかなり早い段階からありましたし、ありがたいことに、プレイヤーの皆さんからも「家庭用ゲーム機で遊びたい」というご要望をいただいていました。

 しかし、本当にそのままを持ってきてしまうと、すでに『大陸の覇者』をプレイした方からすれば同じ体験を二度味わうことになってしまいます。それに、『大陸の覇者』の全キャラクターを一気に登場させると、ゲームバランスも壊れてしまうんですよね。しかも、『大陸の覇者』で最近登場したキャラクターは、開発期間を考えると家庭用ゲーム機には登場させられない。それではキャラクターを平等に扱うという方針からはズレてしまいます。

 そういった点も踏まえて、「『大陸の覇者』を遊んだ方、『
オクトラ』シリーズが好きな方にも喜んでもらえる作品は何だろう」と考えて、「『オクトラ0』という新しい作品としてアプローチしてみたい」と思ったのがきっかけでした。

――では、本作の開発自体はかなり前から想定されていたのでしょうか。

鈴木
 僕が『大陸の覇者』の統括プロデューサーになる前から構想自体はありまして、『大陸の覇者』で“全てを授けし者”編が終わるくらいのタイミングから、具体的に開発体制を考えていました。

――とすると、鈴木さんは『大陸の覇者』の引継ぎをしながら『オクトラ0』の開発もしないといけない時期があったわけですね。かなりたいへんだったのではないでしょうか。

鈴木
 そうですね。とはいえ『大陸の覇者』については、プロデューサーを引き継いだ細川晋太郎や、共同プロデューサーの井上敬博に大部分を任せる体制にシフトできていたので、僕は『オクトラ0』に集中していくことができました。

――本作は『大陸の覇者』の要素を引き継ぎつつも、まったく同じものというわけではないということですが、具体的にはどういった部分に違いがあるのでしょうか。

鈴木
 もっとも違うのはコンセプトの部分です。『オクトラ0』ではプレイヤー自身が主人公で、自分の町を復興するための旅に出ます。キャッチコピーも、これまでの『オクトラ』シリーズ作品とちょっと変えていて、“旅立とう、君が創る物語へ――”という、“創る”ことに重きを置いたものにしました。主人公をキャラクターメイクできることや、町作りをするタウンビルドなどがゲームの中心となるようにデザインしているんです。

 一方で、『大陸の覇者』は個々のキャラクターが魅力的で、運命的な導きで出会った人々の中から誰を主人公にしよう? と選ぶことにもおもしろさがあるゲームです。そんな『大陸の覇者』との明確な差別化という意味でも、“プレイヤーが作った自分自身が主人公である”ことをコンセプトに据えたい、と考えていきました。

『オクトパストラベラー0』というタイトルに込めた意味

――ゲームのタイトルも『大陸の覇者』との差別化を意識されたのだと思いますが、『オクトパストラベラー0』というタイトルに込めた意味を教えてください。

鈴木
 理由は大きく3つあります。ひとつ目は、自分自身を0から作ること。ふたつ目は、町を0から復興すること。そして最後に、本作の物語が初代『オクトパストラベラー』の前日譚であるということで、タイトルを『オクトパストラベラー0』としました。

――では、このタイトルは開発初期にすんなり決まったのでしょうか。

鈴木
 いくつかのパターンで悩んではいましたが、『オクトパストラベラー0』は最初に出ていた案でした。よく見てくれている方には気づかれていましたが、今回、タイトルロゴの0は指輪に見立てていまして。「本作のテーマをどこに据えるか?」と木寺(ディレクターの木寺康博氏)と相談した結果、いまの形になったんですよ。『大陸の覇者』の物語を引き継ぐうえでも、指輪は重要なアイテムになりますから。

 ただ、“0”という数字が付くにふさわしいタイトルになるかは見定めが必要な部分でした。浅野(『オクトラ』シリーズの企画・プロデュースを手掛けてきた浅野智也氏)にも開発中のバージョンを見てもらい、このクオリティーであれば“0”としてリリースできるだろうという太鼓判をもらえたので、正式に『オクトパストラベラー0』となった経緯があります。

こだわりのキャラクターメイクと料理システム

――プレイヤーがキャラクターメイクを行う主人公も含めて、今回、仲間になるキャラクターには新キャラクターも多くいると伺いました。『大陸の覇者』の“選ばれし者”は登場しないのですね。たとえば、『大陸の覇者』の初期☆5のキャラクターをメインキャラクターにする、といった選択肢もあったと思うのですが。

鈴木
 「『大陸の覇者』のキャラクターを出したい」という案は、当然チームのなかでもありました。ただ、先ほどお話しした通り、全員を出すことは難しく、誰かを出すということは、誰かを出さないことにもなってしまいます。それぞれのキャラクターを好きだと言ってくださる方々たちがいる中で、そういう差をつけてしまうのはよくないと思ったんです。

 そんな中で『オクトラ』シリーズとはどういうゲームなのか? という原点に立ち返りました。フィールドコマンドに代表されるように、プレイヤーごとに自由なプレイができ、そこにもドラマが生まれるゲームであるというのが大きなコンセプトのひとつだと思うんですよね。だとすれば、自由に自分を作って主人公に据える、というのも『オクトラ』らしいのでは、と考えました。

――そういった経緯でキャラクターメイクを実装することになったと。主人公については、どこまでプレイヤーがカスタマイズできるのでしょうか。

鈴木
 まずは名前と見た目ですね。見た目は髪型や、髪・目・肌の色を設定できます。目は大きさも少し変えられます。それとボイスや、勝利時・フィールドコマンド時・戦闘待機時などの仕草も設定できます。とくに仕草はスタッフのこだわりで入れ込んだ部分です。

 そのほか、最初に装備できるセレクトアビリティの選択時には、それらの技を父や母に教わったという思い出も設定されています。そして、好きな食べ物。自分の好きなものがゲームに登場するという体験を作りたくて、好きな料理の名前はプレイヤーが付けられるようにしています。
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――主人公のフィールドコマンドはどういったものになりますか?

鈴木
 フィールドコマンドの仕組みは『大陸の覇者』を継承していて、フィールドコマンド対象のNPCが富・権力・名声のどの影響力に属するか、という相手の価値観に応じてコマンドが変わるようになっています。

――料理は、これまでのシリーズにはなかった要素ですよね。ゲーム内で、どのように活用されるものなのでしょうか。

鈴木
 料理についてはちゃんとお伝えさせてください。というのも、先日、料理に関する画面写真を公式Xに掲載したのですが、その中に"料理効果を15ターン付与”という表示がありまして。それをご覧になった方から「1戦闘で15ターンも戦わないといけないのか」というご意見があったのですが、そういうわけではないんです。

 料理は新登場のシステムで、メインメニューから選んで使用すると、バトルをまたいで効果が持続するパーティーバフのような効果を得られます。たとえば、"料理効果を15ターン付与”というのは、バトルをまたいで、効果が15ターン持続するということです。その料理を使った後に敵を1ターンで撃破すれば、そのつぎの戦闘でも14ターン分の効果が残る仕組みなんです。

――とはいえ、ボス戦は長期戦になるので、どのタイミングで料理を使うかも重要そうですね。効果としては攻撃力や防御力を上げるようなものが多いのでしょうか。

鈴木
 バトルに直接役立つ効果のものが多いですが、経験値ボーナスを付与するなど、冒険をラクに進めるための料理もあります。使わなくてももちろん攻略はできますが、使うと便利な要素ですね。

――料理はどこか特定の場所で作るのですか?

鈴木
 後ほど触れますが、町の復興を進める中で、序盤に建設する施設である“拠点”で行います。拠点でできることはいくつかありますが、そのうちのひとつが料理ですね。食材はエネミーを狩ったり、畑や牧場で収穫したり、さまざまな方法で入手できます。
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――主人公の好きな料理について、必要な食材はどのように決まるのでしょうか。

鈴木
 好きな料理として選べるカテゴリーは肉料理や魚料理などの8種類で、そのカテゴリーによって必要な食材も変化する、といった具合ですね。
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――ちなみに、鈴木さんはテストプレイ時にどんな料理名を付けたんですか?

鈴木
 最近はスパイスカレーに凝っているので“マトンカレー”ですね(笑)。公式サイトなどに掲載する際の名前はどうしようかと悩んだのですが、主人公の故郷ウィッシュベールの特産品をイメージして“ウィッシュロール”としています。スタッフの中にはタコ焼きっぽい名前にしている人などもいました。みんな好きな名前を付けていて、デバッグ中に見るのが楽しかったです。

セレクトアビリティの組み合わせの可能性は無限大

――バトルについても伺っていきたいと思います。『大陸の覇者』をプレイした人にはおなじみのシステムではありますが、初代『オクトラ』や『オクトラ2』と異なり、パーティーが8人編成となるのが特徴ですよね。

鈴木
 本作は前衛4人、後衛4人の計8人パーティーとなります。後衛にいるキャラクターはターンごとにHPとSPが回復します。そして、バトルにおける大きなポイントは、前衛にいても後衛にいてもBPが溜まるというところです。

 家庭用の『オクトラ』シリーズでは、弱点属性で4回連続攻撃してブレイクさせたけど、もうBPがないからあまりダメージを与えられない……ということがよくあったと思うんですよ。でも今回は前衛でタコ殴りにした後、後衛がBPを最大限に使って攻撃する、みたいなことができます。有効な攻撃や回復を行えるタイミングが増えるので、よりスピーディーなバトルが楽しめるかと。後衛がターンごとに回復するぶん、窮地に陥っても耐え忍べば逆転できるというのも大きな違いですね。

――『大陸の覇者』は、多数のキャラクターが最初からパーティーにいる前提のゲームバランスになっていたかと思うのですが、8人編成バトルを家庭用ゲーム向けに開発するうえで、どのような苦労がありましたか?

鈴木
 2025年8月1日の“オクトラジオ”で浅野も触れていましたが、モバイルで展開していたものをそのまま持ってくるだけでは、ぜんぜんダメでした(笑)。レベルデザインは、セレクトアビリティや料理システムが追加されたこともあって、すべてをイチから、驚くほど時間をかけて作り直しています。
 また、もうひとつ『大陸の覇者』から大きく変わったことは、仲間の行動を、行動順が来たタイミングで選べるようになっている点ですね。『大陸の覇者』ではまず、仲間4人分の行動をターンの初めに選ぶことになりますので、敵の動きを先読みして行動を選んでいたと思います。でも本作では、その場その場で状況を見て行動を選ぶことができます。そういう意味ではよりシンプルでわかりやすいものになっていると思います。

 それと、スマートフォンのタイトルは定期的にキャラクターを追加するので、それに合わせて敵や仲間の強さを設定していくことになります。キャラクターや敵の強さはかなり厳格に定義する必要があるんです。でも、家庭用ゲーム機向けのタイトル、とくに『オクトパストラベラー』は、いろいろなところに裏技のような工夫の余地があり、それがおもしろさにつながっている側面も大きいですよね。たとえば、ものすごく強い歴戦NPCをボス戦に連れていくとラクに勝てる、みたいな。そういう工夫の余地や遊びの隙間を、ディレクターの木寺と話し合いながら入れていきました。

――過去作では、強いジョブやアビリティを早めに習得できれば戦いがラクになったりしましたね。本作では、主人公以外はジョブチェンジの要素がないそうですが、セレクトアビリティがそこを補っているのでしょうか。

鈴木
 そうですね。主人公以外はジョブの変更ができないぶん、たとえ同じジョブであってもキャラクターごとに異なるアビリティを覚えるなど、キャラクターごとの個性が出るようになっています。たとえばフェンなら“仲間を守れる狩人”というコンセプトで、挑発で敵の攻撃を自分に集めることが可能です。そういった個性とセレクトアビリティを絡めて、パーティーの強みを伸ばすのか、もしくは弱点を補強するのかなど、編成のおもしろさを楽しんでいただけると思います。
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――仲間は総勢30人程度と伺っていますが、そうなると戦略の幅はけっこう広いですよね。

鈴木
 かなりの幅がありますね。ちなみに、セレクトアビリティの中には、ボスを倒すと手に入る強力なものも存在します。そういったユニークなセレクトアビリティを誰に装備させるかを考えるのも楽しいポイントです。

――セレクトアビリティについて、もう少し詳しく教えていただけますか?

鈴木
 セレクトアビリティにも、バトルアビリティとサポートアビリティがあります。バトルアビリティに関しては、なんでも装備できるというわけではなく、弓のバトルアビリティならば弓の武器を扱えるキャラクターだけが装備できる仕様となっています。ただ、属性攻撃アビリティやその他のアビリティについては武器のような縛りがないので、回復と属性攻撃が可能な狩人を作る、なども可能です。

――なるほど。であれば、セレクトアビリティを活用することで、弱点を突きやすくなりそうですね。

鈴木
 かなり突きやすくなりますね。「このキャラクターはつぎのボスの弱点武器を使えない……けど絶対に仲間に入れたい!」という場合にも、セレクトアビリティを活用できます。もちろんもともと持っているサポートアビリティとセレクトアビリティを組み合わせることでさらなる威力を発揮するような組み合わせもたくさんあるので、ぜひ組み合わせの探究を楽しんでいただきたいです。

――セレクトアビリティはどのような方法で手に入るのですか?

鈴木
 宝箱やフィールドコマンドからも入手できますし、先ほどお話しした通り、一部のボスからはユニークなアビリティが獲得できます。また、タウンビルドを進めていくと“訓練所”という施設が作れるようになり、各キャラクターが持っているアビリティをセレクトアビリティ化することが可能になります。そうなると、「このアビリティをセレクトアビリティ化するために、このキャラクターを育てよう」……という風に、育成の計画も進むと思います。
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技を極意化してセレクトアビリティにすれば、ほかの仲間に装備させられる。
――なるほど。「いろいろなキャラクターを使ってみたい」という気持ちが湧いてくるシステムですね。

鈴木
 大勢のキャラクターを育成するのは面倒と思うかもしれませんが、訓練所に配置したキャラクターにもJPや経験値が入るので、パーティーに編成せずとも育成は可能です。各キャラクターがユニークな技を持っていて、ほぼすべてのアビリティがセレクトアビリティ化できるので、組み合わせのバリエーションは非常に多いです。

――それは楽しみですが、それだけ組み合わせがあると、バグチェックがたいへんそうです(笑)。

鈴木
 本当にたいへんなんですよ(笑)。でも、『オクトラ』のプレイヤーは、組み合わせを考えるのがすごく上手だし、楽しんでくれるんですよね。今回も、すごい組み合わせでボスをガンガン倒すプレイヤーが出てくるんだろうなと思っています。

 それと、必殺技のシステムも追加しています。最大3ゲージ溜まる必殺技ゲージを使ってくり出す技ですが、本当に強力で、それぞれの仲間の個性を象徴するものになっています。「この必殺技のためにキャラクターを編成したい!」ということも多いと思います。
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仲間を増やして、ウィッシュベールの町をにぎやかに

――現在公開されている映像では、トレサやサイラスなど初代『オクトラ』の主人公たちのほか、本作のオリジナルキャラクターの姿を確認できます。本作の仲間はどのように増えていくのでしょうか。

鈴木
 本作の仲間たちは物語や旅の道中で自然に、それぞれの個性が感じられるような流れで仲間になるようにしています。メインストーリーを進める中で仲間になる人もいれば、町の酒場に立っていて、クエストをクリアーすると仲間になってくれるような人もいますね。

――キャラクターごとのエピソードも用意されているのでしょうか。

鈴木
 本作の主人公は自分自身ですので、『大陸の覇者』の“トラベラーストーリー”のような長さではありませんが、それぞれに仲間になるためのクエストがありますし、突発的に起こるようなものもあります。

――仲間になったキャラクターはウィッシュベールに集まってきてくれるのですか?

鈴木
 はい。仲間キャラクターは基本的に町の住民として加わってくれます。そのほかにも、オルステラのあちこちにいる町人たちを招いて配置することも可能です。住民はそれぞれに住民アビリティというものを持っていて、畑に配置すれば収穫物が増える、収穫スピードが上がるといった効果を発揮してくれます。
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――誰をどの家に配置しようか、などと考えるのが楽しそうですね。町の建物についても、配置する場所や種類を自由に選べるんですよね。

鈴木
 主要な施設以外の民家や装飾品といったものは自由に配置できます。ただ……これがすごくたいへんでした(笑)。手前に像を配置したせいでイベントシーンが見えなくなる……といったことも多発するので、最初は「自由配置は止めよう」という開発の声も多かったんですよ。でも、タウンビルドをするなら自由配置は必要だろう、と。そこは開発メンバーにがんばってもらいました。

 施設や橋、階段などについては、スキンの要素もあります。フィールドコマンドで町のNPCから情報を得ることでも、その町のスキンを得られる仕組みもあります。旅の中で情報を仕入れると自分の町が豊かになっていくので、旅もタウンビルドも、どちらも楽しく進めてもらえるように意識しました。
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――住民として呼べるキャラクターについては、誰を招待するかもプレイヤー次第、ということですよね。

鈴木
 そうですね。ただ招いたら勝手に民家に住んでしまうようなことはありませんからご安心ください。まずは住民の一覧に登録されて、その後に「この人をこの家に配置する」という風に選べるようになっています。配置を変更する際も、もともといた人とお別れするわけではなく、一覧に戻すだけなので、今生の別れのようなことにはなりません(笑)。なお、移住する人を選ぶのが面倒な人向けには“一括移住”という機能もあり、お任せで移住させることも可能です。

復興と復讐の物語には、『大陸の覇者』経験者でも目を見張る展開を用意

――本作では町の復興と主人公の復讐、このふたつが物語の柱になっていくかと思うのですが、ストーリーは町の復興に合わせて進んでいくのでしょうか。

鈴木
 まだお伝えできない部分もあるのですが、町の復興は物語を進めるうえですごく重要な要素になっています。復讐の物語と復興の物語、それぞれを進めていくような形ですね。

――ストーリー面では、『大陸の覇者』とはどういった違いがあるのでしょうか。

鈴木
 まずゲームプレイ全体に関して言うと、『大陸の覇者』をクリアー済みの方であっても、半分くらいが新しい体験になるように設計しました。タウンビルドやセレクトアビリティなどのシステムは完全に新規ですし、サブクエストやそれぞれの仲間との物語、またパーティチャットなんかも本作のためにすべて書き下ろしています。

 メインストーリーだけを見た場合には、3~4割くらいが新しい物語です。メインストーリーは『大陸の覇者』でもご好評いただいていた箇所なので、あえて手をつけていないところもありますが、変えるべきところは大胆に変えています。どの部分を変えるべきかは、『大陸の覇者』のメインシナリオライターである普津澤画乃新さんとも密に話をしながら設計していきました。

――『大陸の覇者』経験者も「どこが変わったのか?」と新鮮な気持ちで楽しめそうですね。

鈴木
 主人公が自分自身ということで、細かなテキストや各キャラクターとの関わり方もかなり細かく調整しているので、違いを見つけるのは楽しいと思いますよ。

 また、本作のメインストーリーには新たなテーマを設定しています。キービジュアルでも描いてもらった“旅から帰ること”です。『オクトラ』1作目や2作目のキービジュアルは旅路の途中の8人の様子が切り取られていますが、本作では主人公が旅から町に帰る場面を描いています。新たなテーマをもとに、この物語がどこに帰着するのかという点も、ぜひ楽しみにしていただきたいですね。
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――復興と復讐の物語が用意されているということで、プレイボリュームが相当ありそうな気がします。

鈴木
 メインストーリーをまっすぐ進めて、100時間くらいです。ちょっと長いですよね(笑)。12月リリースなので、年末年始にじっくりと遊んでいただければうれしいです。

 ただ、『オクトラ0』は、基本的にまっすぐ進むだけでレベルが足りて物語をどんどん進められるようにしているので、飽きるようなことはないかと思います。もちろんタウンビルドを中心に寄り道も楽しくなるようにしていますので、好きなプレイスタイルで遊んでみてくださいね。

――その膨大なメインストーリーがフルボイスになったとのことですが……これはファンの皆さんが気になっているところかと思うのですが、ヘルミニアを演じられていた田中敦子さんが昨年亡くなられました。本作のヘルミニアの声はどなたが担当されているのでしょうか。

鈴木
 本作でも、ヘルミニアは田中敦子さんに演じていただくことができました。田中敦子さんの演技によって、妖艶で迫ってくるようなヘルミニアのキャラクター性がより際立っています。おっしゃるとおり、メインストーリーはフルボイスで展開されますので、ぜひ皆さんに聴いていただきたいです。
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――それはうれしいですね。ボイスに関しては、アーギュストの「マーヴェラス!」も楽しみです。

鈴木
 もちろんそちらも新録しているので、楽しみにしていてください(笑)。『大陸の覇者』はスマートフォン向けゲームで、かつ部分的にパートボイスを使用していたので、キャストの皆さんには少し強い演技をしていただいたのですが、『オクトラ0』ではよりリアルに近い演技をしていただきました。『大陸の覇者』を遊ばれた方には、そういった違いも楽しんでもらえるかなと思います。

――『大陸の覇者』とはまた違うディレクションで収録されたのですね。

鈴木
 はい。ですので、もう少しリアルな「マーヴェラス!」が聴けます(笑)。
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 それと、キャラクターのイラストについてもスマートフォン版とは少しテイストを変えています。スマートフォン版では明るかった色合いが、よりリアルなトーンというか、手描きのような風合いになっているんです。そのテイストで統一するために、キャラクターやボスのイラストは基本的にすべて描き直しています。
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上が『大陸の覇者』、下が『オクトラ0』のイラスト。構図は同じだが、タッチが違うのがわかるはず。

コレクターズエディションには“聖火神の指輪”が付いてくる!

――スクウェア・エニックス e-STOREで販売される『コレクターズエディション』にはさまざまなアイテムが付いてきますが、まさか聖火神の指輪がグッズになるとは思いませんでした。

鈴木
 あくまでグッズですし、「そんなにリアルなものにはならないかな……」と思っていたのですが、想像以上によきものを作っていただきました。

――指輪を作ることは、早い段階で決めていたのですか?

鈴木
 もう、最初に決めたくらいでした。指輪の石のカットや色合いがかなりリアルになっているので、ぜひご覧いただきたいです。とはいえ、制作の初期段階では理想の形になっていなくて「この色合いは聖火神の指輪じゃない!」みたいなフィードバックを返していました。聖火神の指輪の実物を見たことはないんですけどね(笑)。装飾部分の古めかしさなどにもかなりこだわってもらいました。
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石のカットや、アームの彫刻がリアルな聖火神の指輪。サイズは21号。
 『オクトラ』はテーブルトークRPGの要素も原点にあるタイトルですので、富・権力・名声の八面ダイスや、トラベラーズトランプ、オルステラ大陸地図のゲームマットも用意しました。ぜひ皆さんで、このダイスやトランプを使って、いろいろなゲームを考えて楽しんでください。

 ちなみにこの地図は、本作のためにフランチェスカ・バエラルドさん(イタリアのアーティスト。これまでのシリーズ作でも地図を描いていた)に新しく描き下ろしていただいたものです。
――プレイヤーがゲームを“創る”ことができるというのも、本作らしいグッズですね。さて、本作は2025年12月4日発売予定とのことですが、開発状況はいかがでしょうか。

鈴木
 開発は最終盤で、開発スタッフ一同、全力でがんばっています。直近の予定としては東京ゲームショウでも9月27日にイベントを行いますし、それ以外にもいろいろと計画をしています。『大陸の覇者』もまもなく5周年を迎えるので、いっしょに盛り上がっていけたらなと。

 最後に、本作のタイトルである「0」には、“誰でもゼロから楽しめるように”という思いも込めています。『オクトパストラベラー』シリーズの経験者には関係性やその違いを、未経験者には新たなJRPGを、それぞれに楽しんでいただける作品ですので、ぜひ多くの人に手にとっていただけるとうれしいです。どうぞよろしくお願いします。
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