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『マフィア:オリジン ~裏切りの祖国』その時代にタイムスリップしたかのようなリアルな体験を提供することが目標。ナイフの存在がアクションに革新をもたらした【インタビュー】

byQマイン

by古屋陽一

更新
『マフィア:オリジン ~裏切りの祖国』その時代にタイムスリップしたかのようなリアルな体験を提供することが目標。ナイフの存在がアクションに革新をもたらした【インタビュー】
 1900年代の架空のアメリカを舞台にした、Hangar 13開発による三人称視点形式のクライムアクション『マフィア』。その最新作である『マフィア:オリジン ~裏切りの祖国』が、2Kより2025年8月8日に、プレイステーション5(PS5)、Xbox Series X|S、Steam向けに発売された。

  “「ファミリー」に、全てを捧げよ”をキャッチコピーとした本作は、シリーズの原点である1900年代のシチリア島が舞台。裏社会の一員となった、主人公エンツォ・ファヴァーラの視点で “マフィアの起源 ”が描かれていく。
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 本稿では、発売を記念して本作の開発を担当したHangar 13のゲームディレクターであるアレックス・コックス氏と、同社のエグゼクティブプロデューサーであるデヴィン・ヒッチ氏に、インタビューを実施。令和の時代に復活した『マフィア:オリジン ~裏切りの祖国』の魅力やこだわりなどを聞いた。
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アレックス・コックス氏

Hangar 13 ゲームディレクター。(文中はアレックス・写真左)

デヴィン・ヒッチ氏

Hangar 13 エグゼクティブプロデューサー。(文中はデヴィン・写真右)

“忘れられない物語を、最高の価値で提供できるタイトル”

――『マフィア:オリジン ~裏切りの祖国』がついに発売となります。現在の率直な感想をお聞かせください。

アレックス
 いまはとてもワクワクしています。『マフィアIII』の発売から約9年が経ち、再びこのIPをお届けできることを本当にうれしく思っています。1900年代初頭のシチリアを舞台に、苛烈な裏社会の中でくり広げられるギャングの物語を通じて、組織犯罪の起源をプレイヤーの皆さんに体験していただけるのが待ちきれません。

――『マフィア』シリーズは歴史が深いタイトルです。ここまで多くのファンに愛され続けている理由は何だと思いますか?

デヴィン
 私たちのファンは非常に情熱的で献身的な方々ばかりで、この20年間ずっとシリーズとともに歩んできてくれました。『マフィア:オリジン ~裏切りの祖国』では、あらゆる面でシリーズの原点に立ち返っています。それは、私たちが得意とするゲームのスタイルであり、ファンの皆さんが『マフィア』シリーズに期待しているものでもあります。圧倒的なビジュアル、シネマティックな演出、そしてリアルな世界観によって紡がれるスリリングな物語――それこそが『マフィア』の真髄です。

――新しい時代ではなく、1900年代のシチリア島(マフィアの起源)を題材にした経緯を教えてください。

アレックス
 1900年代初頭のシチリアにおける組織犯罪の原点に立ち返りながら、新たなキャラクターたちによる魅力的な物語を通して、プレイヤーの皆さんにこれまでにない体験をお届けしたいと考えました。 シチリア・マフィアはアメリカのマフィア史において重要な位置を占めており、“オールド・カントリー(祖国)”という言葉はこれまでのシリーズの中でもたびたび言及されてきました。この地こそが、本シリーズ全体の歴史的な土台となっているのです。

――主人公であるエンツォ・ファヴァーラの人物像について教えてください。モデルは存在するのでしょうか?

アレックス
 エンツォは、 シチリアの苛酷な硫黄鉱山で年季奉公として過ごした幼少期を、持ち前の根性と意志の強さで生き延びてきました。そしていま、 運命の巡り合わせにより、 ドン・トリージの犯罪ファミリーに加わるチャンスを得た彼は、みずからの人生をよりよいものにするため、どんな手段もいとわず突き進んでいきます。エンツォは誓いを立てることで、トリージ・ファミリーの名誉の掟に身を捧げることになりました―― それが意味する力と苦難のすべてを背負って。彼が決して忘れてはならないのは、このシンプルな真実です。

 エンツォというキャラクターは特定の実在人物をモデルにしたものではありませんが、チームは当時のシチリアの“カルージ(鉱山で働かされていた少年たち)”の実話やマフィアの歴史から着想を得て、この時代に深く根差したキャラクターとして彼を作り上げました。
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※画面は動画をキャプチャーしたものです。
――本作のゲームボリュームはどれぐらいなのでしょうか?

アレックス
 『マフィア:オリジン ~裏切りの祖国』は、『マフィア コンプリート・エディション』や『マフィアII』とほぼ同じ規模で制作されています。

――本作は『マフィアIII』のようなオープンワールドではありませんが、オープンワールドでないことが、プレイヤーにどのようなゲーム体験をもたらすのでしょうか?

アレックス
 『マフィア コンプリート・エディション』の開発を通じて、私たちは改めて“リニアかつシネマティックなゲーム”を作る楽しさ、そしてそれをプレイすることをファンの皆さんがどれほど楽しんでくれているかを再認識しました。そのため、『マフィア:オリジン ~裏切りの祖国』の開発にあたっては、シリーズ初期の構成やスタイルを意識的に踏襲しています。

 本作は、物語とキャラクターに根差した体験を軸に据え、かつての『マフィア』シリーズを彷彿とさせるプレミアムな作品に仕上がっています。私たち自身、“忘れられない物語を、最高の価値で提供できるタイトル”だと自信を持っています。

――『マフィア』と言えば、銃撃戦とステルスプレイが醍醐味だと思います。そのプレイフィールは本作でも変わらないのでしょうか?

アレックス
 『マフィア:オリジン ~裏切りの祖国』では、シリーズならではのゲームプレイを現代的に洗練させ、リアリティーのある危険な戦闘システムを通じて、犯罪ドラマとしての没入感をさらに高めています。シリーズの伝統である、緊張感のあるステルスや銃撃戦といった手に汗握るメカニクスは本作でも健在で、細部まで作り込まれたマフィアの世界へと、プレイヤーをよりリアルに引き込みます。

――映画のようなシナリオと演出も見どころですが、こだわった点を教えてください。

デヴィン
 『マフィア』シリーズでは、つねに印象的なシネマティック体験をお届けすることを目指しています。本作では、とくに物語を通してシチリアという舞台特有の魅力をどのように伝えるか、そしてゲーム全体のトーンがこの時代に対するプレイヤーの期待と合致するかという点で、非常に特有の課題に直面しました。物語に“場所としてのリアリティー”をしっかりと宿すために、 私たちはシチリア固有のテーマ、土地、そして葛藤を物語に組み込むべく、徹底したリサーチを行いました。

 登場人物の演技にも真実味を持たせるため、主要キャストにはイタリア出身の俳優を起用し(エンツォ役を含む)、シチリア訛りで話すための発声指導や、地域特有の所作のトレーニングも実施しました。また、シネマトグラフィや編集においては、ヨーロッパ映画や歴史ドラマの手法に着想を得て、テンポをやや落とし、長回しのショットを多用する構成を取り入れています。
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――本作のストーリーとゲームシステム、それぞれの見どころを教えてください。

アレックス
 物語の面では、エンツォの物語は、スティレット(短剣)の腕前が命を左右し、ルパーラ(ソードオフ・ショットガン)が常用され、殺意に満ちた復讐劇が何十年にも渡り続き、マフィアたちが徒歩や馬、あるいは20世紀初頭の自動車で“守り代”の取り立てに回っていた―― そんな時代を舞台に展開されます。これまでとはひと味違う、新たな『マフィア』体験をお届けできる内容になっています。

 ゲームプレイの面では、銃撃戦とステルス戦闘の精度をさらに高めたほか、新たに近接戦での“ナイフファイト”を導入しました。当時のナイフ戦は、ある種の武術とも言えるものであり、この独特な戦闘スタイルをゲームにしっかりと再現することを重視しました。ナイフファイトは、いわば“ボス戦”のような扱いで、ゲーム内に点在させることで、戦闘に緊張感と残酷さの層を加えています。

――印象に残っている開発中のエピソードがあればお聞かせください。

アレックス
 個人的なハイライトとして、開発チームのメンバーとともにシチリア各地を巡りながらリサーチを行った体験が挙げられます。その中でもとくに印象的だったのが、映画『ゴッドファーザー』のロケ地としても有名な“カステッロ・デッリ・スキアーヴィ”を訪れたことです。

 『ゴッドファーザー』は私のお気に入りの映画のひとつであり、本作にとっても大きなインスピレーション源です。この豪華なヴィラに到着すると、サンタ・ルチア男爵が温かく出迎えてくださり、邸宅内を丁寧に案内してくれました。さらには、ご家族の歴史にまつわる貴重な思い出の品々まで見せていただき、本当に忘れられないひとときとなりました。
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――本シリーズは時代考証を追求した世界観が魅力のひとつだと思います。本作で当時の時代を再現するにあたってこだわった点を教えてください。

デヴィン
 『マフィア』シリーズでは、つねに“オーセンティシティ(信頼性)”を追求しています。プレイヤーをゲームの世界に完全に没入させ、まるでその時代にタイムスリップしたかのような体験を提供することが、 私たちの目標です。そのために、体験のすべての要素を丁寧に作り込んでいます。

 物語の背景には、 シチリア・マフィアの実際の歴史から着想を得た出来事も含まれていますが、私たちのディテールへのこだわりはそれに留まりません。 シチリアの建築様式、衣装、武器、車両、音楽、言語、風習など、あらゆる面で時代考証を徹底し、その時代ならではの空気感を忠実に再現できるよう、細部までこだわって制作しています。
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ナイフでの戦いで、本作の新しいゲームプレイの可能性をさらに探っていった

――作中のマフィアはどのような武器や道具を使っていたのでしょうか?

デヴィン
 本作に登場する武器は、当時実際に使われていた武器に大きく影響されています。本作の舞台は前世紀の変わり目を迎えたシチリア島ですので、私たちは当時この地で使われていたさまざまな銃器について多くの調査を行い、当時の農民やマフィアたちがイタリア軍の制式小銃やハンドガンといった銃器を使っていることを知りました

 武器の制作担当アーティストたちはこれらの武器をできるだけリアルに表現することに情熱を注いでくれました。多くの調査を行った上で武器を作りましたが、私たちはこうした武器のライセンスを持っているわけではないので、実際に登場する武器は、あくまでもこれらにインスパイアされたものです。

――農民も銃を持っていたのですね。銃は身近な存在だったのでしょうか?

アレックス
 当時のシチリア島では、銃器は容易に手に入るものでした。住民のほとんどは農業従事者、農家、労働者だったので、銃器は道具のひとつとして使われていました。しかし、19世紀においても銃を使う際は武器ライセンスを取得する必要がありました。マフィアは、農民が武器ライセンスを取得できるよう手配する見返りとして賄賂を受け取り、農民が賄賂の支払いを渋ると、今度は恐喝に及ぶこともあったのです。

――ナイフファイトについてももう少しくわしく教えてください。

アレックス
 本作ではサイドアームとしてナイフが登場し、通常の戦闘やボス戦で使用することができます。とくにボス戦では1対1の特別なナイフファイトを楽しめるようになっています。

 ナイフは当時のシチリア島ギャングたちが使っていた代表的な武器ですが、ナイフ戦には、ひとつの格闘技としての伝統と長い歴史があります。シチリア人は昔からさまざまな種類のナイフを使っていましたが、やがて犯罪者やギャングのあいだでも使われるようになりました。

――時代考証をする中で、当時の人にとってナイフが重要であることを知ったのですね。

デヴィン
 はい。調査を進める中でシチリア島にはナイフ作りとナイフ・ファイティングの歴史があることを知りました。そこでチームメンバーを現地に送ったところ、いまも伝統的な製法でナイフを作る名匠たちに会うことができ、さらにナイフ・ファイティングの実演も見ることができました。流れのある動きの中には見る人を楽しませるショーマンシップの要素もありました。

 私たちにとって史実に基づいたシチリア島の文化の一部について考えるのは、とても興味深いことでしたが、それがどのように本作のゲームプレイの重要な部分になるのか、さらに考えを進めました。
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――そこからどのようにしてナイフファイトをゲームに落とし込んでいったのでしょうか?

デヴィン
 このトピックについて検討し始めて気づいたのは、先ほどアレックスが触れたボス戦にひとつの可能性を提供してくれるかもしれないということでした。これらのナイフ戦ではボス、敵対する悪役とまさに差し向かいになるわけです。

 これまでの『マフィア』シリーズのゲームでは、シネマティックでボスを倒す、あるいは遠距離から撃つことはあっても、相手の表情が見える距離で対面する機会はありませんでしたので、これはとてもユニークだと思いました。ここからインスパイアされ、本作の新しいゲームプレイの可能性をさらに探っていきました。

――ナイフでのパリィなどはあるのでしょうか?

アレックス
 もちろんあります。本作にはパリィや回避があり、相手の動きと攻撃に敏感に反応することができます。反撃する際は斬撃、刺突で素早く攻撃し、相手のガードを破ることも可能になっており、じゃんけんのような攻めと守りの要素を楽しめます。

――動画の中でナイフを投げるシーンがありましたが、専用の投げナイフがあったのですか?

デヴィン
 本作にはナイフのアーキタイプが3つあり、それぞれ独自のアビリティを持っています。専用の投げナイフもあります。離れたところから攻撃して敵を倒すことが可能なため、ステルスプレイや真正面からの戦闘の幅を広げてくれます。
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※画面は動画をキャプチャーしたものです。
――アーキタイプが3つあるとのことですが、ほかにはどのようなナイフがあるのでしょうか?

デヴィン
 ステルスに特化したナイフとパワフルな攻めに特化したナイフがあります。プレイヤーはいつでもこれらのナイフを使うことができ、好みのアーキタイプを選んで試すことができます。

 また、装備することでさまざまなアビリティが発動する“ロザリオのビーズ”というチャーム要素もあります。多種多様な効果があり、ナイフと組み合わせて効果を発揮するものも存在します。たとえば、ナイフを使って敵を倒すと敵の物を盗んだり、ヘルスを回復できる包帯を獲得したりすることができるのです。

――ロザリオのビーズはプレイフィールが大きく変わりそうで楽しみです。

デヴィン
 きっと楽しんでもらえると思います。ロザリオのビーズを見つけることで新たなアビリティを獲得でき、なかにはステルスに役立つものなどもあります。

――『マフィア』シリーズの醍醐味であるステルスプレイとのシナジーもあるのですね。

デヴィン
 その通りです。足音が聞こえなくなるロザリオのビーズを使えば、これまで以上にステルスプレイが楽しくなると思います。

 ステルスシステムは大部分がこれまでのゲームで慣れ親しんできたもの、似ているものになっていますが、こうした小さな変更点は、プレイヤーの皆さんが敵に対して優位に立てると感じるプレイスタイルとなっており、遊びの幅が大きく広がると思います。

――昔の武器や道具をゲーム内でリアルに再現するにあたっての苦労をお聞かせください。

アレックス
 『マフィア』にとって本物らしさと没入感は非常に重要なポイントです。ゲームの舞台となる特定の時代が、ゲームにおいて可能な限り正確に再現されていることを確認しつつこれを実践してきました。

 そのためにはまず、歴史的に重要な意味を持つ武器をきちんと提供することからスタートしました。もっとも苦労したのは、自動小銃の登場以前に時間を巻き戻さなくてはならなかったことです。これまでの『マフィア』シリーズのゲームで登場した、たとえばアメリカのギャングの武器として知られるトミーガンは、本作の時代にはまだ発明されていませんでした。当時は連発銃やリボルバーなどしかなかったのです。

 このことは私たちの戦闘へのアプローチに大きな影響を与えました。戦闘のスピードを落とすことで、プレイヤーにひとつの武器と弾がより価値の高いものだと感じられるようにしたのです。
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――自動小銃でない点を逆手に取ったということですね。

アレックス
 そうです。よりゆっくりした、意図的な戦闘スタイルを奨励することで、戦闘自体が一層危険に感じられるようにしたのです。これにより、戦闘中に弾薬やヘルスパックといったリソースを探すという新たな要素が生まれました。

 結果的に、私たちが思い描いたゲームの設定やストーリーにうまく合致しました。本作を遊んだプレイヤーは、まるで自分が1900年代にいるかのような感覚を味わえると思います。

――武器や道具などをリサーチした際、印象に残ったことやエピソードを教えてください。

アレックス
 シチリア島のマフィア、とくにナイフの使用について調査する中で印象に残っている話があります。本作のストーリーの時代と同じころ、実際にある町で祭りの最中に、ライバルどうしであるふたつの犯罪者一族のあいだで教会のベンチを巡って口論が勃発しました。口論は収まることなくエスカレートしていき、やがてナイフファイトへと発展して多くの人が怪我を負ったり、命を落としたりしました。男性だけでなく女性も、ともに戦ったそうです。

――本作を日本のゲームファンにはどのように楽しんでほしいですか?

アレックス
 これまでの『マフィア』シリーズ同様、本作のメインゴールはナラティブ主導ゲームです。デザインに関わるすべての決断はストーリーを第一に考えて行いました。

 日本のプレイヤーの皆さんが、シチリア島を舞台にしたストーリー、世界観、マフィアの起源、歴史、そしてアクションを楽しんでいただけたらうれしく思います。また、皆さんが本作のキャラクターたちに出会い、私たちといっしょに『マフィア:オリジン ~裏切りの祖国』という名の旅をしてくれることを楽しみにしています。

デヴィン
 これまでの『マフィア』シリーズ同様、プレイヤーの皆さんがクラシックマフィア映画のスターになったような気持ちになれるゲームに仕上がっています。『マフィア:オリジン ~裏切りの祖国』を存分に楽しんでいただければ幸いです!
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      集計期間: 2025年08月16日09時〜2025年08月16日10時