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『はらぺこミーム』レビュー。必要なのは“計画力と決断力”。そしてペット好きならきっとミームが好きになる

byギャルソン屋城

『はらぺこミーム』レビュー。必要なのは“計画力と決断力”。そしてペット好きならきっとミームが好きになる
 2025年6月19日にクラウディッドレパードエンタテインメントよりNintendo Switchで発売された完全新作『はらぺこミーム』(PC版はドリコムより7月31日発売予定)。AIを活用した探索、育成が特徴のコロニーシミュレーションだ。

 数々のヒット作を生み出してきたクリエイターの西健一氏(代表作:『
moon』、『ちびロボ!』ほか)、森川幸人氏(代表作:『がんばれ森川君2号』、『アストロノーカ』ほか)が企画、制作に携わったこと、そして2025年2月に配信された体験版の容赦ない難易度設定でも話題となった作品だ。

 ファミ通.comでも体験版のレビューは掲載していたが、今回は製品版同等のバージョンをプレイし、改めてレビューをお届けする。
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見た目と裏腹のガチンコゲーム!

 『はらぺこミーム』に必要なのは、計画力と決断力である。

 本作の目的は、ミームたちに“世界最高のごちそう”を食べさせてあげること。プレイヤーはミームたちを導き、“世界樹”の内部を探索して素材を集め“キセキのなべ”でさまざまな料理を作り続けるのだ。

 ゲームのメインとなるのは、世界樹の探索と、ミーム・拠点の育成。そこに“時間”と“ステータス管理”というふたつの要素が絡んでくることで、ゆるふわなビジュアルとサウンドで彩られた柔らかな雰囲気とは裏腹の、本格派作品となっている。

 物語は、拠点にいる“トーレン様のお願い”を達成していくことで進んでいく。チュートリアルとプレイガイドも兼ねているので、基本的にはこれを軸にプレイすればいい。
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 ただ、ガイドと言っても手取り足取り教えてくれるわけではなく、大まかなヒントを与えてくれるだけなので、それをもとにプレイヤー自身が試行錯誤しながら進めていくことになる。筆者は当初、本作は“AIでミームに学習させていくゲーム”だと思っていたのだが、プレイヤーこそいちばん学習が必要だったのである。

 たとえば“ジャンプするスキルを覚えさせろ”といったお願いがあったときのこと。「何度も段差を越えさせればいいのかな」ということはわかったのだが、それをどこでやるのかがわからない。
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 じつは、その直前に探索可能なエリアが広がっており、その先に段差を越えるスキル習得のための経験を積める場所があった。しかし筆者はそれに気付かず、最初のエリアをひたすらウロウロして「どうすりゃいいんだ……」と頭を抱えるのみ。何度かセーブデータをさかのぼってやり直し、数十分後にようやく気付いて苦笑いした。
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 一方で、試行錯誤しているあいだにもゲーム内の時間はどんどん進んでいく。ゲーム内の1日はたったの10分。メニューウインドウを開いているあいだも進行は止まらず、ぼさっとしていると何もしないうちに1日が終わってしまうのだ。
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 しかも、1日が終わるとミームたちの空腹度が一気に上がってしまう。お腹が空くと、探索中にメンタルの消耗が激しくなって、制御が効かなくなったり拠点内の施設を壊してしまうようになる“ヤバヤバミーム化”の危険性が上がる。さらにミームの寿命は15日しかない……。
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 その中でプレイヤーがやるべきことは、1日の残り時間や、集めた素材を入れる“ふくろ”の容量から逆算して、どこまで探索をするのか、何を集めるのか、いつ撤退するのかをあらかじめ決めておくこと。無計画に行動していると、だいたい失敗する。

 また、ミームにどんなスキルを覚えさせるのかも決めておかなければならない。本作では敵を倒したり、特定の地形への侵入を行うには対応したスキルが必要となる。しかし1体のミームが覚えられるスキルの枠は決まっているため、オールラウンダーの育成は不可能。スペシャリストを目的ごとに育成しておいて、必要に応じて投入する、という計画的な運用が求められるのだ。
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 とは言え、探索中にはさまざまなハプニングが発生する。思わぬお宝が見つかることだってある。そんなときは思い切った決断が必要だ。何度も言うようだが、本作は手取り足取りやりかたを教えてくれるわけではないので、みずから死地を味わって体で覚えることも重要。

 その代わり、自分なりの解法を発見できたときの喜びも大きい。これは親切すぎるゲームにはない魅力と言ってもいいだろう。

 なお、体験版で指摘されていた激ムズなバランスについては、3段階の難易度設定が設けられることで対応されている。製品版の“ふつう”はそれなりの難しさに収まっているので、体験版ではきびしかったという人も、“ふつう”もしくは“やさしい”なら楽しめるし、体験版の難度に手応えを感じていた人は、“むずかしい”に挑戦して存分に楽しむといいだろう。
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やはりミームはかわいかった

 見た目や雰囲気とは裏腹な本格派のゲーム内容について触れてきたが、その一方で、見た目や雰囲気の魅力については、おそらく皆さんのご期待通り。ブサかわなミームたちは本当にかわいいし、建物や地形、エネミーなども含めて世界観は完成度が高く、世界には魅力が溢れている。ちょっと脱力系のBGMやSEもいい。

 ミームたちを制御する“AI”というと、“生成AI”などに代表される優秀で頼れるもの……というイメージがあるかもしれないが、本作ではAIのせい(おかげ?)でミームたちはとても生き物らしい存在になっている。たとえるなら、しつけをする前のペットのような感じだ。
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 がんばって導いているつもりでもなかなか思うように動いてくれなかったり、すぐにメンタルを消耗してヤバヤバミームになって集めた素材を捨ててしまったり……。困らされることのほうが多いはず。

 学習する前は、何でも食べてしまったりもする。最初に木の枝を食べようとしたときは「おいおい!」とビックリした。すぐに吐き出しはするのだが。

 ただ、バカな子ほどかわいいと言うが、だんだん制御できるようになってくるとそれまで苦労したぶん、愛着が湧いてくる。見た目も愛嬌があるし。

 寿命が15日しかないので、お別れのときは早くやってくる。拠点内にお墓を建てることもできるので、そういったもので思い出を残しておけるのもいいなとは思った。
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 基本的には時間に追われるゲームではあるのでなかなか余裕ができてはこないが、ゲームを進めてさまざまな建物ができてくると、だんだんとプレイしやすくなって楽しむ余裕ができてくる。本作はそういうタイプのゲームである。

 一方で注文もつけたい。画面内に複数の段差が登場したりすると、処理がカクついたりカーソルが反応しなくなったりする。視点を移動するときに移動させたい方向と反対の方向を入力する必要があるなど、全体的に操作性もよくないところがあるので、今後のアップデートなどで対応してほしいところ。

 そんな欠点もあったりはするが、こういうゲーム性の作品は近年あまりないと思われるので、新しもの好きなユーザーはぜひ試してみてほしい。
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