映画『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』と『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』の中間にあたる時期の銀河の裏社会が描かれ、プレイヤーは悪党ケイ・ヴェスとなって相棒のニックスとともに、銀河でその名を轟かせていくことになる。
ここでは、Massive Entertainmentの開発者への全5回にわたるインタビューの第5回を掲載。Lucasfilm Gamesとのコラボレーションや、ほかのゲームにない本作ならではのポイントについて訊いた。
また、下記の記事や映像を参照しつつ、合わせて読んでいただければ、さらに理解が深まると思う。
開発者インタビュー 第5回:Lucasfilm Gamesとのコラボレーションについて
Julian Gerighty氏
クリエイティブ ディレクター
――Massive Entertainmentが『スター・ウォーズ』ゲームを制作するにいたった経緯を教えてください。
私たちにとって、文化的に非常に重要な意味を持つ作品である『スター・ウォーズ』を扱える絶好の機会だと思いました。これがすべての始まりで、2018年のことです。
私たちは『ディビジョン2』の開発を続けていましたが、それがひと段落した2020年のコロナ直前に、Lucasfilm Gamesにプレゼンを行いました。コロナ禍で構想を練り、プリプロダクション作業を進めましたが、ともに10年仕事をしてきた経験豊富な人材が揃っていたので問題はありませんでしたし、コロナ禍でも時間を無駄にせずに進めることができました。
――Lucasfilm Gamesと密に連携を取っていたかと思いますが、制作するうえでMassiveとしてとくに大事にしたポイントは何でしょうか?
タトゥイーンはチュニジアの砂丘がモチーフです。これをどうしたら未知のものにできるか。ふたつの太陽があり、見たこともない巨大なクリチャーが砂漠を歩き回っています。トーシャーラの場合はアフリカのサバンナです。そこに強い風と、巨大な山々を街の中に配置し、アンバーリーン(琥珀の岩石)を露出させてました。アンバーリーンは馴染み深い色を生み出していますが、異星の捻りが加わっています。ゲームのすべてがこのように作られています。
チューバッカや、C-3PO、R2-D2などのドロイドも、同じようになじみがあるものに捻りを加えて作られたものでした。伝説によれば、ミレニアム・ファルコンの形状はハンバーガーとフレンチフライに影響を受けていると言われています。ボバ・フェットの宇宙船は、1970年代サンフランシスコにあった街灯の形です。どうです? これからはハンバーガーとフレンチフライが違うものに見えてきますね。
――Lucasfilm Gamesからはどのような要望や注意点がありましたか?
タトゥイーンを登場させることになった際は、すばらしいことだが、すべてをしっかり監修すると言われました。映画にあるものとまったく同じでなければならないからです。カンティーナを再現する際もすべてが同じでなければなりません。
私たちの作ったタトゥイーンは、これまでビデオゲームで見られた中でもっとも正確なタトゥイーンだと言っていいと思います。Lucasfilm Gamesが大事にしているのはこの部分です。
映画ではあるシーンで必要なだけのセットを作りますが、ゲームではエリア全体を作る必要があります。映画のロケーションはカメラアングルを決めて美しいところだけを見せればいいわけです。一方、ゲームではすべてが美しくなければなりません。
『ディビジョン』の映画化が発表された際に監督にワールド資料を送りましたが、監督はこんなに膨大な量の仕事をしたのかと本当に驚いていました。ゲームではそれだけの仕事をしなくてはなりませんが、私はそこが気に入っています。ゲーム開発でいちばん好きなのは、それぞれのワールドを構築できるところです。納得のいくシステムを作り、プレイヤーが共感できるものにするところがもっとも楽しいですね。
――Lucasfilm GamesにはQAのようなチームがあり、テストチームが実際にゲームをプレイしながらフィードバックをしていたのでしょうか?
重要なポイントはふたつあり、第一にLucasfilm Gamesのもっとも重要な役割はQAではなく、私たちが作ったものが『スター・ウォーズ』と感じられるかどうか判断することです。本物の『スター・ウォーズ』の感覚、サウンド、イメージを維持しているかを確認することです。
第二に、私たちの作る“スカウンドレル(悪党)ファンタジー”は私たちのゲームであり、自由に創造できることです。ほかのゲームではジェダイや帝国をテーマにしていますが、私たちは悪党を取り上げました。
そして、惑星や衛星、ブラスター、ニックスなどを作ることができました。私たちが作り上げたこれらのものは『スター・ウォーズ』の映画でも使うことができます。映画やドラマにいつかニックスが登場するかもしれませんね。
ちなみに、トレイルブレイザーのデザインは私が子どものころに手に入れることができなかったおもちゃがベースになっています。プログラムして動かせるクルマで、これがトレイルブレイザーの形状表現のベースになっています。もちろんトレイルブレイザーにはより多くの要素が入っていますが、私の子ども時代とのつながりと可能性が、トレイルブレイザーという表現になったのです。
これはカノンになりました。クリエイターとして、いまは成人したかつての子どもとして、当時大事にしていたものを作れるというのはすばらしい機会です。
本当の最初という意味で言えば、『スター・ウォーズ』は私にとって何なのかを考えたことです。子どものころの夢はなんだったのか。この銀河で何になり、何をやりたかったのか。これが『スター・ウォーズ』神話とのつながりの原点です。
――ファンの多い『スター・ウォーズ』作品を扱うことで、プレッシャーはありましたか?
私がコントロールできるのはゲームそのものです。そしてゲームを作る過程を楽しくすることです。私はチームにハッピーでいてほしいと思います。ゲームを愛するチームを持つことは私にとって非常に大事なことです。チームの誰もがニックスに愛情を持っています。誰もが懸命に仕事をしながら楽しんでいることはとても大事なことです。あまりプレッシャーは感じませんし、よく眠れていますよ(笑)。
――ほかのシューターやアクションゲームとは異なる、本作ならではポイントはどこだと考えていますか?
『ディビジョン』では、カバーして撃つ、カバーして撃つというリズムを感じますが、本作では走りながら撃ち、ニックスをけしかけて、すばやく誰かをパンチする、というようにより流れを感じます。根本の部分で独自要素を作り上げるのは私たちにとってとても重要なことでした。リズムが大きく異なることはそのひとつです。
その上にシームレスなオープンワールドがあります。スピーダーがあり、宇宙船があります。私の子どものころの夢は、カンティーナでちょっと怖いエイリアンと話し、ガレージへ行ってスピーダーに乗り、宇宙船で飛び出し、海賊を撃ってスペースステーションに着陸するというものでした。本作から『スター・ウォーズ』要素を取り除いたとしてもこの体験はほかでは見つけられないものだと思います。
それに加えてミッションがあり、ストーリーがあり、犯罪シンジケートと評判システムがあり、つねに楽しめるようにしています。『スター・ウォーズ』の裏社会や無法者と聞けば、暗くて成熟した世界を想像しますが、私たちがやりたいのはそういうものではありません。
私たちが作っているのは『ジュラシックパーク』や『インディ・ジョーンズ』、『グレムリン』などの80年代の映画を彷彿とさせる、少し怖くて気味が悪いけれど同時におかしくもあるもの、決して暗くはない“皆で楽しめる作品”であり、オリジナルの『スター・ウォーズ』です。
――とくにこだわった点や見てほしい点を教えてください。
――制作していてとくに楽しく感じたのはどのような点ですか?
ゲームを作る過程は完成したゲームと同じくらい大事だと思います。600人の社員がお互いを大切にしつつ、ゲーム作りを楽しめたことです。自分自身とチームを大切にしたいですね。
また、Lucasfilm Gamesと仕事をして『スター・ウォーズ』のルールや哲学を理解したことで、私たちは多くを学び成長し、よりよい開発者になることができました。私が『ディビジョン3』の仕事にかかるときには、これらの教訓は私たちがやろうとすることに生かされると思います。
――本作でとくに好きなキャラクターは誰ですか? 理由も教えてください。
ケイはある事態に巻き込まれて状況がますます悪くなる中で、ジャバ・ザ・ハットと話をすることになります。街の泥棒からそこへいたる驚くべき冒険があり、私にとっては共感できるキャラクターです。完璧な人はいませんから。
自分を投げ打って何かをする、機会を捉えようとする、やり終えるまで自信があるフリをするキャラクターはとても楽しいです。私たちが作り出した中でベストなキャラクターだと思います。もちろんニックスやND-5も大好きですよ。
――『スター・ウォーズ』映画やドラマ、アニメでお気に入りの作品はどれでしょうか?