ユービーアイソフトが2024年8月30日に発売予定のオープンワールドアクションアドベンチャー『 スター・ウォーズ 無法者たち 』。本作は、Lucasfilm Gamesの協力のもと『 ディビジョン 』シリーズのMassive Entertainmentが開発を手掛ける、 『スター・ウォーズ』 シリーズ初のオープンワールドゲーム。 映画 『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』と『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』 の中間にあたる時期の銀河の裏社会が描かれ、プレイヤーは悪党ケイ・ヴェスとなって相棒のニックスとともに、銀河でその名を轟かせていくことになる。 ここでは、Massive Entertainmentの開発者への全5回にわたるインタビューの第4回を掲載。ケイやニックス、ND-5など主要キャラクターのデザインについて訊いた。 また、下記の記事や映像を参照しつつ、合わせて読んでいただければ、さらに理解が深まると思う。
VIDEO
・開発者インタビュー 第1回
・開発者インタビュー 第2回
・開発者インタビュー 第3回
開発者インタビュー 第4回:キャラクターデザインについて ――ケイの外見はどのように決まりましたか?
Marthe
まず“スカウンドレル(悪党)ファンタジー”をうまく表現できるデザインにしたいと思いました。裏社会に踏み入れて新しいことを習得し、突然大事な役割を担い、シンジケートと話さなくてはならなくなる泥棒のストーリーをどのように語るかを考えました。 ケイが泥棒だとわかる要素、たとえばヘアピンには解錠ツールなどさまざまな機能を持つデータ・スパイク、忍び足で進めるスニーカータイプのブーツなど。 ニックスはケイの相棒で盗みを働いたり、小さな場所に入り込んだりします。プレイヤーはケイとニックスとともに 『スター・ウォーズ』 でこれまであまり見ることのなかった裏社会に行き、そこがどんな場所なのかを知ることになります。
――現在の外見に決定する前に、ほかにはどのようなアイデアがありましたか?
Marthe
ジャケットやヘアスタイルなどのディテールはデザインしている中で何度も変わりました。ツールとして使うため、ヘアピンを付けることはわかっていましたが、どんなヘアスタイルにするか何度も検討しました。アップにしていてヘアピンを取って使うという動作も実際にやってテストしました。 ジャケットについてはさまざまな色を試して、認識しやすいかどうか検討しました。またニックスといっしょにいるときにどう見えるかも考えました。ニックスの見た目には黄色もあるので、ケイの青いジャケットはコントラストが明確で、ふたつのアイコニックなキャラクターがアイコニックなカラーを持っていて引き立つと思いました。 これはデザイン上とても大事なことです。つねにふたつのキャラクターをいっしょにデザインするようにし、試行錯誤しました。最初からずっとデュオですね(笑)。
Samuel
本作はサードパーソン視点なので、ケイの後ろ姿を見ることになります。後ろ姿を前側と同じようにダイナミックにする、さまざまなディテールが必要だったわけです。 ――同じく、ニックスの外見についてはいかがでしょうか?
Marthe
ニックスはデザインする側から見てとても興味深い対象でした。ニックスはマーカルという新しく登場する種族で、Lucasfilm Gamesとの協力によりMassiveで制作したものです。このキャラクターに求めるものはいくつか決まっていたので、それに沿ってデザインしました。 ケイの相棒であり、親しい友だちであると同時にゲームプレイではケイを助ける必要があります。たとえば武器を拾う、ケイが通れない狭い通路や曲がり角に入り込むなど。機能性が必要であり、また魅力を感じてもらうことも必要でした。 魅力を出すために私たち自身のペットから多くのヒントをもらいました。ペットは親しい相棒であり、私たちはどんな存在か知っています。これがデザインコンセプトのスタート地点でした。ニックスはジャングルの惑星出身ということで、自身を保護する鱗を持っているだろうと想像し、同じような構造を持つ動物を調べました。触覚はおもしろいシルエットで、かなり早い段階で決まりましたね。 印象的なシルエットはキャラクター・デザインにとって重要ですが、 『スター・ウォーズ』 ではとくに大切です。ニックスのシルエットができたことで大きな前進となり、同時に感情表現が容易になりました。触覚が下がっているのは怖がっていることを示し、周囲をスキャンしているときは触覚が上がるというように、見るだけでニックスの感情や行動が理解できます。
Samuel
参考にした動物はさまざまな種類の猿、アホロートル(ウーパールーパー)、そしてセンザンコウなどで、コモドドラゴンは尻尾のシルエットの参考にしました。いずれも実在する動物なので、地に足の着いたデザインになったと自負しています。
Marthe
ケイの背中に乗るので、大きすぎず小さすぎない猿やトカゲのサイズを考えました。しかし、相棒として抱きしめたいと思える魅力が必要なので、バランスを取るために毛皮を付けてソフト感を出しました。 一方で、歯や爪では野生動物であることを強調しました。いろいろな方向で検討して、共感できる部分とエイリアン的な部分のバランスを取って、現在のデザインに落ち着きました。 ――ND-5はドロイドですが、コートを着ています。けっこう珍しいと感じました。
Marthe
スケッチを始めた時点ではコートを着ていませんでした。スケッチをしながら彼の背景を考え、多くの戦いを経験してきたことを表現するために身体に傷を負っていることにしました。そのとき、急にコートを着せるというアイデアが浮かびました。 ND-5が身体の傷を隠そうとしているのは説得力があり、コートを着ることでND-5のストーリーを表現できます。このときからずっとコートを着ているのですが、このコートはとても着古されたもので、第二次世界大戦中のトレンチコートから発想を得ています。 派手さはまったくなく、どこかで見つけてきたような古くて傷みが激しいもので、拡大すればあちこちに穴があり汚れているのがわかります。ND-5は自分自身を隠すためだけにコートを着ているのです。これによってND-5の背景や、私たちが語りたいND-5のストーリーに多くの要素を与えてくれました。
Samuel
結果的に多くのファンがND-5の外見を魅力的だと感じているのは大きな驚きでした。おっしゃるようにドロイドとしてはユニークで目立つ存在で、まさに私たちが表現したいと思っていたものでした。
――ケイやジェレイン・ヴラックスはホルスターが特徴的ですね。ハン・ソロのようです。
Marthe
もちろんインスピレーションをもらうためにオリジナル・トリロジーのキャラクターをたくさん研究しましたが、とくにハン・ソロのデザインに影響したものを調べました。マカロニ・ウエスタン、ガンマン・スタイルなど、ワイルドウエストをベースとしたデザインです。 これはケイのデザインで参考にしたものと同じです。ハン・ソロがデザインされたときと同じように、この感覚をケイのデザインに取り込もうとしました。Lucasfilm Gamesのサポートで、映画のすべての参考資料、写真、デザインなどを見ることができました。最終的には自分たちの見解を得るために原点に戻り、 『スター・ウォーズ』 の実際のデザインを検討することにしました。映画を直接参考にするだけでなく、映画を作った人たちが参考にしたものに立ち返ったわけです。
Samuel
ハン・ソロのように派手で自信家の悪党もいますが、プレイしていただけばケイはより無秩序で衝動的で、経験を積んでいないことがわかると思います。このコントラストを見てもらうのも楽しみです。 ――宇宙船・トレイルブレイザーのデザインは、独特でおもしろいと感じました。
Samuel
じつは、亀の甲羅にインスピレーションを受けています。すぐにはわからないかもしれませんが、一度亀だと聞けば納得できると思います。ケイはトレイルブレイザーでドッグファイトに臨み、住まいとしても使うため機能的に安定したものでなければなりません。ゲームプレイと本作で語りたいストーリーをサポートしたいと考えていましたが、最終的にうまく噛み合ってくれたと思います。
Marthe
60-70年代のデザインも研究しました。トレイルブレイザーは70年代のモノレール、スピーダーは70年代のスピードバイクを参考にしています。キッチン製品や、建造物の形状も乗り物のデザインに取り入れました。トレイルブレイザーで成功したのはシルエットです。 乗り物や、ツール、武器もシルエットは重要です。トレイルブレイザーはユニークなシルエット、それも 『スター・ウォーズ』 では見たことのない形にしたいと思っていました。試行錯誤の結果、遠くからでも“認識できるデザイン”を重要視しました。
――本作のために何種類くらいの生き物を制作したのでしょうか?
Marthe
すべての惑星とクリーチャーはUbisoft Shanghaiと協力してデザインしたもので、たくさんあります。ニックスは明らかに新しい種族ですが、トーシャーラにいるグシロも私たちが作ったものです。
Samuel
隠れた場所にたまにしか出てこない野生生物もいます。いまでもテストをしていて鳥を見かけて驚くことがあります。ゲームプレイにも影響を与える生物もいますね。
Marthe
捕食動物もいますし、アキヴァのジャングルなどには危険な動物がいるので注意が必要です。キジーミにはウサギのようなクリーチャーがいて足跡があったり。とてもかわいいので見てほしいですね。私たちは生き生きと感じられる惑星を作りたいので、そのためには多くのクリーチャーが必要で、動物や昆虫もデザインしました。 ――トーシャーラを制作する際は、街の外観ができ文化や設定が決まった後に、街の人々の服装などをデザインしたのですか?
Marthe
初めにこの衛星がどのように形成されて景観ができていったかを決めました。この星は強風が吹くため、岩が侵食されますが、硬い岩はそのまま残り、エイリアン的な形状をなしています。これを念頭に街を作るときには風を避けるため侵食された部分をシェルターとして使う設定ができ、現在の形になりました。 また、風を利用したウィンド・タービンで街に電気を送っています。住民にとって身近にあるさまざまな事柄に影響されたパターンをデザインとして使うようになり、住人の衣服のデザインにも特徴的なカーブが見られます。オレンジ色が多く使われていますが、これはそのほかにも共通しています。つまりすべてはこの衛星がどのように形成され存在したかというところからスタートしています。 ――本作の中でとくに気に入っているデザインはどれでしょうか?
Samuel
スピーダーが気に入っていますね。70年代のモトクロスバイクを参考にしたものです。スピーダーはどんな地面でも走れて、しかも楽しいことが重要だったので、モトクロスバイクはモデルとして理想的でした。ジャンプしたり水上を進んだりもできます。プレイするたびにビジュアル的にも機能的にも最もワクワク感を感じさせてくれるデザインです。
Marthe
私たちが作ったものの中ではアシェガ・クランが気に入っています。キジーミ・シティの一部を構成する新しいシンジケートとして確立したいと思いました。この場所はサムライ映画や黒澤明監督作品に大きく影響されているので、アシェガ・クランについても同じように考えました。衣服には侍の鎧や着物の影響が感じられます。 ――制作していてとくに楽しく感じたのはどのような点ですか?
Marthe
キャラクターデザインのプロセスは非常に長く、多くの部門が関わっています。ある時点で俳優のキャスティングを行いましたが、ハンバリー・ゴンザレスがケイを演じるテープを見て、これこそケイだと思いました。ケイが声を出し動いていて、ハンバリーがケイを生き生きと演じるところを見たときは本当にワクワクしました。
Samuel
生き生きとした世界を作るのが楽しいですね。モス・アイズリーやミロガナのような街では、多くのモニターやポスターが壁に飾られています。スピーダー・ショップやミロガナの小旅行の宣伝用のポスターだったりしますが、それらを見るとチームがどれだけのものを作ってきたのかがわかります。 ファンの方たちがこうしたものを分析し、画面に書いてあることを翻訳しているのを見るのは楽しいですし、こういった細かなところに注目してもらえるとうれしいです。 ――そういう細かなデザインから“生きている世界”が生まれているのですね。
Marthe
それこそが私たちのゴールでした。惑星や街、そこに住む人々、すべてには背景やストーリーがあります。細かなディテールにも気づいていただけるとうれしいです。
Samuel
プレイヤーを含め私たちが悪党ファンタジーに求めるもの、それはカンティーナのバーカウンターに寄りかかることかもしれません。耳を澄ますと隣では密輸品を密かに移動しなくてはならないという話をしていて、サイドクエストがスタートします。 こうしたことがこの世界観をより信じられるもの、生き生きしたものにします。メインストーリーに沿って進む以外にも、できることがたくさんあります。
――本作でとくに好きなキャラクターは誰ですか? 理由も教えてください。
Samuel
シンプルで奥深さのあるND-5が好きです。ND-5の過去についてわかっていくことがたくさんあるので、ワクワクしますし、プレイヤーも同じであってほしいと思います。
Marthe
ニックスも大好きですが、ここではダンカを推します。ダンカは最初のモン・カラマリ種族でミロガナ出身です。外見ですぐにトーシャーラ出身であることがわかります。裏社会をよく知り、ミロガナにいるシンジケートと連絡を取る際にケイを助けます。ダンカはクセが強くとても興味深いキャラクターで、ケイとの出会いもおもしろいです。 ――『スター・ウォーズ』映画やドラマ、アニメでお気に入りの作品はどれでしょうか?
Marthe
オリジナル・トリロジーのファンだったので、本作の仕事をするのは私の夢でした。この時代に何か新しいものを付け足すことができるのですからね。若いころに観た 『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』 がいちばん好きな映画です。オランダではテレビで 『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』 と 『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』 しか見られなかったのでこのふたつはよく観ました。
Samuel
特定の映画ではないのですが、ダース・ベイダーがスクリーンに登場するたびに、シーンにもたらす存在感に圧倒されました。その声は劇的であると同時に不安を感じさせます。ダース・ベイダーはこの世界にとってあまりにも象徴的であり、登場する瞬間はとても興奮しますね。