『ダイイングライト:ザ・ビースト』レビュー。オープンワールドゾンビサバイバルが帰ってきた! シリーズファンも満足の充実した内容【BRZRKのうるせー洋ゲーこれをやれ】
洋ゲーライターBRZRKによる連載“うるせー洋ゲーこれをやれ(仮)”。今回は一人称視点のゾンビサバイバルアクション『ダイイングライト:ザ・ビースト』をレビュー。9月19日よりプレイステーション5/Xbox Series X|S/PCで発売開始だ。(※PS5版はスパイク・チュンソフト、それ以外は開発元Techlandが販売)
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 今回紹介するのはTechlandが手掛ける人気オープンワールドゾンビサバイバル
ドロップキックアクションシリーズの最新作『ダイイングライト:ザ・ビースト』だ。

 もともとは前作『
ダイイングライト2:ステイヒューマン』のDLCとして開発がスタートしたといわれている本作だが、今回レビューしてみたら、キャンペーンのクリアーだけでなく合間にCoopプレイもワイワイ楽しみつつ、気付けばトータル44時間ほどが経過。「そりゃ単体のゲームにするわな」と納得しつつ、軽い恐怖体験といった感じだ。
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初代主人公カイルが再び帰還。ゾンビだらけの地獄のオープンワールドを駆け巡れ

 さて本シリーズは、所謂ゾンビアポカリプス物のアクションアドベンチャー。プレイヤーは初代『ダイイングライト』及びそのDLC“ザ・フォロイング”の主人公であるカイル・クレインとして、ゾンビが跋扈している地獄のオープンワールドを駆け巡り、ほかの生存者や自身の復讐のために奔走することになる。
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諸事情によりちょっとぐらい噛まれてもセーフ&一帯を支配する“バロン”にも因縁ありまくりなカイルは、人々を救うために身を投じていく。過去作での詳細が気になる人はダイジェスト映像もついているのでそちらを確認されたし。
 路上にも建物の屋上などにも結構な数のゾンビが徘徊しているわけで、普通に考えたら身動き取れなさそうだが、そこをスイスイすり抜けて踏破していく移動アクションが本作の特徴だ。

 主人公のクレインは1作目の冒頭でパルクール(移動術)を習得しているため、あっという間に建物の壁をよじ登ったり、結構な高所から飛び降りてそのまま走り出したりできる(それ以外のスキルを割と忘れ去ってるのは御愛嬌)。
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脅威の握力でちょっとした出っ張りに手をかけて、割とびっくりするような高所までガシガシ登っていける移動アクションは健在。時計塔の屋上まで電源ケーブルを引っ張るのも余裕ッスよ。(※画像はフォトモードのもの。ゲームは一人称視点です)
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びょいーんとジャンプしても割と大丈夫。一人称視点だから思い切って飛ぶ必要はあるけどね。
 さらにシリーズ伝統のガジェットであるグラップリングフックも途中で獲得。これは高所にひっかけると自分の体を少し巻き上げスイングロープのように使えるシロモノだ。しかもグラップリングフックを敵に対して使えば引き寄せられるので、“高所の敵を引きずり落として無力化”なんてことも可能だったりする。まぁあの“ニューヨークの親愛なる隣人”みたいな動き方ができる万能道具とでもいえばいいだろうか。

 あ、一応言っておくと、初代作品とそのDLCの顛末は海外ドラマのあらすじ紹介みたいな感じのダイジェスト動画が視聴できるようになっているので、内容を忘れている人や未プレイの人でも気にせずプレイ可能だ。

新たな舞台は1のDLCと2のいいとこ取りな感じのマップ

 今回の舞台カストール・ウッズは、スイス西部にあるとされる架空の観光地。都市というよりも“郊外にある牧草地帯と山に囲まれた田舎町”といったところで、市街には背の高い建物が立ち並ぶが、少し外に出れば木々の生い茂る平坦な道が続くのどかなロケーションとなっている。
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市街中心部には低めの建物に混じって教会などの目立つロケーションがちらほらあり、その外側に出るとすぐに自然が広がっているという具合。なので今回は2のグライダー要素とかはなく、ある程度フィジカルなパルクールに原点回帰してる感じ。
 言ってみれば、初代のDLCにもうちょっと街っぽさを追加した感じだろうか? 大きな都市として構成されていた2と比べると、最初は幾分かスケールダウンされているように思えるかもしれないが、プレイしていると緩急が取れていてかなりいい塩梅のマップ構成だと気づくだろう。

ヘビーでビターな世界をバカ武器とドロップキックで切り抜けろ!

 さてゾンビまみれのこの世界にも、難を逃れてコミュニティを形成している人間が存在する。クレインは自身の目的を達成するために生存者たちと接触し、コミュニケーションを図ろうとするのだが、ギブ・アンド・テイクな世界なのでとにかくクエストを頼まれることとなる。

 クエストにはメインストーリーを進めるタイプと地域住民の問題解決をするためのサイドクエストの2つのタイプがあり、全部進めていくと30時間前後を要するくらいのボリュームがあるので、じっくり腰を据えて遊ぶことが可能だ。まぁシリーズを通してプレイしている人はわかると思うけど、かなりビターな物語と言っていいだろう。
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噛まれちゃったらしくて、かける言葉もねぇシーン。ポーランド産ゲームって『ウィッチャー』とか『フロストパンク』とか独特なドライさのある辛い話が多いけど、本作はゾンビアポカリプスかつそんな感じ。
 ゾンビが居る世界ってことで当然だが戦闘も発生するわけで、攻撃手段はパイプやハンマーといった近接武器からアサルトライフルに火炎放射器などバリエーションは様々。まぁその辺で手に入れたり、敵が落としたのを拾って活用する感じだ。

 で、近接武器に関しては武器を改造(MOD)することが可能で、強化するとクリティカルヒットで敵を炎上させたり、電撃を食らわせたりといったこともできる。個人的には水たまりとかの近くで電撃を発生させて周囲の敵もろとも感電死させるのが好きかな。まぁそんな感じでいい意味でのバカみたいな武器を好き勝手作れるのは本作の醍醐味のひとつだろう。
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思い思いのバカ武器を持ち寄って3人プレイ。ちなみに顔は全員同じなんだけど、そこら辺の割り切りが逆にいいよね。
 ちなみに近接武器とかには耐久値が設定されているため、あまり長く使い続けていると鉄パイプが歪んだりしてプレイヤーに修理の頃合いを知らせてくれる。そのままにしておくと装備できなくなってしまうのでこまめに修理しておくと良い。ただ、修理可能な回数には上限があるので、その点については注意が必要だ。

 そういった戦闘やクエストをこなしていくとレベルが上がり、スキルツリーからさまざまな追加アクションを得られるんだけども、その中で欠かせないのが個人的に本シリーズのコア要素と思っているドロップキックだ。

 ドロップキックは「グシャッ」という音とともに敵を蹴っ飛ばせるので、高所から敵を蹴り落としたり、複数体をまとめて吹っ飛ばせたりすると超気持ち良い。「やっぱこれがないとダイイングライトじゃねぇ」って感じ。
今回は最初に解除できるあたり、「わかってんなぁ」って思ったね! 個人的に敵を高所から落とすか、あえて膝を狙った低空ドロップキックを決めるのが好きだったり。
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オカダ・カズチカ(※)かってぐらいにハードヒットなドロップキックを連発。(※元新日本プロレス・現AEWのレスラー)

キメラの力をも取り込み、怒りの獣(ビースト)になれ!

 また、クレインは攻撃を食らったり加えたりしていると“ビースト”ゲージが徐々に溜まっていき、我慢の限界を迎えると(?)攻撃力が爆増するビーストモードが発動。徒手空拳で敵を一方的にぶん殴れる状態に突入する。
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ビーストモードが発動すると体力も多少回復したりするので、ボス戦で苦戦してる時に出ると「よっしゃオラー!」って感じになる。
 さらに、ボス格のクリーチャーである遺伝子改造を受けた強敵“キメラ”体を倒していくと、このビーストモードの強化も可能だ。キメラ体は個体ごとに異なる能力を持っているためかなり手強い相手なのだが、無事に仕留めることができれば通常レベルアップ時に得るスキルポイントとは別の“ビーストポイント”を獲得し、ビーストモード中限定のさまざまな追加アクションを習得できるのだ。

 ビーストモードは、最初のうちはゲージがマックスになると勝手に自動発動するタイプなため、コントロールが効かず使い勝手は良くないけど、物語が進み強化していくなかで任意発動型へと変化し、ここぞという時に解放できるようになる。
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スキルツリーはスキルを選択してビルドを組むというより、最終的にあらゆる能力を全アンロックする感じの作り。
 ついでに本作の成長要素について補足しておくと、道中で敵に倒されるとペナルティとしてそこそこの経験値を失ってしまう。だがレベルダウンまではしないし、当然ながらレベル上限の15になると以降は死んでもペナルティが生じない。まぁ、そこまで上げるのもチョイと大変ではあるけどね。

サバイバルに欠かせない物資を得るために危険地帯に飛び込め!

 こんな風に良い感じに崩壊している世界でサバイバルしていくワケだけど、武器を強化して回復薬などを用意して……とやっていくためには当然物資が必要になってくる。

 中でも枯渇気味なのが”冬虫夏草”、”ボロ切れ”、”燃料”で、その辺にある廃墟や廃車を漁ることで手に入ることもあるが、より確実に入手したいのであればアイテムが多数眠っている“ダークゾーン”を訪れてみることになるだろう。

 ダークゾーンはゾンビや変異種が多く配置されていてリスクが高い場所なんだけど、そこでしか手に入らない装備やアイテムやMOD(改造)の設計図などが入手できるので、うまくいけばリターンはかなりデカい。ステルスとフィニッシャーを有効活用すればプレイヤーレベルが低い序盤でも攻略は可能なので、早めに訪れることをオススメしたい。
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ダークゾーンでは狭い所で混戦にならないよう、近くの敵を透視する察知能力なども発動しながら慎重に片付けていこう。
 で、クエスト攻略したり探索していると、日が沈んで夜を迎えてしまうことがある。この手のゲームでは夜になるとゾンビが強力になるシステムはよくあるけれど、本シリーズのそれはハンパじゃない。夜になると攻撃力が高く移動速度も速い“ヴォラタイル”と呼ばれる超強力な感染体が徘徊し、プレイヤーを発見次第追い回してくる。

 チェイスされた状態でドタバタ逃げ回っていると、あれよあれよという間に別のヴォラタイルを呼び寄せ、気付けば地獄の逃走劇に。もうこの世界の夜の時間は人間の支配下にはないと心得て、日が暮れそうになったらセーフルームに戻ってぐっすり朝まで寝てしまおう。
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ヴォラさんはマジでヤバいので、夜の外出時は周囲に注意。
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各所のセーフルームでは朝まで時間を潰せるので、見つけたらアンロックしておくといいだろう。

やっぱ、ワイワイボイチャしながら暴れまくるCoopは最高!

 本シリーズの魅力として忘れてならないのがオンラインCO-OP(協力プレイ)の存在だ。ソロで遊ぶのももちろん楽しいのだが、フレンドとワイワイ話しつつドロップキックをしながら街を駆け巡るのは別格ですんごく楽しい。

 そもそもソロでプレイしているときは死亡時のデスペナルティなどがあるためやや慎重に行動することが多いが、ダウンした味方を救助できるCO-OPの場合は割と大胆な行動を取れる。そのため、普段はやらないような行動が思わぬ笑いを引き寄せることが多々あるのだ。

 片方のプレイヤーが大ジャンプで飛びついた先にあとから来るプレイヤーがギリギリ届かなくて落下死するのを見届けてしまったり、ドロップキックの目測を誤って屋上から落ちていったりといったハプニングが起きると、それまで緊迫した雰囲気でプレイしていても途端に弛緩して、突然の笑いに耐えられず全滅なんてことも。
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ドライブ時には同乗者がハコ乗りして銃をぶっ放したりもできる。治安悪いなぁ。いや実際治安悪いけど。
 とはいえ戦略的に行動するのであれば、ひとりが周辺のゾンビを掃討し、もうひとりが謎解きなどのギミック操作を担当するといった分担もできる。ちなみに慣れてくると“ひとりがグラップリングフックで引っ張った敵を味方がドロップキックでダメージ判定のある壁まで蹴り飛ばす”といったコンボも可能。まぁ安い表現だけど、“無限に戦い方がある”といった感じ。

 んで繰り返しになっちゃうけど、フレンドとあーでもないこーでもないと言いながらワイワイ遊んでいるのは本当に楽しい。たとえば物資集めにしても、ソロだと淡々と無口で漁ることがあるんだけど、フレンドと一緒なら談笑しつつスカベンジできるし、「ここバッグあるよ」なんてちょっとした発見を共有できたり、より有意義な時間が過ごせる。
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駐車場でデカブツ相手に突如始まるドロップキック・パーティー。バスから次々とドロップキックをカマしていく。
 まぁプレイヤー自身のCO-OPの好き嫌いはあるかもしれないけど、遊んでおいて損はないんじゃないかな? なおキャラ同士のレベル差がある場合もCO-OP自体は可能だ。

 ただ低レベルプレイヤーが高レベルプレイヤーのゲームに入る形だと、装備が乏しい状態で高レベルゾーンに侵入することになったり、クエストの進捗が連動しなかったりする。なので、高レベル側が低レベル側に入ってプレイするほうがいいだろう。
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この赤いアイコンが出てると自分はクエストがクリアー扱いにならない。まったくの無駄というわけではないし十分楽しいのだが、自分のセーブで再度プレイする必要があるのは覚えておこう。
 筆者たちが触ったバージョンではCO-OPになると敵の耐久が若干上がったりといった補正も働いていたので、高レベル側でプレイしても十分楽しめた。まぁそこらへんは特に深く考えず、気楽にCO-OPでドロップキックを繰り出してプロレスラーの声真似とかしているだけでもクソ楽しいので是非やってみてほしい。

 惜しむらくはクロスプレイに対応していない点。せっかくワイワイ遊べるのだからプラットフォームを問わず一緒に遊べると良かったのだけど、まぁ無い物ねだりかな?

スタンドアロンタイトルとして十分な価値のあるタイトルだ

 さて本作、冒頭でも触れたように筆者はサイドクエストを含めてストーリークリアーまで遊び倒し、単体のシリーズ最新作として満足のいくタイトルだと感じた。

 これまでのカイル・クレインの物語は裏切られたり仲間が惨たらしい最後を迎えたり、バッドエンド寄りのビターな物語でしかなかった。本作もご多分に漏れずそういう方向ではあるのだが、ゲームを終えた後の印象としては過去作と比べると幾分か晴れやかな気持ちになった。

 そして詳細は規制に触れてしまうので語れないが、カイルの物語としてだけでなくちゃんとダイイングライト2との強烈な関連性もストーリーに盛り込まれていたり、シリーズを通して追いかけてきたコアなファンには嬉しい要素もあり、プレイする価値はあると断言していいだろう。
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ところでモツは多いですよ。(※今回のレビューはPC版で行った。なお本作の国内PS5版については、Z指定タイトルであるものの相応の規制が入るとのこと)
 ところでゲームクリア後は自由にカストール・ウッズを徘徊可能になるのだが、こちらは特にクエストが追加されるということではなく、取りこぼしたコレクタブル要素のフォローのためとなっている。

 で、気になるニューゲーム+(いわゆる“強くてニューゲーム”)は現状では残念だが存在せず、頭からやり直したいなら新規でセーブデータを起こさなければならない。まぁ2みたいに後からニューゲーム+を実装っていうパターンはあるかもしれないけどね。

 ちなみに筆者はSteam版をプレイしたのだけど、フォトモードが楽しすぎて色々な構図の写真を撮ってはニヤニヤしている。是非ともフォトモードも触ってみてほしい。さて、相変わらずTechland製のゲームは時間泥棒なわけで、これから深まる秋の夜長に腰を据えてジックリと遊んでみてはどうだろうか?
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著者近況:クッソ美味いカツサンドを食べたけど量が足りない
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